Vol.58「脳卒中」


今回は「脳卒中」についてのお話です。

よく「脳卒中で倒れて…」と耳にしますが、脳卒中とは脳に障害を起こし、運動麻痺(まひ)が残る症状のことを言います。原因は血管が破れて起こる脳出血と、血管が詰まる脳梗塞によるものとがあります。

まず脳出血による脳卒中は、高血圧が引き金となって血管が破れる場合がほとんどで、発作前の自覚症は軽く、頭痛、めまい、吐き気などが時々起こる程度でつい見過ごすことが多いようです。

しかし、特に三層からなる脳を覆っている中間のくも膜の動脈瘤(りゅう)に出血を起こした時に、くも膜下出血と呼びますが、これは極めて激しい頭痛、吐き気を伴います。

これに対して出血のない脳梗塞による卒中は、脳が不活発になるため、めまい、頭重、のぼせ感、耳鳴り、手足のしびれ、記憶力などの低下が見られ、昔のことはよく覚えているのに、現在のことは物忘れがひどく人との約束をすっかり忘れたりなどの症状が見られます。

また、体の他の部分にできた血栓が脳に詰まる脳梗塞は、急な脳卒中を引き起こす原因となります。いずれにしても治療は早いほどよく、発作から6時間以内が目安になります。

さて、脳卒中の後遺症で片麻痺や言語障害が残った場合には、リハビリテーションとともに回復を早めるために漢方薬の服用が効果的です。

漢方では、脳卒中そのものを治療することはできませんが、その効果は古くから知られていました。後遺症期には、運動障害とともに、精神的な支えも必要で、そのような状況に応じて処方されています。

いつも言うことですが、漢方では体全体を考えて、気、血、水をめぐらせ、血流を改善して体に力をつけていきます。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

続命湯(ぞくめいとう)…みぞおちや脇腹に圧痛がある人の運動麻痺や言語障害に最適です。後遺症に対してしばしば著効を現します。

抑肝散(よくかんさん)…気が短く、怒りっぽい、手足が震える人に。

疎経活血湯(そけいかっけつとう)…特に左半身に運動麻痺やしびれがある人に。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…冷え性で貧血傾向の女性に。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…古血を去り、血流を改善する目的で、予防と再発防止に長期的に服用します。

脳卒中は何と言っても予防や再発防止が大切です。小さな異変を見逃さないようにしましょう。食事面では、脂肪や塩分の取り過ぎに注意して、肥満や高血圧などにならないように。また、日ごろから水分を多く取るように心掛けましょう。
2015-05-11 00:00:00

Vol.57「低血圧症」


今回は低血圧症のお話です。

家内から「お父さん、きょう雨降る~?」って聞かれて「うん、多分夜から雨やな」と私は自信満々に答えます。的中率は、ほぼ100%です。小さい頃から私は体が弱く、虚弱体質、低血圧症で、夏場や気圧の変化についていけなくて、疲労感や脱力感で体が重くなります。日常生活には、ほとんど問題はありませんが、いろいろな不快な症状に悩まされるのが、この低血圧症です。

現代医療では最大血圧が100㍉Hg以下を低血圧と定義し、自覚症状としては、だるい、疲れやすい。めまい、頭痛、脱力感など多種ですが、私にもかなり心当たりがあります。

一般的に低血圧症改善にはバランスのいい食事、質のいい睡眠、毎日の足を使った軽めの運動などを勧められますが、漢方薬はこの低血圧症に非常によく効きます。体全体の血流をよくするのです。

さて、動脈中の血液量は全体の20%で、ほとんどは静脈や毛細血管に存在していますが、この静脈は心臓のポンプ圧にまったく影響を受けません。ですから筋肉の運動などによって自力で心臓に帰ってこなければならず、この帰りが悪い場合に低血圧症となるのです。静脈血のうっ血ですから手足や顔、目などもむくみやすくなります。

さて、直接、血圧を持続的に上げる薬剤は漢方薬にもありませんが、数カ月以上長期的に服用し、水毒、血淤(けつお)をさばき、血行を促進していくことで体質が改善され、自覚症状も楽になっていきます。

それでは代表的な漢方薬をご紹介しましょう。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…女性特有の冷え性、めまい、貧血、慢性膀胱炎、月経障害などを伴う低血圧症の代表薬です。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…疲れやすく慢性的な胃腸虚弱の人に用います。

真武湯(しんぶとう)…よく下痢を繰り返し、下半身が度々むくみ、めまいを伴う人に。

十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)…体力の衰弱(産後、手術後、大病後)した人に。

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)…立ちくらみやめまい、動悸(どうき)などが度々起こり、排尿回数は多いが尿量が少ないメニエール体質の人に。

これらの漢方薬はいずれも補剤なので、時間をかけて続けると必ず効果が現れます。

さて、少量のアルコールは低血圧症に良く、適量なら血行促進、血圧上昇、安眠に良いとされています。実際少し飲んでいると疲労感も取れて体が楽になり、ホッとしますが、その後ついつい飲み過ぎて…。
2015-05-04 00:00:00

Vol.56「めまい・メニエール病」


めまいは、患者にとっては何とも不安な症状で、このまま意識不明になって死んでしまうのではないかと思うような時もあります。めまいを訴えて病院の耳鼻咽喉科を訪れますと、脳や耳、平衡機能などいろいろな検査を受け異常が認められない時は、あっさりとメニエール病と診断され、乗り物酔いのお薬を処方されるようです。

このメニエール病は1861年、フランスの医師、メニエールが「めまいは内耳の病気から起こる」と発表してから、あたかもめまいの代名詞のように使われるようになりました。めまいの発作が突然起こり、片側だけの難聴や耳鳴りを伴います。

発作が起こると歩くことも立っていることもできないくらいになります。現在、この病気の治療の決め手になるお薬は、まだありません。

発症は内耳にある平衡感覚器の一部に余分なリンパ液がたまることによって起こりますが、どうしてこのリンパ液がたまるのかは明らかではありません。主な原因としては、疲労が最も重要視されていて、肉体的な疲労の上に精神的な疲労が重なったときに発症しやすく、度重なる仕事上のトラブル、家庭内での不和などが言われています。

さて漢方では、古くからめまいは水毒であると言われてきました。言うまでもなく、リンパ液は体液の一部であり、体液のことを津液(しんえき)とも言います。体に役立つよい水分のことです。

メニエール病の治療には、この体の水分調節を主に考えて、肺や胃腸、腎臓の働きを元気にする生薬を配合した漢方薬を処方します。また、いつも言いますが漢方では体全体を見ますので、精神的ストレスに弱い人や貧血気味の人などには体質改善薬を併用してもらえば、メニエール病が起こらなくなってしまう人が多いようです。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

苓桂朮甘湯(りゅうけいじゅつかんとう)…急に立ち上がったり顔を上げると目の前が暗くなるような立ちくらみで尿の出が悪い人に。

沢瀉湯(たくしゃとう)…回転性のめまいで発作時に吐き気を伴うような時に。メニエール病にはこの薬が最もよく用いられます。

真武湯(しんぶとう)…手足の冷えやすい人で全身倦怠感が強く歩いている時にクラッとするようなめまいに。

半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)…食後に眠くなりやすく軽いめまいを繰り返す人に。

文明の進んだ国ほどこの病気が多いことからも複雑な生活環境と何らかの関係があるようです。また几帳面で神経質な性格の人、不安神経症の人にも多いようです。自分をゆるめてあげることも大事なことですね。
2015-04-27 00:00:00

Vol.55「膀胱過敏症」


一般的に膀胱炎と言えば尿道からの大腸菌の侵入による感染で、抗生物質やサルファ剤などで対応しますが、意外と知られていないのが今回の膀胱過敏症です。

尿道の検査では異常が見当たらず、しばしば精神的緊張や、疲労、自律神経失調症などによって起こりますが、頻尿、尿意促進、排尿痛、排尿後の下腹部不快感、などの症状は菌性膀胱炎とほとんど同じです。

先日ご相談のお客さんが「バス旅行に行きたいのに行けないし、どこかに出掛ける前には、必ずトイレができる場所を確認しておかないと不安で…」とおっしゃっていました。日常生活に大変負担がかかっています。

この膀胱過敏症は、過敏性大腸炎や神経性胃炎、けいれん性便秘、神経性下痢症などと同じで強い精神的ストレスによって症状が強くなります。現代医学の治療法は、自律神経安定剤や筋弛緩薬になります。

さて、漢方では自律神経の働きを「肝気」といい、イライラや精神不安、ゆううつ感、怒りっぽい、などの情緒失調を肝気胃結と呼びます。この自律神経の緊張をほぐすことを第一に考えて、柴胡や芍薬などを用いて治療に当たりますが、やはりどんな病気にも漢方では体全体を見て処方を決めていきます。特に、この神経症の分野での漢方薬の効果は素晴らしいものがあります。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

加味逍遙散(かみしょうようさん)…尿がスムーズに出ない、排尿時に刺すような痛みを伴う、下腹部の膨満感、むくみなどや、生理不順がある女性に。

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)…イライラ感が強く、耳鳴りや不眠などで黄色の帯下、陰部湿疹などを伴う、排尿痛、頻尿、濃縮尿、排尿困難な人に。

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)…夜尿や失禁、夜間の排尿回数が多いなどで、寒がりや四肢の冷えを訴える人に。

猪苓湯(ちょれいとう)…尿量が少なく排尿病と残尿感を訴え、時に血尿の見られる時に。

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)…特に排尿痛がひどい時に他の漢方薬と併用します。

苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅっかんとう)…新陳代謝が低下して下肢が水中に座っているかのように感じる、冷えの強い人の膀胱過敏症に。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…体質虚弱で疲れやすく貧血、顔や手足のむくみ、生理量が少なく遅れがちな人の繰り返す膀胱過敏症の体質改善に。

さて、この膀胱過敏症になる人は性格が真面目で精神的ストレスに弱い人が多いようです。少しはずぼらぐらいがちょうどいいんでしょうかね。
2015-04-20 00:00:00

Vol.54「甲状腺機能異常」


今回は若い女性に多い、俗に言うバセドウ病、橋本病についてお話しします。

左右の鎖骨の間の気管のところに甲状腺があり、ここから分泌される甲状腺ホルモンは、私たちの体の新陳代謝をスムーズにする働きがあります。全身の細胞を元気に活動させる役目です。本来は脳下垂体からの刺激ホルモンによって甲状腺ホルモンは分泌されるのですが、リウマチや膠原病のように自己免疫グロブリンがこの甲状腺を直接、異常に刺激することによって甲状腺ホルモンを過剰に分泌してしまう病気をバセドウ病といいます。

特に20代から30代の女性に多く発病します。症状としては心拍数が増える、体温が上がり、汗をよくかく、動悸(どうき)息切れ、眼球が突き出る、皮膚が黒ずむ、イライラ怒りっぽくなるなど、さまざまです。

治療法は甲状腺ホルモン剤、放射性ヨード剤の数年間の服用が中心ですが、効果の上がらない時や妊娠、出産のため早く治したい人には手術となり、甲状腺の一部を切除することもあります。

また、これとは反対にTリンパ球が甲状腺の細胞を壊し、甲状腺ホルモンの分泌低下した状態が橋本病と呼ばれるものです。

主な症状は、全身がとても冷える、むくむ、皮膚がかさつく、貧血、だるくて疲れやすい、息切れなどです。

治療法は甲状腺ホルモン剤を根気よく長期に服用を続けることですが、バセドウ病も橋本病もいずれも自己免疫疾患です。

さて、漢方では自己免疫疾患は結果として淤血(おけつ)とみなし、またホルモン分泌や腺分泌は自律神経支配なので肝気の乱れと考えます。

漢方の基本的な考え方は、いつも気・血・水をめぐらし、体が持つ自然回復力を高めようとするものですが、特にホルモン分泌の失調に対してはストレスなどからのメンタル的な要素が強く、柴胡、芍薬、牡蛎(ぼれい)などで疎肝(神経を和らげる)をしながら症状に応じた漢方薬と併用していきます。

症状が中程度であれば、漢方で治癒してしまう例も多くあります。それでは、漢方薬をご紹介します。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)…不眠、イライラ、動悸などで不安神経症や強迫神経症の人に。

白虎加桂枝湯(びゃっこかけいしとう)…新陳代謝が盛んで熱感があり、のぼせやすい人に。

加味逍遥散(かみしょうようさん)…特に女性で疲れやすく、肩凝り、イライラ、のぼせなどの血の道症の人に。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…慢性疲労感、立ちくらみ、低血圧症、頭重などを訴える甲状腺機能低下症の代表薬。

防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)…むくみを伴う時に併用します。

どうも甲状腺機能異常は、ストレスの受けやすい人に多く発症しています。生活を緩めましょうね。
2015-04-13 00:00:00

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