世の中なにごともまず基本を身につけることが大事です。それは、ダイエットとて同じこと。このコーナーでは「ツボっていったいなあに?」というツボ入門者の人にもすご~くわかりやすいツボの基本をレクチャーします。ダイエットに適したツボのイロハを押さえて、美しさを手に入れましょう!

質問:マローネ宏枝
解説する人:安部達彦 先生
学校法人情報学園 日本柔整鍼灸専門学校 鍼灸学科 専任教員

Q.「ツボ」って普段からなにげなく耳にしている言葉だけど、そもそもどんなものなんですか?

A.「ツボ」の起源は古代にさかのぼります。古代の人たちが生活していくうえで、偶発的に体になにかが刺さったとか、なにかの火の粉が飛んできて体が焼けたといった体験によって、今まで患っていた胃が悪いのが偶然治ってしまったといったような、それらの体験がいくつか重なって体系立てられていったのがツボの起源です。ここでいう刺さった=鍼(はり)、焼けた=灸、です。

 東洋医学でいえば、ツボは「気」の通りやすい場所。「気」のめぐりが悪くなることによって生じる病を、効率よく流れを促し治すことができる体のポイント。これが一般的に言われている「ツボ」です。

 ツボは、体の表面から神経や筋肉が多く刺激を受け止めやすい部分に刺激を与えることで、反応を引き出すことができます。たとえば内臓に対してその刺激を伝えて、内部の調子をよくする、内臓から治癒する効果を引き出します。刺激を与えるには、鍼やお灸、指圧、マッサージなどの方法で行います。


Q.「ツボ」がダイエットに効くと聞いたのですが本当ですか?

A.一時「ツボダイエット」なるものが流行りましたが、今では廃れてしまいました。その結果をみると、やせている人がいないわけではないので効果がないともいえませんが、ツボさえ押せばすぐにやせるかといえば、それはありえないといったほうがいいでしょう。ただし、「ツボ」がダイエットに間接的な効果を与えていることは間違いないようです。

 もっとも有力な説は、いわゆる「満腹中枢」を刺激して食欲を抑える効果です。満腹中枢は、食事をして血糖値が上がったときに食欲を抑制するよう働きかける脳の視床下部にある中枢のことですが、ツボを刺激することで、この満腹中枢の働きを活性化させる効果があります。

 このツボダイエットが廃れた原因のひとつは、食べ物が目の前にあったら満腹でも食べてしまう“ものに頼る”人の性質があったからでしょう。視覚的に得られた情報はシャットアウトできないので、反射的に食べてしまう人は結局やせられないのです。

 ツボの刺激は、ダイエットの相乗効果を高めることはあるかもしれませんが、ツボ単品でどこまでできるのか? となると、ほとんど何もできないと思ったほうがいいですね。ある程度のお手伝いまではできますが、あとはダイエットしている本人の自覚が必要です。ダイエットの背中を後押ししてくれるきっかけとしてツボ押しをとらえてくださればいいなと思います。


Q.ツボ押しは自分で押しても、正しい位置がわかりますか?

A.ツボはあくまでも「地図」であるので、その場所にそのものがあるとは限りません。自分で周辺を広くもんでみて、周辺と一番違う感覚を持っている場所がツボと思ってよいでしょう。人によってはそれが気持ちいいと感じる人もいれば、極端に痛いと感じる人もいます。周辺と極端に違う場所ということで考えればよいでしょう。そこが、いわゆる刺激を欲している、異常ですよというシグナルを出している場所です。その場所はカラダの左右で異なる場合もあります。


Q.ツボ押しは手でやるのと、器具を使うのどちらがいいですか?

A.最近ではよいマッサージ器具も出ていますが、基本は手です。器具ではまだまだ限界がありますから、ぜひ手でやりたいところですね。下手な器具を買うよりは自分の手でやって、日々の変調を感じ取りながら、それに合った形での刺激を加えてもらうのがベストです。


Q.ツボ押しは、最低どのくらい続ければ効果が出ますか?

A.ツボにもよりますが、飲みすぎや次の日にむくみを取るツボの効果が現れるのが3カ月後では困ってしまいますね。これらを解消するツボは即効性があります。
 一方、体質改善としてのツボ押しは3カ月くらいの期間をみておくことが必要です。花粉症などのアレルギー性鼻炎に効くツボがあるのですが、花粉症の時期が始まってからやっても意味がありません。ですから、花粉症の時期が2~3月だとしてそれに焦点を合わせて、年が越えるか越えないかくらいからスタートしてアレルギーに強い体づくりという感じで奨励しています。3カ月くらいは丹念に自分で反応を探して、毎日自分の体と対話していくことが大事ですね。


Q.ツボ押しを効果的にするにはどうしたらいいですか?

A.何を目標にするかで微妙に違ってきますが、まずは「継続する」こと。効果が出てきたらすぐに止めるのではなく、続けることが重要です。

 時間帯は同じでなくてもよいですが、習慣化しましょう。たとえ時間がずれても「○○をしたあとにやる」と決めておくとよいですね。

 ツボ押しは血の巡りをよくすることがポイントですから、入浴時やお風呂上りにやるのがもっともオススメです。ツボ押しのもうひとつのポイントであるリラクゼーション効果も高まります。

 また朝目が覚めて布団から出たくないな~というときに押すのもいいですね。朝布団の中でずるずる過ごす人は自分が一番ムダにしている時間だなと考えて、その時間を活用するのもいいですね。


Q.年齢や性別によって、押す「ツボ」の場所は変わりますか?

A.ツボは体質のタイプによって押す場所が変わります。症状によってもバラバラなので、そのたびごとに変わりますし、男女の性差や年齢によっても押す場所は変わります。

 「気」には、外から補う「気」と、電池のように自分の中に生まれつき備わっている「気」の2種類があります。たとえば「気」が旺盛でない小さな子には小さな子専門のポイントがありますし、「気」を使い果たしてしまった老人には老人専用のポイントがあったりと、人それぞれによって対処法は変わります。


Q.お灸は自分でやると危険ですか?

A.お灸は普通の人でも手軽にできます。ポイントは、ほのかにあったかい感じから熱い感じに変わったら外すのが基本です。熱さを我慢して燃え尽きるまでやったら火傷してしまいますのでご注意を。

 ちなみに、持続効果で言えば、ツボ押しよりもお灸のほうが高いです。お灸も鍼もツボ押しも、手段が違うだけで刺激する場所はいっしょです。お灸は寒症(体が冷えている)に対しては熱を補ってやるという意味で効果が高いですが、逆に熱症にお灸を添えると火に油を注ぐ結果になります。


Q.間違ったツボを押した場合、悪影響が出ませんか?

A.悪影響はありません。もちろん1cmずれたからといって死ぬようなこともありませんし、1カ所、2カ所ちょっとやそっと押したくらいで悪い影響が出るものでもありません。たまに、ツボを自分でゴリゴリ刺激しすぎて内出血する人はいますが、心地よいなという程度、あるいはちょっと痛みがズンと響くくらいの刺激であれば、心配する必要はまったくありません。ズンとくる場所であれば、逆にツボから数cmずれていても刺激効果としてプラスとして現れます。

 ツボやマッサージ、鍼灸、指圧などの東洋医学は「異常な部分を普通に戻す」ということなのです。たとえば同じツボを押しても、高血圧の人なら血圧が下がるし、低血圧な人なら血圧が下がる。これはカラダを平常な状態に戻そうとするためです。カラダにとって平常な状態を作り出す機能が破綻した状況が病気ですから、破綻した状態に対して戻す力を鍼灸によって治す。自然治癒能力は体の中に備わっています。体の中で衰えている機能をふたたびがんばらせてやるのが私たちの仕事ですから、間違えたツボを押したとしても引き戻す力が働くだけで、悪影響が出るものではありません。


Q.ツボ押しのオススメのシチュエーションは?

A.自分が一番落ち着いているときです。私はやはり入浴中やお風呂上がりがオススメですね。


Q.自分以外の人に押してもらうと効果はアップしますか?

A.背中など手が届かない部分や自分ではで押せない角度は誰かにやってもらったほうがいいですね。お互いに押し合えば、相手の健康を気遣えるようにもなります。

 うつ伏せになっている人のツボを押すときのコツは、相手の呼吸に合わせて押すこと。押される側が息を吐いているときにスーッと押すのが違和感なく押すことができるコツです。息を吸っているときは緊張状態を作っているときですので、そのときにツボをズンと押すと、違和感をすごく感じることになりますし、押す側にも無理が出てしまいます。

 相手の呼吸に合わせて押せるようになればしめたものです。


Q.ツボを見つけやすくする方法は?

A.基本的に手の感覚を養うのが一番です。そして指示されたツボの場所の周辺を丹念に探ることです。

 ツボは、骨の周辺を筋肉や皮膚が包んでいる状態で、その骨に対していかにきっちり刺激を与えられるかが重要です。腕などを指で押していくと、部分によってほかの部分とは違う、「ゴリッ」とした感覚の部分があります。そこを押すとズンと響く感じがするはずです。その響いたところをゆっくり押すといいでしょう。周辺部分をとにもかくにも丹念に探すことが大事です。


Q.ツボっていったい全部でいくつあるのですか?

A.体のツボは全部で365カ所あるといわれています。「奇穴」と呼ばれるツボを紹介するだけでも1冊の本ができるくらいですから、言い出すとキリがないですね。

 現在、実際に使われているツボはだいたい50カ所くらいです。残りの300はほとんど反応がないようなツボなので使われていませんが、今後の研究対象として設定されていたりします。

 基本的にツボは「生きている」ので、さわってみて痛いとか気持ちいいとか反応が出るところを施術していきます。ですからたとえ教科書に書かれているツボであっても、反応がないツボは施術はしません。


Q.「伝統的なツボ押し」と「現代的なツボ押し」があるってホント?

A.古来からあるツボ押しの方法も、現代的なエッセンスを込めたツボ押しの方法も、おそらく最終的に行き着く点はいっしょです。

 たとえば、伝統的な東洋医学を用いる鍼師がそのセオリーに則って鍼を刺した場合、角度はこうだ、深さはこうだ、という答えが出ます。ところが、現代医学の人がやっても角度も深さもいっしょの答えが出るのです。これは、東京駅に行こうとする場合に、交通手段は違っても、到達地点もかかる時間もほぼ変わりがないのと同じことです。

 現代医学的な人には現実主義者が多いですから、目で見えているもの、手で触ることができるものであることを重視する傾向が多いようです。一方、東洋医学的な人は物質主義からちょっと外れた考え方の人たちで、「気」のような目に見えないものの効力を信じています。

 ツボ押しの世界では、現代的なエッセンスをまったく排除している人もいれば、東洋医学的なものを排除している人もいて、両極端です。私はどちらかというと現代医学に近いタイプ。東洋医学的なものだけでは患者さんと話す時に通じないことがあるので、基本的に現代医学を中心にアプローチしています。

 治癒結果に対しては、私の個人的な考えとしてはどちらも変わりはないと思います。好きか嫌いかという好みの差によるもので、最後は患者さんが満足するかどうかということでしょう。

 医学部で鍼灸を扱っているところがよく使う手としては、手で触り目で見てわかる範囲で治しましょうという現代医学的な治療法を10回試し、それでも治らない場合は一切を捨て去って、東洋医学に則った治療に切り替えます。たとえば手が痛いのに足に針を刺す、など、現代医学の理解を超えた範囲でアプローチにするように変えていったりします。

 まずはお互いがそれぞれ勝負できる土俵でやって、万策が尽きたときに、初めて両者の接点が生まれてくるということですね。


Q.「東洋医学」と「西洋医学」はどう違うのですか?

A.ちょっと難しい話になりますが、東洋医学が「森を見る医学」だとすれば、西洋医学(現代医学)は「木を見る医学」だといえます。

 東洋医学の基本は「陰陽五業論(いんようごぎょうろん)」と呼ばれるもので、「木・火・土・金・水」の5つが相互扶助をしている関係にあります。

 たとえば「木」には陰陽それぞれの性質をもったものがあります。よく「五臓六腑」といいますが、本来は、「肝・心・腎・脾・肺」の「五臓五腑」が基本です。「肝・心・腎・脾・肺」とはいっても、臓器そのもののことをさすのとは少し違います。これらの臓腑がお互い助け合っているのですが、どれかが弱ってくると、矢印に則り、弱っているものを助けてやるという、いわば全体のバランス、調和をいかに保つかというところでみている医学です。ひとつの人体を固体としてみて、全体的な調和をいかに整えてやるか。「心臓が悪いから心臓を徹底的に治そう」ではなく、「バランスで治そう」という医学です。あとは陰と陽との関係でみています。

 一歩、西洋医学は、「とことん小さく物事をみて治そう」とする医学です。森の中の木を見て、木の中の枝を見て、枝の中の葉っぱを見て、葉っぱから樹脂をひっぺがしてみて……と個体的に見ていくといった具合です。

 どちらがいいかは優劣つけがたいものがあります。現代医学はそれによって伸びてきましたし、一方、東洋医学は全体ばかり見てきたので細かいところに目が届かず、細菌感染に関しては無力だったりします。

 「全体の調和」が東洋医学の一番の売りであり、現代医学は「個体をとことん重視する」のが売りの医学です。