研究成果

ロジウム錯体と第三級アミンをシリカの表面に固定した触媒(SiO2/Rh-NEt2)を開発し、この触媒がオレフィンのヒドロシリル化反応[用語1]に極めて高い活性を示すことを発見しました。触媒1分子が何回目的の反応を進行させたかを示し、活性の指標となる触媒回転数(TON)[用語2]を計測したところ、24時間で最大1,900,000回に達することがわかりました。この値は、これまでに報告されている他の固定化ロジウム触媒と比較して、一桁高い値です(表1)。

表1. 本研究で開発した触媒と既報との活性比較

触媒
反応時間(h)
触媒回転数(TON)
SiO2/Rh-NEt2(本研究)
24
1,900,000
MOF-Rh(論文1※1
72
820,000
SiO2/Rh(論文2※2
10※3
200,000
※1
Sawano, T.; Lin, Z.; Boures, D.; An, B.; Wang, C.; Lin, W. J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 9783-9786.
※2
Szubert, K.; Marciniec, B.; Dutkiewicz, M.; Potrzebowski, M. J.; Maciejewski, H. J. Mol. Catal. A Chem. 2014, 391, 150-157.
※3
1時間の触媒反応を10サイクル実施

この発見によって、有機ケイ素化合物の合成に必要な貴金属触媒の量を大幅に低減することができます。反応には溶媒が不要であり、図1に示すように、生成物/触媒比=1,900,000の条件では液体の生成物以外にわずかに触媒が存在するのみとなります。生成物/触媒比=260と比較すると、ロジウムに由来するオレンジ色が目視では確認できないほど触媒量が少ないことがわかります。

オレフィンのヒドロシリル化反応では、原料となるオレフィンとヒドロシランの構造を様々に変えることで、必要に応じた構造の有機ケイ素化合物を合成することができます。本研究で開発した触媒を用いて様々なオレフィンとヒドロシランの反応を行ったところ、いずれも高収率で対応する生成物が得られることがわかりました(図2)。例えば、シリコーン骨格(ケイ素―酸素―ケイ素結合)を有するヒドロシロキサンや、生成物からの官能基変換が可能なシアノ基(CN三重結合)やエポキシ基(炭素―酸素―炭素の三員環)をもつオレフィンの反応も良好に進行しました。

図1. 生成物/触媒比=260および1,900,000での反応溶液の様子。
触媒が極微量でも十分に生成物が得られるため、クリーンな状態(右)となる。

図2. 様々な構造のオレフィンおよびヒドロシランを用いたときの生成物収率(括弧内は要した時間)。
様々な構造の有機ケイ素化合物を99~76%と高い収率で得ることができる。

シリカの表面にロジウム錯体とアミンを同時に固定することで高い触媒活性が発現していることを見出しました。用いるロジウムの量を一定にして触媒反応を行い、それぞれの触媒の活性を比較した結果を図3に示します。Rhのみ固定した場合(SiO2/Rh)、11%であった収率が、Rhとアミンを同時に固定化することで88%まで向上しました。一方で、ロジウムとアミンのシリカ表面への固定を逐次的に行うと、ロジウムから固定した場合は86%に、アミンから固定すると59%まで収率が低下することがわかりました。つまり、ロジウムやアミンを別々に使うのではなく、2つを同時に固定する方法を発見したため成功につながったのです。

そこで、各触媒において、シリカ表面に存在しているロジウムの局所構造を高エネルギー加速器研究機構においてX線吸収微細構造(XAFS)[用語3]測定を行うことで解析しました。図3で示した4種類の触媒のRh K-edge 広域X線吸収微細構造(EXAFS)[用語4]スペクトルを図4に示します。いずれの触媒においても振動パターンがほぼ完全に一致しており、これらの触媒に含まれるRh周辺の局所構造(Rhに最近接している原子の種類・数・距離など)は同一であることが支持されました。スペクトルの詳細な解析によって明らかになった触媒表面の構造を合わせて図4に示します。

図3. アミンの有無およびロジウムとアミンの固定化順序が生成物収率に与える影響。
同時にロジウムとアミンを固定化することで高活性が得られる。

図4. (左)触媒のRh K-edge EXAFSスペクトル / (右)XAFS測定等によって明らかになったSiO2/Rh-NEt2触媒の表面構造

以上の結果から、(1)ロジウムとアミンの協奏的触媒作用によるヒドロシリル化反応の促進、および(2)ロジウムとアミンの固定化手法(順序)による両者の位置関係の変化による活性の変化が示唆されます。