特集
競争に勝てるブランディング、ポジショニング
ポジショニング[3]とは、もっとも自分が戦いやすい場所に身を置くことを言う。どんな製品やサービスを準備するかの前に、どこで戦うのかを決めることを先にやらなければならない。戦う武器(製品の品質や差別化点)も戦う相手によって変わってくるし、戦い方(マーケティング戦略......広告戦略、セールスプロモーション戦略、価格戦略、流通チャネル戦略)も立ち位置によって変わってくる。まず、競争視点をどこに置くかを決める=ポジショニングからはじめなければならない。
ポジショニングステートメント
- Market Target Definition
- (参入市場定義)
(できるだけFocus、少なくとも3番以内に入れるように)
「誰のための、どんな市場(カテゴリー)か」を定義 - Frame of Reference
- (誰が敵なのか)
倒すべき敵の定義 - Point of Difference
- (差別化点)
機能に加え情緒便益、自己便益(自己実現まで)
この3つの中でも、最初のMTD「参入市場定義」が大変に重要である。ここの「誰のための何」は、あなたのブランドが、ターゲット消費者あるいはターゲットユーザーにどのくらいきちんと認識してもらえるのかを、あなたの企業の実力でどう効率的にできるかを決める。「誰のための」も、しっかり焦点を当てて絞ることが肝心である。小さすぎるくらいでちょうど良い。後述の「ブレンディスティック」が良い例である。また、「何」は、カテゴリー、つまり参入市場であるが、これも3番目以内に入るようなフォーカスしたものにしなければ、人の記憶に残れない。
「ブレンディスティック」はポジショニングのMTD「参入市場定義」を、「オフィスで働く女性のための......」とターゲットをうんと絞っている。オフィスで働いている人以外のためではありませんと言ってるくらい絞っているが、実際は家庭の主婦も若い男性も買っている。また、市場定義は「ほっとくつろぐ時のリラックス飲料」というように、ほっとひと息つく時にだけ飲んでね、とまたオケージョンを絞っている。だから、この飲み物は何なのかが、広告を見ただけで分かる。電車の額面広告では、オフィスで働く女性と「好きなときに、さくっと作れるカフェオレ、働く女子の味方だよね♥」「オフィスでスティックブレイク!」のキャッチコピーが並び、電車の中でちょっと見てもはじめての人でも誰のための何かは、すぐわかる。
次にFOR(敵の定義)をしなくてはならない。敵である競争者は、(図表7)のマイケル・ポーターのファイブフォーシス(5つの力)に表されるように、同業社だけでなく、5つの要素がある。マクドナルドの最大の敵は、代用品にあたるセブンイレブンのお弁当。今やコンビニの高級フライドチキンがヒットし、ケンタッキーフライドチキンはどうなるのか。競争者は、最大の競争者を定め(定義)なければならない。
そして最後はPOD(差別化点)を抽出する。差別化点は、ターゲット消費者、ターゲットユーザーから見て、コピー商品ではなく、はっきりと違った価値を持っていなければならない。そうでなければ、これまでの物を変える必要など感じない。前にも申し上げたように、機能面での差別化はほとんどの分野でわずかであり、いかに情緒的便益、自己表現便益で差別化を図るかが問われている。したがって、差別化点は、機能的便益+情緒的便益+自己表現便益のミックスにならざるを得ない。その好例のひとつがサントリーの緑茶ペットボトルの「伊右衛門」である。最大の差別化点は機能(お茶としてのおいしさ)ではなく、江戸時代からの京都の伝統的なお茶の老舗の創業者、というブランドの文化的背景、茶道の頂点というブランドの源泉、起源を味わうという情緒的便益をつくり上げている点。機能で勝る「おーいお茶」とは違う、強力な土俵で勝負している。
もうひとつ、差別化点で優れた商品は、ユニリーバ社のブランド「ダヴ」である。「ダヴ」はもともと肌に優しい石鹸として誕生し、現在はクレンジングクリームからシャンプーまで多くのラインイクステンションを持っているが、そのブランドストレッチ(部門拡大)が成功した最大の理由は、どの製品でも約束として「モイスチャークリームが入っているので肌に優しい」という差別化点。おそらく機能的便益40%+情緒的便益60%のミックスがほかにない(よく垢を落とす、のではなく、ふけをとるのでなく、肌に、頭皮に優しい)差別化点を形成できたことによると考えられる。
footnote -[3]
ポジショニング
(Positioning)
ブランドマーケティング戦略の4基本戦略に、ポジショニング戦略、プロダクトコンセプト戦略、マーケットセグメンテーション戦略、マーケティングミックス戦略があり、中でもポジショニング戦略は最上位概念である。参入市場定義(Market Target Definition: MTD)、倒すべき敵の定義(Frame of Reference: FOR)、差別化点(Point of Difference:POD)をポジショニングステートメントと呼んで、ブランドのマーケティングドキュメント上、もっとも重要な文書とされる。