シミュレーションの結果として付加される光学ポストエフェクト群
YEBIS は光学的なシミュレーションベースのポストエフェクトを統合的に実装しています。つまりカメラや撮影レンズのシミュレーションを行った結果としてのポストエフェクトをレンダリング結果に与えることができるのです。もちろん実行はリアルタイムです。
YEBIS の被写界深度表現は、絞り値(F値)、ピント(フォーカス)位置、レンズの焦点距離(f)の値を与えた結果として得られます。実際のカメラのレンズではピント位置を前後させると画角(焦点距離)が微妙に変化しますし、絞り値(F値)を変化させればピンぼけ箇所のボケ味が変わります。このような実際のレンズで起きる現象を再現できるのが YEBIS が提供するポストエフェクトの特徴です。
では YEBIS でピンホールカメラ(トイカメラ)のような極小径絞りのF128を設定するとどうなるでしょうか。F128のような状態では極めて小さい口径の光学系となるため被写界深度は深くなりますが、絞り機構における入射光の回折の影響が支配的となり光学的な解像度が低下します。これが口径の小さな光学系特有の「小絞りぼけ」という現象です。YEBIS では、こうした光学現象も正確な光学シミュレーションの結果として再現できます。
さらに絞り値(F値)、ピント(フォーカス)位置、レンズの焦点距離(f)といったパラメータはリアルタイムに変更できるので、スパイカメラがズームイン/アウトを繰り返しながらせわしくピントを合わせるといった映画などで見られる演出も、YEBIS ならば実際のカメラで撮影しているかのような雰囲気を表現できます。
YEBIS のレンズ・シミュレーションは、被写界深度表現を生み出すだけでなくその他の光学的効果も再現します。例えば、撮影レンズの筒の長さと直径、そして絞り値などのパラメータの与え方によっては「周辺減光」(ビネット:Vignetting)を再現できます。
周辺減光とはカメラのレンズで撮影した映像/写真の外周が中央部よりも暗くなる現象で、長い筒(鏡筒)に小口径のレンズをはめたことで起こる鏡筒自身によるケラレが原因です。結果だけ見るとレンダリング結果の映像を、ただ丸い黒マスクで抜いているだけかと思われそうですが、YEBIS では光学的に発生する周辺減光をシミュレーションして再現しているのです。
より一層のフォトリアルを実現するために
YEBIS では、ほかに類を見ないユニークな光学系ポストエフェクトを取り揃えています。
レンズなどの光学系は机上で設計しても現実的には理論設計通りに機能してくれない場合があります。実際のレンズはプラスチックやガラスなどで出来ているため、やってきた光は界面で屈折し、場合によっては分光(分色)したりしてしまうからです。
YEBIS は、そうした現実世界のレンズの、いわば「嫌な特質」までを再現することができます。
「色収差」(Chromatic Aberration)の表現は分かりやすい例です。
光は色によって波長が違うということを知っている人も多いことでしょう。波長が違えば屈折率が異なってくるのでレンズを通り抜けた光はその界面で各色ごとに焦点位置が変わり、その結果として分色してしまいます。すなわち、レンズで撮影された映像は色ズレを含むことになります。現実世界の撮影レンズでは「異常分散ガラス」といった高級素材を使って色収差を軽減させる工夫をしていますが、YEBIS では、そうではないレンズで撮影したような色収差"大"の映像を作り出すことも可能です。
また、ただ一様に色ズレを引き起こすだけでなく、倍率色収差と呼ばれる映像の外周に行けば行くほど色ズレ具合が大きくなる表現にも対応しています。うまく使えば普及価格帯のレンズで撮影したような雰囲気や分厚いガラス越しに情景を見たような映像効果を出せることでしょう。
YEBIS があえて再現する「レンズの嫌な光学特質」としては「レンズディストーション」(歪曲収差)も挙げられます。歪曲収差とは、映像の外周に行けば行くほど膨らんだり萎んだりしてしまう光学現象です。
歪曲収差のなかでも、膨らむ歪みは「樽型歪み」、萎む歪みは「糸巻き歪み」と呼ばれ、実際のカメラや撮影レンズではこれが少ないほどよいとされます。このため歪曲収差は使いどころがないように思われますが、実は「いかにもCG」的な不自然さを軽減させることに役立ちます。
CG映像は、仮想空間に展開した3Dモデルを視点(カメラ)からの視界で切り取った2Dフレームに投射して描画します。この「3D→2D変換」ともいえる工程が「透視投影変換」です。この透視投影変換は描画される映像の外周になればなるほど地図のメルカトル図法のように面積が広く描かれてしまうのですが、ここにあえての歪曲収差の効果を与えると映像外周の間延びを軽減する効果を生み「いかにもCG」という感じが消えて実際の視界に近い見え方になります。
YEBIS による「レンズの嫌な特質」の再現は、アイディア次第ではレンダリング結果に対し、より一層の「フォトリアル」効果を付加する手段として効果的です。