無痛性甲状腺炎の症状

 症状は、そのほかの甲状腺機能亢進症の症状と同じで、甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を活発にするホルモンのため、甲状腺ホルモン過剰の状態では、一見生き生きとして皮膚のツヤもよく、元気そうに見えます。しかし、新陳代謝が異常に活発であるということは、エネルギーの浪費を意味しています。例えば、安静時でも、走っている時と同じくらいエネルギーを消費する程です。この理由から、とにかく疲れやすい、いつもゴロゴロしている、というのもこの病気の人に多い症状です。
 また、甲状腺ホルモンの過剰(甲状腺機能亢進症)の代表的な症状が動悸です。エネルギー代謝も症状として大きなものですが、動悸に伴う息切れも多い症状で、寝ていても動悸が気になって眠れないというケースもあります。

1、ホルモン産生型腺腫

①プロラクチン産生腺腫

 下垂体腺腫の約4割を占め、女性に圧倒的に多くみられる腫瘍です。女性では無月経と乳汁分泌がみられます。男性の場合は、性欲低下やインポテンツがみられます。大きくなると視野障害が出現することもあります。女性のほうが早期に発見されやすく、1cm以下の小さな腫瘍のことも多く、女性不妊症の原因のひとつとされています。

②成長ホルモン産生腫瘍

 腺腫の約2割を占め、男性にやや多くみられます。思春期に発症した場合は巨人症になりますが、これは比較的まれで、多くは成人に発症し手足の先端、額、あご、唇、舌などが肥大してきて末端肥大症となります。成長ホルモンの異常分泌が長期間続くと、糖尿病とそれに伴う高血圧などの血管病変を合併しやすくなります。

③副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫

 全下垂体腫瘍の数%とまれな腫瘍で、若年から中年の女性に多く、クッシング病とも呼ばれています。90%以上に肥満がみられ、特に顔は満月様に丸くなり、手足に比べて胸・腹が太る中心性肥満が特徴です。ニキビが出やすく、体毛が濃くなり、下腹部に青紫色のすじがみられます。また、高い割合で高血圧や糖尿病を合併し、精神症状が出ることもあります。


2、圧迫による症状

①下垂体ホルモン産生障害(汎下垂体機能不全)

 女性では無月経ないし不規則月経、男性ではインポテンツや性欲低下、体毛も薄くなります。また、易労性もありスタミナ不足となります。さらに、強い肉体的ショックが生じた際にショック状態からなかなか回復できないこともあります。また、抗利尿ホルモンが不足すると、薄い尿が多量に出る症状(尿崩症)がおきます。

②視力・視野の障害

 腫瘍が上方に拡大してきますと、直上にある視神経交叉部を圧迫しはじめます。まず、両目の上外側から見えにくくなってきます。さらに進行すると両目の外側半分が見えなくなってきて、両耳側半盲と呼ばれる典型的な症状となります。

③頭痛

頭痛もしばしば認められます。


無痛性甲状腺炎の検査(診断)

 バセドウ病ではTSHレセプター抗体が陽性となりますので、甲状腺機能亢進症であってもTSHレセプター抗体が陰性の場合は、無痛性甲状腺炎の可能性が大きくなります。
 しかし、無痛性甲状腺炎でもTSHレセプター抗体が一時的に陽性になるケースがあり、その時はバセドウ病との区別が難しいため、放射性ヨード摂取率の検査をする必要があります。この検査は1週間ほど海草類をとらないようにしてヨード制限をしてから、放射性ヨードを入れたカプセルを内服し、6時間あるいは24時間後に甲状腺に取り込まれた放射性ヨードの放射を測定する検査です。
 バセドウ病では放射性ヨード摂取率は高値になるのに対して、無痛性甲状腺炎では極めて低値になりますので見分けることができます。
 無痛性甲状腺炎であれば、最初は甲状腺組織の破壊のために、濾胞(ろほう)に蓄えられた甲状腺ホルモンが血液中にもれ出てきて、甲状腺ホルモンが高くなります。
 しかし、バセドウ病と異なりホルモンが過剰生産がンにんではありませんので、1〜2カ月すると甲状腺ホルモンは低下し、反対に甲状腺機能低下症になります。甲状腺機能低下症は2〜3カ月でおさまり、通常はもとの正常な甲状腺機能にもどります。ただし、20%くらいの症例では、そのまま永続的な甲状腺機能低下症になりますので、最後まできちんと経過をみることが重要です。


無痛性甲状腺炎の治療

 無痛性甲状腺炎は自然に改善する病気です。
バセドウ病の薬はホルモンの合成を抑える薬ですが、この病気はすでに作って蓄えられたホルモンが漏れて出てくる病気のため使用しても効果はありません。

 また、無痛性甲状腺炎に対してバセドウ病の薬を使用すると、ホルモン低下時期により低下症が強くなります。
 ホルモンの高い時期は動悸や震えを抑えるための交感神経β受容体遮断薬(βブロッカー)等を使います。低下の時期は、甲状腺ホルモン剤(チラージンS)を用います。