(2013年7月20日配信)
第107回 『ニキビを発生させる起因菌についての新発見 ~ニキビの起因菌には、症状を引き起こす菌と皮膚を保護する可能性のある菌の2種類が存在する~』
#お時間のない読者の方は[今回のポイント]だけでもお読み下さい#
こんにちは。とかち皮膚科院長・とかち美白研究所所長の大石真暉です。
先日、FMを聞きながら仕事をしていた時のことです。『卒業文集』や『寄せ書き』の話題が取り上げられていました。今一番のモテ男『福山雅治』さんの番組です。
サッカー日本代表の本田選手が『卒業文集』で将来のことをかなり具体的に書いていた事や、野球のイチロー選手が小学生の頃から自分の将来を思い描いて目標を立てていたことが紹介された後、『福山雅治』さん自身は、卒業アルバムの『寄せ書き』に 『 しました卒業 』
と記し、『覚えたての倒置法をどうしても使いたかった』と解説し、笑いをとっていました。
私の高校の『卒業文集』の『寄せ書き』も似たようなものでした。
『 大きな夢 小さな一歩 』
実はこれ、前回、紹介した『代々木ゼミナール』ネタです。『日々是決戦』(笑)という手もありましたが、あまりにも一般的なものなので、当時の『代々木ゼミナール札幌校 校長』をされていた『竹内 均 東大名誉教授(物理学)』の名言を『ウケ狙い』で勝手に借用させていただきました。
当時は、ネタの一つとしてしか考えていなかったこの言葉。本当はこんな素晴らしい意味が込められていました。『日々の積み重ね。
小さな小さな達成感の積み重ねが、
やがて大きな達成へと変わる。
大きな達成は、 その小さな小さな達成の積み重ねの通過点でしかない。
大きな一歩を踏み出すのはかっこよくみえるかもしれない。
でも、小さな小さな一歩の積み重ねで得られる達成に
かなうものはない』
(名言考察.com の解説を一部改変)
そうそう。『ニキビ改善』も『小さな一歩の努力』の積み重ね。『小さな一歩の努力』の積み重ねで得られる達成のご褒美が『ニキビ改善』だと思います。
私達が、地球上で日々生きていることは、奇跡的なこと。『小さな一歩の努力』を毎日続けて行くと、気持ちが前向きになり、ストレスも減って『ニキビ改善』につながります。
『ニキビ改善』は一筋縄ではいかないことも多いです。このメルマガが、月に1度必ず届く、『ニキビ改善につながる小さな一歩を伝える定期便』になれば幸いです。
ニキビの治療には、お薬の力(=テクニカル/技能面)ばかりでなく、根気よく治療に取り組む力(=メンタル/精神面)も大切です。
このコラムが、その両方をうまくケアしていければ最高だなと思いつつ、自分自身が一歩でも前に進むつもりで、毎月お届けさせていただいています。
とかち美白研究所では、VCローション等を購入されている方に会報を毎月発行しております。
そこの片隅に『ニキビ治療の4ヶ条(4決め!)』というものを載せています。
(思い当たる所があれば今日から早速実行してみて下さい。)
ニキビ治療の4ヶ条(4決め!)
今日から私は以下の4つを良く守り、
ニキビ改善を目指すことに決めました!
- (1)爪を切って手は下に置くことに決めました。
- (2)髪型は適切にアレンジすることに決めました。
- (3)規則正しい生活を送ることに決めました。
- (4)お肌はしっとり潤いを保つことに決めました。
これは私が皮膚科診療を23年やってきた中で非常に重要と思い標語にしたものです。
ニキビ治療には様々な治療方法があり考え方も様々です。このコラムでは、第15回までは『ニキビ治療の4ヶ条』を系統立てて解説してきました。
第16回からは『落ち穂拾い』と題して、『ニキビ治療の4ヶ条』を『基本中の基本(中核)』と考え、日々気付いたニキビ治療に関連したこと一つ(今まで取り上げていなかったが重要なことなど= 落ち穂 )にフォーカスをあて(= 拾い )、お話させていただいています。
前回は、『重症のニキビ』が『うつ病』のリスクになる可能性があることについて、お話させていただきました。
今回は、『ニキビを発生させる起因菌についての新発見』についてお話させていただきます。
(MedicalTribune2013年5月2日号より引用)
ニキビの起因菌はあらゆる人の皮膚に常在していますが、実際には生涯を通じて5人に1人に時々軽いニキビができる程度なのだそうです。
毎日、ニキビ患者さんを診察していると、ついバイアスがかかってもっと多いのではないかと考えますが、実際のところはその程度なのだと思います。
でもニキビで悩んでいる人にとっては切実な問題です。少数派であるが故に、悩みが深いということもあります。
『ニキビができる人』と『ニキビができない人』の差を比較するため、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デービッド・ゲッフェン医学部分子薬理学のHuiyingLi助教授(以下 Li助教授)らは研究を行い、
『 ニキビの起因菌には、症状を引き起こす菌と
皮膚を保護する可能性のある菌の2種類が存在する 』
との研究結果を発表しました。
この結果をもとに更に研究を進めていけば、ニキビに対する新たな予防法や治療法の開発につながる可能性があります。
私は大変画期的な研究だと思いました。
なかなか理解しにくい所もあると思いますので、以下で、私の解説も交えて、少し詳しくお話させていただきます。
#お時間のない読者の方は[今回のポイント]だけでもお読み下さい#
A[ 基礎知識 および 実験方法 ]
イ.Propionibacteriumacnes(P.acnes)は、ニキビの起因菌です。
皮脂が詰まった毛孔内に繁殖し、免疫系を低下させ、
ニキビに見られる発赤を伴う丘疹や膿疱の原因となります。
ロ.市販の毛穴シートを用いて
ニキビのある者49人とニキビのない者52人の鼻から
P.acnesを採取しました。
ハ.採取した菌よりDNAを抽出し遺伝子マーカーにより菌株を同定
しました。
(ニキビの起因菌P.acnesを遺伝子レベルで詳細に分類することに
成功したということです。)
ニ.『ニキビのある者』と『ニキビのない者』にはどのような違い
があるか、P.acnesの菌株を分類・記録しました。
ホ.上記 ロ.の毛穴シートに付着した菌を培養して1,000株以上
を分離しました。さらに、これまで報告されていない66株を
専門施設に依頼してゲノム配列解析を行いました。
B.[ 結果 および 研究者のコメント ]
ヘ.研究責任者 Li助教授 のコメント
今回の研究では、
『ニキビの起因菌のP.acnesの全てがニキビを引き起こすわけではなく、菌株によっては健康な肌の保持に役立っている可能性がある』
ことが明らかになりました。
この結果を生かして、『ニキビを未然に防ぐ新たな治療戦略の開発』や、『皮膚科医が患者の皮膚の細菌叢(#)に応じて治療法を的確に選択』できるようになることが期待されます。
(#)細菌叢(さいきんそう):
ある特定の環境で生育する一群の細菌の集合のことです。
遺伝子技術の発達により全体像を明らかにすることが可能
となりました。
(例)Aさん: ア菌が80% イ菌が15% ウ菌が5%
Bさん: ア菌が20% イ菌が70% ウ菌が10%
などといった違いを、遺伝子レベルで解析することが可能
になったということです。
[ 私の解説 1 ]
実際の診療では、ニキビに対して抗菌薬を使用することが多いです。同じような程度のニキビでも、αという抗菌薬は、Aさんには大変効果があっても、Bさんには全く効果がないということが多くあります。
『細菌叢の違い』が存在するということは大変納得できることです。その違いがあらかじめ検査でわかれば、より効果のある抗菌薬を投与することができ、『ニキビ改善』につながります。
ト.共同研究者で皮膚科学を専門とするハーバーUCLA医療センターロサンゼルス生物医学研究所NoahCraft所長のコメント
今回の研究では、『ニキビのある者とない者で、採取された菌株が著しく異なる』ことが明らかになりました。
『ニキビのある者では、5人に1人の割合で特定の2種のP.acnes株が見つかりましたが、肌のきれいな者ではまれにしか見られません』でした。
[ 私の解説 2 ]
大家族の患者さんをまとめて診察することが時々あります。血のつながっている同年代の兄弟姉妹4人を診察したとしても、4人ともニキビということはまずありません。
そのうち2人がニキビであった場合でも同じ経過にはなりません。1人はすぐ治っても、1人は難治だったりします。
生活環境や遺伝もニキビには関係しているように思われますが、何か他の理由があるのでは?と考えていました。
『 血のつながった兄弟姉妹でもニキビの菌株はそれぞれ異なるので、ニキビのある者とニキビのない者に分かれる。
また、ニキビのある者の2人の間でもニキビの菌株が違うので治療効果に差がでる 』
これはあくまで私見ですが、『P.acnes株の違い』に着目すると、意外と簡単に説明できるような気がします。
C.[ 新たなニキビ治療に役立つ知見 ]
チ.さらに今回の研究では、『健康な肌には見られるのに、ニキビ肌にはまれにしか見られないP.acnes株の存在』が明らかになりました。
Li助教授は、この発見について『クリームやローションを使用することで、健康な肌の保持に役立つ可能性のあるP.acnes株を増やし、ニキビを抑制できるかもしれない』
『このP.acnes株は、ヨーグルトに含まれる乳酸菌が腸を有害な微生物から保護してくれるように皮膚を保護してくれるかもしれない。
次の段階では、皮膚の保護に役立つP.acnes株を増やすようなクリームがニキビの予防に有効か否かを検討する予定である』
さらには、『症状を引き起こすP.acnesは破壊するが、皮膚を保護する可能性のある菌は保持できるような新薬の開発や、ニキビ起因菌を殺すウイルスの使用、簡単な皮膚検査により悪性ニキビ発症の可能性を予測できる方法に焦点を合わせた試験も行う予定である』ともコメントされています。
[ 私の解説 3 ]
最近の遺伝子関係の技術の進歩はめざましいものがありますね。それらを活用したトクホのヨーグルトなどは、コンビニで手軽に購入できる時代となりました。
当研究所でも、将来的には『 健康な肌の保持に役立つ可能性のあるP.acnes株入りのクリームやローション 』を研究開発・販売して、『ニキビ改善』に貢献できればと考えます。とっても夢のある実現性のあるお話です。
[今回のポイント]は以下の通りです。
【今回の4決め!落ち穂拾い】 「落ち穂 その91」
『ニキビを発生させる起因菌についての新発見
~ニキビの起因菌には、症状を引き起こす菌と
皮膚を保護する可能性のある菌の2種類が存在する~』
- •今回は、『ニキビを発生させる起因菌についての新発見』についてお話させていただきます。
- •ニキビの起因菌 Propionibacteriumacnes(P.acnes)は、皮脂が詰まった毛孔内に繁殖し、免疫系を低下させ、ニキビに見られる発赤を伴う丘疹や膿疱の原因となります。
- •『ニキビができる人』と『ニキビができない人』の差を比較するため、UCLA デービッド・ゲッフェン医学部のLi助教授らは研究を行い、『 ニキビの起因菌には、症状を引き起こす菌と皮膚を保護する可能性のある菌の2種類が存在する 』との研究結果を発表しました。
- •ニキビのある者では、5人に1人の割合で特定の2種のP.acnes株が見つかりましたが、肌のきれいな者ではまれにしか見られませんでした。
- •健康な肌には見られるのに、ニキビ肌にはまれにしか見られないP.acnes株が存在することも明らかになりました。
- •クリームやローションを使用することで、健康な肌の保持に役立つ可能性のあるP.acnes株を増やし、ニキビを抑制できる可能性があります。
- •当研究所でも、将来的には『 健康な肌の保持に役立つ可能性のあるP.acnes株入りのクリームやローション 』を研究開発・販売して、『ニキビ改善』に貢献できればと考えています。
- •今回の研究結果は、ニキビに対する新たな予防法や治療法の開発につながる大変画期的な研究です。
高校の『卒業文集』に私が書いた小さな『寄せ書き』。その右上には、少しかぶるように『自画像のイラスト付きの特徴的な字』の寄せ書きがあります。
クラスの同級生、ドリカムの吉田美和さんの『いつかきっとBigでGreatなSingerになるぜ!』です。
私が寄せ書きを書こうとしたところ、スペースがあまり残っておらず、ここは将来いいネタになることを夢見て書き入れたのでした。
本当に Dreamscometrue!です。吉田さんはすごい!!
冗談はさておき、今回の研究は、ニキビ治療に将来大きな成果をもたらすこと間違いありません。本当に楽しみです。
次回は、ニキビとメンタル面について、また考えていきたいと思います。
それでは。
おおいし まさき(大石 真暉:ペンネーム)
(昭和41年北海道帯広市生まれ。平成6年札幌医大大学院修了。
平成7年同皮膚科学講座助手。平成9年とかち皮膚科開院。
平成14年とかち美白研究所開所。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)