作りなれていない人は、レシピを絶対にいじらない
現在のお菓子作りには科学の観点から解説をしている本も多数でている程、ち密なノウハウがあります。特に生地作りにおいては、素人は絶対にレシピの分量をいじってはいけません。
例えばプロの職人がスポンジ生地を何キロも仕込む中で、あ、卵が50g足りない! となっても特に問題はありませんが、家庭でスポンジケーキ1台分の生地を作るのに卵が50g足りない! となっては大問題です。だいたい5号サイズのスポンジケーキに卵は3個くらい使用しますが、卵は全卵で1個あたりMサイズで約50gです。
さて、何十個も卵を使用するケーキ屋さんの生地と、たった3個しか使用しない家庭のスポンジ生地。何十個の内の1個と3個の内の1個では、随分と大きな差がありますね。
卵を1個減らし後はそのままの分量で作ってしまえば、たいそう甘く食感が所々ガリッと砂糖が固まったようなペタンコのスポンジが出来上がることでしょう。
じゃあ小麦粉なら大丈夫でしょ、バターは食べたくないからいらないの。あと砂糖もダイエット中だから控えめに、それからどこかで聞いたんだけどアーモンドパウダーを入れると美味しいらしいの。
上記のどれも基本が分からなければ、絶対にいじってはだめです。どれも大切な材料達なのですから。ではこれから、それぞれの材料の働きについて簡単にお勉強していきましょう。
卵と砂糖
卵と砂糖はスポンジをふわふわにしようと思えば、絶対に欠かせない材料です。
まず卵ですが、これが泡立ち気泡を多く含むことにより、シャボン玉のような空気が入った部屋を作ってくれるのです。ですがこれだけでは、シャボン玉ですのですぐに割れてしまいます。
そこで砂糖を加えることにより、卵に粘度が増してシャボン玉よりも壊れにくい風船になります。また砂糖を加えることで、卵の泡立ちがずっと良くなるのです。
ですが卵が多すぎると泡立ちは悪くなり、砂糖が多すぎると粘りすぎてこれもまた泡立ちません。
小麦粉
小麦粉が卵と砂糖の生地に混ざることで、一部がグルテンという粘土のようなこしのある成分に変わります。
これが風船のように衝撃が加われば割れてしまうような、弱い卵と砂糖だけの生地を守ってくれるのです。風船が割れないように、その周りにちょっとやそっとでは崩れないような、グルテンの壁がある家を建ててくれると思いましょう。
ですがその小麦粉も多すぎればグルテンを作りすぎてしまい、壁が自分の重みで崩れて風船を割ってしまいます。逆に少なすぎればちょっとの衝撃で壊れてしまうような、脆い壁にもならないような物になってしまうのです。
バター
バターにはグルテンの形成を阻止する働きがあります。
バターはパン作りにも欠かせません。そこでバターを使わないバゲットと、バターを使用した食パンを思い浮かべてみてください。どうでしょうか、バゲットはガリッとした食感で、食パンはふんわりとした柔らかい食感ではありませんか?
それらが大きく違うのは油脂の量です。グルテンが必要以上に形成されてパンが硬くならないように、バターが生地を助けてくれているのです。スポンジケーキも同じで、生地がふんわりしっとりする為に助けてくれています。ですのでバターを入れないケーキは食感がよくないですし、多すぎれば必要なグルテンを壊してしまってペタンコになります。
スポンジケーキに使われる基本の材料は、どれも大切なものだとお分かりいただけたでしょうか?
これでは自分でレシピを作れるような人でない限り、適当に分量をいじってしまえば失敗してしまいますよね。でもどうしても食べたいスポンジがあるでしょうし、やっぱり砂糖は減らしたいかもしれません。そういった方はインターネットの海から、そのようなレシピを探し出しましょう。
けれど家庭のハンドミキサーで作る場合、生地から砂糖を減らすのはお勧めしません。その場合は生クリームで調整しましょう。ふわふわのケーキが食べたいのならば、そこは諦めて下さい。
また砂糖を全て蜂蜜に置き換えるのも無理があるでしょう。そもそも砂糖は蔗糖ですが、蜂蜜は果糖ですので成分が違います。家庭で作るには難しすぎるでしょう。
糖分を増やして甘くしたい方は、グラニュー糖を上白糖に置き換えるといいでしょう。上白糖にはビスコという転化糖をまぶしてありますので、同量のグラニュー糖よりも甘く感じます。また生地を幾分かしっとりとさせる効果があります。
いやいや私は、上白糖を使わずに生地をしっとりさせたいのです。そんなあなたは、砂糖の一部を水あめやハチミツに置き換えられたレシピを探すといいでしょう。またバターの一部を牛乳にしているレシピは、さらに生地をしっとりとさせることと思います。
やっぱり粉は少なめで軽い食感がいいのだけれど、というあなたは小麦粉の一部をコーンスターチに置き換えたレシピが良いかもしれませんね。また製菓用の米粉(リ・ファリーヌ)を使っても軽くなります。それから使用する小麦粉によってもかわります。タンパク質が少ない小麦粉の方が軽いスポンジを作りやすくなります。身近に売っているものでは、スーパーバイオレットがいいですね。
もっと凝り性の方には、ドルチェや特宝笠がお勧めです。
バターはいりませんという方は、牛乳を代用したレシピを見つけましょう。ただし水分量が多くなるため、作るのはちょっと難しくなります。
またはマーガリン、植物油で代用しても構いませんが、風味は格段に落ちてしまいます。
では下記からは、レシピ通りに作ったのに失敗した例をまとめていきましょう。
スポンジケーキがゴムのような食感、または硬くなってしまった。
生地に小麦粉を加えてからはゴムべら(なければ木べら)で、へらの平らな面が生地に多く当たるようにしてよく混ぜましょう。え? そんなことしちゃったら、泡が潰れちゃうじゃないかと思われるでしょうが、力は入れずに優しく小麦粉が見えなくなっても生地が小麦粉を入れる前の量から、3分の2の量になるまでしっかりと混ぜます。
けれどバターを入れてからは、へらの横の部分でお寿司のシャリ作りの様に、切るようにしてそこから手早く丁寧に混ぜて下さい。バターが混ざっていなければ、底の方でスコッとした抜ける感触がありますので、それを感じなくなったら出来上がりです。ほんの数回程度で混ぜるのが理想的です。
そんなんで、ふわふわになんのかよ? と疑われる方もいるでしょうが、騙されたと思っていつもカチカチになる人はこの方法を試してください。確実にいつもよりも浮き上がります。
またゴムみたいな食感の生地が底に出来ちゃう方は、生地を型に流し終えた際に表面に黄色い斑点が出来ていませんか? もしあればへらの先や指で、周囲の生地と優しく混ぜて同じ色にしてからオーブンへと入れて下さい。死んだ生地は元気な生地より比重が重いので、焼成中に下へと降りていってしまうのですが、こうすることで比重が同程度になって沈むことはありませんし、ふわふわの生地の中に紛れちゃうので食感も悪くなりません。
バターを入れたら、気泡が手品の様に消え去った
これもままある失敗ですね。本当に面白いように泡が一斉に姿を消します。
この失敗ではバターの温度が高いと起こりやすくなります。熱々の溶かしバターを面倒くさいからって、すぐにそのまま入れていませんか? それとも温度はそう高くないのに泡が一斉逃亡してしまった場合は、卵の泡立てが足りないのです。
まずバターは液体であれば40度でも大丈夫です。卵白は60度、卵黄は80度もあれば凝固を始めますのでそんなに高くなくていいのです。それをへらの平らな部分に一度流しあててから、生地に回しかけて下さい。それで泡は生き残ることと思います。
卵の泡立てが足りない場合は、ハンドミキサーでしっかりと泡立てた後、低速で生地を少しの間撹拌して引き締めて下さい。そうすることで温度が低いのに、バターを入れた途端に気泡が全滅するという悲劇は避けられます。
湯煎が面倒でも必ずして下さい。特に家庭用は泡立ちが悪いので、レシピに書いてある温度よりも少し高めにしましょう。もしどうしても面倒くさいなら、ボールを直火(とろ火)に当てても構いません。ただ作りなれてないと中で卵焼きが出来るのでご注意ください。
綺麗に焼けていたと思ったのに、冷めたらペシャンコになった
この場合は色々な理由が考えられますが、スポンジの構造が弱くて大きく浮き上がったものを支えきれなかったというのが多いのではないでしょうか。
考えられる原因は、生地の焼成が甘かったというのが一つ。生地の表面が明るいきつね色で焼成を止めてしまっていたとすれば、中のスポンジも生焼けの可能性があります。更に表面が良い焦げ色をしていても、火が強すぎて中の焼きが甘いこともあり、それもペシャンコになってしまう原因です。
更に表面だけに火が先にとおってしまうと、中の生地がまだ焼けていないので膨れ上がり、それが表面のひび割れの原因になります。(火が強すぎるのが原因ですね)
スポンジケーキは焼成温度が高くなくても大丈夫です。焼き始めは160度もあれば十分です。
または水分量が多めのレシピであれば、グルテンの柱をその重みで壊しやすいので、そもそもの構造が弱く作りなれていないと失敗しやすいものです。
焼成はコツを掴むまではとても難しいですが、まずは自分の家の電子レンジ又はオーブンがどんな個性を持っているのかを理解してみましょう。
因みに筆者の家の電子レンジのオーブンは、設定温度よりも10度くらい高いように思いますので、スポンジの焼成をするときは焼成前160度→焼成中150度にしています。焼く前に温度が高いのは、型を入れる際に庫内の温度が下がってしまうことを考慮しています。また筆者はズボラですが、やる気があるときは焼成中の生地の状態を見ながら、温度を変更したりしています。最初は低めで、最後は少し高めといった感じです。
また同じ温度でも上段と下段で焼くのでは、生地の状態も変わってきます。あれ焼きが足りないなと思ったら上段へ、やばい焼き過ぎた! となったら下段へ避難しましょう。
まだ中の生地が焼けていないのに、既に表面だけがバッチリ焼けてしまった場合には、電子レンジに入れても大丈夫なアルミホイルやクッキングシートで、表面を隠して下段に避難しましょう。こうすれば意外と大きな失敗もありません。
最後に焼きあがったらすること
スポンジケーキが焼きあがったら、木の板(木のまな板でもOK、なければ台所のステンレス台)に、スポンジをいれたまま型を15cm程上から落としましょう。これをすることで、焼きあがった生地が均一になると言われていますし、経験上から言えば熱い空気を抜いてやることで、生地がしぼみ難くなります。
そうしたらすぐに型をひっくり返して生地を取り出し、型紙は付けたままでもう一度ひっくり返します。木の板に粗熱が取れるまで置いておき、ほんのり温かく感じるくらいになったらラップで潰さないようにしながら、密封してしまいましょう。
ちょっと、そんなことしたら腐るんじゃないの? いやいや大丈夫なのです。バターケーキなんて焼けたばっかりの熱々をラップで包んでしまったりしますから。そうすることで生地がしっとりとするのです。後は冷めるまで常温で置いておきたいところですが、暑い時期だけはやっぱり冷蔵庫に入れてしまいましょう。
ところで皆さん焼いたその日が美味しいと思われがちですが、翌日以降の方が確実に生地が美味しくなるのをご存知でしょうか? 焼いた当日のスポンジはどうしてもパサパサしがちになりますが、上に書いた方法で生地を休ませると翌日にはびっくりするほど、しっとりとして味も落ち着き美味しくなります。是非一度お試しください。
またどうしても生地がパサパサになってしまった場合は、スポンジにシロップをうちましょう。本当は刷毛で塗るのが一番なんでしょうが、筆者はスプーンで塗り広げたりしています。筆者が持っている刷毛は煮沸消毒しなくちゃならず、非常に面倒くさいのです。
またシロップなんてどうやって作るねん! とお思いの方もいらっしゃるでしょう。水に砂糖を2:1くらいで入れて沸騰させ冷めたら終了という簡単なものなんですが、それだけじゃただ甘ったるいだけで美味しくありませんね。ですので筆者はいつもショートケーキにオレンジを使うのですが、その実を取った後の皮をギュッと握って絞り、そのジュースに小さじ1杯程度の砂糖とグランマルニエやパッソアというお酒をちょっと加え、それにオレンジの実を漬けて密着ラップをしておきます。
実はケーキにサンドしますが、ジュースはスポンジに塗ってしまいます。香りがよくて美味しいですよ。