KASEN TOPICS

No.20
最近の機能性化合繊素材における「健康・快適性」の表示と薬事法について
はじめに
「快適で健康な生活」への社会的ニーズに対応して、快適・健康・衛生面を向上させた機能性繊維素材・製品が開発されています。ただし、これらの性能を表示する場合に、身体への効能効果を記載することは医薬品、医療用具に該当することとなり、薬事法違反となる場合があります。このため、薬事法の内容をよく理解することが重要です。
2004年2月に大阪府健康福祉部薬務課より、機能性化合繊素材における「健康・快適性」の表示について説明を受けましたのでその内容をご紹介します。

1.薬事法の目的と化粧品・医療用具の定義
(1)目的
(薬事法 第1条)
この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、医療上特にその必要性が高い医薬品及び医療用具の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。
(2)化粧品・医療用具の定義
■化粧品の定義
この法律で化粧品とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布、その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされる物で、人体に対する作用が緩和な物をいう。
ただし、これらの使用目的のほかに、第1項第2号又は第3号に規定する用途に使用されることもあわせて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
■医療用具の定義(薬事法 第2条第4項)
この法律で医療用具とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている器具機械等であって、政令で定めるものをいう。
 2.薬事法による広告規制
(1)薬事法における医薬品等の広告の該当性
  (次のいずれの要件も満たす場合)
・ 顧客の誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
→学会等での論文は広告には含まれない。
(あくまでも、学会での発表の場合で、論文の資料を一般の雑誌やチラシに使用した場合は、広告に該当する。)
→新聞記事も基本的に広告に含まないが、対談形式である場合などは広告になる。
(記者が申請品等の説明や、商品の紹介として記事として載せる場合のみ認められる。ただし、内容が明らかにメーカーからの広告となるような場合は広告物として取り扱うことになる。)
・ 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
・ 一般人が認知できる状態であること
(平成10年9月29日 医薬監第148号 厚生労働省医薬安全局監視指導課長通知)
(2)誇大広告等
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療用具の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療用具の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療用具に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
(3)承認前の医薬品等の広告の禁止
第六十八条 何人も、第十四条第一項に規定する医薬品又は医療用具であつて、まだ同項(第二十三条において準用する場合を含む。)又は第十九条の二第一項の規定による承認を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
(4)衣料・繊維関係の考え方
・ 事実は可能(○○加工、△△配合)
ただし、雑貨に医療的な効能効果を標榜すると薬事法に抵触する可能性がある
(例:マイナスイオン加工→血液サラサラ)
→「血液サラサラ」が“医療的な効能効果”に当たる。
・ 客観的データによる裏づけが必要
不当景品類及び不当表示防止法(略称:景品表示法)など
・ 「一般的事実=製品の効能」とは言えない
化粧品や医療用具と同等の効能は得られない
(例:温泉成分配合→リウマチや神経痛を緩和)
→データがあっても問題がある。
 3.具体的な事例
(1)遠赤外線関係
 対象:遠赤外線を放射する旨標榜するセラミック付きの、マット/カーペット/サポーター/肌着(炭・トルマリンなどによるものも含む)
・ 人体に対する効能効果等を標榜するものは、医療用具に該当する
→“効能効果等”=「血行が良くなる」「肩こりが治る」など
・ 単なる保温効果等のみを標榜するものは、医療用具に該当しない
→“保温効果”のみであれば問題ない。
(2)ガーゼ類
・ 創傷面の保護(傷口を保護する)など効能効果等を標榜するものは、医療用具に該当する
→傷口に触れるものは基本的に医療用具に該当する。
・ 効能効果等を標榜しないものは、医療用具に該当しない
*ガーゼに殺菌消毒剤等の医薬品を吸着させたものは、医薬品に該当する
(3)靴下(銅線入り)
・ 靴下の繊維中に銅線が入っていたり、銅粉が塗布されているもので、銅イオンの効果により人体に対する殺菌効果(水虫=白癬菌の治療、予防または幹部の殺菌、消毒効果)などの効能効果等を標榜するものは、医薬品に該当する
*作用する物質が患部等に直接接触して効果を発揮するものは医薬品であり、物質から放射するものが作用して効果を発揮するものは医療用具である
(4)サポーター、コルセット等(腰痛の緩和等)
 対象:適用部位を強く圧迫するような材質等のものについて
・ 腰痛等に対する効能効果等を標榜するものは、医療用具に該当する
→「腰痛を改善します」「骨盤のゆがみを改善します」「外反母趾を改善します」などと標榜する場合は医療用具に該当する。(あくまでもサポーターとしての表現しか現在のところは難しい)
・ 効能効果等を標榜しないものは、医療用具に該当しない
■「つぼを刺激して血行を良くする」などの表現は、実際の指圧と同じ効果であることが明確であれば良い(データがあるなど)。
なお、雑貨における“指圧”効果については、認可の必要はない。
■効能効果に当たる用語(医療用具に該当する)
「疲労回復」「冷え性」「ダイエット」「便秘」「肩こり」
『ストレス(ストレスのみだと心身症等の改善につながり効能効果に該当するため、リラックス、リフレッシュ等の気分的に楽になるような表現がよい)、快眠』は効能効果にならない
(5)ストッキング(むくみの防止)
 対象:脚部を強く締め付ける構造のストッキング類について
・ 動脈瘤等の効能効果を標榜するものは、医療用具に該当する
・ 効能効果等を標榜しないものは、医療用具に該当しない
■「むくみを改善する」や「むくみにくい」などの表現は指導の対象となる可能性が高い。
(6)床ずれ防止マット(褥瘡の治療)
・ できてしまった床ずれが治るなどの効能効果を標榜するものは、医療用具に該当する
・ 作用機序を明示し、この作用機序により床ずれ防止の一助となることを標榜するものにかぎり、医療用具には該当しない
*「床ずれ防止」の標榜は認められる
→「床ずれを改善する」は問題あり。“防止”までなら問題ない。
また、「褥瘡」は病名のため、医療用具でないと表現が難しい。褥瘡の後に(床ずれ)を併記すれば可能な場合もある。
(7)毛布(マイナスイオン効果)
 対象:肌との摩擦によりマイナスイオンを生ずる繊維について(トルマリン加工なども含む)
・ 効能効果等を標榜するものは、医療用具に該当する
→「血行促進」「血液サラサラ」は効能効果に当たる(医療用具に該当する)
・ 保温を目的とするものは、医療用具に該当しない
■“心”の癒しは問題ない
気分を爽快にする「リフレッシュ」「リラックス」程度の表現は問題ない。
「癒し」のみの表現では、身体を癒すのか、心を癒すのかが明確でないため、問題がある。
 4.まとめ
衣類やマット等であっても、効能効果を標榜すれば医薬品(医療用具)に該当する。裏づけのデータがあるないにかかわらずできるだけ、業界団体で自主基準等を作成し対応することが望ましい。
 [参考]その他の具体的な表現例
(1)弱酸性の成分を使用した素材、pHコントロール素材
・ お肌にやさしい弱酸性
効能効果に関する表現が含まれないので問題ない。
・ 生地pHを肌自身のpHである弱酸性に保ちます
生地に限定されているので問題ない。
・ pHコントロール効果
生地への効果なのか、身体への効果なのかが不明確。前後の文章を含めた判断となる。
(2)ビタミンC等の成分を配合した繊維(美白・保湿効果)/低刺激性素材
・ 美白効果があると言われているビタミンCを配合した繊維素材です
× 美白効果をうたう場合は医薬部外品となる。
・ 老化防止効果があると言われているビタミンEを配合した繊維素材です
× 老化防止効果をうたう場合は医薬部外品となる。
・ 肌に潤いを与える成分を付加しました
化粧品との違いが説明できないことから問題があるとの意見が多い。使わない方が良い。
・ 保湿の成分を繊維に付着していますので、繊維中に潤いを保ちます
繊維についての表現なので問題ない。
・ お肌に敏感な方、一度お試し下さい
効能効果に関する表現が含まれないので問題ない。
・ お肌にやさしくいたわり、なめらかな肌触りと快適性が特徴です
効能効果に関する表現が含まれないので問題ない。
■「抗酸化性」の表現は“お肌”などについて使用するのは「老化防止」と同じで問題がある。「抗酸化性繊維です」など、繊維そのものについて抗酸化性をうたうことは問題ない。
■健康・快適性素材での「○○成分が汗や皮脂に溶けて皮膚から吸収される」などの表現は、成分に医薬的な効果がある場合は問題がある。化粧品的な効果はグレーゾーンであり個別に薬務課に相談する必要がある(現状では避けた方が良い)。
(3)ダイエット効果(スリミング効果)成分を配合した繊維(やせる繊維)
・ 脂肪分解・燃焼・吸収抑制作用のあるラズベリーの香気成分である「ラズベリーケトン」を繊維中に配合した素材です
× 繊維製品でやせる効果(ダイエット効果、スリミング効果等)は認めていない。
・ 体脂肪燃焼促進効果のある素材
× 繊維製品でやせる効果(ダイエット効果、スリミング効果等)は認めていない。
・ 着用することで痩身効果が期待できる
× 繊維製品でやせる効果(ダイエット効果、スリミング効果等)は認めていない。
・ 着るだけでやせる効果が期待できる
× 繊維製品でやせる効果(ダイエット効果、スリミング効果等)は認めていない。
■ストッキング等で、着用することで物理的な作用により“細く見える”ということが事実であれば「スリミング効果」等の表現は可能。成分による効果をうたう場合は、医薬品となる。なお、サウナスーツ等で汗をかくことで痩せるといった表現も問題ない。
(4)癒し素材(リラックス/リフレッシュなど)
・ リラックス効果があります
気分を爽快にする「リフレッシュ」「リラックス」程度の表現は問題ない。
・ リフレッシュ効果があります
気分を爽快にする「リフレッシュ」「リラックス」程度の表現は問題ない。
・ 「マイナスイオン」と森の成分「フィトンチッド」で心身リフレッシュ
原則として“身体への癒し”に当たる表現は認めていないが、「心身リフレッシュ」程度の表現については指導していない。
・ この商品にはアルファー線を出す繊維を使用しております
効能効果に関する表現が含まれないので問題ない。
・ アルファー線によりリラックスします
気分を爽快にする「リフレッシュ」「リラックス」程度の表現は問題ない。
・ アルファー線のリラックス効果により快適です
気分を爽快にする「リフレッシュ」「リラックス」程度の表現は問題ない。
・ この枕には体によいと言われる木炭を中材に使用していますので、快適な睡眠をお届けします
効能効果に関する表現が含まれないので問題ない。
(5)保温素材(遠赤外線放射素材など)
・ 遠赤外線で、からだを暖かく包みこむ
保温効果については基本的に問題ない。
・ 遠赤外線(放射)により体を暖かくします
保温効果については基本的に問題ない。
・ 繊維自体が暖かくなる保温機能(効果)があります
保温効果については基本的に問題ない。
・ この商品にはトウガラシの成分であるカプサイシンを練り込んだ繊維を使用しています。カプサイシンが体を(芯まで)暖めます
保温効果については基本的に問題ないが、「カプサイシン」と成分を書いていることについてはやや問題がある。また、「芯まで」の表現は事実でなければ、景品表示法での問題となる。
(6)その他
・ 「○○」成分が汗や皮脂に溶けて皮膚から吸収されます
× 「○○」が医薬的な効果のある成分の場合は、問題があるケースもある。
化粧品的な効果はグレーゾーンであり、個別に確認する必要がある。(現状では避けた方が良い。)
・ この靴下着用により、一晩でかかとツルツルになります
× 成分によって「かかとツルツルになる」場合は医薬部外品となる。
成分によるもの以外で事実であれば問題ない。
・ 人体に悪影響を及ぼすと言われている繊維上の静電気を軽減します
× 「人体に悪影響を及ぼすと言われている」の表現は問題がある。「繊維上の静電気を軽減します」のみであれば問題ない。
・ 繊維上の○○菌(白癬菌等)の増殖を抑えます。(具体的な裏づけを合わせて表示する)
× 病原菌(白癬菌等)を記載することは出来ない。白癬菌の場合は水虫予防となる。
・ 有害な物質「○○」の発生を抑えます
「○○」の部分が病原菌の場合は問題がある。そうでなければ問題はない。
・ この繊維は有害な物質「○○」を消滅させる機能があります
「○○」の部分が病原菌の場合は問題がある。そうでなければ問題はない。ホルムアルデヒド等の吸着・分解などは問題ない。「シックハウス対策」等の表現も基本的に問題はないが、全体の内容からの判断となる。
・ 衛生効果があります
問題ない。
■空気清浄機(家電)で殺菌をうたった製品があり、一部で病原菌を対象としている場合もあるが、この表現に問題があるかどうかについては、現在、調整段階である。なお、現状ではどのようなケースでも、病原菌を表現すると薬事法の対象となる。
(2004年8月掲載)