ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 自白剤デトックス2017年6月4日 03:49監督先生がみんなに愛されている展開が好きで勢いのままに書きなぐりました(反省の弁)たくさん絡むのは多分フルーチェさんと支配人。支配人×監督先生はいいものだとおもっている。監督先生総愛され大好き。※A3!初心者のためキャラクター掌握あまあまな部分がありますがご容赦いただければ幸いです。「誰ですか瓶ビールケースで頼んだの!」それは近年まれにみる大宴会のあとを思わせる光景で。「お帰りカントク。遅かったね」「東さん……何ですかこれもうあーあー缶もあっちこっちに……」「皆カントクを待ってたんだけど、変に盛り上がっちゃってね」「変にって」「知りたい?」「遠慮します……」朝から他劇団との打ち合わせやら何やらで外出していたいづみ。そうした所用を諸々済ませて、帰宅した現在の時刻は23時をまわったところ。「日付も変わってないのに何人か潰れてるってどういうことですかもう」「誉と密はいつものことじゃない」十字に折り重なって床で寝ているふたりを指さして苦言を呈してもにっこり微笑まれてはそれ以上の追求ができるわけもなくいづみは深く溜息を落として足元の缶を拾い上げた。「学生組はちゃんと寝ましたよね……?」「途中まで万里がいたよ」「まさか飲ませてないですよね!?」「外ではもうきっと経験してるよ。でもココでは監督に怒られるからさすがにね」「はーー……あと潰れてるのは誰ですか。 片付けますから東さんももう休んでください」拾い上げた数個の缶を近くの机に並べて一度キッチンの方に入り、ゴミ袋を引っ張り出してくるいづみ。「ボクも手伝うよ。カントクは皆に帰宅報告してあげて」「いやいやアルコール入った人はもう寝てください」これ以上悪酔いするのもだめですし。などと東の提案をやんわり断ろうとするいづみの背後にゆらゆらと揺れる頼りない影が近づいてくる。「カントク」「わ」「……お帰りなさい。ちょっと遅いから心配しました」「紬さん。すみませんただいま帰りました……顔赤いですよ」「……ちょっと、量をまちがえました」頬を上気させた切なげな表情の紬にまっすぐ見つめられて少し動揺したいづみだが、やはり紬の体調が気にかかる思いが先に立つ。「明日に障るといけませんから。 おすましでも作りますよ。それ飲んで寝てください」「……ん」「紬はさっきまでカントクのことでくだまいてすごかったんだから。ね?」「あ、東さん……!」「え……」自分のことで、などと言われれば当然気にかかる。しかし酒の席での愚痴などはきっと珍しいものではないしそうしたものを吐き出すデトックスの意味での飲み会でもあっただろう。それを掘り下げるのも野暮な話かもしれない。「か、カントクその。違うんです、俺、そんな、くだとか」「大丈夫ですよ紬さん。溜め込むのは体に毒ですから……! あ、でも何かあれば私は直接言っていただいて全然問題ないですからね!」ぽん、と紬の肩を笑いながら叩いてほかにおすまし飲むよっぱらいはいますか~などと呼びかけながら缶入りの袋を引きずって談話室を練って歩くいづみ。紬の顔はほぼ真っ赤に近くなっていたがそれが羞恥からのものかアルコールの影響かは判断しかねる。その横で、東だけがバツが悪そうに短く溜息を落とした。「……ごめんね紬。カントク相手に含みのある言い回しはよくなかった」「………いえ」当然というか色恋絡む話だったのだが。そこを察してもらうには相手が悪すぎた。紬もまた熱を持つ自分の頬を軽くたたいていづみの後に続いた。「お。お帰り監督」「臣君ただいま。ああごめんね片付け……」「いや俺らがとっ散らかしたんだしそりゃあ。 それより監督飯は食えたのか? ピラフの残りあるぞ」「わー嬉しい! けどさすがにこの時間から食べるとね……」「ハハ……まあ確かにな」「明日の朝いただくね……あとは私やるから、臣君ももう休んで」「いや、監督だって疲れてるだろ。一緒にやろう」「うう……主夫ありがたい……」がしょがしょと音を立てるまでになった袋の口を一旦結んで追加のゴミ袋を引っ張り出すいづみと小皿とコップであふれ返った流しに立って洗い物をはじめる臣。「まあこれも役得だしな」という一言は、換気扇と流しの水音にかき消された。「インスタントのおすましだけど臣君も飲む?」「いや、俺はここが終わったら寝るよ」「そっか。じゃあ紬さんと……あと何人分だろ」「一人分追加だ」「うわ!?」突然背後から耳元に囁かれいづみ持っていたプラスチックの器を落としてしまう。「……騒がしいな監督さん」「左京さんがいきなり声かけるからでしょ!」割れ物だったら大変でしたよこれ!とぷりぷりするいづみに、音もなく近づいた方の左京は溜息。「帰りが遅くなる時は連絡を入れろ」「……いや遅くってまだ日付も変わってないですし」「女が一人で歩くには遅い」「さ、左京さん私いちおう成人しておりまして」「いいから連絡を入れろ。さもなきゃお前の携帯を解約してキッズケータイにする」「はは。左京さんが言うと冗談に聞こえないな」「ほんとですよもう! わかりましたわかりました今度から電話します!」まったく。と引き出しからインスタントのすまし汁のもとをいくつか取り出しながら落とした器を軽く洗って並べ始める。「監督。戻ってたのか」「あ、丞さんただいま。丞さんもおすまし飲みます?」「もらう。あと、悪いが支配人を片付けるのを手伝ってくれないか」「はい?」「……泣き上戸だったらしくてな。カーテンにしがみついて離れない。面倒臭さの極みだ」「うわあ」「監督の名前をうわごとで呼んでる。来てくれれば動くかもしれない」「う、うわあ……」「監督声がドン引きだな……」ほんとしょうがない人だな。と心の声を隠しもせずに呟いて、つくりかけのすまし汁もそのままに手を拭いたいづみは丞に伴われて松川のもとへ向かおうとした。が「甘やかすな。俺が行く」「……え」「あっちか」「はい」「監督さんはそれを作っとけ。すぐ戻る」「ちょ、ちょっと待ってください左京さん! 乱暴は駄目ですからね!」「さてな」「左京さんてば!!」支配人はもう骨密度とか危ないんですからね!といういづみの声を背にうけてつかつかと行ってしまう左京。「……ああもう」「はは……さすがに左京さんでも暴力は振るわないだろ」「……いや、つってもあの人、本職だろ」「………」丞の言葉で一時的にシンとしてしまったキッチン。「……監督。お湯沸いたぞ」「う、うん……」「…………」ぴー。というやかんの音がその沈黙を破ってくれたが三人が共通して抱えることになった杞憂が晴れるでもなく。どうか支配人がいたずらに左京の神経を逆撫でするようなことにならなければいいが。そんなことを思いながらいづみはまず紬の分のすまし汁にお湯を注いだ。そうして寮の廊下の一角。辿りついた左京は腕組み仁王立ちのままカーテンにぐるぐるになって床に張り付いた松川を見下ろしていた。「……うぅ……監督……」囁かれたその呼びかけにイラついたのだろう左京は無遠慮に、床に転がるその天パ頭を蹴たぐる。「おい起きろ」「あだっ!?」「いい加減ガキじゃねえんだ。 いい年こいて酒の飲み方も覚えられねえのか」「う、うぅ……なんですか古市さん~~……」「何だじゃねえ」「ぼ、僕は大人ですよ~~! びびったりしませんからね~~!」「………」カーテンにしがみついたまま眼鏡もずれたままに意味不明なことを叫ぶ松川にいよいよ苛立ちがこみ上げてきた左京。「……おい。いい加減に」「古市さんはずるい! びっくりするほどずるいです~~!」「あぁ…?」本気の“何言ってんだこいつ”という目で松川を見下ろす左京。その目線に気付いているのかいないのか、松川の方のテンションは変化なし。「あんなに第一印象強面ヤクザで襲撃してきたのに…… いつの間にか入寮してるし……監督の信頼も厚くなってるし……」「………」「最近の古市さんは監督との距離が近いんですよ!! 僕は見ていてハラハラするんです~~~! へへへんなことになったら幸夫さんに顔向けできません~~~!」「……」げし、とあらためて天パ頭を蹴たぐる左京。「痛っ!? いった!?」「いつまでも下らねえことばかり叫ぶな。とっとと起きろ」「ぼッ僕は忘れてませんからね古市さん! あなたが劇場を取り壊しに来た時監督の腕を掴んで “お前が泡に沈んで返済するか”みたいなこと言ったの!」「………」酔ってるくせに変な記憶回路が繋がっているらしい松川の言葉にさすがに左京も眉をひそめる。「あのときは! よくあるヤクザの脅し文句だと思ってますたけど!」「……」「あそこでもしも監督が監督になってくれていなかったら~~~! 古市さんは監督を自分専用の高級泡嬢に仕立て上げたに違いないです~!」「…………」「いかがわしい! あまりにもいかがわしいです~~!! よかっ……ほんとに、監督がカントクになってくれてほんとうによかっ…うぅ…」「………………おい松川」テメェいい加減に。とひどくドスの効いた声が左京から上がった刹那「左京さん! おすまし冷めますよ!」まさに松川にとっては天の助けともいえるタイミングで登場したいづみ。彼女もまた、未だ床に転がっている松川の姿を見て眉をひそめた。「……あぁもう支配人まだそんな恰好してて! ちゃんと部屋で寝てください!」「か……かんと……うぅ……監督無事で帰って…よかっよか…た…うぅ……」「ほら支配人起きる! 鬱陶しいですよほら!」「か、監督が起こしてくれなきゃ起きません!」「めんどくさい! いくつなんですか支配人!」「めんどくさくないです~~! 僕は本気ですから~~!!」「……ああもう…!」はーーー、と今日イチ深い溜息を落としたいづみはぽすぽすと松川の天パを軽く叩いた後、左京を振り返る。「左京さんすみません。おすまし臣君がよそってくれるので。 先に談話室戻っててください。私はこの人置いてきますから」「監督僕はものじゃないので~~!!」「はいはいはいわかってますよ支配人は支配人ですねー」「うっうっ……」再びぽすぽす天パを撫でてやってよいしょと松川に肩を貸して立たせるいづみ。「……」本来ならばここで食い下がって“お前がそんなことをする必要ない”くらいは言う左京だったが正直な話先ほどの泡の話でやや動揺したのは事実だ。不本意ながら、松川がいづみに背負われていく様子を眺めるよりない。「…………」人知れず低く舌打ちして左京はそのままいづみに言われた通り、談話室へ戻っていった。そうして。松川の部屋で彼を横にするところまで持ってきたいづみはあらためて呆れた様子で溜息を落とす。「ほんとに……もうこれっきりですからね支配人」「……えぇ~…」「えーじゃない!」「……明日二日酔いで寝込まれてても困りますし薬持ってきますね」「あ……監督」立ち上がったいづみの服の裾を掴む松川。思いがけない挙動に、いづみの方も息を詰まらせる。「な、何ですか」「………あの、僕は」眼鏡の奥で潤んだ瞳と上気した頬。いつもとは違う雰囲気の表情は別に意識しなくとも不思議と緊張させられる。「……本当に、感謝、してます。から」「………支配人」「……祈るような思いで、手紙、出しましたから…」「……」「………さすが、幸夫さんのお嬢さん、だなって…」「……―――」へら、と笑うその顔。不覚にもきゅんとさせられてしまったことをいづみも今は否定できない。「……僕、役に立ててないです、けど」「そんなことないですよ」「……監督」「支配人には鉄郎さんの通訳っていう大事な仕事がありますし」「………うぅ…それ…」「それに」またぽす、と今度は優しくいづみの手があの天パ頭を撫ぜた。「私だって感謝してます」「………」「お父さんの夢、追いかけるきっかけをくれたのは支配人ですから」「………いづみ、さん」「…まあ経緯はさておきですけどね!」「ぁ痛」ぺす、と撫ぜた手が額をはたいた後ずれていた眼鏡を外して枕元に置く。「ほらもう寝てくださいね! 寝てる間に薬持ってきときますから起きたら飲んでください」「………」「わかりました? 支配人、返事してください」「……はぁい」「…ほんとにもう」「………」服の裾を掴まれていた手から徐々に力が抜けてすうすうという寝息が聞こえるようになるまでそうはかからなかった。「……おやすみなさい、支配人」こうしてまた、MANKAI寮の夜はふけていく。そうして迎えた翌朝。「臣君! ピラフ美味しい!」「はは……監督の食べっぷり見てると、作った甲斐があるな」「昨日の夜から楽しみにしてたからね! エビ大きいし!」「俺、背わた取った……」「真澄君エビの背わた取れるの!?」「臣に、教わった……アンタも食べるって聞いたから。アンタのため」「すごいすごい! 美味しいよ真澄君」「……アンタのためだから。アンタのためならいくらでも料理覚える。だから結婚して」「うん! それは真澄君が大人になったら考えようね! ほら遅刻するから支度支度!」「……つれない……でもそういうところも好き……」いつも通りのばたばたとした朝の風景。学生組を送り出すまでが一番賑やかだろうか。しかし全員送り出した後の静けさもまた、朝の風景の特徴の一つなのかもしれない。「あ。左京さんおはようございます。臣くんのピラフまだありますよ」「……ああ。監督さん昨晩だが」「はい」「………松川が、何か余計なことを言わなかっただろうな」「…はい?」「………思い当たることがないならいい」「は、はあ……」何だろうこわい。というような表情のいづみを一瞥して、左京は溜息。その意図するところはあの天パが起きてきたら直接シメよう。といったところだろうか。いずれにせよ酒は自白剤としてのはたらきを多分に持つものだから良くも悪くもMANKAI寮の大人たちには、しばしば大宴会が必要かもしれない。FIN