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リアルな現場のUXがビジネスに必要だ! -UX Sketch RIDE SUMMER 2016レポート
8月6日(土)、イトーキ東京イノベーションセンター SYNQAにて「゛RIDE゛ UX Sketch SUMMER 2016」が開催されました。
「゛RIDE゛ UX Sketch SUMMER 2016」は、リクルートホールディングスの事業育成機関である「Media Technology Lab.(以下、MTL)」が開催する、ユーザーエクスペリエンス(以下、UX)実務者を対象とした無料イベントです。
MTLでは、1年程前からUXの勉強会「UX Sketch」を毎月開催していますが、参加者の「実践段階での現場のリアルな情報・体験談をもっと聞きたい!」というご要望から、今回「UX Sketch」1周年を記念して、UX実務者によるUX実務者のための「゛RIDE゛ UX Sketch SUMMER 2016」を開催しました。
イベント会場は、朝から満員御礼の大盛況。
はじめにUX Sketch主催者のMTL UX開発グループの松川よりオープニングトークをさせていただきました。
松川は、ある日Googleで「伸び悩んだときにどうしたらいいか?」という検索をしたところ、いろんな方の苦悩が垣間見られたといいます。
「たとえば「ダーツが上達しない」とか、あるいは中学生が「手っ取り早く成績を上げる方法を教えてください」とか、また経営者になると「業績が伸び悩んだときにはどうしたらいいか?」とか、スポーツ選手のメンタルトレーニングについての話だとか、世の中には、いろいろな人がいろいろなことで伸び悩んでいることがわかりました。
そんな検索結果を眺めていると、悩みこそすべて異なりますが、しかしどんな人も、どんな悩みも、そこには先人の話を聞いて、自分との差異を明確化するという共通項が見受けられました。
今日、この会場にいらしている方は、UXを実践し始めている方が多いのではないかと思います。またUXに多少なりとも興味がある方だと思いますが、今日の登壇者の方々のお話を自分のプロジェクトに置き換えてみると、きっと何かしらの気づきが多く得られるはずです。
今回は、そういう気づきが多く得られるという主旨のもと、様々なジャンルからご登壇者を募りましたので、お楽しみください。」
とご挨拶させて頂き、いよいよイベントのスタートです。
当日は、全8ステージのキーノートスピーチが用意されました。どのキーノートの内容も、実際のUXの現場で起きているリアルな声ばかり。今、現場では何が起きているのか? 現在活躍中の現場の猛者が、成功例だけでは語られない生々しい実例をお話しいただきました。
さらに、メインステージの他にも、サブステージを用意し、トークの終わったご登壇者と話せる場や、root inc.代表取締役/デザインディレクターの西村和則氏を講師に迎えて、サービスにおけるBAD UXの改善プロセスを、グループワークを通じて体験できるワークショップを開催するなど、来場者がアクティブに参加できる一日となりました。
なお本レポートでは、メインステージのキーノートスピーチからいくつかピックアップをして、トーク内容をご紹介させていただきます。
Keynote 1:概念のUXデザインを現実に変えるには何が必要なのか
BCG Digital Ventures Experience Designer Director
坪田朋氏
坪田朋氏は、livedoor、DeNAを経て、現在はBCG Digital Venturesにて、エクスペリエンスデザイナーという立場で、エスノグラフィックリサーチ(行動観察調査)とデザイン・シンキングのフレームワークを使いながら、大手企業と協働で新規事業開発をされています。
氏は、ここ数年、UXデザインやデザイン・シンキングといった「課題解決のためのデザイン」が注目され盛り上がっているが、現場は、そのあまりに抽象的な概念に「UX疲れ」を起こしていると報告、UXデザインは、理論的または抽象的すぎるために、UXデザイナーと称する人間と現場の関係者の間に戦いすら起きているといいます。
そこで、フレームワークを作り、社内でUXデザインに対する共通認識を持ちながらプロジェクトを進めようと試みるのですが、坪田氏は企業の多くには以下のような問題点があり、それらが組織としてUXデザインに取り組むことを難しくさせていると指摘します。
・デザイナーが社内(社外)下請けになっている
・意思決定者がプロジェクトチーム内にいない
・プロトタイピングツールが未導入
・経営者/ステークホルダーを議論に巻き込めていない
まずは組織でユーザー体験を追求できる体制にしつつ、チームとして全力でUI/UXの会話ができる状態にしなければ、いつまでもUXデザインが理想論で終わってしまう、UXデザインはデザイナーが主導であるようにも聞こえますが、企画者、エンジニア、デザイナーの三者がコンセプトを理解し、UXについて話せる状況こそが重要であり、現場と理想論のギャップを埋めるための努力が何よりも重要であるとのことでした。
まとめとして、組織にデザイン環境が整っていない場合は、まずは環境から整えること、そうすることで生産性があがる、また良いデザインが作れる組織は、エンジニアのモチベーションも高く、品質も向上すると話します。
また、非デザイナー、経営者の多くはデザインに対する投資にネガティブなのではなく、デザインのことがよくわからないので、そのやり方がわからないだけ。その場合は、裁量権をもらって任せてもらうか、理解を得るためにデザイナーがしっかりと言語して説得する必要があると指摘します。
とにかくユーザーにとって“正しい”ことを実現したいのであれば、環境を改善すること。また社内が口説けないなら外からも攻める。その領域で優れている会社に研修に行き、その仕組みを理解し、社内にインストールするのも有効だとまとめていただきました。
Keynote 4:
レジ再開発と強大な敵
リクルートライフスタイル 執行役員 AirREGI事業責任者
大宮英紀氏
大宮英紀氏は、リクルートライフスタイルで『AirREGI』というサービスの責任者。氏はUXデザイナーでもなければ、デザイナーでもない、と前置きし、サービスを作るときに、事業責任者としてUXデザインというものをどうとらえているかをお話いただきました。
『AirREGI』は、iPadで無料で使えるPOSレジアプリです。
氏は、せっかく作ったものだから、より多くの人に、末永く使っていただきたいという思いで開発を進めているそうですが、そんなモノ作りの中で、UXという切り口が氏の中にはあるそうですが、実際には、氏は専門家ではないので、UXデザインに関する正確な定義といったことにはこだわりはないといそうです。ただ、いいものを作るために必要なことというのは、やはりしっかりとデザインされたものになるともいいます。
まずプロダクトのデザインについては、ユーザーの体験についてもデザインされないといけないし、また継続して使ってもらうためにビジネスモデルをデザインし、またそれに関わる方々が今後もうれしくなる、楽しくなるといった関係性・生態系も作っていかなければならないと考えているとのこと。これらすべてもデザインであると考えているそうです。
また一方で、自分は事業の責任者であるということから、プロダクトを進めるにあたっては、多くの方々の協力が必要になってきます。人材の確保、組織・チームの雰囲気、働きやすさ、モノの作りやすさなどの文化。さらに、プロダクトや組織がしっかりと機能しているか?といった評価の制度まで、全てがプロダクトをデザインする上で重要となる概念であると語ります。
『AirREGI』が生まれる前、未来はハード、ソフトという概念にとらわれることなく、あらゆるものが一緒になりサービス化し、サービス同士がつながったり、サービスやモノがネットにつながる時代が当たり前になるはず、とチーム内で話していたそうです。
さらには、サービスがつながることによって、デザインできる新たな体系がどんどん生まれてくるはず、と話し、その時代のレジを考えて『AirREGI』は開発されたそうです。すでにその時代には、ネットにレジがつながっているのは当たり前で、将来はもう現金のやりとりすらなくなるだろうと予想、そんな時代のレジはどんな機能があって、何ができるんだろう?と10年ぐらい先の未来のレジのあり方から考え、そこから過去にさかのぼるような考え方で『AirREGI』は誕生したそうです。
試行錯誤を繰り返してきた中で大事にしていることは、将来のユーザーが、日々どんな気持ちで仕事をしているか?どんな課題を抱えているのか?など、使う人の気持ちになって物事を考える、体験を共感するということ。
そして最終的には、日常的に忙しい店舗にどうすれば『AirREGI』を導入することができるか?どんなふうに使ってもらえるのか?サービス全体のストーリーが描けなければ導入してもらえないことに気がついたそうです。
またこれらの物と物、サービスとサービスが互いにつながることが大事だと先ほどもお話しましたが、一つのサービスをより長く使ってもらうためにも、互いにつながりながら価値を増幅し合う関係性を築くことも大切であると話しました。
実際に『AirREGI』を導入されたお店の方々が、さらに他のサービスをつなげていくことで、日常の業務がより楽になるようにお店の流れをリデザインできるようなサービスを目指しています。具体的には『AirREGI』を中心にして、発注・仕入が簡単になったり、従業員やアルバイトの管理ができるようになったり、あるいはクレジットカードの決済等々、より便利なサービスになることをミッションとして進めているとのことでした。
そして最終的に『AirREGI』を中心としたサービスを作るということは、それを使ってくれるお店にとっても、あらゆるものの根幹、プラットフォームを作っていくようなイメージでサービス開発を進めていると話し、ただビルを建てるのではなく、その付近の商業施設をどうするかとか、不動産業のような考え方が重要であるといいます。これからの時代、世の中に浸透していくサービスや施設、成功事例には、そういった共通する考え方が隠れているはずです、とまとめてくださいました。
Keynote 6
予期しない感覚を届ける
ファッション雑誌『LARME』編集長
中郡暖菜氏
ファッション雑誌『LARME』編集長を務める、中郡暖菜氏から
ファッション雑誌『LARME』は、元々は学生時代に編集のアル
創刊した2012年当時、『LARME』は編集長1人で作り、そ
ちなみに氏は原稿をチェックしながら、自分で取材に行ったり、
氏は、ファッション誌の編集長にとって重要な作業は3つあるとい
まず1つは洋服のスタイリング。洋服のスタイリングは、
2つ目は写真のセレクト。
表紙の写真は毎回200枚ぐらいの中から1枚を選んでいます。
あとはタイトルです。
読者である、大学生くらいの年代の女の子は敏感で、ちょっとでも気持ち悪い言い回しや、受け付けられないような言葉が入っていると、すぐに違和感を感じます、そういうことがないように、本の中に馴染むようなタイトルを付けるようにしているとのこと。
逆に、プラスの意味で違和感を与えるような、何かハッとする感覚というか、自分では予期しなかった感覚、自分1人で暮らしていたら出会わなかった発見みたいなものを届けることを大事にしているとのことで、雑誌の魅力は、適当にパラパラ見ているうちに、自分の知らなかったことや、興味なかったけどちょっと気になる物を見つけられることだと思っているので、そこをこれからも大切にしていきたい、と話しました。
最後に、見た人をハッとさせるような写真だったり、自分が携わるもの一つ一つに新鮮なアイデアをなるべく組み込んで、新感覚の体験をしてもらう、ということがクリエイティブの醍醐味だと思っています。日常の生活に新鮮な体験というか感覚を与えることができたら、充実した結果が待っているはずです。と会場にメッセージを送りました。
違った媒体、違ったジャンル、カテゴリーでも、クリエイティブな部分に関しては、かなり共通する部分が多く、とても参考になるお話でした。
今回は3名のお話しを取り上げましたが、冒頭でもご紹介した通り、様々な肩書を持つご登壇者をお招きして開催されたUX Sketch “RIDE”。UXに携わる方に多くご参加いただきましたが、普段“UX”という言葉にあまり馴染みがない方にも学ぶことが多い一日になったのではないでしょうか? UX Sketchは様々な角度から“UX”を追求していきますので、これからもぜひアンテナをはっていただければと思います。