『WOC Nursing』2014年6月号<がん患者のW・O・Cケア>より抜粋。
放射線性皮膚炎とその対応について解説します。
Point
- 放射線性皮膚炎の発生メカニズムと症状を説明できる
- 急性放射線性皮膚炎の悪化要因を挙げられる
- 放射線性皮膚炎ケアの目標と看護師の役割を説明できる
- 放射線性皮膚炎を悪化させないための具体的ケアを説明できる
遠藤貴子
(静岡県立静岡がんセンター 看護部 がん看護専門看護師)
〈目次〉
はじめに
放射線性皮膚炎とは,放射線の影響により照射部の皮膚に炎症が生じた状態のことを指します。外照射の場合は,どの部位への照射であっても必ず皮膚を通過するため,皮膚への影響が生じる可能性があります。
近年,治療装置や治療技術の進歩により,重篤な皮膚炎が生じることは少なくなりましたが,頭頸部や外陰部への照射,抗がん剤や分子標的治療薬との併用などでは,びらんや出血を伴う皮膚炎が生じることもあります。
放射線治療の効果を最大限に得るためには,予定された治療計画どおりに治療を完遂することが重要ですが,放射線性皮膚炎は治療を休止する要因にもなるため,適切に管理することが大切です。放射線性皮膚炎についてのケア方法は全国的に統一されたものはなく,施設ごとに施行錯誤しながらケアを提供している現状があります。
本コラムでは,放射線性皮膚炎のメカニズムと症状,ケアについて理解を深めたいと思います。
急性放射線性皮膚炎の発生メカニズム
皮膚は「表皮」,「真皮」,「皮下組織」の3層から構成されており,表皮はさらに「角質層」,「顆粒層」,「有棘層」,「基底層」の4層に分かれています。
正常な皮膚では,ターンオーバーにより,基底層にある幹細胞が分裂し,すぐ上の有棘層,顆粒層へと押し上げられて,約14日で角質層となり,この角質層に到達した細胞は,約14日後には垢となって剥がれ落ちていきます(1)。通常であれば,基底層で産生される新しい細胞と脱落する細胞のバランスがとれており,皮膚の厚さは一定に保たれています。
では,放射線が皮膚を通過すると,どのような変化が生じるでしょうか。表皮のなかでも,基底細胞は細胞分裂が盛んなため,放射線の影響を強く受けます。基底細胞が放射線によるダメージを受けると,新しい細胞が作られなくなるため,表皮は薄くなっていきます。
そして角質層に達した細胞は,放射線のダメージこそ簡単には受けませんが,寿命がきて脱落していきます。このように,新しく産生される細胞と脱落する細胞のバランスがとれなくなり,放射線性皮膚炎が発生します(図1)。
急性放射線性皮膚炎の発症時期と症状
急性放射線性皮膚炎
一般的に放射線治療は,根治的な治療の場合1回2 Gyを週に5回,約5〜7週間かけて行います。この通常分割照射では,照射開始後2週目(約20 Gy)頃から症状が出現し,線量が増えるにつれて症状が増強していきます(表1)。
表1皮膚照射線量と急性放射線皮膚炎(文献2より引用)
真皮の毛細血管が拡張し,血流量が増加し皮膚の紅斑がみられるようになります。また,皮脂腺や汗腺の機能低下により皮膚は乾燥し,発汗作用が低下することで皮膚温が上昇し熱感が生じやすくなります。そして皮膚の乾燥と皮膚温の上昇は掻痒感を引き起こします。
基底層から新しい細胞が作られずに表皮が薄くなると,皮膚のバリア機能は低下し,外的刺激に弱くなります。さらに乾燥が加わることで角質層の結合力が低下し,裂けたり剥がれたりしやすい状態になっていきます。そして,真皮が露出すると出血や痛みが生じます。
しかし,基底細胞が少しでも残っていれば,再び新しい細胞が産生されますので,急性期の皮膚炎は必ず回復します。
晩発性皮膚障害
また,皮膚線量が高い場合は,数か月〜数年後に皮膚の萎縮や線維化,色素沈着・色素脱落,毛細血管拡張,皮膚潰瘍などの晩発性皮膚障害が生じることがあります。これらは非可逆性の変化であり,治癒することは困難です。
リコール現象
放射線性皮膚炎で覚えておきたいことに,リコール現象があります。
リコール現象とは,放射線治療終了後に,抗がん剤などの投与をきっかけに以前の照射野の皮膚炎や粘膜炎など,放射線の影響が呼び戻される現象のことです(3)。抗がん抗生物質,アルキル化剤,代謝拮抗薬,微小管阻害薬などにより皮膚,肺,中枢神経系などの発症が報告されています(4)。
放射線性皮膚炎の評価
有害事象を客観的に評価するための1つのツールとして,米国国立がん研究所(national cancer institute;NCI)が提唱する有害事象共通用語規準(common terminology criteria for adverse events v4.0;CTCAEv4.0,表2)が広く使用されています。
表2有害事象共通用語規準v4.0日本語訳JCOG版(文献5より引用)
5段階で評価しますが,グレード4以上の放射線性皮膚炎が生じることはほとんどありません。
放射線性皮膚炎のリスクアセスメント
放射線性皮膚炎を悪化させる要因には,治療に関連するものと患者に関連するものがあります。
治療に関連する要因
治療に関連する要因としては,表3に挙げたようなものがあります。
1回の線量が2Gyを超える場合や総線量が多くなるほど,皮膚炎が生じやすくなります。また,放射線を1方向から当てる1門照射よりも複数方向から当てる多門照射のほうが,1か所あたりの皮膚が受ける線量が少なくなるため皮膚炎出現の可能性は低くなります。
X線は身体を透過する性質があり,放射線の射入面だけでなく射出面にも皮膚炎が出現する可能性があり,注意が必要です。また,皮膚に垂直に放射線が当たるよりも斜めから当たるほうが,皮膚炎発生のリスクは高くなります。
皮膚表面よりも深い位置で放射線の吸収線量がピークになることを「ビルドアップ効果」といいます(図2)。
同じ種類の放射線であれば,エネルギーが高いほうが皮膚表面より深い位置で放射線量のピークが発生するために皮膚炎は出にくくなります。また,X線より電子線のほうが,皮膚表面線量が高くなるため皮膚炎が生じやすくなります。
その他,皮膚に近い病巣を治療する場合にボーラス(人体の組織に近い組織等価物質)が用いられることがありますが,皮膚線量が高くなるため皮膚炎が出現しやすくなります。またシェル(固定具)の使用により,皮膚炎が増強しやすくなります。また,化学療法を併用することで治療効果も高まりますが,有害事象も増強しやすくなります。
患者に関連する要因
次に,患者に関連する要因(表4)について説明します。
照射部の皮膚が発汗や排泄物などによって湿潤している場合や,創部の痕などで皮膚が凸凹していると皮膚炎が出現しやすくなります。また衣類で擦れやすい部位や皮膚同士で擦れやすい部位,皺が多い部位などは皮膚炎が生じやすい部位として注意が必要です。低栄養の場合は皮膚炎が強く出現し治癒も遷延しやすくなります。
その一方で,肥満患者は皮膚と皮膚が接することで摩擦による皮膚炎の悪化を招くことがあります。
高齢者は加齢に伴う皮膚の脆弱性,乾燥などから皮膚炎が生じやすくなります。血糖コントロール不良の糖尿病は有害事象が強く出現する傾向があり,活動性の膠原病は組織障害が増悪しやすいとされており原則禁忌となっています。
また,喫煙は皮膚治癒に悪影響を及ぼすといわれています。皮膚炎悪化予防のためのセルフケアが実行できない場合も皮膚炎が悪化しやすくなります。
放射線性皮膚炎のケアの目標と看護師の役割
放射線性皮膚炎の要因は,放射線治療そのものであるので,放射線性皮膚炎の発生を予防することはできません。そして,放射線治療を受けている間は,皮膚にはダメージが加わり続けるため,皮膚炎を完全に回復させることはできないということも理解しておく必要があります。
放射線性皮膚炎のケアの目標は,必要以上に悪化させないこと,放射線の線量から予測される正常範囲内の皮膚炎に留めることです。
放射線性皮膚炎は,日常生活のなかで患者自身が気をつけたり工夫したりすることで,悪化を予防し,症状を軽減することができるので,看護師は患者が自分の日常生活に照らし合わせて主体的に予防行動がとれるように,セルフケアをサポートすることが大切です。
放射線性皮膚炎の具体的なケア
清潔保持
米国がん看護学会(oncology nursing society;ONS)では,放射線性皮膚炎に効果的な介入として,皮膚洗浄を挙げています。マーキングが消えてしまうことを恐れて,放射線治療中に照射部を洗わなくなってしまう人がいますが,感染予防のためにも,清潔保持は大切です。
石鹸を十分に泡立て,泡を照射部の皮膚に乗せ,しばらく置いてから洗い流すようにします。泡で汚れを落とすようにして,ごしごし擦らないように注意します。洗浄剤は弱酸性・低刺激のものや泡タイプのものが望まれます。
照射部皮膚への刺激を徹底的に除去する
患者・家族に,日常生活のなかで気をつけることとして,「擦らない」,「掻かない」,「貼らない」の3つを説明することが大切です。
擦らない
照射部の皮膚を擦らないようにします。体を洗うときやお湯を拭き取るとき,汗を拭くときなどの際には,注意が必要です。照射部の皮膚が擦れないように,照射部の皮膚を締め付けないように,サイズにゆとりのある衣類や下着を選択するよう指導します。
また衣類以外でも全頸部照射の場合は,布団の縁によって頸部が擦れてしまうことがあるため,注意が必要です。眼鏡やマスク,アクセサリーが刺激となり表皮剥離を起こすことがあります。
掻痒感軽減目的のために,ステロイド軟膏が処方されることがあります。軟膏を塗布する際には皮膚に擦り込まず,皮膚に軟膏をトントンと置いてくるように塗布します。照射時に軟膏が厚く残っているとビルドアップ効果が失われ,皮膚炎が悪化しやすくなりますので,照射直前は避け,照射後や入浴後,就寝前などに塗布するようにします。
治療前に塗布した軟膏も明らかな厚みがない場合は,拭き取る必要がありません。むしろ拭き取る行為が皮膚への摩擦になります。また,軟膏を塗布する際にはマーキングが消えないように,マーキングの上には塗布しないように注意が必要です。
掻かない
掻痒感が出現すると,うっかり掻いてしまうことがあるので,皮膚を傷つけないように普段から爪は短く切っておくようにします。
また,皮膚炎が軽減するわけではありませんが,掻痒感の緩和のためにクーリングは効果的です。クーリングをするときには照射直前直後は避けて行います。
また,ステロイド軟膏の使用にはさまざまな意見がありますが,静岡がんセンター放射線治療科では,掻痒感が強い場合はうっかり掻いてしまうことを予防する目的で使用しています。
貼らない
剥離刺激が皮膚への刺激になります。そのため,照射部の皮膚には粘着性の高い絆創膏やテープ類は貼らないようにします。
頭頸部や胸部への照射時に,中心静脈栄養のカテーテルが鎖骨下静脈から挿入されていると,照射部にフィルムドレッシングなどで固定されている場合があります。その場合は,可能なかぎり皮膚への刺激が少なくなるように十分湿らせながら剥がすようにします。
ストーマ装具(面板)は貼ってある状態で治療計画が立案されていますので,照射時に剥がす必要はありません。張替の際には,可能なかぎり剥離刺激を少なくすることが大切です。
表皮剥離が生じた場合のケア
「疼痛緩和と保護」,「感染予防」がケアのポイントです。
清潔保持と皮膚への刺激を避けることは継続して行うことが大切です。軟膏塗布時に痛みを伴う場合があるので,リント布や非固着性ガーゼにアズノール®軟膏を十分塗布したものを皮膚に貼るようにします。皮膚炎の状態に応じて,ステロイド軟膏も一緒に塗布します。
その他,放射線性皮膚炎の悪化予防のためのケアについて照射部位別にまとめました(表5)。
治療終了後2〜4週間程度は,引き続き皮膚ケアを継続する必要があります。治療終了時には,いつ頃まで症状が続くのか,皮膚ケアはいつまで続けるのか,ケア方法の変更はあるかなど,患者・家族に説明し,セルフケアが継続できるよう支援する必要があります。
おわりに
放射線性皮膚炎は,放射線治療を受けている間は完全に治癒することはありません。
使用する軟膏の種類やドレッシング材の種類などについて検討されることが多いのですが,患者自身が,自分の日常生活に照らし合わせて,何が照射部の皮膚への刺激になるかを考え,皮膚への刺激を避ける予防行動が主体的にとれるようセルフケアを支援することが大切です。
[Profile]
遠藤貴子(えんどう たかこ)
静岡県立静岡がんセンター 看護部 がん看護専門看護師
2008年3月 東京女子医科大学大学院 看護学研究科 がん看護学CNSコース 修了。2010年 日本看護協会 がん看護専門看護師認定。2008年〜 静岡県立静岡がんセンター 看護部 中央診療(放射線・陽子線治療科) 勤務,2012年〜 静岡県立静岡がんセンター 認定看護師教育課程 がん放射線療法看護分野 主任教員。
*略歴は掲載時のものです。
P.25~「放射線性皮膚炎とその対応」