アトピー性皮膚炎を治療するのに、ステロイド外用薬とともに、必ずと言っていいほど処方される保湿剤。
ステロイド剤は何となく、肌荒れや痒みにも効果がありそうなイメージですが、保湿剤はどうして必要なのでしょうか?実は、保湿剤にも、ただ単に皮膚をしっとりさせるだけでなく、アトピー性皮膚炎で起こる痒みも軽減する効果があるのです。
アトピーなどで、皮膚がカサカサした乾燥肌やドライスキンになると、痒みの神経(C‐繊維)が基底層の下の方から上の方へ伸びてきて、表皮の中にまで入ってきます。すると、痒みに敏感な「敏感肌」になるのです。
この痒みの神経(C‐繊維)は、上に伸びてきたり下に引っ込んだりする特性があり、上に伸びてきたら、痒みが起きて「敏感肌」になってしまい、下に引っ込めば痒みも治まり「良い状態」ということになります。
それを調節しているのが、
- 神経反発因子(NEF):痒みの神経(C‐繊維)を基底膜の下へ引っ込める作用がある。
- 神経伸長因子(NRF):痒みの神経(C‐繊維)を表皮内へ伸ばす作用がある
の2つの物質。
乾燥肌になると、「神経反発因子(NEF)」が弱くなり、「神経伸長因子(NRF)」が強くなるので、痒みの神経(C‐繊維)が表皮内へどんどん伸びてきて、痒みに敏感になってしまいます。
健康肌とアトピー肌の比較
ここで「保湿剤」の出番
保湿剤を塗ると、強くなっている神経伸長因子を正常に戻してくれるので、上へ伸びてきた痒みの神経(C‐繊維)を下に引っ込めてくれます。少し粉がふいたような軽い乾燥肌だとしても、保湿剤でしつかりとスキンケアしておくことで、痒みを抑えることができるのです。
アトピー肌の保湿は「セラミド補給」がポイント
本来、肌の表面は皮脂膜という天然の保護成分で覆われています。その下の角質層は、角質細胞がレンガを積み上げたように並び、その隙間に細胞問脂質があります。細胞間脂質は、セラミドと呼ばれる脂質とコレステロールなどが交互に層をなしていて、その間に水分が蓄えられています。これがみずみずしい肌の秘訣です
アトピー肌や敏感肌の場合、皮脂膜が薄く、セラミドの量も極端に少なくなっている傾向があります。皮脂膜が薄いと肌の水分が蒸発しやすく、アレルゲンとなる異物も体内に侵入しやすくなりますメまたセラミドが少ないと肌に充分な水分が蓄えられません。つまり帆の表面と内側、2つの保水機能が十分に働いていない状態なのです。
乾燥は肌の大敵なので、何はともあれ「保湿を徹底的に行なう」ことが先決
アトピー肌や敏感肌のスキンケアは、「皮膚バリアを修復する」ことが最大の目的。そのためには、
- 皮膚バリアを壊す化粧品や日用品の使用をストップする。
- 壊れてしまった角質層を補うスキンケアをする。
ことが大切です。
その場合、スキンケアのタイミングを朝と夜だけ決めるのではなく、「乾燥を感じたら即保湿」というような、臨機応変のケアが必要になります。たとえば、午前に1回、午後に1回、さっと顔を洗って(また化粧水で肌を潤して)保湿し直す、という時間をとってみるだけで、肌の状態は変わるハズ。
これだけは絶対!効果的に保湿するための基本4ステップ
1.洗顔後・入浴後
洗顔後やお風呂あがりは、そのままにしないですぐに化粧水で水分補給をしましょう。
2.手のひらの温度でやさしくなじませる
肌になじませるときは、顔の皮膚が動かないくらいの力でやさしく行います。肌がデリケートな状態のときには、できるだけ、手のひらに広げて押さえるように、手のひらのぬくもりを用いながら、やさしくなじませることを心がけてください。
3.スキンケアは1ステップごとに丁寧に
顔の中心から外側へ顔全体にやさしくなじませ、乾燥が気になる部分にはもう一度置くように重ねづけしましょう。しばらく顔全体を手でそっとおさえて、成分をなじませます。アイテムごとに繰り返し行って丁寧にケアしましょう。
4.手に残ったら無駄なく顔以外にも
最後に手に残った化粧水、乳液、クリームは首にものばし、潤いを補います。
保湿アイテムを使う量に迷ったら、それぞれ製品の説明書きを目安にしてください。ただ、乾燥が強い場合は、もったいないと思わず積極的に重ね塗りを。旅行用の詰め替えボトルを利用するなど、出かける時も持ち歩くようにして、外出先でもこまめに保湿をしましょう。
参考:メディプラスゲル/メディプラス
累計販売本数600万本!アトピーで悩む開発者が自らのために考えた敏感肌専用のオールインワンゲルです。高濃度セラミドをはじめ、ヒアルロン酸、コラーゲンなど66種類もの美容成分がたっぷり。オールインワンゲルなのに、しっかりお肌の潤いを実感できると口コミでも評判です。
化粧水、乳液、美容液、クリームの1本4役なので、お手入れ簡単。しかも、スキンケアによる肌摩擦ダメージも最低限までおさえられ、肌に優しい点も敏感肌の方からの評価が高いポイント。
参考:キュレル 潤浸保湿フェイスクリーム(医薬部外品)/キュレル
潤い保持力を助ける潤い成分(潤浸保湿セラミド機能成分、ユーカリエキス)が角層の深部までじっくり浸透。外部刺激で肌荒れしにくい、ふっくらと吸い付くような潤いに満ちた肌を保ち、消炎剤(有効成分*)配合。肌荒れを防ぐ。
参考:バリアバランス保湿ジェル/ティモティア
洗顔後、1つだけでスキンケアができるオールインワンジェル。3種のセラミドと肌をやわらげるエモリエント成分配合で、チクチクとした外部刺激から肌を守りながら、ゴワゴワと硬い肌をしっとりさせる。
参考:バリアバランス保湿クリーム/ティモティア
乾燥肌、敏感肌向けの低刺激性化粧品。水・乳化剤は使用せず、ワセリンとエッセンシャルオイルを使った軟膏タイプのクリーム。バリアバランス保湿ジェルでは、ケアが追いつかないほど乾燥がひどい肌を、保湿・保護する効果がある。
参考:コラージュ薬用保湿化粧水 とてもしっとり/コラージュ
とてもしっとりとした使い心地で、肌にうるおいを与える低刺激性の化粧水です。みずみずしい素肌に。アミノセラミド、コラーゲン、植物性(アミノ酸系)トリメチルグリシン配合。
保湿剤 どんな種類のものがある?どんなものを選べばいい?
処方される保湿剤は、医師と相談しながら、自分の使い心地のよいものを選びましょう。
保湿剤には色々なものがあり、これらの中から選択して使用します。病院で処方されるのは古くからある保湿剤と、医用外用薬ですが、一般用医薬品、医薬部外品でも、医用外用薬と同じものが発売されています。保湿剤は荒れた皮膚をしっとりとさせるために使うもので、自分の皮膚に合ったものであれば医薬部外品や化粧品でもOKです。
よく使われる保湿剤の種類
| 古くからある保湿剤 | ワセリン、親水ワセリン、親水軟膏、オリーブ油など |
| 医薬外用薬 | アズノール軟膏、ブロぺト、ザーネ軟膏、ユベラ軟膏、ケラチナウレパール軟膏・ローション、パスタロンソフト・ローション、ヒルドイドリフトーローションなど |
| 一般用医薬品、医薬部外品・化粧品 | アトピコスキンケアオイル・クリーム、パスタロンクリーム、ウレパールローション・プラスローション、コラージュデルム、ボディローション、ベビーオイル、コールドクリーム、ハンドクリーム、化粧水など |
処方される保湿剤のタイプと特徴
タイプ:長所、短所、商品名
| タイプ | 長所 | 短所 | 商品名 |
| 軟膏ベース | 保湿効果が高い、刺激が少ない | ベタベタ感がある | 白色ワセリン、プロペト、サンホワイト、プラスリベース、アズノール軟膏、亜鉛華軟膏 |
| クリーム・ローションタイプ(ヘパリン入り) | さっぱりとして伸びが良い | 軟膏より保湿効果が弱い | ヒルドイド、ヒロドイドソフト、ヒルドイドローション |
| クリーム・ローションタイプ(尿素入り) | 伸びが良く、硬い皮膚にも浸透しやすい | 皮膚に傷があるとしみる | ウレパール、ケラチナミン、パスタロン |
| その他 | 市販もされている | ザーネ軟膏、オリーブ油 |
例えば「ヒルドイドソフト」と「ヒルドイドローション」を使っているクリニックだと
- ヒルドイドソフト
⇒そのまま顔や手の保湿に使ったり、ステロイドと混ぜて全身の保湿に使う。 - ヒルドイドローション
⇒塗りやすくて、使い心地が良いので、頭や顔や全身の保湿に使う。
といった使い分けをしているようです。
保湿剤は、症状や季節・好みによって、うまく使い分ければ良いですが、「ヒルドイドソフト」や「プロぺト」(ワセリン)を比較した場合、ワセリンは、皮膚を保護するフタの代わりとしては効果が高いものの、角質の水分量を増やす作用は、「ヒルドイドソフト」の方がずっと高いので、「ヒルドイドソフト」の方がおススメと言えます。
ただし、まれに「ヒルドイドソフト」が合わない人がいるので、その場合には、「プロぺト」や市販の保湿剤(セラミド入り)などで、代わりを探す必要があるでしょう。
あまり知られていませんが、ステロイド軟膏には、角質の水分量を下げる、つまり“乾燥”させてしまう作用があります。アトピーだけではなく、乾燥肌や乾燥湿疹にステロイド軟膏だけを塗ってはいけません。しっかり、保湿剤も一緒に塗ることが大切なのです。(ちなみに、プロトピック軟膏は塗っても角質の水分量には影響しません。)
何を塗ると、角質の水分量のどう変化するのかは、知っておいて損はないので頭に入れておきましょう。自分で製品を選択する時の参考となります。
保湿剤 どんな時にどのくらい塗ればいい?
保湿剤は、1日に何回塗ってもOK。皮膚を乾燥させないよう、こまめに塗って常にしっとりした状態にしておきましょう。皮膚がちょっと乾燥しているなと思った時、手を洗った時、汗をかいて顔を洗った時、何回でも塗ってください。
アトピー性皮膚炎の皮膚はもともと乾燥しやすく、皮脂や、細胞をつなぐセラミドも少ないため、バリアが少ない状態になっています。いつもしっとりとした状態にして、乾燥しないようにしておけば、かゆみや炎症も起きにくくなっていきます。乾燥を防ぐためにも、こまめに保湿剤を塗りましょう。
擦り込むのは逆効果
- 皮膚症状が広範囲にわたっている場合
⇒保湿剤を先に塗って、その上からステロイド外用薬を薄く塗る。 - 皮膚症状が強い場合
⇒入浴前にワセリンを薄く塗って皮膚を保護してから入浴し、その後また保湿剤を塗る。
といった使い方も効果的です。状態に応じて、塗り方を工夫してみましょう。
ただ、角質への浸透をさせたいからと、強いカで皮膚に擦り込むのは厳禁です。他の外用薬も同じですが、アトピー性皮膚炎では、決して薬を擦り込んではいけません。これは、皮膚を引っ掻いているのと同じ結果となり、皮膚を分厚くし症状を悪化させてしまうため。
また、製品の性質によっても、塗る量は異なってきます。
例えば、保湿剤の1つ「ヒルドイドソフト」は成分粒子が大きく、角層から下には入って行かないため、角層で水とくっついて、保湿作用を発揮するという特性があります。そのため、たっぷり塗ったほうがより高い効果を期待できます。一方、ステロイドは成分粒子が小さくて皮膚の奥の方まで入っていくので、保湿剤よりも少なく塗るだけで十分といった違いがあります。
保湿剤について、主治医や薬剤師から特にアドバイスをもらうことも、あまりないという人も少なくないようですが、同じ塗るものでも性質・特性が全く異なります。それぞれの効果をしっかり引き出すために、これからは、ぜひ自分から突っ込んで質問していきましょう。
さらに、時々、医師に処方された保湿剤が皮膚に合わないこともあります。外用薬や保湿剤を正しく使っているのに、アトピーの症状が改善しない場合、保湿剤そのものが悪化因子となっていないかどうかを確かめながら使用してください。
市販の保湿剤 アトピー性皮膚炎でも使えるものはある?
アトピー性皮膚炎の人でも、市販品が全く使えないワケではありません。ただ、市販品を使う場合は、よりリスクの少ない敏感肌用のスキンケア用品がおススメ。サンプルなどで試して、合うものを探してみてください。
常にしっとりとさせて、良い状態を少しでも長く保つために、スキンケア用品を上手に使うことが必要です。
夏はクリームタイプやローションタイプ、冬はワセリンベースなど、季節に合わせたり、使い心地などによって選んでください。
市販品にも、敏感肌用のスキンケア用品がたくさん出ていますので、まずはサンプルなどで試してみて、自分の皮膚に合うものを見つけましょう。市販の敏感肌用の保湿剤は、アトピー性皮膚炎の人にも使えるように、伸びがよくて使い心地もやさしくできており、においなどもなく、パッケージもキレイ。治療しているというよりも、スキンケアをしているという気持ちになり、気分も明るくなれます。
また、ドラッグストアなど身近なところで購入できるので、なくなってもすぐに買うことができ、安心してたっぷり使うことができるのもメリットでしょう。
市販の保湿剤を全体に塗ったあと、炎症のある部分にだけステロイド外用薬を塗るのも効果的。良い状態を長く続けるためのスキンケア用品として、自分の使い心地のよいものを見つけると、スキンケアも楽しくできますよ。
まとめ
保湿剤は、ステロイド外用薬のオマケみたいなものではありません。ステロイド外用薬のような副作用のリスクも少ないので、これまでより、しっかりたっぷり使って肌を滑らかにし、アトピーの症状改善に役立てていきましょう。