女性に読んでほしい、子宮筋腫による子宮摘出と身体と心の後遺症
女性特有の病気の中でも経験する人の多いのが子宮筋腫。腫瘍といっても良性で命に関わるものでもありません。筋腫があっても妊娠・出産をすることも可能です。
ところが病状によっては筋腫と一緒に子宮を摘出しなければならない場合もあります。子宮摘出によって心と体はどのような影響を受けるのか、子宮筋腫の治療法と後遺症についてまとめました。
子宮筋腫の根本的治療は子宮摘出
子宮筋腫は、40代女性の3~4人に1人が持っていると言われるほどありふれた病気です。
腫瘍は手術で切除しなければ治らないものですが、子宮筋腫は良性の腫瘍で体に悪さをするものではないため、目安として「こぶし大」より小さい場合は、手術をせずに温存させることが一般的です。
しかし筋腫が大きくなり過ぎると、月経過多(生理の出血が大量になる)が起こったり子宮周辺の臓器を圧迫したりと体に弊害を及ぼすようになるため、手術で摘出しなければならなくなります。
筋腫だけ摘出することも可能ですが約20%の確率で再発するといわれており、根本的な治療は子宮の摘出手術となります。
子宮を摘出した後の体はどうなるの?手術の後遺症について
子宮に限らず臓器を摘出する手術には誰でも不安を持つものです。特に子宮は子どもを宿すための大切な臓器なので、患者さんが子宮を失うことに抵抗を感じるのは当然のことといえます。
また女性が気にするのは、子宮を摘出した後の心と体の変化の問題です。子宮を摘出すると女性の体にどのような変化がみられるのでしょうか。
排卵・生理はどうなる?
子宮を摘出すると生理は起こらなくなります。生理は、子宮の内側にある子宮内膜が約1ヶ月に1回はがれ落ちて血液と一緒に洗い流される現象なので、子宮がなくなると生理は起こらなくなります。
ただし卵巣は正常に機能しているので、子宮を摘出前と同変わらず排卵が行われます。排卵された卵子は体に吸収されて自然に消えるので、子宮はなくても問題ありません。また卵子の大きさは1mm以下ととても小さいので、体に影響はありません。
子宮を摘出することで、わずらわしい生理や辛い生理痛から解放され、気持ちの軽くなる女性も多くいます。
お腹の中にすき間ができるのではないか?
子宮があった場所にすき間が発生することになりますが、腸や膀胱などがすき間にさまって自然にすき間が埋められます。違和感を持つことはありません。
子宮筋腫がこぶし大より大きく成長してしまうと、膀胱や腸を圧迫して頻尿や便秘を起こしやすくなりますが、大きな子宮筋腫を摘出すれば膀胱や腸の不快な症状が解消されるメリットが得られます。
女性らしさがなくなってしまう?
「子宮がなくなったら女性らしさがなくなってしまうのでは?」と多くの女性が不安を抱きます。
女性らしさを作っているのは子宮ではなく卵巣から分泌されている女性ホルモンなので、子宮を摘出することで女性らしさがなくなったり、男性化してしまったりすることはありません。
女性ホルモンが減ってしまうのでは?
子宮を摘出しても卵巣が残っていれば、卵巣から女性ホルモンが分泌されるので女性ホルモンが減ってしまうことはありません。
ただし卵巣と子宮は関連してはたらいていたため、子宮を摘出したことでしばらくは女性ホルモンの分泌が不安定になる場合もあります。
また女性ホルモンの分泌は脳が感じた精神的なストレスの影響を受けて不安定になりやすいため、子宮を摘出したことによるストレスが女性ホルモンの分泌を乱してしまうことも少なくありません。
更年期障害が早く来るって本当?
「子宮を摘出したら更年期障害が始まった」「子宮を摘出した人は更年期障害が早く来る」という話を聞くことがあります。
更年期障害とは40代半ば~50代半ばの女性に起こりやすい不定愁訴(器質的な異常がないのにさまざまな症状を訴えること)です。子宮を摘出することと更年期障害に直接の因果関係はありません。
ただし更年期障害は女性ホルモンの分泌量が低下することで起こっているので、手術後に女性ホルモンのバランスが不安定になると、確かに更年期障害に似た不定愁訴の症状が出やすくなることはあります。
また子宮筋腫自体が40代に多く、更年期障害の始まる頃に子宮を摘出する女性が多いことも「子宮摘出が更年期障害を起こす」という誤解につながっているようです。
ナイトライフに影響はある?
手術後は、医師の指示に従って2~3ヶ月はナイトライフを控えなければいけませんが、その後は手術前と変わらず行なうことができます。
子宮がないことでナイトライフができなくなることはありません。ナイトライフは子宮ではなく膣でするものなので、子宮がなくなることで支障の出ることはないと考えてください。
ただし膣の奥は縫合して行き止まりになっているので、手術前とはなんとなく感覚が違うと感じる人もいるかもしれません。
避妊をする必要がなくなるので、リラックスしてナイトライフを楽しむことができるようになるのが大きなメリットです。子宮がないために精子が腹腔内に紛れ込んでしまう、といった心配もありません。精液は外に排出されるだけです。
子宮がなくなることで女性としての自信を失ってしまう人もいますが、女性が不安になるとパートナーも気を使ってナイトライフがしにくくなってしまいます。子宮筋腫の克服後は心のつながりやスキンシップも大切にして、二人の絆を深めていきましょう。
子宮を摘出すると太る?
「子宮を摘出したら太った」という女性もいます。しかし、子宮を摘出することと肥満に直接の因果関係はありません。
子宮摘出後に太ったとしたら、術後に安静にしていて運動不足で太ってしまったことが考えられます。
術後は安静にして過ごす必要がありますが、その間に食べ過ぎてしまうと肥満を招いてしまいます。規則正しい食生活を心がけ、手術の傷が回復してきたら健康のために適度な運動を始めましょう。
日常生活への差し支えは?
子宮がなくなることで日常生活に差し支えの出ることはありません。術後はしばらく体力が落ちて疲れやすくなったり、患部が痛んだりしますが“日にち薬”でしばらく我慢すれば通常の体調に戻ると考えてください。
ただし術後の出血や痛みが強い場合には、次の受診予約日を待たずにすぐ受診しましょう。
子宮がなくなることの喪失感について
多くの女性が、子宮をなくすことに大きな喪失感をおぼえます。子どもを生む機能がなくなること、母性の象徴である子宮がなくなってしまうことを、すんなり受け入れるのは難しいことかもしれません。
中には、ひどく落ち込んだり自己嫌悪に陥ったりする女性もいます。子宮摘出後の最も大きな後遺症は子宮をなくすことの喪失感と言えるかもしれません。
子宮摘出手術を受けた後は、体のケアはもちろん、心のケアもしっかり行う必要があります。
病気の話題に関して、家族や周囲の人の何気ない言葉に傷つき、情緒不安定になってしまうこともあるかもしれません。子宮筋腫を克服して健康を取り戻すことのできた自分をねぎらい、1人の女性としての自信を回復させましょう。
もしも落ち込みの強い場合は担当医、心療内科または精神科を受診してカウンセリングを受けることもおすすめします。
温存・摘出それぞれにメリット&デメリットが…子宮筋腫の治療法
適切な治療を受ければ、子宮筋腫と上手に付き合いながら子宮を温存することも可能になります。また、子宮を摘出すれば子宮筋腫の辛い症状とは完全にお別れすることができます。
子宮筋腫の治療は、筋腫の大きさや症状の強さに応じて選択されます。
経過観察
子宮筋腫がそれほど大きくない時は無症状なので、検診などで偶然に子宮筋腫が発見され、初めてその存在に気付くケースも少なくありません。
対症療法
緊急に子宮筋腫を除去する必要はないけれど痛みや月経過多を伴う場合には、それぞれの症状に対応した薬を用いて症状を緩和します。
- 生理痛が強い…鎮痛剤
- 月経過多・不正出血による貧血…鉄剤
- 各症状の緩和…漢方
子宮を温存することができますが、子宮筋腫がある限りは継続して薬を服用しなければ症状が改善されません。
また、子宮筋腫の成長を止めたり縮小させたりする効果は期待できないため、子宮筋腫の成長が進んだらホルモン治療や手術など別の治療法に切り替える必要が出てきます。
ホルモン治療
ホルモン剤で子宮筋腫を成長させる女性ホルモンをコントロールして宮筋腫を縮小させます。生理が止まったり軽くなったりするので、子宮筋腫による月経過多や生理痛が大幅に改善されます。
手術を控えている場合に、ホルモン治療で大きくなっている子宮筋腫を縮小させる目的で用います。また子宮筋腫は閉経後に自然と縮小することから、閉経の近い女性が閉経まで子宮筋腫と共生するためのつなぎとして用いられることもあります。
- 低用量ピル
- 通常のピルよりホルモン量の少ないピル、排卵を抑制する
- GnRHアゴニスト・ダナゾール
- 女性ホルモンの分泌を抑え偽閉経状態にする
副作用として、更年期障害のような症状や不正出血が起こりやすくなります。また、無月経になるので薬を服用している間は妊娠することができなくなります。
薬を利用しなくなると子宮筋腫は再び成長し始めるので、根本的な治療効果は期待できません。また長期間の薬物療法は、治療費の負担もかさんでしまいます。
保存療法
子宮や子宮筋腫にメスを入れないで子宮筋腫を縮小させる治療法です。1回の施術で高い効果が期待できます。
- 子宮動脈塞栓術(UAE)
- 子宮動脈に塞栓物質を注入し子宮筋腫の血流を遮断する
- 集束超音波治療(FUS)
- 子宮筋腫に超音波とMRIを当てて焼灼する
ただし根本的な治療ではないので、子宮筋腫が再び成長する可能性は残ります。また他の治療法に比べ費用はかなり高額です。
子宮筋腫核出術
子宮筋腫核出術は、手術で筋腫核(筋腫のかたまりのこと)のみを摘出し、子宮は温存する治療法です。
- 妊娠・出産を希望している
- 子宮筋腫による症状が重い
- 子宮筋腫が不妊症・不育症の原因になると考えられる
- 悪性腫瘍の可能性がある(ごくまれ)
| 手術の種類 | 方法 | メリット |
|---|---|---|
| 腹式 | 開腹して筋腫核を摘出する | 筋腫核の取り残しを防ぐ |
| 膣式 | 膣から筋腫核を摘出する | お腹に傷跡が残らない |
| 腹腔鏡下 | 腹腔鏡を用い筋腫核を摘出する | 傷・術後の痛みが少ない |
ただし適応する子宮筋腫の大きさや発生場所によっては対応が難しい場合もあります。また手術中の出血量が増えたり、子宮筋腫が再発したりしやすい、といったデメリットもあります。
子宮全摘出手術
子宮全摘出手術は、子宮筋腫の根本的な治療法で、子宮筋腫をはじめ子宮内膜症・子宮がんなど子宮の疾患のリスクをゼロにするメリットが得られます。
筋腫核摘出手術よりも出血が少なく安全性の高い治療法です。筋腫核摘出手術が難しい場合は子宮全摘出手術を行なうことになります。
- 出産を希望しない
- 子宮筋腫がこぶし大より大きい
- 子宮筋腫が多発している
- 悪性腫瘍の可能性がある(ごくまれ)
| 子宮全摘術の種類 | 方法 | メリット |
|---|---|---|
| 腹式 | 開腹し子宮を摘出する | 子宮筋腫が完治する |
| 腟式 | 膣から子宮を摘出する | お腹に傷跡が残らない |
| 腹腔鏡下 | 腹腔鏡を用いて子宮を切除する | 傷・術後の痛みが少ない |
腹式子宮全摘手術は、お腹に10cmほどメスを入れて開腹します。入院期間は2週間程度です。
膣式子宮全摘手術は、膣を経由して子宮鏡という内視鏡で確認しながら子宮を切除・摘出する手術です。傷が少なくお腹に傷跡も残りません。入院期間は1週間前後です。
腹腔鏡下子宮全摘手術は、お腹に1cmほどの穴を数ヶ所開け、腹腔鏡という内視鏡を入れて子宮を切除・摘出する手術です。お腹の傷は目立たず、開腹手術よりも体にかかる負担が少なくて済みます。入院期間は1週間前後です。
子宮を摘出すると生理・妊娠・出産をする機能がなくなるので、出産を希望しない女性に適していますが、ほかの治療法も選択できる場合は十分に検討してから手術を受けても良いでしょう。
子宮摘出にはメリット・デメリットがあります。医師とよく相談して納得した上で手術を受けるようにしましょう。
病気を克服した後は身も心も軽快に人生を楽しみましょう
子宮筋腫は女性ホルモンの分泌によって発生するため、予防することは難しい病気です。
しかし子宮筋腫が小さい場合は健康に差し支えがないので、なるべく子宮を温存できるよう、担当医の指示に従って適切な治療を受けましょう。
子宮の摘出が必要になったとしても、悲観することはありません。以降は子宮の病気の不安から解放されるわけですから、気持ちを切り替えて身も心も軽快に人生を楽しんでいきたいですね。