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「つげ櫛」って一体どういう櫛?
童謡・こぎつねの中でも取り上げられている「つげのくし」。古来より美女の必需品として愛され続け、今でも根強い人気を誇る日本の伝統工芸品です。
万葉集や新古今和歌集の中でも恋や愛の歌におけるキーワードとして登場しており、女性との強い関わりをうかがい知ることができます。
また、櫛と同音の「奇(く)し」「霊(くし)び」という言葉から、不思議なこと・霊妙なことに関連付けられることもあり、魔除けに使われることも。
古くから女性と女性の美しさを守ってきたつげ櫛。そんなつげ櫛が近年再び静かなブームを巻き起こしています。
つげは高い密度と弾力性を持つ、かたくしなやかな木材です。その性質から、つげで作られた櫛は歯が折れにくいとされています。
つげ材はその性能を増すために、伐採から年単位で乾燥させてから使われます。完成した素材は櫛の形に注意深く削り出され、髪を傷めないよう櫛の歯や歯の根元を磨き上げられます。
こうして1つのつげ材から作り出されたつげ櫛は、髪に良いとされる椿油に何度も浸け込まれた後に店頭に並びます。
つげ櫛そのものが持つ櫛としての性能と、椿油のトリートメント成分。両者の持つ美髪を作る効果は非常に高く、今も昔も多くの女性に愛されています。
また、その粘り強い材質ゆえに頭皮へのマッサージ効果も高く、健康な地肌と髪を作るのに役立ちます。
では、つげ櫛を使うと得られる効果とは具体的にどのようなものなのでしょうか。つげ櫛の選び方や使う上での注意点、お手入れの方法なども併せてご紹介します。
椿油の効果で髪がサラツヤに
つげ櫛の仕上げやお手入れに使用される椿油は、1000年以上の歴史を持つ油です。オリーブオイル、ホホバオイルと並んで世界3大オイルに数えられています。
汎用性が高く、化粧品以外にも薬用や食用、工業用など、様々な目的に使われています。珍しい用途としては日本刀や木製品の磨き油など。
そんな万能オイルである椿油。髪はもちろん、顔や体にも使うことができます。ネイルオイルとしても非常に優秀です。
椿油はツバキ科ツバキ属の花であるヤブツバキの種を圧搾、あるいは溶剤抽出して作るオイルです。学名は”Camellia japonica”。日本を象徴するような名前ですね。
ややとろみがあり、滑らかな油で、酸化しづらい性質を持つオレイン酸を多く含んでいます。
オレイン酸はヒトの皮脂の半分弱を占めるため、椿油は非常に馴染みの良いオイルであると言えます。
椿油のメリットは肌馴染みの良さだけではありません。殺菌・抗菌作用のあるサポニンを豊富に含むため、ニキビ予防やにおい予防など頭皮のケアに大変適しています。
また、長く液体の状態を保持することができる不乾性のオイルなので、髪や肌から水分が蒸発したり摩擦が起きたりするのを長時間防ぎ、ツヤと潤いのある状態を保つことができます。
更に、椿油には紫外線を防ぐ効果もあり、髪の日焼け止めとしても使用できます。
つげ櫛には椿油がしみ込んでいます。つげ櫛で髪を梳かすと、同時に椿油をごく薄く塗り込むことになるわけです。
梳かすたびに椿油の美髪効果が得られ、更に紫外線まで防いでくれるので、日中のお手入れにもぴったりです。
静電気や摩擦熱が抑えられる
プラスチック製の櫛と、つげ櫛をはじめとする木製の櫛の最も大きな違いは静電気の起こり方です。金属に触れる前に木に触れると静電気が起こりにくくなることからも判るように、木材には静電気を放出する作用があります。
髪に静電気が溜まっていると、まとまりが悪くなったり顔に貼りついたりするだけでなく、髪のもつれや抜け毛、切れ毛や枝毛などの原因になってしまいます。
静電気の原因は髪同士や櫛、服との摩擦。髪をきれいにするためにブラッシングをしているのに、それがダメージヘアの元になってしまってはいけませんね。
つげ櫛には静電気の放出効果があるだけでなく、しみ込んだ椿油によって摩擦を抑える効果もあります。
美しい髪を保つために気をつけなければいけない物は静電気だけではありません。髪がこすれることによる摩擦熱も髪を傷める大きな原因です。
摩擦は髪が乾燥しているほど大きくなります。乾燥してキューティクルが開いてくると髪の表面がケバだつので、摩擦は更に大きくなります。キューティクルが開くと髪は傷つきやすくなるので、ダメージは更に深刻に。
掌でおろし金をこするのと、油をひいたフライパンをこするのとでは、どちらの方が痛くないでしょうか。当然後者ですよね。
潤滑油を挟むと、摩擦は軽減されます。髪も同じで、油分でコーティングしてあげると髪同士がこすれた時のダメージが軽減されます。
プラスチック製の櫛は油を吸収しないので、オイルをつけても均等に伸びなかったり、つけ過ぎて髪がべたついてしまったりします。
ですが、つげ櫛の原料は木材。適度にオイルを吸って、髪をきれいにコーティングできる量の油分を補給してくれるのです。
一生ものにするための注意点
つげ櫛に使われているつげ材は非常に優れた木材です。
そのつげ材で作られたつげ櫛は、正しく使えば何十年、それこそ一生使うことができます。
ここで最も注意したいのは、「つげ櫛に水を使わないこと」。
つげは水分を嫌います。つげは水分を吸うと歯が歪んだりふやけたり、櫛自体が反ってしまったりします。また、水がついた部分はツヤがなくなってしまいます。
濡れた髪に使用したり、水洗いしたりすることは絶対に避けましょう。また、整髪料に含まれる水分で櫛が変形するおそれがあるので、整髪料との併用も避けることをおすすめします。
汚れを取ったりお手入れをしたりする場合は水ではなく植物油を使いましょう。詳細は後述の「つげ櫛のお手入れ方法」をご覧ください。
つげは熱にも弱いことが知られています。
ドライヤーと一緒に使ったり、火気の近くで使用しないようにしましょう。
つげ櫛を使うのは髪を乾かして、冷風で引き締めてから。ヘアケアの仕上げとして使ってあげてくださいね。
つげ櫛に限ったことではありませんが、櫛は衝撃に弱い道具です。
確かにつげは丈夫な素材で折れや欠けに強いですが、あまり乱暴に扱ったり高い所から落としたりすれば当然折れます。
専用の櫛ケースなども市販されていますし、手作りする方も多いようです。持ち歩く際は歯の保護のためにもケースに入れておくのがおすすめ。
頑固な絡みがあったら無理に梳かそうとせず、まずは手ぐしでほぐしましょう。絡みを無理矢理梳かすと切れ毛の原因にもなってしまいます。
初めてのつげ櫛選び
よく見かけるつげ櫛に使用されるつげ材には、「本つげ」と「さつまつげ」がありますが、この「本つげ」は実は「本物のつげ材」ではありません。
本つげは主にタイなどから輸入される木材で、成長の速い「シャムつげ」を使用したものが大半です。比較的安価なものが多く、手を伸ばしやすいのが魅力です。
さつまつげ(薩摩つげ)はいわゆる「本物のつげ」を使用しています。名前の通り鹿児島県、特に指宿市などの南薩周辺で産出された上質なつげ材で、本つげに比べると値段が張りますが、キメが細かく均質で、弾力があり滑らかです。
鹿児島以外の国内で産出されたつげの場合も、販売時に「国産のつげ材使用」という表記があるかと思います。
初めて木製の櫛を使うという方は「本つげ」の櫛から初めてみるのも良いでしょう。
最初の1本はきちんとしたものが良い、という方は「さつまつげ」あるいは「国産のつげ材使用」の表記があるものを選んでみて下さい。
さつまつげや国産のつげ材を使用している場合、「さつまつげ」の焼印や、各店オリジナルの焼印を櫛に入れてあることが多々あります。
とはいえ、シャムつげでもきちんと手入れをしていれば相当長く使うことができます。大切なのはしっかりと手入れをすること。
つげ櫛の専門店の中には実店舗を構えているお店もあるので、足を運んでみるのも手です。直接職人さんがお話ししてくれる店舗もありますよ。
つげ櫛を選ぶ上でもう1点大切なのが櫛の種類と歯の間隔です。
つげ櫛には髪を梳く際に使う定番のとき櫛(とかし櫛)、分け目を作りやすいセット櫛、髪飾りとして使える花櫛、持ち手のついた手つき櫛、パーマをかけている方におすすめなつげブラシなど、様々な形があります。
まずはとき櫛を使って、つげ櫛の使い方に慣れることをおすすめします。携帯するのであれば小さい3寸や3寸5分のもの、家で使うならば長くて使いやすい5寸や5寸5分のものが良いでしょう。
ただし、櫛の長さが長くなるほど当然価格も上がりますので、その点は注意してくださいね。
つるりとした表面に仕上げられている一般的な櫛の他に、彫刻が美しい彫り櫛などもあります。彫り櫛の中には櫛を貫通して彫り込む透かしのものなど、様々なものがあります。
美しい彫り櫛は芸術的な観点から見てもとても楽しいですよ。
よく使われる歯の間隔は細歯、並歯、中歯、荒歯の4つ。
最も汎用性があるのは中歯。ゆるいウェーブやカールがかかっていても問題なく使うことができます。ヘアスタイルを頻繁に変える方や髪が太くしっかりした方に好まれます。
細歯は髪が細めの方、ストレートヘアの方向けです。髪が絡みやすい方は荒歯などでほぐしてから細歯で仕上げるときれいにまとまります。
並歯は細歯と中歯の中間程度の間隔で、こちらも軽めのウェーブやくせ毛であれば使用できます。
荒歯はウェーブやカールをかけている方に最もおすすめの間隔です。ソバージュなどの細かいパーマにも対応することができます。
細い歯よりも更に間隔の狭い梳き歯や極細歯、荒歯よりも更に荒い大荒歯などもありますが、これらは少々扱いが難しくなるかと思います。まずは一般的な間隔の櫛を使用してみるのが良いでしょう。
つげ櫛のお手入れ方法
どのような材質の櫛でもそうですが、使っているうちにホコリや汚れが溜まります。つげ櫛も例外ではありません。
また、何度も浸け込んでいるとはいえ、はじめに浸透させてある椿油には限りがあります。つげ櫛と椿油のトリートメント効果を最大限発揮するためにも、定期的に油分を補給しなければなりません。
つげ櫛の手入れに必要なのは植物性のオイルと布かティッシュ、櫛の歯の間や根本を掃除するためのハケや歯ブラシ、タコ糸や厚紙などです。
使用するオイルは椿油が一般的ですが、植物性オイルであれば好みのものを使用して問題ありません。アルガンオイルやあんず油なども人気があるようです。
普段のお手入れは植物性オイルを含ませた布やティッシュで拭くだけで問題ありません。
汚れが気になってきたら、しっかりと手入れをしてあげましょう。頻度としては月に1度ほどが望ましいです。
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深めの容器に油を張って櫛を浸け込むという方も居るようですが、こちらは櫛職人さんによっては推奨していない場合もあるようなので注意しましょう。
定期的にお手入れをしていると、つげ櫛は次第に飴色になっていきます。使い込んで綺麗な色に育てていくのもまた、つげ櫛の楽しみ方の1つです。
椿油おすすめ3選
先述した通り、日本で古来よりヘアケアに使われてきた椿油はツバキ科ツバキ属の花であるヤブツバキの種から作られたオイルです。
ですが「椿油」を謳っている商品の中には、ヤブツバキ以外のツバキ属植物で作られた「カメリアオイル」を使用しているものも多くあります。カメリアオイルは中国産や韓国産の物が大半を占めています。
両者ともツバキ属の植物を使用したオイルですが、この2つは別物として区別されており、また椿油の方がオレイン酸の含有量が高いという調査結果もあります。
カメリアオイルもヘアケア効果の高いオイルですので、どちらを選ぶかは自由。ですが個人的には椿油の方が髪への馴染みがよく、べたつきが少ないように思います。
国産のヤブツバキを100%使用した上質な椿油の使い心地は、するりと髪や肌に馴染む大変心地の良いものです。
ここではしっかりと産地が明記された国産の椿油の中から、おすすめのものを3つご紹介します。
顔の印象の半分以上は髪で決まる
ツヤのあるきれいな髪は人を若々しく美しく見せてくれますし、それだけで好感度があがります。
事実、顔の印象は6割、あるいは7割近くが髪で決まると言われています。印象の半分以上を決める「髪」、お手入れしない手はありませんよね。
何百年も前から日本女性の髪を美しく整えてきた椿油とつげ櫛。手が空いた時に髪をささっと梳かすだけでツヤのある元気な髪にしてくれます。
つげ櫛にはそのマッサージ効果によって地肌の血行を改善し、伸びてくる髪そのものを健康にするという効果もあります。
くせ毛や髪のうねりの原因の1つは頭皮の状態にもあり、地肌の血行やリンパの流れを良くすることでくせ毛が治まる場合もあるそう。
だからこそ、「つげ櫛を使うと髪がサラサラになる」と言われているのですね。
くせが少なく、きちんと手入れされた髪はまとまりも良くスタイリングもしやすいもの。
ふと触れた自分の髪がサラサラつやつやだと、何となく気分まで良くなります。
万葉の昔から数多の女性に愛されてきた「つげのくし」、ぜひ普段のヘアケアに加えて、天使の輪が見えるきれいな髪を手に入れましょう!