このお話は、ソルという少年が主人公です。彼はクラランの街にある、エリゼに住んでいました。そこは学校の寄宿舎、もしくは合宿所みたいな所でした。
 クラランの人たちは、みんな「カンオン」をもっていました。それは小さな黒い球体の形をしていて、つねに人々の体のまわりを、つかず離れず浮かんでいました。カンオンはクラランの住人たちを暖かく見守り、保護し、みちびく、心の杖(つえ)としてありました。もはやそれなくしては日々のいとなみが成り立たない、空気みたいに重要で意識されない存在でした。
 ソルは鳥と共に旅立つ日を夢想します。求めるものとてなく「ただ出発のために出発する」のが目的でした。
ガリバー旅行記でおなじみのスイフトは、うっぷん晴らしのために、そのお話しを書いたそうです。それは当時のイギリス社会に対する、皮肉に満ちたふうしでした。この物語も同じような動機で書かれています。あてこすりのアイロニーとルサンチマンを糧とした、作者の気晴らしとして。(他のサイトにも投稿しています)