脳外科・脳卒中センター
取り扱う疾患と治療について
2016年 脳神経外科 手術実績
| 計 | |
|---|---|
| くも膜下出血 | 31 |
| 開頭クリッピング | 18 |
| コイル塞栓術 | 10 |
| 未破裂動脈瘤(開頭クリッピング) | 2 |
| 開頭血腫除去術 | 6 |
| 頚動脈内膜剥離術(CEA) | 10 |
| 頚動脈ステント留置術(CAS) | 1 |
| 脳血管吻合術(STA-MCA) | 3 |
| 急性期血栓回収術 | 10 |
| 慢性硬膜下血腫(穿頭術)(CSDH) | 28 |
| 脳腫瘍 | 4 |
| 脳動静脈奇形(AVM) | 2 |
| 血管内治療 | 1 |
| 手術適応 | 1 |
| その他 | 30 |
| 合計 | 127 |
2015年7月-12月 脳神経外科手術実績
| 計 | |
|---|---|
| 脳血管障害 | 21 |
| 脳動脈瘤 | |
| 開頭クリッピング | 7 |
| トラッピング+high flow bypass | 1 |
| 脳内出血 | |
| 開頭血腫除去術 | 3 |
| 内頚動脈狭窄症 | |
| 頚動脈内膜剥離術 | 6 |
| 頚動脈ステント留置術 | 1 |
| 脳血管吻合術(STA-MCA) | 1 |
| 急性期血栓回収術 | 2 |
| 頭部外傷 | 7 |
| 慢性硬膜下血腫(穿頭術) | 7 |
| その他 | 12 |
| 減圧開頭術 | 2 |
| 頭蓋形成術 | 2 |
| 脳室ドレナージ | 6 |
| 気管切開術 | 1 |
| 気管切開後気管皮膚瘻閉鎖術 | 1 |
頸部内頸動脈狭窄症について
脳梗塞および一過性脳虚血発作とは
脳梗塞
脳の神経細胞が生きていくために必要な脳血流が不足すると脳梗塞に陥ってしまいます。いったん脳梗塞に陥ると現在の医学水準では元に戻すことはできません。こうした脳梗塞は脳を栄養する動脈が閉塞あるいは狭窄するために起こります。
一過性脳虚血発作
脳血流が低下したり小さな血栓により動脈閉塞を生じ、一時的に神経症状が出現する病態です。その症状としては一過性黒内障(突然目が見えなくなる)、片麻痺、呂律困難などがありその症状は数分から数時間続き、その後それらの症状は回復します。このように一過性脳虚血発作は可逆的病態ですが、1年で12〜13%の方が脳梗塞に移行することが知られています。
これらの病態は脳および眼を栄養する頸部内頸動脈に動脈硬化性変化(プラーク)が生じ動脈狭窄を生じた場合にも起こります。
治療方法
治療の目的は脳梗塞の発症、再発を少しでも抑制させることです。そのためには頸部内頸動脈狭窄を改善させることや、内頸動脈に存在するプラークを取り除くことが必要です。それには頸部を開いて行う頸動脈内膜剥離術と、カテーテルで治療するステント留置術があり、それぞれに長所・短所があります。
実際の手術(頸動脈内膜剥離術)について
具体的な方法
- 顕微鏡下に頸部を切開し、総頸動脈・内頸動脈・外頸動脈を露出させた後、クリップ等を用い血流を一時的に遮断し、動脈に切開を加えます。
- 血管の内側に存在するプラークを内膜とともに丁寧に剥離して摘出します。
- 当院では、近赤外線モニターを使用し、一定時間の血流遮断に耐えられないと判断した場合は、内シャントというチューブを用いて血液を送りながら手術を行います。
- プラーク摘出後に血管壁を縫合します。
実際の症例
数日前より言葉が出にくくなり、また、歩行もおぼつかなくなり受診。
カテーテル治療によるステント留置術
太股の血管よりカテーテルを挿入し、ステントと呼ばれるステンレス製の筒で狭窄部位を拡げる方法です。
具体的な方法
- 太股の付け根辺りから大腿動脈にカテーテルを挿入し、血管造影装置で確認しながら、カテーテルを頸動脈の狭窄部手前まですすめます。
- 狭くなった部分を風船(バルーン)でまず拡げるのですが、血管の壁に蓄積したプラークの内容物がはみ出してくるので、これらが流れていかないようにするフィルターやバルーンのセッティングを行います。
- 狭くなった部分を特殊なバルーンで拡げ、それが元に戻ってしまわないようにステントを留置します。
利点
- 頸部を開かずに出来るため、侵襲が非常に少ない。
問題点
- 脳梗塞:血管の中に金属を入れるので、手術中や手術後に血液が固まって脳梗塞を起こす危険性があります。
- 脳出血:脳への血液の流れが急激に改善されるため、脳出血を起こす危険性があります。
- 他の血管への影響:カテーテルが通る大動脈のプラークが腎臓へ行く血管や、下肢に行く血管を詰めてしまうことがあります。
- バイタルへの影響:頸動脈には洞結節と呼ばれる化学受容器があり、これを強く刺激してしまうため、極端に脈が遅くなったり(徐脈)、血圧が急激に低下してしまう恐れがあります。
- 穿刺部血腫:止血処置後に穿刺した動脈から出血して輸血が必要となることがあります。
- 造影剤による影響:アレルギーやショックといった急性変化を生じる危険性、また、腎機能障害を生じる危険性があります。
- 再狭窄:ステントをうまく留置できても再狭窄する症例が報告されています。再狭窄時に治療が難渋するケースが多いです。
- プラークに対する効果:網目状のステントを留置しても、プラーク対する問題は解決しません。
2008年4月より、日本でもステントの使用が健康保険上認められました。しかしアメリカのガイドラインと同様にその適応は、外科的なアクセスが困難な症例、外科的手術によりリスクを高めるような医学的状態を有する症例、放射線治療による狭窄例、内膜剥離術後再狭窄例など内膜剥離術が困難な症例に限られています。また病変を摘出しないので長期的な開存率や、ステントなどの人工物質の数十年以上の長期的な生体に対する影響が未解明です。
急性期血行再建術について
脳梗塞とは
脳の神経細胞が生きていくために必要な脳血流が不足すると脳梗塞に陥ってしまいます。いったん脳梗塞に陥ると現在の医学水準では元に戻すことはできません。こうした脳梗塞は脳を栄養する動脈が詰まったり(閉塞)あるいは狭くなったり(狭窄)するために起こります。
現在の状態について
患者さんの現在の症状(急激な意識障害の出現、運動麻痺、感覚障害、言語障害など)は、内頸動脈・中大脳動脈・椎骨脳底動脈等に血栓が詰まったことで急激な血流低下によって生じているものと考えられます。このような状態を超急性期脳梗塞と捉えています。現在の状態が持続しますと、脳梗塞が完成する危険性が高いと考えられます。
治療方法
治療の目的は脳梗塞の発症を防ぐ、もしくは、最小限にとどめることです。そのためには詰まった血栓を溶かす、もしくは回収することが必要です。
具体的な方法
- 症状が出現してから4.5時間以内にt-PA(アルテプラーゼ)というお薬を1時間かけて点滴します。
- 薬を投与しながら(発症して4.5時間以上経過している場合は投与せず)脳血管造影検査を施行します。
- そのためには太腿の付け根辺りから大腿動脈にカテーテルを挿入し、血管造影装置で確認しながら、カテーテルを閉塞している部位の手前まですすめます。
- まずは吸引装置で血栓を回収することを試みます。
- その後ステントと呼ばれる金属製の網目構造の筒を血栓の中で拡げ、ステントに密着させます。
- ステントごと血栓を回収します。
脳血管内手術により予想される臨床上の利益
今回の血行再建術で、脳の血管が再開通した場合は、以下の利点が生ずると考えます。
- 神経症状の劇的な改善が得られる可能性がある。
- 脳梗塞範囲を減少させることができる。
- 救命できる可能性がある。
脳血管内手術治療で起こりうる合併症について
1)閉塞血管が再開通しない可能性
閉塞部位の状態、閉塞血管などにより異なりますが、あらゆる手技を使っても閉塞血管が再開通しない場合、症状が悪化することがあります。統計での再開通率は20-60%と様々な報告があります。さらにいったん再開通しても再度閉塞を来すこともあります。運動麻痺、感覚障害、言語障害、視覚障害、高次機能障害が進行し、最悪の場合には生命の危険も伴います。
2)手術中、手術後の頭蓋内出血の危険性
この治療の特性から最も多い副作用はt-PA投与後もしくは血栓回収後の脳内出血です。また、脳梗塞は完成し、さらにその後出血性梗塞を来すという最悪なケースも考えられます。
*出血性梗塞とは
脳梗塞を生じた病巣内に血流が再開し、梗塞の中に出血を生じてしまう病態です。通常大きな脳梗塞に合併しやすいこともあり、生じた場合はほとんどが生命の危機に陥るほど重症となります。
3)動脈解離の危険性
血管の中でステントを拡げたり、血栓回収時にカテーテル操作により血管が裂け(血管解離)、その解離した部分に血栓を新たに形成する事により脳梗塞へと移行することがあります。また血管が裂け、その程度が強いと血管を穿孔し、脳内出血となります。この場合もやはり生命の危機に陥るほど重症となります。
4)放射線による障害の可能性
血管内手術治療はX線の透視のもとで行う方法であり、通常の血管撮影と異なり長時間の透視が必要となります。そのため放射線の被曝が多くなり、頭部の脱毛や皮膚炎、神経炎、さらに稀ですが、眼球に及ぶと白内障、視力障害を起こすことがあります。
5)感染
生体は皮膚、粘膜などに被われ、外からの微生物の侵入を防いでいます。手術の際、微生物の侵入をゼロにすることは現在の医学水準からは困難です。多くの患者さんでは術後感染の問題は生じませんが、術前の状態によって患者さんの抵抗力が弱かったりすると感染性合併症を生じる危険性があります。
6)穿刺部皮下血腫
この手術法では、大きな管を血管に挿入するために、術後の安静が保てないなどにより穿刺部に大きな皮下血腫を作ることがあります。皮下血腫を生じますと場合によってはその血腫を取り除く手術が必要になることもあります。アンギオシールという止血機材を使用した場合は、皮下血腫の形成を少なくしたり、術後の安静において患者さんの負担は軽くなりますが、止血機材に感染するという報告もあります。
7) 薬剤,麻酔などによるショックなどの危険性
脳血管内手術では麻酔薬や造影剤をはじめ多くの薬剤を使用します。これらの薬剤は高い安全性が確立されていますが、人によっては使用した薬剤に対し過敏な反応(ショック、アレルギー)や予想しえない副作用を生じることがあります。
8)糖尿病、高血圧、心疾患、肺気腫、胃潰瘍、肝不全、腎不全、パーキンソン病、内分泌疾患、精神疾患など
これまで顕在化していなかった上記疾患が手術を契機として発症することがあります。また患者さんがこれまで既往疾患として持っておられる病気がより重くなることもあります。
9)その他予想外の合併症
術中、術後管理にて上に述べた合併症の発生を防止するよう努力しますが、残念ながら予想できない事態が生じ、予想外の合併症を生じることがあります。これらの合併症を生じ、最悪の場合は死亡することや、重い神経後遺症を生じる可能性もあります。
超急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法(t-PA投与)について
脳梗塞とは
脳の神経細胞が生きていくために必要な脳血流が不足すると脳梗塞に陥ってしまいます。いったん脳梗塞に陥ると現在の医学水準では元に戻すことはできません。こうした脳梗塞は脳を栄養する動脈が詰まったり(閉塞)あるいは狭くなったり(狭窄)するために起こります。
現在の状態について
患者さんの現在の症状(急激な意識障害の出現、運動麻痺、感覚障害、言語障害など)は、内頸動脈・中大脳動脈・椎骨脳底動脈等に血栓が詰まったことで急激な血流低下によって生じているものと考えられます。このような状態を超急性期脳梗塞と捉えています。現在の状態が持続しますと、脳梗塞が完成する危険性が高いと考えられます。
治療方法
治療の目的は脳梗塞の発症を防ぐ、もしくは、最小限にとどめることです。そのためには詰まった血栓を溶かすことが必要です。
具体的な方法
- 症状が出現してから4.5時間以内にt-PA(アルテプラーゼ)というお薬を1時間かけて点滴します。
効果
アメリカで行われた臨床試験では、t-PAを使った人の約39%が3ヶ月後に障害のない状態にまで回復(使用しなかった場合は約26%)し、3ヶ月以内の死亡率は約17%(使用しなかった場合は約21%)でした。日本の全国調査(2005〜2007年)では、t-PAを使用した人の約33%が障害のない状態にまで回復し、死亡率は約13%でした。
問題点
この薬の特性から最も多い副作用は投与後の脳内出血です。アメリカでの試験では、「症状の悪化を伴った頭蓋内出血」は約6%でした(t-PAを使用しなかった人では約0.6%)。日本の全国調査では約4%でした。また、脳梗塞は完成し、さらにその後出血性梗塞を来すという最悪なケースも考えられます。
* 出血性梗塞とは
脳梗塞を生じた病巣内に血流が再開し、梗塞の中に出血を生じてしまう病態です。通常大きな脳梗塞に合併しやすいこともあり、生じた場合はほとんとが生命の危機に陥るほど重症となります。
その他、胃腸、膀胱や肺等の出血の危険性、それに伴う貧血、血圧低下、発汗、発熱等があります(いずれも1%以下)。
浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術について
脳梗塞および一過性脳虚血発作とは
脳梗塞
- 脳の神経細胞が生きていくために必要な脳血流が不足すると脳梗塞に陥ってしまいます。いったん脳梗塞に陥ると現在の医学水準では元に戻すことはできません。こうした脳梗塞は脳を栄養する動脈が閉塞あるいは狭窄するために起こります。
一過性脳虚血発作
- 脳血流が低下したり小さな血栓により動脈閉塞を生じ、一時的に神経症状が出現する病態です。その症状としては一過性黒内障(突然目が見えなくなる)、四肢の片麻痺、呂律困難などがありその症状は数分から数時間続き、その後それらの症状は回復します。このように一過性脳虚血発作は可逆的病態ですが、1年で12〜13%の方が脳梗塞に移行することが知られています。
これらの病態は脳を栄養する内頸動脈や中大脳動脈に動脈硬化性変化(プラーク)が生じ動脈狭窄を生じ、脳血流が低下した場合にも起こります。
治療方法
治療の目的は脳梗塞の発症、再発を少しでも抑制させることです。そのためには不足している脳血流を増加させることが必要となります。それには狭窄が生じている部位より末梢(中大脳動脈)に顔・頭皮を栄養している血管(浅側頭動脈)を直接つなぐバイパス術が必要です。
実際の手術(浅側頭動脈—中大脳動脈吻合術)について
具体的な方法
- 顕微鏡下に皮膚を切開し、耳の前あたりから浅側頭動脈を露出します。
- 頭蓋骨を外します(開頭)。
- 骨と脳の間には硬膜という硬い膜があるので、これを切開し脳を露出します。
- 再度顕微鏡下に脳の隙間を分けて中大脳動脈に到達し、肉眼では見えないような糸を用い、浅側頭動脈の端を中大脳動脈の腹に縫合します(約15〜16針)。
- 硬膜を縫合し、頭蓋骨をチタン製のプレートでネジ固定します。
- 骨膜、筋層ごとに閉じ、皮下にドレーンを留置し、皮膚を閉じて手術を終了します。
*手術時の状況で、中大脳動脈深部への直接バイパスが困難な場合等は、脳表に存在する中大脳動脈末梢部に直接吻合する場合もあります。
浅側頭動脈一中大脳動脈吻合術の合併症について
1)手術中、手術後の脳梗塞の再発、悪化
浅側頭動脈一中大脳動脈吻合術の際最も問題となるのは手術中、手術後の脳梗塞の再発、悪化です。患者さんはすでに脳への血流が低下しているため、ほかの一般的な開頭術に比べて、術後の脳梗塞の再発、悪化の確率が高いと考えられています。
2)手術中、手術後の頭蓋内出血
手術では頭皮、硬膜などの組織を切開します。当然切開部位からの出血を生じますので手術中は頭蓋内の止血は完全に行いますが、時に手術中、手術後に頭蓋内出血を生じる場合があります。さらに、脳梗塞予防に抗血小板剤を内服されている場合が多く、止血が困難になる場合があります。また、脳血流が不足している程度が強いほど、術後に脳血流が急激に増加するため、出血を生じる可能性があります。
術後脳梗塞、脳出血を生じた場合、様々な神経後遺症(意識障害、運動障害、失語、高次脳機能障害、視野障害など)を生じる危険性があります。
3)頭皮の壊死、手術部位の脱毛、頭蓋骨変形
手術は本来頭皮の栄養動脈である浅側頭動脈を使用します。従って手術後使用した浅側頭動脈が栄養する頭皮組織の血流が悪くなる危険性があります。それにより頭皮の壊死、脱毛などの美容上の問題を生じる場合があります。また、開頭する際、頭蓋骨を一部削除します。手術後頭蓋骨が変形し美容上問題を生じることがあります。
4)感染
生体は皮膚、粘膜などに被われ外からの微生物の侵入を防いでいます。開頭手術により脳、硬膜、皮下組織などが露出されてしまいます。我々は無菌手術を心がけていますが、手術の際微生物の侵入をゼロにすることは困難です。多くの患者さんでは術後感染の問題は生じませんが、術前の状態によって患者さんの抵抗力が弱かったりすると、術後髄膜炎、脳膿瘍、皮下膿瘍、硬膜外膿瘍などの感染性合併症を生じる危険性があります。
5)麻酔、輸血、薬剤などによるショック、肝炎の感染の危険性
開頭手術のためには麻酔薬をはじめ様々な多くの薬剤を使用します。これらの薬剤は高い安全性が確立されていますが、人によっては使用した薬剤に対し過敏な反応(ショック、アレルギー)や予想しえない副作用を生じることがあります。 手術時、皮膚切開などからの出血をできるだけ少なくすることを心がけますが、出血量が多くなると輸血をする必要があります(輸血リスクについては別紙参照)。
6)糖尿病、高血圧、心疾患、肺気腫、胃潰瘍、肝不全、腎不全、パーキンソン病、内分泌疾患、精神疾患など
これまで顕在化していなかった上記疾患が手術を契機として発症することがあります。また患者さんがこれまで既往疾患として持っておられる病気がより重くなることもあります。
7)褥瘡
手術時間が長くなり同じ体位をとり続けると、手術台などの器具に接触している手足、体部、胸部などに褥瘡を生じることがあります。また、眼球部が圧迫を受けると失明することもあります。
8)その他予想外の合併症
術中、術後管理にて上に述べた合併症の発生を防止するよう努力しますが、残念ながら予想できない事態が生じ、予想外の合併症を生じることがあります。これらの合併症を生じ、最悪の場合は死亡することや、重い神経後遺症を生じる可能性もあります。
手術侵襲が拡大する可能性について
手術前の検査にて発見できなかった、病気(たとえば未破裂脳動脈瘤、動静脈奇形、脳腫瘍など)偶然手術操作中に見つかった場合、その病気に対する治療を行います。
脳内出血について
脳内出血とは
脳内出血という病気は脳の実質内に出血を起こした状態で外傷性と非外傷性があります。非外傷性脳内出血は一般に突発性といわれ、脳卒中発作の約10%を占めます。そして出血源の明らかな症候性と、出血源のわからない原発性脳内出血に分けられます。症候性は動脈瘤や脳動静脈奇形の破裂、血液疾患、出血性素因などでおこってきます。原発性脳内出血は高血圧性脳内出血に代表されます。ただし原因が全く不明なこともあります。ここでは高血圧性脳内出血について説明します。
高血圧性脳内出血について
脳実質内の出血の約60%を占めるといわれており、出血により頭蓋内圧亢進をきたす重篤な疾患です。死亡率は全体で約26%に達するといわれています。また生存者の約70%は何らかの後遺障害を残します。
脳は周りを頭蓋骨という固い殻で守られているため、頭蓋内圧亢進が生じると圧の逃げ場をなくすことになり、そのために正常な脳組織が圧迫され損傷されます。それにより死亡率はさらに高くなります。
高血圧性脳内出血はおもに大脳半球におこりますが、小脳や橋などにもおこります。症状は出血の生じた場所によりますが意識障害や片麻痺、失語症など様々です。
また、脳出血により脳で作られる脳脊髄液(髄液)の循環が障害されて、水頭症を生じる場合があります。髄液は脳室と呼ばれる部屋で1日に約500ml産生され脳を循環し、脳表近くで吸収されるしくみとなっています。水頭症とは髄液循環が障害され、脳室が拡大してしまう病態のことです。これには脳出血が発症してすぐに起こる急性水頭症と、約1ヶ月ほど経過してからの遅発性水頭症があり、急性水頭症を生じた場合、速やかに脳室ドレナージ等の処置が必要となります。遅発性の場合は主にシャント術と呼ばれる髄液をお腹の中等に流すシステムを作る手術が必要となります。
治療方法
治療の目的は、まずは救命です。血腫が大きく頭蓋内圧が亢進している状態であれば、脳内にある血腫を除去し頭蓋内圧の減圧が必要となります。そのためには開頭による頭蓋内血腫の除去が必要になります。
実際の手術(開頭血腫除去術)について
具体的な方法
- 全身麻酔下に皮膚を切開し、頭蓋骨を外します。
- 骨と脳の間には硬膜という硬い膜があるので、これを切開し脳を露出します。
- 顕微鏡を使って脳の隙間を分けて血腫腔に到達します。
- 血腫を可及的に洗浄除去し、原因血管を同定し、これらを凝固処理します。
通常通り閉頭する場合
- 硬膜を縫合し、頭蓋骨をチタン製のプレートでネジ固定します。
- 骨膜、筋層ごとに閉じ、皮下にドレーンを留置し、皮膚を閉じて手術を終了します。
外減圧術を併用する場合
- 硬膜は通常通りには縫合せず、数カ所合わせるようにのみ処置します。
- 骨は戻さず、筋層のみを閉じ、皮下にドレーンを留置し、皮膚を閉じて手術を終了します。
* 外減圧術とは:開頭術後、骨を戻さずに閉頭する術式のこと。術後の脳腫脹が強いと予想された場合、故意に骨を戻さず、頭蓋内圧の調整を図る方法です。
開頭血腫除去術の合併症について
1)手術中、手術後の頭蓋内出血と脳浮腫
手術の際最も問題となるのは手術中、手術後の頭蓋内出血と脳浮腫です。血腫に到達するためには正常な脳組織を一部切開しなければならないことが多く、手術中および手術後に出血を生じる危険性があります。また手術侵襲そのものが脳の腫れ(脳浮腫)を助長する可能性もあります。術後出血や脳浮腫を合併した場合、生命を脅かす危険性もあり、場合によっては再手術が必要となるケースもあります。
2)脳梗塞の合併および手術に伴う脳損傷の危険性
手術中に脳を栄養する血管(動脈)や脳を還流している血管(静脈)を損傷し、脳梗塞を生じる危険性があります。また血腫を摘出する際に脳、神経あるいは血管を損傷し、新たな機能障害を生じる危険性もあります。
3)感染
生体は皮膚、粘膜などに被われ外からの微生物の侵入を防いでいます。開頭手術により脳、硬膜、皮下組織などが露出されてしまいます。我々は無菌手術を心がけていますが、手術の際微生物の侵入をゼロにすることは困難です。多くの患者さんでは術後感染の問題は生じませんが、術前の状態によって患者さんの抵抗力が弱かったりすると、術後髄膜炎、脳膿瘍、皮下膿瘍、硬膜外膿瘍などの感染性合併症を生じる危険性があります。
4)麻酔、輸血、薬剤などによるショック、肝炎の感染の危険性
開頭手術のためには麻酔薬をはじめ様々な多くの薬剤を使用します。これらの薬剤は高い安全性が確立されていますが、人によっては使用した薬剤に対し過敏な反応(ショック、アレルギー)や予想しえない副作用を生じることがあります。 手術時、皮膚切開などからの出血をできるだけ少なくすることを心がけますが、出血量が多くなると輸血をする必要があります(輸血リスクについては別紙参照)。
5)糖尿病、高血圧、心疾患、肺気腫、胃潰瘍、肝不全、腎不全、パーキンソン病、内分泌疾患、精神疾患など
これまで顕在化していなかった上記疾患が手術を契機として発症することがあります。また患者さんがこれまで既往疾患として持っておられる病気がより重くなることもあります。
6)褥瘡
手術時間が長くなり同じ体位をとり続けると、手術台などの器具に接触している手足、体部、胸部などに褥瘡を生じることがあります。また、眼球部が圧迫を受けると失明することもあります。
7)美容上の問題
開頭する際、頭蓋骨を一部削除する可能性もあり、手術後頭蓋骨が変形し美容上問題を生じることがあります。
8)その他予想外の合併症
術中、術後管理にて上に述べた合併症の発生を防止するよう努力しますが、残念ながら予想できない事態が生じ、予想外の合併症を生じることがあります。これらの合併症を生じ、最悪の場合は死亡することや、重い神経後遺症を生じる可能性もあります。
慢性硬膜下血腫について
慢性硬膜下血腫とは
慢性硬膜下血腫とは、脳と頭蓋骨の間に血液が貯留する病気で、一般的には頭を打ったあと、2週間から3ヶ月程度経過した期間に起こります。
硬膜というのは頭蓋骨の内側に存在し、脳を包む比較的固い膜のことです。この硬膜の下で脳の表面に血液が貯留するため硬膜下血腫と呼ばれています。
男性高齢者に多くみられますが、比較的若い人や、頭を打った記憶がない人にもみられます。外傷以外の原因としてアルコール多飲、脳圧の低下、感染、動脈硬化、貧血などが知られています。
軽い打撲などで発生した硬膜下腔の出血は、吸収されずに1ヶ月ぐらいかけて徐々に被膜に包まれて硬膜下腔に残ることがあります。この被膜は出血しやすいため、再出血を繰り返し、機序は不明ですが、血液(ほとんど液体!)が徐々に増大する特徴を有しています。増大した血腫が脳を圧迫することで様々な症状を呈します。血腫増大スピードが比較的遅いため、症状の出現、進行は緩徐なのが特徴です。しかし治療の時期が遅れると、意識障害、知能障害、頭痛、嘔気、片麻痺、失語など様々な症状が出現し、さらに放置すると死亡することもあります。
治療方法
治療の目的は血腫を除去し、脳の圧迫を解除することでその構造を正常に復元することです。
実際の手術(穿頭血腫除去洗浄術)について
具体的な方法
- 局所麻酔下に頭皮を約3〜5cm切開します。
- 1.5cm程度の小さな穴を頭蓋骨にあけて、硬膜を切開します。大抵の場合、血腫が自然に流出してきます。
- その穴よりゴムのチューブを血腫腔内に挿入し、血腫内容を洗浄しつつ除去します。
穿頭血腫除去洗浄術の合併症について
この手術は、脳外科の手術の中では比較的危険性が低いといわれていますが、頭蓋骨に穴をあけたり硬膜を切開したりする操作で、脳に傷をつけることがあります。また血腫除去に伴う脳の構造変化や洗浄の操作による脳への圧迫により、稀に予想せぬ場所に脳出血を起こすことがあります。また、術中の痛みなどで血圧が上昇しそのために脳出血をおこすこともあります。その他、外科手術一般における危険性としての麻酔、輸血、薬剤による肝臓その他の臓器への障害や術後感染は、十分予防を心がけていますが皆無ではありません。これらの合併症を生じ最悪の場合は死亡したり、重篤な後遺症を残すことになる危険性もあります。
次にこの手術における限界について説明します。一般的には手術により症状の著明な改善が得られますが、高齢者などでは圧迫されていた脳の正常構造への回復が悪く、術後も症状の改善がみられないこともあります。また術前診断が困難な多房性血腫の場合、手術により完全な血腫除去が得られないことがあります。さらにまた手術により症状が軽快していたのに、術後に再発が生じ症状が再出現することがあります。このような時は再手術が必要になります。再手術の方法、危険性、合併症はこれまで説明してきたものと同じです。
* 急性硬膜下血腫との違い
急性硬膜下血腫は、頭部打撲直後に生じる病態です。ヒトの血は、出血後すぐに固まる性質を持っているため、急性の場合はゼラチン状の血腫が硬膜の下に貯まるため、上記のような穿頭術では除去できず、開頭術が必要となるケースがほとんどです。また脳挫傷を伴うことも多く、多くの場合は重症です。
くも膜下出血(脳動脈瘤破裂)について
くも膜下出血(脳動脈瘤破裂)とは
くも膜下出血は脳をとりかこんでいるくも膜と脳の間に出血が起こった状態を指します。頭部外傷によりくも膜下出血を生じることもありますが、非外傷性くも膜下出血の原因のほとんどは、脳の動脈の分岐部にできた動脈瘤というコブ(脳動脈瘤)が破裂することによって生じます。脳動脈瘤の成因は明らかではありませんが、一般に動脈分岐部の壁に先天的に弱い部分があり、そこに血液の流れ、加齢による動脈硬化や高血圧などが加わって動脈瘤が発生すると考えられています。動脈瘤の壁は非常に弱く破れやすい状態(焼けた餅が膨らんだ状態に似ています)となっており、これが破裂してくも膜下出血を生じるのです。いったん動脈瘤が破裂をし、くも膜下出血を生じると約30〜50%の人が死亡するといわれています。
動脈瘤からの出血は通常短時間であり、血液中の凝固成分が血糊となり破裂した部位を塞いで一次的に止血されます。しかしこの血糊(凝血塊)による止血効果は弱く、いつ再破裂してもおかしくない非常に不安定な状態となっています。ですので一度破裂した動脈瘤が再破裂し死亡したり、重篤な後遺症をもたらす危険性は非常に高いと考えられます。 統計によれば、発症24時間以内に再出血のピークがあり、約20%が2週間以内に再出血し、6ヶ月までに50%程度の患者さんが再出血するといわれています。
また、くも膜下出血後には脳血管攣縮という問題もあります。脳血管攣縮の原因は未だ解明されていませんが、くも膜下出血発症後4日目から 14日をピークとして生じ、症状を呈する頻度は20〜30%程度といわれています。脳血管攣縮により脳の血流が低下し、程度が強いと脳梗塞を生じてしまいます。非常に強い場合は死に至るケースもあります。
さらに、くも膜下出血により脳で作られる脳脊髄液(髄液)の循環が障害されて、水頭症を生じる場合があります。髄液は脳室と呼ばれる部屋で1日に約500ml産生され脳を循環し、脳表近くで吸収されるしくみとなっています。水頭症とは髄液循環が障害され、脳室が拡大してしまう病態のことです。これにはくも膜下出血が発症してすぐに起こる急性水頭症と、約1ヶ月ほど経過してからの遅発性水頭症があり、急性水頭症を生じた場合、速やかに脳室ドレナージ等の処置が必要となります。遅発性の場合は主にシャント術と呼ばれる髄液をお腹の中等に流すシステムを作る手術が必要となります。
治療方法
治療の目的は脳動脈瘤が破裂することを防止することです。破裂を防ぐためには、瘤内の血流を遮断する必要があります。それには開頭して行うクリッピング術と、カテーテルで治療するコイル塞栓術があり、それぞれに長所・短所があります。
実際の手術(開頭クリッピング術)について
具体的な方法
- 全身麻酔下に皮膚を切開し、頭蓋骨を外します。
- 骨と脳の間には硬膜という硬い膜があるので、これを切開し脳を露出します。
- 顕微鏡を使って脳の隙間を分けて動脈瘤に到達、それまでのくも膜下腔に存在する血腫をできる限り洗浄除去します(血管攣縮予防のためです)。
- 再破裂しないように十分に注意し、動脈瘤の根元の部分(頚部)にチタン合金製のクリップをかけ動脈瘤への血流を遮断します。
- 硬膜を縫合し、頭蓋骨をチタン製のプレートでネジ固定します。
- 骨膜、筋層ごとに閉じ、皮下にドレーンを留置し、皮膚を閉じて手術を終了します。
*手術時の動脈瘤の状況でクリップができない場合、コーティング(動脈瘤の壁を接着剤で補強する)やトラッピング(脳を栄養する動脈ごと止めてしまう)をおこなって破裂を予防する方法をとらなければならないこともあります。
手術時期について
脳動脈瘤クリッピング術は発症早期に行う早期手術と、発症から約2週間以後に行う晩期手術があります。できるだけ早期にクリッピングを行い、血管攣縮に対処することが理想的ですが、患者さんの状態により再破裂と血管攣縮の危険はありますが2週間以後に行う場合があります。
開頭による脳動脈瘤クリッピング術の合併症について
1)手術中、手術後の頭蓋内出血、脳梗塞、手術による脳損傷
脳動脈瘤クリッピング術の際最も問題となるのは手術中、手術後の頭蓋内出血と脳梗塞です。一度破裂した動脈瘤は出血しやすく、手術中に動脈瘤に到達する前に破裂した場合に出血が止められなくなったり急速に脳の腫れが強くなり手術ができなくなる可能性があります。手術中に脳を栄養する動脈を損傷しその結果脳梗塞を生じる危険性もあります。また、いかに注意深く完全な手術をしたとしても、手術後に脳内出血などの頭蓋内出血が生じる可能性や現在機能している脳あるいは神経などを損傷し、様々な神経後遺症(意識障害、運動障害、失語、視野障害など)を生じる危険性もあります。
2)脳血管攣縮
脳動脈瘤クリッピング術がうまくいったとしても、強い脳血管攣縮が原因で脳梗塞を生じることがあります。また、攣縮が非常に強い場合は死亡する危険性もあります。
3)感染
生体は皮膚、粘膜などに被われ外からの微生物の侵入を防いでいます。開頭手術により脳、硬膜、皮下組織などが露出されてしまいます。我々は無菌手術を心がけていますが、手術の際微生物の侵入をゼロにすることは困難です。多くの患者さんでは術後感染の問題は生じませんが、術前の状態によって患者さんの抵抗力が弱かったりすると術後髄膜炎、脳膿瘍、皮下膿瘍、硬膜外膿瘍などの感染性合併症を生じる危険性があります。
4)麻酔、輸血、薬剤などによるショック、肝炎の感染の危険性
開頭手術のためには麻酔薬をはじめ様々な多くの薬剤を使用します。これらの薬剤は高い安全性が確立されていますが、人によっては使用した薬剤に対し過敏な反応(ショック、アレルギー)や予想しえない副作用を生じることがあります。 手術時、皮膚切開などからの出血をできるだけ少なくすることを心がけますが、出血量が多くなると輸血をする必要があります。(輸血リスクについては別紙参照)。
5)糖尿病、高血圧、心疾患、肺気腫、胃潰瘍、肝不全、腎不全、パーキンソン病、内分泌疾患、精神疾患など
これまで顕在化していなかった上記疾患が手術を契機として発症することがあります。また患者さんがこれまで既往疾患として持っておられる病気がより重くなることもあります。
6)褥瘡
手術時間が長くなり同じ体位をとり続けると、手術台などの器具に接触している手足、体部、胸部などに褥瘡を生じることがあります。また、眼球部が圧迫を受けると失明することもあります。
7)美容上の問題
開頭する際、頭蓋骨を一部削除する可能性もあり、手術後頭蓋骨が変形し美容上問題を生じることがあります。
8)その他予想外の合併症
術中、術後管理にて上に述べた合併症の発生を防止するよう努力しますが、残念ながら予想できない事態が生じ、予想外の合併症を生じることがあります。これらの合併症を生じ、最悪の場合は死亡することや、重い神経後遺症を生じる可能性もあります。
手術侵襲が拡大する可能性について
手術前の検査にて発見できなかった、病気(たとえば未破裂脳動脈瘤、動静脈奇形、脳腫瘍など)が偶然手術操作中に見つかった場合、その病気に対する治療を行います。
カテーテル治療による脳動脈瘤の塞栓(コイル塞栓術)
太股の血管よりカテーテルを挿入し、人工的な物質(金属コイルなど)で脳動脈瘤を詰めてしまう方法です。
具体的な方法
- 太股の付け根辺りから大腿動脈にカテーテルを挿入し、血管造影装置でカテーテルの動きを確認しながら、そのさらに内側にマイクロカテーテルという直径1mm以下の非常に細い治療用の管を脳まで進め、脳動脈瘤内に到達させます。
- 脳動脈瘤内にマイクロカテーテル先端を留置します。
- マイクロカテーテルを通し、プラチナ製のコイルを動脈瘤内に留置します。
- 動脈瘤内に血液が入らなくなるまで複数のコイル(数本〜数十本)を留置します。
利点
- 開頭せずに出来るため、侵襲が非常に少ない。
問題点
- 術中出血:脳動脈瘤の中にマイクロカテーテルを挿入するときや、コイルを留置していく際に動脈瘤の壁が破れて出血するリスクがあります(1〜2%)。コイルをそのまま詰めることにより多くの場合は止血できますが、致死的な合併症に繋がる危険性があります。
- 脳梗塞:カテーテルに血栓が付着してこれが脳血管を塞いでしまった場合には脳梗塞を合併する危険性があります。
- 穿刺部血腫:止血処置後に穿刺した動脈から出血して輸血が必要となることがあります。
- 造影剤による影響:アレルギーやショックといった急性変化を生じる危険性、また、腎機能障害を生じる危険性があります。
- 根治性の問題:血管造影装置のクオリティが年々上昇してはいるものの、動脈瘤内のすべての間隙をコイルに完全に置き換えることは不可能です。現在動脈瘤体積は簡単にコンピューター上で計算ができます。また詰めるコイルも商品なので体積が表記されています。造影剤が動脈瘤内に入っていかないことを確認するまでコイルを詰める、これはあくまで肉眼的所見であり、実際に詰めるコイル体積の割合(塞栓率)は30%にも満たないことがほとんどです。つまり、動脈瘤内の血流を減らして血栓化を促す治療となります。そのため、動脈瘤が最増大するかどうかをカテーテル検査で定期的に行う必要があります。
脳動脈瘤(未破裂)について
脳動脈瘤とは
脳動脈瘤とは脳の動脈の分岐部にコブができた状態のことをいいます。脳動脈瘤の成因は明らかではありませんが、一般に動脈分岐部の壁に先天的に弱い部分があり、そこに血液の流れ、年齢による動脈硬化や高血圧などが加わって動脈瘤が発生すると考えられています。脳動脈瘤自体は無症状のことがほとんどですが、まれに脳神経を圧迫して脳神経麻痺症状をきたすこともあります。
なぜ脳動脈瘤が問題になるか、それはくも膜下出血の原因となるからです。動脈瘤の壁は通常の血管に比べ弱く破れやすい状態で、普段無症状であってもある日突然破裂してくも膜下出血を生じる可能性があります。脳動脈瘤が破裂すると死亡したり、重篤な後遺症を生じることが多くあります。普通、脳動脈瘤はクモ膜下出血を生じた後に発見されることがほとんどですが、最近CTスキャンやMRIなどの診断技術の進歩で破裂する以前に発見される機会が増加しており、成人人口の2〜4%に発見されるといわれています。
発見されたすべての未破裂動脈瘤が破裂するわけではありませんが、くも膜下出血を生じると約30〜50%の人が初回破裂時に死亡するといわれています。具体的に患者さんの脳動脈瘤がいつ破裂するか、あるいは破裂しないかは現在の医学水準では予測不可能です。未破裂動脈瘤が破裂に至る確率は高くはありませんが、10年、20年という単位で考えると脳動脈瘤が破裂し死亡したり、重篤な後遺症をもたらす可能性は無視できないと考えられます。
治療方法
治療の目的は脳動脈瘤が破裂することを防止することです。破裂を防ぐためには、瘤内の血流を遮断する必要があります。それには開頭して行うクリッピング術と、カテーテルで治療するコイル塞栓術があり、それぞれに長所・短所があります。
実際の手術(開頭クリッピング術)について
具体的な方法
- 全身麻酔下に皮膚を切開し、頭蓋骨を外します。
- 骨と脳の間には硬膜という硬い膜があるので、これを切開し脳を露出します。
- 顕微鏡を使って脳の隙間を分けて動脈瘤に到達し、動脈瘤の根元の部分(頚部)にチタン合金製のクリップをかけ動脈瘤への血流を遮断します。
- 硬膜を縫合し、頭蓋骨をチタン製のプレートでネジ固定します。
- 骨膜、筋層ごとに閉じ、皮下にドレーンを留置し、皮膚を閉じて手術を終了します。
*手術時の動脈瘤の状況でクリップができない場合、コーティング(動脈瘤の壁を接着剤で補強する)やトラッピング(脳を栄養する動脈ごと止めてしまう)をおこなって破裂を予防する方法をとらなければならないこともあります。
*くも膜下出血を生じた(破裂した)脳動脈瘤の場合にも同じような手術を行いますが、脳が腫れていることや、既に出血しているため術野確保が困難となることから、未破裂動脈瘤手術に比べ手術難易度が高くなるため、死亡あるいは後遺症を生じる可能性が高くなります。
利点
- 完治します。
欠点
- 開頭を要するため、侵襲が大きい(頭部に傷がつきます)。
開頭による脳動脈瘤クリッピング術の合併症について
1)手術中、手術後の頭蓋内出血、脳梗塞、手術による脳損傷
脳動脈瘤クリッピング術の際最も問題となるのは手術中、手術後の頭蓋内出血と脳梗塞です。一度破裂した動脈瘤は出血しやすく、手術中に動脈瘤に到達する前に破裂した場合に出血が止められなくなったり急速に脳の腫れが強くなり手術ができなくなる可能性があります。手術中に脳を栄養する動脈を損傷しその結果脳梗塞を生じる危険性もあります。
また、いかに注意深く完全な手術をしたとしても、手術後に脳内出血などの頭蓋内出血が生じる可能性や現在機能している脳あるいは神経などを損傷し、様々な神経後遺症(意識障害、運動障害、失語、高次脳障害、視野障害など)を生じる危険性もあります。
2)感染
生体は皮膚、粘膜などに被われ外からの微生物の侵入を防いでいます。開頭手術により脳、硬膜、皮下組織などが露出されてしまいます。我々は無菌手術を心がけていますが、手術の際微生物の侵入をゼロにすることは困難です。多くの患者さんでは術後感染の問題は生じませんが、術前の状態によって患者さんの抵抗力が弱かったりすると、術後髄膜炎、脳膿瘍、皮下膿瘍、硬膜外膿瘍などの感染性合併症を生じる危険性があります。
3)麻酔、輸血、薬剤などによるショック、肝炎の感染の危険性
開頭手術のためには麻酔薬をはじめ様々な多くの薬剤を使用します。これらの薬剤は高い安全性が確立されていますが、人によっては使用した薬剤に対し過敏な反応(ショック、アレルギー)や予想しえない副作用を生じることがあります。
手術時、皮膚切開などからの出血をできるだけ少なくすることを心がけますが、出血量が多くなると輸血をする必要があります(輸血リスクについては別紙参照)。
4)糖尿病、高血圧、心疾患、肺気腫、胃潰瘍、肝不全、腎不全、パーキンソン病、内分泌疾患、精神疾患など
これまで顕在化していなかった上記疾患が手術を契機として発症することがあります。また患者さんがこれまで既往疾患として持っておられる病気がより重くなることもあります。
5)褥瘡
手術時間が長くなり同じ体位をとり続けると、手術台などの器具に接触している手足、体部、胸部などに褥瘡を生じることがあります。また、眼球部が圧迫を受けると失明することもあります。
6)美容上の問題
開頭する際、頭蓋骨を一部削除する可能性もあり、手術後頭蓋骨が変形し美容上問題を生じることがあります。
7)その他予想外の合併症
術中、術後管理にて上に述べた合併症の発生を防止するよう努力しますが、残念ながら予想できない事態が生じ、予想外の合併症を生じることがあります。これらの合併症を生じ、最悪の場合は死亡することや、重い神経後遺症を生じる可能性もあります。
手術侵襲が拡大する可能性について
手術前の検査にて発見できなかった病気(たとえば未破裂脳動脈瘤、動静脈奇形、脳腫瘍など)偶然手術操作中に見つかった場合、その病気に対する治療を行います。
カテーテル治療による脳動脈瘤の塞栓(コイル塞栓術)
太股の血管よりカテーテルを挿入し、人工的な物質(金属コイルなど)で脳動脈瘤を詰めてしまう方法です。
具体的な方法
- 太股の付け根辺りから大腿動脈にカテーテルを挿入し、血管造影装置でカテーテルの動きを確認しながら、そのさらに内側にマイクロカテーテルという直径1mm以下の非常に細い治療用の管を脳まで進め、脳動脈瘤内に到達させます。
- 脳動脈瘤内にマイクロカテーテル先端を留置します。
- マイクロカテーテルを通し、プラチナ製のコイルを動脈瘤内に留置します。
- 動脈瘤内に血液が入らなくなるまで複数のコイル(数本〜数十本)を留置します。
利点
- 開頭せずに出来るため、侵襲が非常に少ない。
問題点
- 術中出血:脳動脈瘤の中にマイクロカテーテルを挿入するときや、コイルを留置していく際に動脈瘤の壁が破れて出血するリスクがあります(1〜2%)。コイルをそのまま詰めることにより多くの場合は止血できますが、致死的な合併症に繋がる危険性があります。
- 脳梗塞:カテーテルに血栓が付着してこれが脳血管を塞いでしまった場合には脳梗塞を合併する危険性があります。
- 穿刺部血腫:止血処置後に穿刺した動脈から出血して輸血が必要となることがあります。
- 造影剤による影響:アレルギーやショックといった急性変化を生じる危険性、また、腎機能障害を生じる危険性があります。
- 根治性の問題:血管造影装置のクオリティが年々上昇してはいるものの、動脈瘤内のすべての間隙をコイルに完全に置き換えることは不可能です。現在動脈瘤体積は簡単にコンピューター上で計算ができます。また詰めるコイルも商品なので体積が表記されています。造影剤が動脈瘤内に入っていかないことを確認するまでコイルを詰める、これはあくまで肉眼的所見であり、実際に詰めるコイル体積の割合(塞栓率)は30%にも満たないことがほとんどです。つまり、動脈瘤内の血流を減らして血栓化を促す治療となります。そのため、動脈瘤が最増大するかどうかをカテーテル検査で定期的に行う必要があります。
髄膜腫について
髄膜腫とは
髄膜腫は全脳腫瘍のうち約25%前後を占めるといわれています。その発生原因は明らかでありませんが、硬膜という脳を覆っている膜の細胞から発生する良性の腫瘍です。発生する部位は硬膜のある部位ではどこからでも発生する可能性がありますが、発生しやすい場所はだいたい決まっています。大脳半球円蓋部、傍矢状洞部、大脳鎌、蝶形骨縁、小脳橋角部、傍鞍部などに発生します。大きくなるまでの経過は長いことが多く、徐々に増大し脳を圧迫してゆきます。症状は単なる頭痛から、発生する部位により精神症状・麻痺・けいれん・知覚障害・視力視野障害・嗅覚障害などいろいろな症状をきたします。さらに、腫瘍を放置すると徐々に大きくなり脳の圧迫が強くなり、症状が進行し頭蓋内の圧力が高まりやがては生命に危険を及ぼすようになるケースもあります
治療方法
髄膜腫はゆっくりと大きくなる良性腫瘍で一刻を争って治療しなければならないと言うわけではありません。ではなぜ手術が必要なのか、もしくは手術が必要な症例が存在するのか?以下にその理由を挙げてみます。
- 腫瘍の正確な病理組織が得られますので、良性か悪性かの判断が可能です。
- 良性の腫瘍では全ての腫瘍を摘出することにより治癒が期待されます。
- たとえ全ての腫瘍を摘出することができなくても、腫瘍の周辺組織への圧迫を軽減することにより症状の軽快が期待できます。
実際の手術(開頭腫瘍摘出術)について
具体的な方法
- 全身麻酔下に皮膚を切開し、頭蓋骨を外します。
- 骨と脳の間には硬膜という硬い膜があるので、これを切開し脳と一部腫瘍を露出します。
- 腫瘍は硬膜から発生しているため、顕微鏡を用い腫瘍と硬膜の分断を図ります。
- 腫瘍の大きさにもよりますが、超音波吸引装置等を用い腫瘍の縮小化を図ります(内減圧)。
- 腫瘍に接している脳組織や神経、血管等を損傷しないよう、腫瘍と剥離します。
- 腫瘍の発生母地となっている硬膜と腫瘍を摘出します。
- 硬膜を縫合し、頭蓋骨をチタン製のプレートでネジ固定します。
- 骨膜、筋層ごとに閉じ、皮下にドレーンを留置し、皮膚を閉じて手術を終了します。
* 腫瘍の部位や状況によっては、全摘出できないことや、意図的に発生母地である硬膜を含め腫瘍を残存させることもあります。
開頭による腫瘍摘出術の合併症について
1)手術中、手術後の頭蓋内出血、脳浮腫
腫瘍摘出術の際最も問題となるのは手術中、手術後の頭蓋内出血と脳腫脹です。中には腫瘍への血液供給が高いケースもあり、その場合は正常の血管に比べ脆弱で出血しやすい特徴があり、手術中および手術後に、出血を生じる可能性があります。また手術侵襲そのものが脳の腫れ(脳浮腫)を助長し更に強い浮腫を合併する危険性があります。術後出血や脳浮腫を合併した場合、生命を脅かす危険性もあり、場合によっては再手術が必要となるケースもあります。
2)脳梗塞の合併および手術に伴う脳損傷の危険性
手術中に脳を栄養する血管(動脈)や脳を還流している血管(静脈)を損傷し、脳梗塞を生じる危険性があります。また腫瘍を摘出する際に脳、神経あるいは血管を損傷し、新たな機能障害を生じる危険性もあります。
3)術後けいれん
脳腫瘍術後はけいれん発作をおこしやすく、術前・術後に渡り抗けいれん剤というお薬をのんでいただくことがあります。それにもかかわらず長期に渡りけいれん発作が持続し、てんかんに陥ってしまうケースもあります。
4)感染
生体は皮膚、粘膜などに被われ外からの微生物の侵入を防いでいます。開頭手術により脳、硬膜、皮下組織などが露出されてしまいます。我々は無菌手術を心がけていますが、手術の際微生物の侵入をゼロにすることは困難です。多くの患者さんでは術後感染の問題は生じませんが、術前の状態によって患者さんの抵抗力が弱かったりすると、術後髄膜炎、脳膿瘍、皮下膿瘍、硬膜外膿瘍などの感染性合併症を生じる危険性があります。
5)麻酔、輸血、薬剤などによるショック、肝炎の感染の危険性
開頭手術のためには麻酔薬をはじめ様々な多くの薬剤を使用します。これらの薬剤は高い安全性が確立されていますが、人によっては使用した薬剤に対し過敏な反応(ショック、アレルギー)や予想しえない副作用を生じることがあります。
手術時、皮膚切開などからの出血をできるだけ少なくすることを心がけますが、出血量が多くなると輸血をする必要があります(輸血リスクについては別紙参照)。
6)糖尿病、高血圧、心疾患、肺気腫、胃潰瘍、肝不全、腎不全、パーキンソン病、内分泌疾患、精神疾患など
これまで顕在化していなかった上記疾患が手術を契機として発症することがあります。また患者さんがこれまで既往疾患として持っておられる病気がより重くなることもあります。
7)褥瘡
手術時間が長くなり同じ体位をとり続けると、手術台などの器具に接触している手足、体部、胸部などに褥瘡を生じることがあります。
8)美容上の問題
開頭する際、頭蓋骨を一部削除する可能性もあり、手術後頭蓋骨が変形し美容上問題を生じることがあります。
9)その他予想外の合併症
術中、術後管理にて上に述べた合併症の発生を防止するよう努力しますが、残念ながら予想できない事態が生じ、予想外の合併症を生じることがあります。これらの合併症を生じ、最悪の場合は死亡することや、重い神経後遺症を生じる可能性もあります。
手術侵襲が拡大する可能性について
手術前の検査にて発見できなかった病気(たとえば脳動脈瘤、他の脳腫瘍など)が偶然手術操作中に見つかった場合、その病気に対する治療を行います。
その他の治療法について
ガンマナイフ(特殊な放射線治療装置)による治療
髄膜腫に対し放射線を集中的に浴びせその腫瘍細胞を破壊してしまうガンマナイフによる治療が始められ、現在では健康保険の適応も受けています。現在我々の施設ではガンマナイフによる治療は行っていませんが、ガンマナイフ治療が適切であると判断したり、特にガンマナイフを希望される患者さんにはガンマナイフ治療が可能な施設に紹介しています。ただしガンマナイフ治療には次の問題点があります。
髄膜腫に対するガンマナイフの治療効果については意見が分かれており、ガンマナイフが有効であるか不明です。
ガンマナイフは放射線治療です。従来の放射線治療法との違いはコンピューターで計算し腫瘍部分に高い放射線量が当たるように工夫されたものです。こうした放射線被曝の面より腫瘍の大きさが3cm以下でないとガンマナイフ治療は行っていません。しかし、3cm以下であってもガンマナイフにより正常の脳にもある程度の放射線を受けることになります。特に腫瘍の近くではかなりの量の放射線被曝する場合もあると考えられます。放射線の影響はかなり長期間・数十年以上にわたり残り、放射線の副作用(脳の変性・機能障害)が出現、進行しうる可能性が最近指摘されています。とくに患者さんの年齢が若い場合、注意を要すると考えられます。
また、術前髄膜腫と考えられた症例であっても、手術の結果他の腫瘍であることがあります。従って腫瘍の場合摘出標本の病理学的検討が望ましいと考えられます。ガンマナイフ治療では腫瘍を摘出しないため腫瘍の病理学的検査が施行できず最終的な病理学的診断ができません。
腫瘍の再発の可能性について
腫瘍を肉眼的に全部摘出できたとしても、いままでの統計によれば10年間に約10〜20%の確率で再発する可能性があるといわれています。やむを得ず腫瘍を残さなければならなかった場合では5年前後で約30〜50%に再発があり得るといわれています。
悪性である可能性、他の腫瘍である可能性について
髄膜腫は一般に良性の腫瘍ですが、その数%に悪性のものがあるといわれています。また最初は良性であっても後に悪性化する場合もあります。そのほか、手術前の検査の結果髄膜腫であると考えられても実際に腫瘍を摘出して病理検査の結果他の種類の腫瘍である可能性もあります。これらについては手術後に摘出した腫瘍を病理検査して結果を後日お知らせします。
神経膠腫について
神経膠腫(グリオーマ)とは
一般に脳は神経細胞(ニューロン)および様々な種類のグリア細胞から構成されています。グリオーマとは脳の大部分を構成しているグリア細胞が腫瘍化したもの、つまり、“脳のがん”と言っても過言ではありません。グリオーマは全脳腫瘍の中で最も頻度が高く(約30%)、いくつかの種類に分類されますが基本的には増殖能が高く、浸潤性に脳を侵す難治性悪性腫瘍の代表です。腫瘍が増大する事によって周囲の脳組織を浸潤性に破壊したり、周囲の脳を圧迫したり、脳浮腫を合併する事によって、運動障害(麻痺)、感覚障害あるいは意識障害など、様々な重篤な神経症状が出現します。また腫瘍の増大や脳の腫れ(脳浮腫)に伴って頭蓋内の圧力が上昇(頭蓋内圧亢進症)し、圧迫を受けた脳は行き場を失い、頭蓋内の隙間から飛び出そうとします(脳ヘルニア)。脳ヘルニアに至ると脳幹と呼ばれる命の中枢を担う役割の部位を直接圧迫し意識障害の原因となったり、脳の血管を閉塞(脳梗塞の合併)させたりすることで生命の危機に陥ってしまいます。
治療方法
治療の最大の目標は腫瘍をできるだけ小さくし、腫瘍の増大を遅らせる事です。具体的には手術により直接摘出したり、補助療法と呼ばれる化学療法(抗がん剤)や放射線療法による方法等があります。
実際の手術(開頭腫瘍摘出術)について
具体的な方法
- 全身麻酔下に皮膚を切開し、頭蓋骨を外します。
- 骨と脳の間には硬膜という硬い膜があるので、これを切開し脳を露出します。
- 顕微鏡を使って脳の隙間を分けて脳腫瘍に到達し、できる限り周囲脳を損傷しない様に注意を払い腫瘍を摘出します。
- 硬膜を縫合し、頭蓋骨をチタン製のプレートでネジ固定します。
- 骨膜、筋層ごとに閉じ、皮下にドレーンを留置し、皮膚を閉じて手術を終了します。
*腫瘍の部位や状況によっては、肉眼的に全摘出できないことや、意図的に腫瘍を残存させることもあります。
開頭腫瘍摘出術の合併症について
1)手術中、手術後の腫瘍内出血と脳浮腫
摘出術の際、最も問題となるのは手術中、手術後の頭蓋内出血と脳浮腫です。悪性度が高いほど腫瘍への血液供給が高いと考えられます。腫瘍血管は正常の血管に比べ脆弱で、出血しやすい特徴があります。手術で腫瘍を完全に摘出する事は困難ですので、手術中および手術後に、出血を生じる可能性があります。また手術侵襲そのものが脳の腫れ(脳浮腫)を助長する可能性もありますが、悪性腫瘍では更に強い浮腫を合併する危険性があります。術後出血や脳浮腫を合併した場合、生命を脅かす危険性もあり、場合によっては再手術が必要となるケースもあります。
2)脳梗塞の合併および手術に伴う脳損傷の危険性
手術中に脳を栄養する血管(動脈)や脳を還流している血管(静脈)を損傷し、脳梗塞を生じる危険性があります。また腫瘍を摘出する際に脳、神経あるいは血管を損傷し、新たな機能障害を生じる危険性もあります。
3)術後けいれん
脳腫瘍術後はけいれん発作をおこしやすく、術前・術後に渡り抗けいれん剤というお薬をのんでいただくことがあります。それにもかかわらず長期に渡りけいれん発作が持続し、てんかんに陥ってしまうケースもあります。
4)感染
生体は皮膚、粘膜などに被われ外からの微生物の侵入を防いでいます。開頭手術により脳、硬膜、皮下組織などが露出されてしまいます。我々は無菌手術を心がけていますが、手術の際微生物の侵入をゼロにすることは困難です。多くの患者さんでは術後感染の問題は生じませんが、術前の状態によって患者さんの抵抗力が弱かったりすると、術後髄膜炎、脳膿瘍、皮下膿瘍、硬膜外膿瘍などの感染性合併症を生じる危険性があります。
5)麻酔、輸血、薬剤などによるショック、肝炎の感染の危険性
開頭手術のためには麻酔薬をはじめ様々な多くの薬剤を使用します。これらの薬剤は高い安全性が確立されていますが、人によっては使用した薬剤に対し過敏な反応(ショック、アレルギー)や予想しえない副作用を生じることがあります。 手術時、皮膚切開などからの出血をできるだけ少なくすることを心がけますが、出血量が多くなると輸血をする必要があります(輸血リスクについては別紙参照)。
6)糖尿病、高血圧、心疾患、肺気腫、胃潰瘍、肝不全、腎不全、パーキンソン病、内分泌疾患、精神疾患など
これまで顕在化していなかった上記疾患が手術を契機として発症することがあります。また患者さんがこれまで既往疾患として持っておられる病気がより重くなることもあります。
7)褥瘡
手術時間が長くなり同じ体位をとり続けると、手術台などの器具に接触している手足、体部、胸部などに褥瘡を生じることがあります。また、眼球部が圧迫を受けると失明することもあります。
8)美容上の問題
開頭する際、頭蓋骨を一部削除する可能性もあり、手術後頭蓋骨が変形し美容上問題を生じることがあります。
9)その他予想外の合併症
術中、術後管理にて上に述べた合併症の発生を防止するよう努力しますが、残念ながら予想できない事態が生じ、予想外の合併症を生じることがあります。これらの合併症を生じ、最悪の場合は死亡することや、重い神経後遺症を生じる可能性もあります。
手術侵襲が拡大する可能性について
手術前の検査にて発見できなかった病気(たとえば脳動脈瘤、他の脳腫瘍など)が偶然手術操作中に見つかった場合、その病気に対する治療を行います。
補助療法について
- 化学療法(抗がん剤)と放射線療法
その名の通り、あくまでも補助療法、つまり、手術によりできる限り摘出した後の治療方法です。化学療法では内服薬が開発されています。放射線療法には複数の照射方法があり、その腫瘍に応じた使い分けをします。
予後、患者さんの病状についての将来の予測
これまで説明したように治療には様々な問題を生じることがあります。更にこの様に様々な治療法を駆使しても残念ながら再発は免れ得ず、最悪のものでは2年生存率20%以下、5年生存される方は極めて少数です(10%以下)。