企業法務お役立ち情報 クレーム

【化粧品、美容業界の方は必読】消費者の肌荒れクレームに対する正しい対応方法とは?

化粧品の販売や、エステ、美容業界からのご相談で多いのが、消費者から、化粧品の使用やエステの施術により「肌荒れ」や「アレルギー反応」が出たというクレームがあった場合の対応についてのご相談です。

化粧品に関するトラブルでは、カネボウの化粧品について、「白斑」の被害が大きなニュースになったことは記憶に新しいところです。そして、カネボウ事件からもわかるように、化粧品を原因とする皮膚のトラブルは、消費者に与える心理的なダメージが大きく、対応方法を誤ると、大きな社会問題にも発展しかねない問題です。

そこで、今回は、消費者から肌荒れやアレルギー反応についてのクレームがあったときに、事業者として正しい対応方法のポイントをご説明します。クレームを受けたときにも冷静に正しく対応ができるように、いまのうちにポイントを確認しておきましょう。

 

今回の記事で書かれている要点(目次)

●消費者の肌荒れクレームに対する正しい3つの対応方法とは?
●ポイント1:「消費者の肌荒れ」と「化粧品の使用」との因果関係を正しく判断する。
●ポイント2:化粧品の容器や添付文書に「適正な表示」がされていたかを確認する。
●ポイント3:過去に同種のクレーム、苦情がなかったかを確認する。

 

消費者の肌荒れクレームに対する正しい3つの対応方法とは?

「化粧品やエステ施術で肌荒れの被害が発生した」というクレームを消費者から受けたときに重要なことは、販売業者として治療費や慰謝料などの法的責任を負わなければならないクレームなのか、それとも責任を負う必要のないクレームなのかを正しく判断して対応することです。
そのためには、以下の3点がポイントとなります。

消費者の肌荒れクレームに対する正しい対応方法3つのポイント!

ポイント1:「消費者の肌荒れ」と「化粧品の使用」との因果関係を正しく判断する。
ポイント2:化粧品の容器や添付文書に「適正な表示」がされていたかを確認する。
ポイント3:過去に同種のクレーム、苦情がなかったかを確認する。

このように、化粧品を原因とする肌荒れのクレームがあったときは、ポイント1の「因果関係」を判断するだけでなく、ポイント2の「適正な表示」や、ポイント3の「過去の同種のクレーム、苦情」について確認しなければなりません。

その理由は、化粧品については、そもそもアレルギー反応が全くでない化粧品を製造することは現実的には困難であり、化粧品を原因としてアレルギー反応や肌荒れのトラブルが起こっただけでは、必ずしも化粧品販売業者に慰謝料や治療費の支払義務が発生するとはされていないからです。

たとえば、平成26年3月20日の東京地方裁判所判決でも、「化粧品は、本来的に、アレルギー反応を引き起こす危険性を内在したものである以上、消費者の中にアレルギー反応による皮膚障害を発生するものがいたとしても、それだけでその製品が通常有すべき安全性を欠いているということはできない」と判示されています。

そのため、販売した化粧品を原因として肌荒れやアレルギー反応が起こっただけで化粧品販売業者の責任を認められるのではなく、アレルギー反応のリスクについて適正な表示がされていなかったり、あるいは多数の消費者に同様の症状が生じ根本的に製品としての安全性を欠いている場合に限り、販売事業者に法的な責任が認められます。

この基本的な考え方をおさえていただいたうえで、上記の3つのポイントについて詳しくご説明していきたいと思います。

 

ポイント1:
「消費者の肌荒れ」と「化粧品の使用」との因果関係を正しく判断する。

消費者の肌荒れクレームに対する正しい対応方法の1つ目のポイントは、消費者の肌荒れが本当に自社が販売した化粧品が原因で生じたものか、因果関係を正しく判断することです。
そして、因果関係の正しい判断のためには、以下の点を確認することが重要です。

「消費者の肌荒れ」と「化粧品の使用」との因果関係の判断のために確認するべきポイント

(1)「部位」の確認:
化粧品を使用した部位と肌荒れの部位が一致しているかどうかを確認します。

(2)「時期」の確認:
化粧品を使用した時期と肌荒れが発生した時期が近接しているかどうかを確認します。

(3)「使用前の症状の有無」の確認:
消費者が化粧品の使用の前に、肌トラブルをかかえていなかったかどうかを確認します。

(4)「使用中止後の症状」の確認:
化粧品の使用を中止した後、肌荒れが改善したかどうかを確認します。

(5)「パッチテスト結果」の確認:
化粧品のパッチテストの結果が陽性であったか、陰性であったかを確認します。

(6)「別の原因の有無」の確認:
消費者が別の化粧品を使用しており、その化粧品が原因で肌荒れが生じた可能性がないかを確認します。

以下の通り、過去の裁判例でも、上記の6つのポイントが重視されています。

【裁判事例1】
「消費者の肌荒れ」と「化粧品の使用」との因果関係を認めた事例
(平成12年5月22日東京地方裁判所判決)

裁判所の判断:
パッチテストで陽性の結果が出たことや、化粧品の使用を中止したら肌荒れが軽快したことを根拠に、因果関係を認めた。

【裁判事例2】
「消費者の肌荒れ」と「化粧品の使用」との因果関係を否定した事例
(平成26年3月24日大阪地方裁判所判決)

裁判所の判断:
パッチテストが陰性であったこと、別の化粧品も使用していたこと、化粧品を使用した部位と肌荒れの部位が一致しないことなどを根拠に、因果関係を否定した。

消費者から肌荒れや皮膚障害のクレームを受けたときは、病院での診察をすすめるのと並行して、上記6つのポイントを確認し、記録を残すことを忘れないようにしなければなりません。

この点が、最初の重要なポイントになりますので、おさえておきましょう。

 

ポイント2:
化粧品の容器や添付文書に「適正な表示」がされていたかを確認する。

消費者の肌荒れクレームに対する正しい対応方法の2つ目のポイントは、「化粧品の容器や添付文書に適正な表示がされていたかを判断する」という点です。

これは、ポイント1で「因果関係あり」と判断されたとしてもそれだけで化粧品販売業者の責任を認められるのではなく、化粧品を使用することによるアレルギー反応のリスクについて適正な表示がされていたかどうかが問題になるためです。
そして、「適切な表示」がされていたかどうかの判断にあたっては、以下の点が重要な判断基準となります。

化粧品について「適切な表示」がされていたかどうかの判断基準

(1)「化粧品の使用時の注意事項の表示自主基準」に沿った表示がされているか。
(2)化粧品の安全性を特に強調するような表示がされていないかどうか。
(3)法律上の成分表示義務を果たしているかどうか。

以下、順番にみていきましょう。

(1)「化粧品の使用時の注意事項の表示自主基準」に沿った表示がされているか。

化粧品業界の方は皆さんご承知のことと思いますが、化粧品についてのリスク表示については、日本化粧品工業連合会が作成して厚生労働省に届け出ている「化粧品の使用時の注意事項の表示自主基準」があります。化粧品のアレルギーリスクについて適切な表示をしたというためには、まず、化粧品の容器や添付文書に、「化粧品の使用時の注意事項の表示自主基準」に沿った表示をすることが必要です。

この「化粧品の使用時の注意事項の表示自主基準」は、カネボウの白斑問題を受けて、平成26年5月に改正されていますので、改正にも対応できているかも含めて確認が必要です。

(2)化粧品の安全性を特に強調するような表示がされていないかどうか。

たとえば、アレルギー肌、アトピー肌にも使用できることをうたっていたり、乳幼児にも使用できることをうたっているなど、安全性を特に強調した広告宣伝を行っている化粧品については、安全性を強調した広告が消費者に信頼を与える側面があるため、「化粧品の使用時の注意事項の表示自主基準」に沿ったアレルギーリスクの表示がされていただけでは、消費者に対する警告の効果が十分でないと判断される可能性が高いです。

そのため、「化粧品の使用時の注意事項の表示自主基準」を守るだけでなく、さらに、「アレルギー体質の方、皮膚の弱い方はご使用の前に上腕部内側などに塗布して、必ず使用テストを行ってください。」などの注意書きをしておくことが必要です。
安全性を特に強調した広告宣伝を行っている化粧品については、このような注意書きがされているかどうかを確認しましょう。

(3)法律上の成分表示義務を果たしているかどうか。

化粧品については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(旧薬事法)で、表示すべき成分と表示の順序が定められています。「化粧品のアレルギーリスクについて適切な表示をした」というためには、この法律に基づく成分表示義務を果たしていることが必要です。正しい成分表示がされているかどうかを確認しましょう。

これらの表示が適切に行われていれば、「消費者の肌荒れ」と「化粧品の使用」との因果関係について「因果関係あり」という判断であったとしても、消費者に対して化粧品を使用することによるアレルギー反応のリスクについての警告は十分になされていたと判断することができます。

その場合、次の3つ目のポイントでご説明する「多数の消費者に同様の症状が生じ根本的に製品としての安全性を欠いている場合」でなければ、化粧品販売業者に法的な責任はないと考えて問題ありません。

なお、エステ等のクレームの場合、通常、消費者は化粧品の容器や添付文書の表示を確認して施術を受けるわけではありませんので、施術の前に、アレルギー反応の可能性について「化粧品の使用時の注意事項の表示自主基準」に沿って十分な説明がされていたかが重要になります。

 

ポイント3:
過去に同種のクレーム、苦情がなかったかを確認する。

消費者の肌荒れクレームに対する正しい対応方法の3つ目のポイントは、「過去に同種のクレーム、苦情がなかったかを確認する」という点です。

ポイント2で「適切な表示」がなされ、アレルギー反応が起こるリスクが外箱や添付文書で説明されていたとしても、その化粧品を使用した多数の消費者に同様の症状が生じている場合は、化粧品販売業者の法的責任が認められます。化粧品を使用した多数の消費者に同様の症状が生じている場合は、いくらリスクを明示していたとしても、根本的に製品としての安全性を欠いているといえるからです。

ただし、どのくらいの症例があれば、化粧品販売業者の法的責任が認められるかどうかについては、「明確な判断基準が示されている」とは言い難い状況です。

「東京地方裁判所平成12年5月22日判決」の事案は、化粧品販売数6万2000本のうち、苦情件数が4件であったという事案です。この事案で、裁判所は、4件の苦情の内容が特に重大なものでなかったという点を踏まえ、「多数の消費者に皮膚障害を発生させるような成分が含まれているとは認められないから、通常有すべき安全性を欠いていたということはできない。」と判断しており、参考になります。

一方、カネボウの白斑被害については、推定使用者数約25万人のうち、軽微なものも含め、約1万4000人に白斑様の症状が出たとの報道もされています。現在、裁判中であり、その結論が注目されます。

なお、「過去の同種のクレームがなかったかを確認する」ための前提として、過去のクレームについて軽微なものも含めて正確に記録し、情報を集約しておくことが必要です。カネボウの事案では、苦情を受けた担当者が軽微な苦情はその場で処理してしまい、社内への報告をあげなかったことが、会社全体として白斑被害に対する対応が遅れることになった原因の1つであったことが報道されています。

小さな苦情でも正確に記録して、社内にフィードバックしておくことは、苦情対応の基本となりますので、この点も注意しておきましょう。

 

まとめ

今回は、化粧品を使用した消費者、あるいはエステの施術を受けた消費者から肌荒れトラブル、皮膚障害、アレルギー反応などのクレームが寄せられたときに、事業者がどのように対応すべきかという「正しい対応方法」についてご説明しました。

事業者としての法的責任の判断にあたっては、以下の3つのポイントが重要であることをご理解いただけたと思います。

ポイント1:「消費者の肌荒れ」と「化粧品の使用」との因果関係を正しく判断する。
ポイント2:化粧品の容器や添付文書に「適正な表示」がされていたかを確認する。
ポイント3:過去に同種のクレーム、苦情がなかったかを確認する。

実際のクレームの現場では、「診断書を提出してほしい」と伝えても「その費用を先に支払ってくれ」と言われたり、詳しく事情を聴こうとしても事業者側に責任があると消費者が思い込んでしまい冷静な回答がされなかったり、とさまざまな困難が伴います。

そのような中でも、3つのポイントを正確に判断して対応できるように、日ごろの鍛錬を積んでおかなければなりません。

このような化粧品・エステ業界に関する肌荒れトラブルに関するクレームで、不安な点や更に詳しい対策しておくべき方法などについてお悩みがある経営者の方は、化粧品やエステ業界のクレーム対応に強い咲くやこの花法律事務所にお気軽にご相談ください。


 

同じカテゴリの関連記事を見る

他のカテゴリから記事を探す

情報カテゴリー

ソーシャルメディアで
最新情報をチェック!

    お問い合わせ状況

    昨日のお問い合わせ件数6
    今月のお問い合わせ件数6