2008.05.27
(真夜中に、結婚当初の日記を見つけたので載せてみました)
それに気付いたのは、まだアレヂと恋人の関係になる前。
私たち、付き合えるのかしら?両思いかしら?ドキドキ。
の気持ちを楽しみながら、デートを重ねている時だった。
その日は初めての映画館デート。
映画の話や、主演女優の話などをしながら、
ほがらかに席に座り、30秒ほど後、その事に気付いたのだった。
……え?くさっ…?…彼、臭くない…?
席同士の幅が狭い映画館で、軽く密着して座った私たち。
その、世にも不思議な臭いは、
普段人を気遣わない私が、
「大丈夫?アレヂの反対側の人、大丈夫?」と、
顔さえ見ていない赤の他人を心配してしまうほどの臭さであった。
「でも、私、この臭い外国人と別に、付き合ってるわけじゃないから。
ただの友達だから」
と、心の中で言い訳してしまうほどの、臭さであった。
ちなみに、同じ現象は、密着した満員電車の中でも巻き起こった。
そして、夏本番。恋も本番。
臭いも強烈に本番。
私の実家は、ごく普通の大きさの、一軒家である。
その夏、アレヂを両親に紹介しに、
実家に帰ったのだが、そのごく普通の大きさの一軒家全てが、
見事にアレヂ臭に染まった。
家族は、「そんなことないよ」と笑ってくれた。
「そこまでひどくないよ」と。
それが、娘とその婚約者を庇う優しい嘘だとわかるのに、
時間はかからなかった。
アレヂと暮らしてから、一番恐れていたのは、
夏本番になること。
だが、愛の力とはこのことを言うのだろうか。ふふっ。
私は、臭いに慣れたのだ。
人間、思い込めば何でも出来るもので、
感じまいとしたら、その臭いを段々と感じなくなる。
もしやアレヂの臭いが消えたのでは?と思ったが、
どうやらそうではなかった。
先日、一人で実家に帰って、のんびりしていた時、
父がそろそろとやってきて、煙草に火をつけながら静かに言った。
「…アレヂのニオイな、」
「ん?」
「なんとかしなきゃな…。
外国人は体臭がスゴイっていうけど、
父さん、今まで何人か外国人に会ったことあるけど、
アレヂみたいなことはなかったぞ。
でな、ネットで調べたんだけど…」
父は密かに、[フランス人 ワキガ 体臭]で、
ヤフー検索していたらしい。
「体臭なのか、ワキガなのか、
ハッキリしなくちゃ手の打ちようがないな」
と、殺人課の刑事のような口ぶりでボソボソと言い出した。
母もやってきて、
「この前、アレヂの服と一緒に、皆の服洗濯したら、
服が全部、アレヂのニオイになってたのよ」
と訴える。
「そんなに…臭いかな…?」
動揺する私に、ニオイ刑事の質問は飛ぶ。
「ワキガだったら、マタも同じ臭いがするらしいけど、どうだ?」
「え…と…、マタは大丈夫かな…」
なぜ、生みの親、育ての親の前で、
夫のマタの臭いの告白をせねばならないのか、と
思わず遠い目をしてしまった。
しまいには弟が、
「アレヂのこと、
田辺(漫画・『稲中卓球部』に出てくるワキガのハーフ)って呼んでいい?」
と言い出す始末。
可哀想だよ。アレヂが可哀想だよ。
昔、テレビ番組で、「体臭にはメカブがいい」というのを
思い出して以来、アレヂには理由を説明せず、メカブを食べさせていた。
「コレ、嫌イ」と駄々をこねるアレヂに、
無理やり口に流し込むようにして食べさせていた。
だが、体臭ではなく、ワキガだったら、
父の言う通り、メカブ攻撃は効き目がないではないか。
その夜、私は、体臭なのか、ワキガなのか調べる行為に出た。
スヤスヤと寝ているアレヂの、
脇の下に鼻を寄せ、思い切り息を吸ったのだ。
……間違いない。ワキガだ。
小さくゴホゴホと蒸せながら、私は一人、確信した。
次に実家に帰った時、両親にその旨を報告した。
「やはりワキガか…」
薬局で、家族揃ってアレヂのためにワキガの薬を探した。
アレヂには絶対言えない、微笑ましい家族の姿である。
年老いた両親と年頃の娘が、ワキガコーナーでワイワイ。
そして、オシャレな感じのチューブに入った、
ワキガ専用クリームを購入。
以前からアレヂには、「これ、日本人のマナーだから」
と言い、清汗スプレーをつけさせていた。
今度は、寝る前のアレヂにワキガクリームを見せ、
「これ、スプレーより体にいいから、つけてみて」
と、白いクリームを指に出し、爽やかな笑顔で言った。
アレヂは、「今、寝ル前ナノニ、どうしてツケますカ?」
と反抗した。
「だって、一日に何度もつけるといいって書いてあるから…」
「ヤダ。寝る前、何モツケタクナイ」
仕方なく、自分のワキにすり込む私。
翌日の朝、出かける仕度をしているアレヂに、
昨晩と同じように、白いクリームを指に出し、
「はい、これつけて」
と爽やかな笑顔で言う私。
「間違えテ、もうスプレーしちゃッタ」とアレヂ。
「大丈夫。上からつければ」
「ヤダ。二つツケルノハ、気持ち悪イ」
仕方なく、自分のワキにすり込む私。
いつか、アレヂが自らワキガクリームをつけてくれる日まで、
頑張ろうと思う。
(結婚四年目。今でも夏は、怖いです)
それに気付いたのは、まだアレヂと恋人の関係になる前。
私たち、付き合えるのかしら?両思いかしら?ドキドキ。
の気持ちを楽しみながら、デートを重ねている時だった。
その日は初めての映画館デート。
映画の話や、主演女優の話などをしながら、
ほがらかに席に座り、30秒ほど後、その事に気付いたのだった。
……え?くさっ…?…彼、臭くない…?
席同士の幅が狭い映画館で、軽く密着して座った私たち。
その、世にも不思議な臭いは、
普段人を気遣わない私が、
「大丈夫?アレヂの反対側の人、大丈夫?」と、
顔さえ見ていない赤の他人を心配してしまうほどの臭さであった。
「でも、私、この臭い外国人と別に、付き合ってるわけじゃないから。
ただの友達だから」
と、心の中で言い訳してしまうほどの、臭さであった。
ちなみに、同じ現象は、密着した満員電車の中でも巻き起こった。
そして、夏本番。恋も本番。
臭いも強烈に本番。
私の実家は、ごく普通の大きさの、一軒家である。
その夏、アレヂを両親に紹介しに、
実家に帰ったのだが、そのごく普通の大きさの一軒家全てが、
見事にアレヂ臭に染まった。
家族は、「そんなことないよ」と笑ってくれた。
「そこまでひどくないよ」と。
それが、娘とその婚約者を庇う優しい嘘だとわかるのに、
時間はかからなかった。
アレヂと暮らしてから、一番恐れていたのは、
夏本番になること。
だが、愛の力とはこのことを言うのだろうか。ふふっ。
私は、臭いに慣れたのだ。
人間、思い込めば何でも出来るもので、
感じまいとしたら、その臭いを段々と感じなくなる。
もしやアレヂの臭いが消えたのでは?と思ったが、
どうやらそうではなかった。
先日、一人で実家に帰って、のんびりしていた時、
父がそろそろとやってきて、煙草に火をつけながら静かに言った。
「…アレヂのニオイな、」
「ん?」
「なんとかしなきゃな…。
外国人は体臭がスゴイっていうけど、
父さん、今まで何人か外国人に会ったことあるけど、
アレヂみたいなことはなかったぞ。
でな、ネットで調べたんだけど…」
父は密かに、[フランス人 ワキガ 体臭]で、
ヤフー検索していたらしい。
「体臭なのか、ワキガなのか、
ハッキリしなくちゃ手の打ちようがないな」
と、殺人課の刑事のような口ぶりでボソボソと言い出した。
母もやってきて、
「この前、アレヂの服と一緒に、皆の服洗濯したら、
服が全部、アレヂのニオイになってたのよ」
と訴える。
「そんなに…臭いかな…?」
動揺する私に、ニオイ刑事の質問は飛ぶ。
「ワキガだったら、マタも同じ臭いがするらしいけど、どうだ?」
「え…と…、マタは大丈夫かな…」
なぜ、生みの親、育ての親の前で、
夫のマタの臭いの告白をせねばならないのか、と
思わず遠い目をしてしまった。
しまいには弟が、
「アレヂのこと、
田辺(漫画・『稲中卓球部』に出てくるワキガのハーフ)って呼んでいい?」
と言い出す始末。
可哀想だよ。アレヂが可哀想だよ。
昔、テレビ番組で、「体臭にはメカブがいい」というのを
思い出して以来、アレヂには理由を説明せず、メカブを食べさせていた。
「コレ、嫌イ」と駄々をこねるアレヂに、
無理やり口に流し込むようにして食べさせていた。
だが、体臭ではなく、ワキガだったら、
父の言う通り、メカブ攻撃は効き目がないではないか。
その夜、私は、体臭なのか、ワキガなのか調べる行為に出た。
スヤスヤと寝ているアレヂの、
脇の下に鼻を寄せ、思い切り息を吸ったのだ。
……間違いない。ワキガだ。
小さくゴホゴホと蒸せながら、私は一人、確信した。
次に実家に帰った時、両親にその旨を報告した。
「やはりワキガか…」
薬局で、家族揃ってアレヂのためにワキガの薬を探した。
アレヂには絶対言えない、微笑ましい家族の姿である。
年老いた両親と年頃の娘が、ワキガコーナーでワイワイ。
そして、オシャレな感じのチューブに入った、
ワキガ専用クリームを購入。
以前からアレヂには、「これ、日本人のマナーだから」
と言い、清汗スプレーをつけさせていた。
今度は、寝る前のアレヂにワキガクリームを見せ、
「これ、スプレーより体にいいから、つけてみて」
と、白いクリームを指に出し、爽やかな笑顔で言った。
アレヂは、「今、寝ル前ナノニ、どうしてツケますカ?」
と反抗した。
「だって、一日に何度もつけるといいって書いてあるから…」
「ヤダ。寝る前、何モツケタクナイ」
仕方なく、自分のワキにすり込む私。
翌日の朝、出かける仕度をしているアレヂに、
昨晩と同じように、白いクリームを指に出し、
「はい、これつけて」
と爽やかな笑顔で言う私。
「間違えテ、もうスプレーしちゃッタ」とアレヂ。
「大丈夫。上からつければ」
「ヤダ。二つツケルノハ、気持ち悪イ」
仕方なく、自分のワキにすり込む私。
いつか、アレヂが自らワキガクリームをつけてくれる日まで、
頑張ろうと思う。
(結婚四年目。今でも夏は、怖いです)
Last updated 2008.08.15 22:23:23