巷には、様々な自己啓発本があふれています。どれも実践的で役に立ちそうで、愛読している人も少なくないと思います。それに「待った」をかけるのが、日経ウーマンオンラインの連載でもお馴染みの、福沢恵子さんと深澤真紀さん。自己啓発本との付き合い方を語ってもらいました。
福沢恵子さんさんは、人気連載「“負けない組”で世の中を渡っていきましょう」の筆者で、女性の就業問題を追い続けているジャーナリストで、深澤真紀さんは「草食男子」の名付け親であり、新連載「ニッポン女児論」でもお馴染みのコラムニスト。「新生活を迎える今だからこそ、日経ウーマンオンラインの読者の皆さんに、ぜひとも言っておきたいことがあります!」という言葉から始まった緊急企画です。5回にわたってお届けする「後輩働き女子に向けたおせっかい(!?)対談」のテーマは自己啓発本。自分をすり減らさずに長く働くための言葉もたくさんいただきました!
自己啓発本は誰のためのもの?
深澤:新生活が始まって1カ月。環境が変わったことでそろそろ五月病を心配する人もいたりして、こういうときは、英会話やダイエットを始めたり、自己啓発本を読んで自分の問題を解決しようとする人が多いですよね。
そこでこのタイミングで皆さんにお伝えしておきたいことがあったんです。
福沢:なるほど。で、具体的にはどんなことでしょう?
深澤:それは、「自己啓発本に気をつけろ!」ということですね。自己啓発本は読むと面白いんですが、「朝の通勤10分で英語が話せるようになる」とか「りんごだけ食べてダイエットする」のように、内容が極端すぎてその方法が合っている一部の人にしか有効じゃないと思うんです。
自己啓発本とうまくつき合うのって、むずかしいですよね。
福沢:それは、自己啓発本というものが「本を書いた人のキャリア形成のため」であって、「読む人のキャリアや人生を向上させるものではない」からでしょう(キッパリ!)。
深澤:いきなり身も蓋もないですね(笑)。そこまで冷めた目線じゃなくても、客観的に自己啓発本を読む姿勢が大事だと思います。
私自身、編集者としても著者としても――自分では自己啓発本とは思ってないけれど――自己啓発本的な本を手掛けたことは何度かあります。そのときに考えるのは、書いた人間はその方法で成功したのだろうけれど、読者全員に効果がある方法はないだろうということです。
福沢:人それぞれ生きている前提が違いますしね。
深澤:実家がお金持ちとか、容姿や才能に恵まれているとか、持って生まれた条件があって、その上に努力して、ようやく成功するわけじゃないですか。それを真似するにはDNAから変えなきゃいけない。
福沢:確かに。それを言ってしまったらそこでおしまいかも(笑)。
深澤:草野球をやっている人が、イチローの本を読んだら面白いだろうけど、あまりにも差がありすぎて自分のプレーにはそんなには参考にならない。
もうやめてるらしいですけど、イチローが毎日必ずカレーを食べるからといって、草野球をやってる人は「よし! カレー食べてイチローみたいに打ちまくるぞ!」とは思わないでしょう。カレーが、イチローをイチローたらしめた理由ではないからです。
それなのに、多くの自己啓発本は、「カレーが成功の秘訣です」と自信満々で提示してきたりするから注意しなきゃいけないんです。読者がそれを鵜呑みにして、「そうかカレーか!」と食べ続けたりしてしまう。
福沢:それは、繰り返すようですが「自己啓発本は他人を成功させるためのものではない」からですよ。基本的に自己啓発本の著者が本を書く目的は、印税を稼いで、あわよくば世間的な知名度を得て「自分が経済的に豊かになり、成功する」ことですから(笑)。もちろん全員がそうだとは言いませんが。
考えてもみてください。誰でも成功する方法をたかだか1000円とか1500円の本にして売ると思いますか? そんな方法があったら誰にも教えないで自分が一人勝ちするほうが絶対いいじゃないですか。「私のようになりなさい」「こうやったら私のようになれる」といったロジックはほとんど詐欺に近いです。
深澤:成功者が成功の秘訣を明らかにするはずはないから、自己啓発本には本当のことは書いてないと?(笑)。
福沢:はい、そのとおりです!