ここ数年、酵素がブームで、美容や健康維持を目的とした商品が数多く売られています。
一方で、酵素とよく間違われるものに酵母というものがあります。店頭やネットショップでも、酵素ドリンクや酵母サプリなどがあって、違いが分かりにくいですよね?
それらは、ダイエットに良いと言われていますが、糖尿病の血糖値にはどう影響するのでしょうか?
そこで今回は、酵素と酵母の違いやダイエットや糖尿病で糖質制限をされてる方の血糖値への影響などについて分かりやすくお話ししていきます。
酵素とは
酵素とは、体の中の化学反応を触媒し、促進するタンパク質(アミノ酸)のことです。
もっと正確に言えば、タンパク質の殻に包まれたDNA(遺伝子)で構成されていると考えられています。
酵素は、自動車で例えるならば、エンジンを点火するキーの役割を担っています。いくらガソリンを満タンにしても、キーなしでは運転できませんよね。
私たちの体の中では、意識していなくても、生命がある限り常に化学反応が起こっています。
食物の消化、吸収、代謝、不要なものの排泄、新陳代謝、筋肉で運動することや脳で思考することなども全て酵素が働くことによってスムーズに行われます。
補酵素とは
私たちの体内での消化、新陳代謝、運動や思考などの全ての生命活動にとって酵素は必要不可欠です。
また、多くの酵素は、活動するために補酵素と呼ばれるパートナーを必要とします。
酵素はタンパク質で出来ていますが、補酵素は、次のようなビタミンやミネラルなどでできています。
- ビタミンB1:糖をエネルギーに変換
- ビタミンB2:脂肪をエネルギーに変換
- ナイアシン(B3):炭水化物・脂肪を代謝
- パントテン酸(B5):糖質・脂質・タンパク質の代謝
- ビタミンB6:タンパク質・アミノ酸の代謝
- マグネシウム:糖質・脂質・タンパク質の代謝
- イオウ:糖質・糖質の代謝
- コエンザイムQ10:細胞のエネルギー生産
これらは、青魚などの魚類や大豆製品などの食品に多く含まれます。
体内の酵素の働きを最大限に活かすために、先ずはこれらの補酵素を食事からバランスよく摂ることが大切ですね!
コエンザイムQ10とは
ヒトが生きていくために必要なエネルギーは、細胞の中のミトコンドリアが生み出しています。
そのエネルギー生産をする酵素を助ける役目をになうのが、補酵素であるコエンザイムQ10で、1日の摂取量の目安は、100mgだと言われています。
しかし、体内のコエンザイムQ10は、20歳をピークに急激に減少し始め、40~80歳の間に半減してしまいます。
コエンザイムQ10は魚や肉類、野菜などにも含まれていますが、食事で100mgを補うには、ブロッコリーにすると12㎏も必要になってしまいます。
このように食事でコエンザイムQ10を補うことは困難なので、特に30代を過ぎたころからは、サプリで補う方法をおすすめします。
また、強力な抗酸化作用があるといわれ、糖尿病や心臓病の予防効果も期待されています。
一般市場に出ているコエンザイムQ10のほとんどは製造しやすくコストもかからない『酸化型』ですが、補酵素として活用されるためには体内で『酸化型』から『還元型』に変換される必要があります。
そのため、特に中高年を迎えた方には、吸収率の優れた『還元型コエンザイム』がおすすめです!
食物酵素と体内酵素
私たちの生命維持に重要な酵素は、次の2種類に分けられます。
- 食べ物から摂る「食物酵素」
- 体内で作り出す「体内酵素」
「食物酵素」を豊富に含んでいる食品には、トマト、きゅうり、ニンジン、大根、セロリ、キャベツ、りんご、キウイ、バナナ、アボカドなどの生野菜や果物、納豆、キムチなどの発酵食品があります。
次に、ヒトの体の中に存在する「体内酵素」は、潜在酵素とも呼ばれ、2つに分類されます。
- 食べ物の栄養素を消化する「消化酵素」
- 体の正常な機能を維持する「代謝酵素」
消化酵素
「消化酵素」には、ご飯などのデンプンを分解するアミラーゼ、肉や魚などのタンパク質を分解するプロテアーゼ、脂肪を分解するリパーゼなどがあります。
消化酵素のアミラーゼは、唾液や膵液(すいえき)に含まれています。
「ご飯をよく噛んで食べなさい」って言われるのは、アミラーゼによってデンプンをブドウ糖に十分消化するためだったんですね!
このアミラーゼは、ダイコンやヤマイモ、カブにも食物酵素として豊富に含まれています。
特に、生のダイコンは、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼの3つの消化酵素を豊富に含んでいます。お腹の調子が悪い時やすっきりしない時には、食事に大根おろしを添えることをおすすめします。
代謝酵素とは
消化酵素によって分解された栄養素は、小腸で吸収された後、代謝酵素によってエネルギーに変換されます。
「代謝酵素」は、次のような働きや機能に関係しています。
- エネルギーの生産
- タンパク質やホルモンの合成
- 解毒や抗酸化
- 脳神経の機能
このように、もし酵素がなければどんなにすばらしい栄養素を摂っても、体がそれを使うことができません。
酵素なしでは、私たちの生命活動はあり得ませんし、酵素は生きていく上で必要不可欠なものなのです。
食物酵素は熱に弱い
ダイコンなどに多く含まれ消化を助ける食物酵素にも一つ弱点があります。
その弱点とは、「酵素はタンパク質で出来ているので熱に弱い」ということです。
酵素を豊富に含む野菜や果物でも、加熱調理してしまうと、そのほとんどが失われてしまうのです。例えば、冬に人気のダイコンのおでんの中には、酵素が含まれていません。
タンパク質である酵素は加熱調理すると、その熱によって失活(働きを失う)してしまうのです。
酵素が破壊されてしまう温度は、50~70℃といわれています。
例えば、酵素をたくさん含むといわれる酵素系のドリンクでも、加熱処理がされている場合、その中の酵素自体はすでに失活しています。
では、健康やダイエットのために酵素ドリンクを飲むことは無意味なのでしょうか?
その答えは、酵素の母(生みの親)と呼ばれる発酵菌の酵母(酵母菌)にあります。
酵母(酵母菌)とは
酵母(酵母菌)とは、発酵食品をつくり出す時に働く単細胞の微生物のことで、350種類くらい存在すると言われ、動物の体内、植物、水中や土壌の中にも棲んでいます。
また、酵母は、酵素を体の中でたくさん作るので、酵母=酵素の母と呼ばれています。
発酵食品
酵母は、私たちの食生活の中ではとても身近な存在であり、アルコールの醸造、しょう油やみそ、パンなどの発酵食品を作る時に利用されています。美味しい天然酵母のパンを食べてやみつきになった方はいませんか?
酵母の働き
酵母は、食べ物などに含まれる糖質をエサにして、それをアルコール(エタノール)と炭酸ガスに分解して成長します。そして、その過程を発酵と言います。
例えば、日本酒やワインなどのお酒は、原料である米やブドウの糖質を酵母が「アルコール」と炭酸ガスに分解することで醸造されます。
パンの場合は、材料である小麦粉の糖質を酵母が分解する過程でアルコールと「炭酸ガス」が発生して、そのガスによってパンの生地がふっくらと膨らみます。そして、アルコール分は、パンを焼く過程で蒸発します。
酵母の特徴
酵母は、酵素の母とも呼ばれるように、体内で酵素を作り続けます。
酵母は、莢膜(きょうまく)と呼ばれるカプセル状の厚い壁を持ち、熱や酸に強い特徴があり、食べても胃酸で壊れることなく腸までとどき、発酵や消化を促進することが出来ます。
また、酵母には、酵素だけでなく、補酵素になるビタミンB群やミネラル、アミノ酸や免疫力強化やコレステロール値上昇抑制の効果が期待できるβグルカンも含んでいます。
このように酵母には、さまざまなメリットがあります
酵母と麹の関係
麹(こうじ)は、最近、塩麹レシピなどでブームでよすね。この麹と酵母、ちょっと似た響きもありますが、どんな違いがあるのでしょうか?
麹も酵母も菌で、発酵やお酒の醸造に関係しますが、両者は種類と役割が違います。
簡単にいうと、麹はカビの一種で、酵母は細菌の一種です。
麹は、お米などのデンプンを糖に分解して、酵母がその糖をエサにしてアルコールと二酸化炭素を排出します。
簡単にいえば、麹は酵母のエサになります。
日本酒を醸造するときの手順(以下)を見ると分かりやすいかも知れません。
- 炊いたお米に麹菌を加えて米麹にする
- 米麹が、デンプンを糖に変える
- 水と酵母菌を加えて糖を分解してアルコール発酵
麹も酵母も酵素の力で分解して発酵するという意味では同じですが、酵素の力で生まれた副産物に違いがあります。
また、麹(米麹)は自家製酵素ドリンクの発酵を助ける材料にもなります。
酵素ドリンク
市販の液状ドリンクタイプの酵素は、清涼飲料水に分類されるので食品衛生法により全て加熱殺菌されています。
そして、その過程で酵素は活性を失っています。水溶性のビタミンB群やCは熱に弱いビタミンなので、加熱殺菌の過程で壊れてしまうでしょう。
しかし、加熱しても酵素ドリンク中の栄養素である、アミノ酸、ビタミン(脂溶性のビタミンA,D,E,Kの場合)、ミネラルなどは、熱に強いので残ります。
以上のことから、液体状のの酵素ドリンクより、加熱処理をしていない粉末状の酵素(あとで水に溶かすタイプ)の方が、酵素や栄養価を保っていると考えてよいでしょう。
生きている酵母のすごい力
酵素ドリンク(サプリ)でも、熱や酸に強い酵母を含むものであれば、胃酸によって壊れることなく腸まで届くことが出来るでしょう。
自家製の酵素ドリンクの場合は、市販のものと違い、生のままで加熱処理されてないので、生きた酵母が糖分をエサにしながらシュワシュワ発酵し続けているのです。(上の写真)
自家製酵素ドリンクの作り方については、この本が参考になります!*発酵には米麹を使用してます。
自家製酵素ドリンクは、コストも安く生きた酵素がたっぷりですが、無農薬や低農薬の材料を集めたり、毎日2回は手で撹拌(かくはん)する手間は必要です。
そのため、仕事で忙しい方には、生命力の強い酵母がたっぷり入ったサプリを摂ることをおすすめします。
酵母には人工のものもありますが、天然由来のほうが効果が高いと言われています。
酵素や酵母の血糖値への影響は?
糖尿病で糖質制限をされている方にとって「酵素ドリンクは血糖値を上げないのか?」と心配かも知れません。
それを知るためには、食品の血糖値上昇への影響を数値化したGI値(血糖上昇指数)というものがあります。
糖質の種類とGI値
血糖値に直接影響するものは、糖質です。
糖質には、ブドウ糖や果糖などの単糖類の他に乳糖、デンプンなどの多糖類があります。
血糖上昇指数は糖質の種類によって大きな違いがあり、血糖値を下げるホルモンであるインスリンへの負担も変わります。
血糖値を急上昇させるの糖質は、なんといってもブドウ糖(グルコース)で、GI値が100(最高値)です。
コーラやサイダーなどの多くドリンクは、このブドウ糖を使ってるので、血糖値が急上昇します。
それに対して、植物酵素の材料となる果物に含まれる果糖のGI値は20なので、血糖値は急上昇しません。
しかし、果糖は中性脂肪に変わりやすく、たくさん摂れば肥満の原因にもなってしまいます。
「この製品は、果糖なのでGI値が低くて大丈夫です!」という宣伝文句をたまに見かけますが、カロリーのある糖質には変わりませんので、果糖だから大丈夫と単純には言えませんね。
低GI値・低カロリーが理想
結局、糖尿病の血糖値やインスリンへの負担を考えると、GI値が低く、総カロリー数も低い酵素ドリンクや酵母サプリが一番おすすめということになります。
例えば、自家製の酵素シロップの場合、使う材料によっても変わりますが、原液60mlでご飯一善分(160kal程度)のカロリーがあります。
この場合は、通常の食事にプラスするとその分カロリーが増えるので、ご飯の置き換えダイエットにすれば良いでしょう。
また、血糖値の高い人は、1日分の量を5~6回に分けて、通常より多めの水に薄めて飲むのことをおすすめします。
同じカロリーを摂る場合でも、一度でなく数回に分けるとインスリンに負担がかかりません。
酵母が糖質の吸収を抑制
酵母には、食べ物に含まれる糖質をアルコールと炭酸ガスに分解する作用があります。
この作用により、食事で摂った糖質を腸内で吸収される前に酵母が分解することで、糖質の吸収を抑制して、血糖値とインスリンの上昇を抑制する効果が期待されています。
予防医学の国際ジャーナル(INTERNATIONAL JOURNAL OF PREVENTIVE MEDICINE)にも、「醸造用酵母のⅡ型糖尿病への作用」が研究報告されています。(Int J Prev Med. 2013 Oct;4(10):1131-1138.)
そこでは、醸造用酵母をⅡ型糖尿病患者に12週間投与し続けた結果、空腹時の血糖値、ヘモグロビンA1c、インスリン感受性などに有意な改善が認められるという結論が出されました。
今後も酵母の血糖値上昇の抑制効果に関する研究は続けられ、そのメカニズムがさらに解明されていくことでしょう。
*糖尿病と食べ物の関連については次の記事をご参考ください!