2007年05月31日

新聞記事の誤り

 今日の北海道新聞に汗の記事が掲載されています。汗…気になる季節。わきが、多汗症…という見出しです。須藤幸恵さんという記者の署名記事です。以下が北海道新聞の記事の冒頭です。

 気温の上昇とともに、気になるのが汗。体温を調整するために重要な役割を果たしているが、わきがによるにおいや、大量に汗が出る多汗症で悩む人も少なくない。対処法は、大量に汗が出る周辺を清潔にするのが基本だが、制汗剤を使ったり、病院で簡単な手術を受ける方法もある。(須藤幸恵)

 ここでは3人の医師がコメントを述べていますが、本文にはどこにも‘簡単な手術’とは書いてありません。私が何度も書いているように、わきが手術は簡単ではありません。簡単な手術と書いているのは、インチキ美容外科の宣伝だけです。簡単だと思って手術を受けると、とんでもない目にあいます。

 さらに不適切な表現は、『脇の部分を2~3㎝ほど切り、はさみで汗腺を切り取る。アポクリン腺だけでなくエクリン腺も取るため、汗もある程度抑えられる』という表現です。エクリン腺は、アポクリン腺よりも皮膚の浅い層にあるため、はさみで切り取っても全部は取りきれません。エクリン腺もすべて切り取ると、皮膚はペラペラに薄くなってしまい、シワシワの拘縮になりキズがひどくなります。

 わきが手術を数多く経験すると、半年位するとしっとりとする程度の汗をかくことは必ず経験します。これは、わきがの再発ではなく、神経が再生しエクリン腺に作用して汗が出るためです。

 私は、アポクリン腺が多くて臭いがある腋臭症(わきが)ではなく、汗が多いだけの多汗症にはボトックス注射や交感神経の手術をお薦めしています。交感神経の手術は北海道新聞に出ていた本間英司先生にお願いしています。4月4日の日記に記載しています。

 北海道新聞では、交感神経の手術をすると「代償性発汗」がほとんどの人に起こると書いてあります。今朝、早速、札幌南三条病院の本間英司先生にお電話しました。数日前に北海道新聞の取材を受たそうです。学会でも程度の差こそあれ、代償性発汗が起こることは事実として認められているそうです。ただ、手術を受けた全員が代償性発汗で悩んでいるのではなく、大部分の患者様は『あんなに悩んでいた汗がなくなり快適にすごしている』そうです。本間先生は適応を選んで手術を行えば、とてもよい方法だと話されていました。

 今日の件については、北海道新聞社にメールしてみます。もし返答があればこのページでお知らせします。

2007年05月30日

欠品

 良い製品を安く売るチェーンストアで一番困るのが‘欠品’だそうです。おねだん以上の製品は人気が出るので、常に店頭に在庫しておかなければ売れません。製品を常時在庫しておくには費用がかかります。効率よく計画し生産・配送することが大切です。

 美容外科はもっと大変です。‘製品’を作ることができるのは、医師免許を持った‘先生’だけです。医師の数は限られている上に、ちょっと教えた程度では上手な先生にはなれません。せっかく高い広告宣伝費をかけて‘お客様’がたくさんいらしても、『申し訳ございません。手術の予約がいっぱいです』では倒産してしまいます。‘先生’を確保しておかないとすぐに‘欠品’してしまいます。

 腕が良くて、イケメンで女性に人気があり、人当たりもよく、たくさん‘売り上げ’をあげてくれる先生を雇用するのは至難のわざです。上手になった‘先生’は自分で開業し、お店を出して‘はいさようなら’です。
 経営者もあの手この手で‘先生’を引き留めます。全部の手術を教えてしまうと簡単に辞められるので、少しずつ小出しに手術を教えるチェーン店もあります。

 私は前職の中央クリニックを円満退職させていただきましたが、こういうケースはマレです。中央クリニック社長様のご理解があったからできました。感謝しています。

 医師は医療技術者であり職人です。経営者から見ると、自分自身(私)を含めて一番わがままで扱いにくい職種だと思います。自分が思った通りに手術ができないと、いくらお金を出しても辞めます。逆に、どんなにお給料をいただいても、‘医師としての良心’がとがめるような治療はできません。忙しすぎて体を壊して辞める先生もいます。医師にとっては、毎日の診療で患者様から‘先生ありがとう’といわれるのが一番です。

 よい品質の製品は見分けられますが。よい品質の手術をしてくれる医師は簡単には見分けられません。ホームページは‘商品カタログ’のようなものです。良く吟味して選んでください。

2007年05月28日

ニキビと毛

 昨日のレーザー研究会は皮膚科の先生も多数出席していらっしゃいました。皮膚科でも『たるみ』や『シミ』の治療をしているところが増えているようです。でも、皮膚科で圧倒的に多いのがニキビ治療です。

 悪化したニキビは日常生活に支障をきたしますので、保険適応で治療を受けることができます。私は積極的にニキビ治療はしておりません。難治性のニキビは皮膚科の先生をご紹介しています。内服薬(漢方を含む)や外用薬で治療するのが一般的です。

 ニキビの多くは毛に関係しています。毛が生えているところを顕微鏡で見ると、ニキビ性の方は毛穴に皮脂がたくさん詰まっています。皮脂はふつう少しずつ自然に排出され皮膚を潤します。ところが何らかの原因で排出できなくなるると硬くなり、そこにバイ菌がつくと感染して真っ赤なニキビになります。軽度の感染でしたら、抗生物質の内服や外用で治りますが、こじれると治りません。

 何ヵ月も赤く硬くなって、いくらしぼっても出てこないニキビは、毛の奥深くで炎症をおこしています。こうなると皮膚科でいくらお薬をいただいても治りません。『肉芽腫(ニクゲシュ)』という状態になってしまったニキビは、麻酔をして顕微鏡で見ながら取り除くと驚くほど快くなります。毛の先にどろどろになった炎症性のかたまりがあります。皮膚科で治療してくれるところは少ないようです。札幌美容形成外科の職員は私が‘治療’しています。ご要望があれば時間がある時にお引き受けいたします。

 ニキビは毛穴にある皮脂腺が関係していますので、レーザーで毛を焼くと快くなります。昨日のレーザー研究会でも発表されていました。当院の職員も悩んでいたニキビがレーザーフェイシャルで驚くほど快くなりました。毛がなくなりツルツルになって気分も良いそうです。

 札幌美容形成外科にはありませんが、スムースビームというダイオードレーザーでニキビを照射すると皮脂腺が破壊されニキビが快くなります。ただし痛いのが欠点です。自分でしぼるよりはマシだと思いますが、レーザーフェイシャルよりも痛いです。

 ニキビで悩んでいる女性は驚くほど多いものです。生理前に悪化するニキビなどは女性特有の悩みです。原因の一つである顔の毛が少なくなると、ニキビもできにくくなります。

2007年05月27日

レーザー研究会

 今日は東京でレーザーの研究会があったので日帰り出張をしてきました。朝7:21札幌駅発のJRで新千歳空港に向かいました。私はいつもANAを利用します。空港に着くとカウンターの前に長蛇の列ができていました。私は札幌駅の自動チェックイン機でチェックインして行ったので、そのまま手荷物検査をして入りました。8:00を過ぎていたのに、まだ7:50発のANA50便が出発していません。変だなぁ~と思って聞いてみると、コンピューターのシステム障害で発券できず、出発できないとのこと。ANAの親切な女性係員が「今でしたら8:50発のJALさんに変更できますので、お手続きをいたしましょうか?」と言ってくださいました。私は『飛行機もいるし復旧するだろう』と思い、そのまま待つことにしました。

 ところがコンピューターのシステム障害は全国的なものだったらしく、発券から飛行機の運行管理まですべてストップしていたらしいです。結局、8:30発の便が出発したのは10:21で羽田に到着したのが11:50。急いでモノレールとJRで有楽町に向かい、会場に着いたのが12:40でした。40分遅れで講演を聴きました。

 今日の会は札幌美容形成外科で使用している、キャンデラ社のユーザーズミーティング。形成外科・美容外科の他、皮膚科や婦人科の先生など、全国からキャンデラの機器を使用している先生が集まる会です。学会とは違い、各先生の本音をざっくばらんに正直に話す会なので毎年参加しています。懐かしい皮膚科の先生とお会いするのも楽しみです。

 今日の会で参考になったのが、宮田成章先生が発表された、GentleLASEのカーボンピーリング。札幌美容形成外科で使用しているレーザーを使用。開いた毛穴にカーボンオイルを塗って、毛穴を黒く染めて、そこにレーザーを‘ボン!’とかけます。隣に座っていた女医さんは思わず‘あぁ~こわ!’と言っていました。鼻からジュっと煙が出て毛穴が焼けていました。約一週間のダウンタイムが必要とのことでしたが、目だった毛穴が見事に改善していました。モニターになっていた女性誌の編集者の方は、取材にいらして施術を受け、その後ずっと改善されていました。術後2年でもキレイでした。宮田先生のご発表は以前に美容外科学会でもお聴きしましたが、今日のはビデオだったのでよくわかりました。

 もう一つとても参考になったのが、金沢で開業されている林洋司先生のビデオです。林先生は私と同じ形成外科医です。金沢大学医学部をご卒業後、金沢医科大学形成外科で形成外科を学ばれました。金沢医大は形成外科学会で長らく学会誌の編集委員長を務められた、塚田教授が築かれた日本でも有名な形成外科です。

 林先生の診療は、実に良心的な形成外科医の診察風景でした。形成外科の研修医や医学部の学生に見せたい診療でした。林先生は気恥ずかしいと仰っていらっしゃいましたが、形成外科の保険診療と自由診療を上手に組み合わせて、地域住民に本当に貢献していると思いました。

 レーザー屋さん主催の研究会は、最新機器の宣伝販売を目的とすることが多く、過大な効果を宣伝して、高価な機器を買わされることもあります。キャンデラ社の方針は良心的で、来年もこの研究会に出席しようと思いました。キャンデラ社の皆様ありがとうございました。

2007年05月26日

術後2年



わきが手術2年後 ←がキズです

 わきが手術をなさって2年後の患者様がレーザー脱毛にいらしてくださいました。『先生、おかげさまで脇はとってもキレイになりました。是非見てください!』と言っていただきました。私が見ても、職員が見てもキズがどこにあるかわからない位キレイでした。

 写真を撮らせていただき、ご本人からご快諾をいただきましたのでHPで紹介させていただきます。患者様は看護師さんで、臭いの他に白衣の黄ばみや、自宅に白衣を持ち帰って洗濯するのが苦痛でした。

 2年前に一週間の夏休みを利用なさって手術を受けました。術後一時的に手術した部位が赤くなったり、硬くなったりして治療をしましたが、その後は順調でした。お薬をつけてのマッサージを約半年間続けました。

 この方はワキガの範囲が7.5×15㎝と標準的で、経過も良かったのでキズがまったくといっていいほどわからなくなりました。2年間の間に寿退職され、お医者さんとめでたくご結婚なさったそうです。ご主人の先生にも手術のことは話されたそうですが、ご主人が見てもキズはわからなかったそうです。

 わきが手術の経過は個人差が大きく、全員がこのような経過をとるとは限りません。キズが残って何年も経過をみている方もいらっしゃいます。その方の遺伝的な体質によりケロイドになる方もいらっしゃいます。

 この患者様がおっしゃるには、白いものを安心して着られるようになり、試着にもビクビクしなくなったそうです。

 札幌美容形成外科では、わきが手術を原則的に保険適応でしかお引き受けしておりません。保険で手術しても、しっかり治療すればキレイに治ります。私や職員にとっても嬉しい知らせでした。

2007年05月25日

広告宣伝費

 昨日の講義で似鳥昭雄社長が、ある上場企業の経常利益が100億円で、その会社の広告宣伝費が200億円と話されていました。私たちが楽しんでいる民放各局は、企業が出す広告宣伝費で運営されています。私が好きな‘北の国から’や‘Dr.コトー診療所’も民放の番組でした。電通・博報堂という有名な広告代理店もあります。どの会社の業績もよいようです。

 美容外科も広告宣伝費を使います。大手美容外科は、かなりの金額を広告宣伝費に使います。広告宣伝で一番高くつくのがTV-CMです。ビューティーコロシアムが広告宣伝費で製作されているか、純粋な取材なのかは存じませんが、番組の効果は絶大だと思います。大塚美容形成外科の阪田院長は元形成外科医で、手術が上手なので有名な先生です。

 全国に20箇所もあるような、チェーン店の美容外科でしたら、たとえ1,000万円のTV-CMを流しても、費用は一店当たり50万円です。1,000万円のTV-CMなんて、あっという間に終わります。

 私のように、個人経営の美容外科は、まず‘絶対に’TV-CMは無理です。せいぜいローカル局のスポットCMですが、それでも目の玉が飛び出るほど費用がかかります。

 広告代理店から最近よく提案されるのが、インターネット関連の広告です。‘わきが’と入力して出てくる画面で、スポンサーサイトとなっているのが‘広告’です。高い広告になるとワンクリックでかなりの価格になります。たくさん広告宣伝費を使っている美容外科は、ネット関連だけで一ヵ月に数百万円も使うそうです。

 安くて上手な美容外科を見つけるのは至難の技です。牛丼でしたら、‘早い安いうまい’がわかりやすいですが、美容外科には通用しません。

 やはり最後は自分の目で確かめることです。広告宣伝費をかけているところは、その分が‘製品’の価格に上乗せされています。気をつけてください。

2007年05月24日

おねだん以上

 今日は北海学園大学のニトリ寄附講座「流通・サービスを科学する」の講義を受講してきました。3回目です。講師は似鳥昭雄社長。講義のためにわざわざ東京からいらしていただいています。私は自分が40代の時に、看護学校や札幌医大で90分の講義を1コマするのも大変でした。ニトリ講座は90分の講義が2コマ連続。途中に10分の休憩があるだけです。似鳥社長は休む間もなく話し続け、休憩時間の間にも携帯電話で忙しそうに打ち合わせをなさっていらっしゃいました。脱帽です。

 ニトリのTV-CMで‘おねだん以上ニトリ’というフレーズが流れます。今年の小学生用の机では他社を引き離して、圧倒的にニトリ製品が売れたそうです。

 ニトリでは価格が安いことが一番。買う立場から買いやすい価格を設定し、それを目標に製品開発をします。同じ品質なら他社より3割以上安いこと。同じ価格なら他社より5割以上品質が良いことがニトリの大原則です。

 製品は人件費が安い海外で現地生産。品質は使う立場から、‘適正’な品質にします。高品質だけを考えるとどうしてもコストが高くなるので、実用的な品質で安い製品を提供します。これがニトリ成功の秘訣です。

 医療は典型的な労働集約型の産業です。日本は世界一人件費が高く、その中でも特に医療従事者の人件費は高額です。海外で現地生産し輸入することもできません。医療の品質は世界で一番高く、安全でなければなりません。

 私は札幌美容形成外科を開業する時に、なんとか安価に最高品質の医療を提供できないかと考えました。そこで私が考えたのが‘保険診療’です。一般の方が保険が利かないと考えている、ワキガ、陥没乳頭、眼瞼下垂などを保険診療で行うことにより、最高品質の医療を安価に提供できます。
 ワキガ手術の一般的な価格は25万円~30万円です。札幌美容形成外科では、保険診療の自己負担分が全身麻酔でしても8万円程度です。
 陥没乳頭手術は30万円~35万円が約6万円。
 眼瞼下垂症手術は35万円~38万円が約6万円。

 これはニトリ様の同じ品質なら他社より3割以上安いことを十分にクリアーしています。安すぎる位です。

 特に手術用顕微鏡を使用した若い方の眼瞼下垂症手術は、世界でも最高水準の‘品質’で他社には絶対に負けない‘製品’です。HPで公開しているのは、決して特殊な例ではありません。目の機能を回復して、その上、とてもキレイになっています。絶対にお買い得な‘おねだん以上、札幌美容’です。

 私はお金儲けだけを考えて診療をしているわけではありません。少しでも‘お客様’に喜んでいただき、毎日快適に生活していただきたいと願って深夜まで仕事をしています。

2007年05月23日

人工呼吸器

 和歌山県の病院で88歳の脳死状態になった患者様から人工呼吸器を外して‘殺人’をしたと、医師が書類送検された記事が掲載されていました。

 和歌山県立医科大付属病院紀北(きほく)分院(和歌山県かつらぎ町)で、延命措置を中止する目的で80歳代の女性患者の人工呼吸器を外して死亡させたとして、県警が、50歳代の男性医師を殺人容疑で和歌山地検に書類送検していたことが22日、わかった。

 調べによると、男性医師は脳神経外科が専門で、県立医大の助教授だった2006年2月27日、脳内出血で同分院に運ばれてきた女性患者の緊急手術をした。しかし、患者は術後の経過が悪く、脳死状態になっていたため、家族が「かわいそうなので呼吸器を外してほしい」と依頼。医師は2度にわたって断ったが、懇願されたため受け入れて人工呼吸器を外し、同28日に死亡したという。

 医師は3月1日に紀北分院に報告。分院では射水市民病院での問題が発覚した直後の同年3月末、和歌山県警妙寺署に届け出た。捜査段階の鑑定では、呼吸器を外さなくても女性患者は2~3時間で死亡したとみられるが、県警は外したことで死期を早めたと判断、今年1月に書類送検した。

 飯塚忠史・紀北分院副分院長は「呼吸器の取り外しについては医師個人の判断だった。医療現場の難しい問題なので、司法の判断を仰ぎたいと考えて県警へ届け出た」と話している。家族は被害届を出しておらず、「医師に感謝している」と話しているという。

 呼吸器取り外しを巡っては、北海道立羽幌(はぼろ)病院の女性医師が05年5月に殺人容疑で書類送検(不起訴)されており、今回の書類送検が2例目。羽幌病院の問題では、女医が呼吸器を外した行為と、患者の死との因果関係が立証できずに証拠不十分で不起訴となった。

 しかし、問題発覚後、呼吸器の取り外しは医療の現場では一般的に行われている可能性があることなどが判明。これを契機に、国や医学界が延命措置中止に関するルールを明確にしようと指針作りに乗り出したこともあり、富山県警は、慎重に捜査を進めている。分院の医師が書類送検されたことで、富山県警の捜査関係者からは「同様の事件で死亡者数はこちらの方が多いのに、書類送検しないという選択肢があるのかは微妙な問題だ」との声も出ている。
(2007年5月22日読売新聞)

 ここまでが新聞の報道です。人工呼吸器は医療現場ではレスピレーターと呼ばれます。高価な医療機器です。

 新聞には書いていませんが、人工呼吸器を使用すると料金がかかります。内科医しかいない病院にも急速に普及したのは‘儲かる’からです。一日使用すると\7,450がかかります。30日間使用すると\223,500です。一年365日使うと\2,719,250です。

 もし国が人工呼吸器の料金を大幅に引き下げると誰も使わなくなります。あるいはICUなど特殊な病床にだけ認めると一般病院からは姿を消します。

 私はこの脳外科の先生がとてもお気の毒に思います。一生懸命手術しましたが助けられず、身内の人を呼んでくださいと伝えました。東京からあと○時間で身内が来ます。それまでなんとか持たせてくださいと言われレスピレーターを装着したようです。

 最期のお別れをして、『先生ありがとうございました。もう結構です、苦しそうなので外してください』と言われて外したら殺人罪です。

 早く法律を変えて安心して医療を行えるようにしてください。法律を変えられるのは政治家だけです。医師は無力です。私は自分自身には‘絶対に’人工呼吸器は要りません。早く死んでも本望です。

2007年05月22日

美容外科がなくなる?

 松山の美容外科学会で高須先生から‘美容外科’という科目がなくなると伺いました。帰ってからネットで検索すると次の記事が見つかりました。

 厚生労働省は21日、医療機関が広告などで使える38の診療科名を26に整理し、新たに「総合科」などを加える案を、医道審議会診療科名標榜(ひょうぼう)部会に提出した。同部会で今後検討する。

 同省案は診療科目を減らす一方で、「乳腺」「頭痛」「ペースメーカー」など、医療機関が得意とする分野を明記することも認めており、同省は「広告の規制緩和を進めるとともに、患者の利便性を高めることができる」と説明している。

 削減案の対象となったのは、アレルギー科、心療内科、心臓血管外科、呼吸器科など。アレルギーを専門とする場合は、「内科(アレルギー)」と表記することが可能という。ただ、患者団体や専門医から反発が出る可能性もある。(2007年5月20日 読売新聞)

 美容外科という名前(正式には標榜科目と言います)が認められるまでには、私たちの先輩が大変な苦労をなさいました。美容整形がいいか美容外科がいいかは別として、美容外科がなくなると困るのは一般市民です。

 厚生労働省の案では形成外科は残るそうです。すると形成外科(得意な手術は美容整形です)なんて広告や、内科(アンチエイジングが得意です)なんて広告もOKになるのでしょうか?

 松山の美容外科学会でも話題になっていましたが、一般の内科や外科を‘標榜’なさっていた先生が、保険診療だけでは儲からなくなったので、自由診療をどんどんなさっているそうです。眼科の先生が二重をしたり(韓国では多いです)、内科の先生が毛はえ薬を処方したり。婦人科の先生がレーザー脱毛をしたり…。

 私も職員のインフルエンザの予防注射くらいはしますが、自分の専門分野以外は手を出しません。厚生労働省は何を考えているのでしょうか?こんなことをしても日本の医療はよくなりません。

2007年05月21日

鼻プチ整形の副作用

 昨日の日本美容外科学会でヒアルロン酸の副作用に関する報告がありました。ヒアルロン酸による鼻のプチ整形を受けた後で、鼻先が部分的に壊死になってしまった症例です。正直なところ驚きました。副作用を起こしたヒアルロン酸はPerlane(パーレーン)というスウェーデン製の製品で当院でも使用しています。世界で一番安全性が高く、FDAの承認も受けています。私は身内の治療にも使用しています。

 この副作用を報告してくれたのは、日本でおそらく一番大きな美容外科チェーンを経営なさっているクリニックです。こういう学会発表は、経営面からはマイナスになるので経営者としては発表したがらないものです。

 そこの大手美容外科では何万症例という鼻のプチ整形を施術されていると考えられます。今回、報告されたのは20歳~50歳までの5症例でした。頻度は一万人に一人の割合以下かもしれません。たとえ一万分の一でも副作用が出ると大変です。

 副作用の原因は、ヒアルロン酸の粒子が鼻の血管の中に入って血管が詰まってしまうことです。学会ではこれに対処する方法も発表されました。私も会場で意見を述べさせていただきました。

 自宅に帰ってからPubMedという米国の医学情報を検索するサイトで早速調べました。世界中でまだ一例も文献的な報告はないようです。学会に参加するのは、新しい治療法を見つける目的もありますが、こうした副作用を知ることも極めて大切です。今回の発表をしてくださった、大手美容外科の先生に心から感謝し敬意を表します。

 今まで当院で鼻のプチ整形をなさっていただいた患者様で不安になられた方がいらっしゃいましたら、ご予約の上、診察にいらしてください。これからも安全第一で診療を行って参ります。

2007年05月20日

日本美容外科学会

 日本美容外科学会の報告です。この学会はいわゆる十仁学会と呼ばれる美容外科学会です。形成外科医の参加が少なく、開業美容外科医の参加が多い学会です。韓国の美容外科学会である、大韓美容外科学会の先生も参加され、会場のアナウンスは韓国語でも行われます。

 今回の学会長は松山市で開業されている、さくらクリニックの福井卓也先生。福井先生は東邦大学医学部をご卒業後外科学を専攻、その後十仁病院で美容外科を研鑽されました。中央クリニック名古屋院院長の後、地元の松山市で開業されました。

 学会を開催するのは大変な仕事で、開業医が業務の傍ら準備するのは本当に大変なことです。さくらクリニックのスタッフに伺ったところ、約1年前から準備され、クリニックの10人の職員で学会を運営されたそうです。

 今日は学会のプログラムの他に、青色LEDの発明で有名な中村修二先生(米国カリフォルニア大学(UCSB)教授)の特別講演がありました。

 中村教授は徳島大学工学部電子工学科を卒業後、日亜化学工業に入社。研究部門に所属していましたが、業績が上がらないため、入社10年目に会社を辞めろと言われました。その時に青色発光ダイオードの開発を社長に直訴し、米国・フロリダ大学に1年間留学。1989年に日亜化学工業に戻り、約2億円する製造装置を自分で改造して開発に成功しました。その後、発明に関して日亜化学工業と裁判になり、2005年1月東京高裁で特許等の対価等として、日亜化学工業側が約8億4000万円を中村先生に支払うという和解が成立しました。 中村教授は私と同じ1954年生まれ。日本の大学入試制度が悪いので米国のような独創的研究やベンチャー企業が生まれないという考えです。講演をお聞きして、教授の考えに共感しました。

 今日の学会で美容外科のトピックはフェイスリフトのシンポジウムでした。シンポジストはリッツ美容外科の廣比利次先生、Dr.ゴールドマンクリニックの高橋金男先生、名古屋美容外科の平田修人先生、鶴舞公園クリニックの深谷元継先生、国際美容外科の荒木義雄先生、特別発言としてご自身が2回フェイスリフト手術を受けた高須クリニックの高須克弥先生でした。形成外科系の美容外科学会では聞けない貴重なお話しでした。

 中でも圧感は高須先生ご自身の手術ビデオでした。以前の国際学会でも拝見しましたが、手術を受けている院長が手術中にあれこれ指示を出されるのはすごかったです。2回目の手術は、ご子息の高須幹弥先生が執刀。この時は、息子と手術中に親子喧嘩になっては困るので全身麻酔でなさったそうです。

 フェイスリフト手術は古くから行われている手術ですが、手術後の後戻りなどの問題点があります。今回のシンポジウムでも各先生の創意工夫が見られ参考になりました。明日からの診療に役立てます。

2007年05月19日


3000年の歴史がある道後温泉

 日本美容外科学会に参加するため、四国の松山に来ました。四国に来たのははじめてです。昨日は14:00まで診療して、その後東京経由で松山に来ました。松山はいで湯と文学の街。有名な道後温泉や夏目漱石の小説「坊っちゃん」の故郷です。

 道後温泉は日本三古湯の一つ。兵庫の有馬温泉、和歌山の白浜温泉、そして道後温泉といわれています。中でも道後温泉は、「日本書紀」にも登場し、文献的には我が国最古の温泉であるといわれています。温泉好きの私は、今朝6:00からこの道後温泉に行ってきました。

 3000年の歴史を誇る日本最古の道後温泉。なんと聖徳太子まで入浴なさったという温泉です。期待して行きました。

 道後温泉は、明治27年に道後湯之町初代町長・伊佐庭如矢が現在の本館を造りあげました。国の重要文化財で松山市が管理しているようです。

 早起きして張り切って行ったのですが、正直なところ期待はずれでした。まず、細かいことですが、何にでも料金がかかります。受付や係りの女性は親切でしたが、貴重品はコインロッカーにお入れください。料金は\100で一度入れると戻りませんのでご注意ください(北海道なら戻りますね)。でロッカーにカバンをいれました。風呂は朝6:00だというのに、とても混んでいました。私が入ったのは一番安い‘神の湯’です。風呂から上がって髪を乾かそうとすると、ドライヤーが3分10円。今時あまり見かけない、昔、銭湯によくあったタイプでした。コインロッカーに小銭を入れてしまったので使えません。ドライヤー代がかかりますので10円お持ちくださいって言ってくれたらよかったのに…。

 お風呂は、明治時代にしては立派だったのでしょうが、北海道の温泉に慣れた私にとっては狭くて期待外れでした。洗い場も順番待ちでした。もちろんサウナもジャグジーもありません。明治時代にできたので当たり前ですね。

 お客様は大部分が年配の方でした。中には観光客と思われる若者もいましたが、おじいさんが多い印象でした。

 浴室と脱衣所で、とても臭いのきついワキガの方がいらっしゃいました。半径2m以内に近づくと強烈に臭いがしました。20歳位の青年で、髪や髭はこぎれいにしていましたが、本人は臭いに気づいていないと思います。札幌だったら手術してあげるのになぁ~と思いました。朝から形成外科の必要性を再認識しました。これから学会へ行って勉強してきます。

2007年05月18日

消毒と滅菌

医学部や看護学校の講義のようですが、解説を続けます。消毒と滅菌は似ているようですが大きく違います。

 手術を終わった後で、「先生、キズはいつから濡らしてもよろしいですか?」「どのお薬で消毒すればよろしいでしょうか?」などとご質問を受けることがあります。

 札幌美容形成外科では、原則として手術後に消毒薬はお渡ししておりません。大部分の手術後にお渡しするのは抗生物質と消炎剤が入った軟膏です。

 唯一、消毒薬だけをお渡しするのがピアスです。米国製の医療用ピアスを使用していますが、そのマニュアルに消毒が記載されているためお渡ししています。ボディーピアスも同じです。ピアスという異物を体に装着するので消毒します。

 ワキガ手術、包茎手術、目の手術、鼻の手術のいずれの術後にもキズは消毒いたしません。傷はキレイに縫合してあるので、わざわざ消毒しなくてもバイ菌が入る可能性は低いのです。

 むしろ消毒薬で皮膚炎を起こすことの方が心配です。術後は抗生物質を内服し、抗生物質が入った軟膏を外用するだけで十分です。

 キズはシャワーなどで洗った方がキレイに治ります。重傷のヤケドでも、生理的食塩水と同じ濃度にした風呂で全身を洗います。こうするとヤケドがよく治ります。生理的食塩水はヤケドやキズにもしみません。ある種の温泉がヤケドに効くのはこうした理由です。

 消毒とは人体に有害なバイ菌を消すことです。ただ完全にゼロにはできません。減らす程度です。死なない菌もいます。ふつうのキズならこれで十分ですし、消毒は不要という先生もいます。私もキズは消毒しない派です。

 滅菌はすべての菌を殺してしまうことです。抹殺するのです。細菌もウイルスもカビも殺します。手術に使う器具は‘消毒’ではダメです。熱湯をかけるのも消毒です。滅菌は高圧をかけて温度も100℃以上に上げます。

 生身の人間はヤケドをしてしまうので滅菌はできません。手術をする前には術野を消毒します。皮膚をキズつけるので消毒をしないと有害な菌がキズに入る恐れがあるからです。

 感染が問題になるのは抗生物質や消毒薬が効かない菌がいるためです。医学が進歩して薬をたくさん使うようになったのでバイ菌も力をつけました。術後にトラブルを起こすのは大部分が耐性菌です。耐性菌については別の日に書きます。

2007年05月17日

清潔と不潔

 私はキレイ好きです。毎日お風呂に入り、歯も一日4回(朝昼夕食後と寝る前)磨きます。お風呂にも入らず歯も磨かない人は不潔ですね。一般的にいう清潔・不潔の概念はこんなところです。ところが医学(特に外科学)でいう清潔と不潔は大きく違います。

 1860年代に英国の外科医リスターが滅菌法を確立しました。近代外科学は滅菌法が発見されたことにより大きく発展しました。リスター以前の外科手術は創が膿んで、膿が出るのがキズによいと考えられていました。ですから今なら考えられないくらい手術による感染が多く、死亡率も高かったのです。足一本切断しただけで感染して死んでしまっていました。今ならすぐに訴訟です。

 医学でいう清潔とは菌がまったく存在しないこと、すなわち無菌状態を意味します。不潔とは無菌状態ではない状態を指します。外科手術で使用する器具やガーゼは‘滅菌’されています。ガーゼ交換で使用する器具やガーゼも同じです。高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)という滅菌器やエチレンオキシドというガスを使用して無菌状態にします。どんな菌も全くいない状態です。

 白い巨塔などのTVドラマを見ると、手術の時に外科医は薄いゴムの手袋をしています。これは手が汚れるのを防ぐのではなく、むしろ逆に手についたバイ菌を術野につけないためなのです。この手袋も滅菌されています。清潔そうに見える人の手にも常在菌という細菌がいます。人間の体は皮膚という厚いバリアーで覆われているため、手にバイ菌がついても感染しません。

 ところが手術で皮膚にキズをつけると、バリアーがなくなり菌が体に入ってしまいます。性病がうつるのは、性器の粘膜が薄く、皮膚に比べるとバリアー機能が落ちるためです。昨日のタンポンでTSSになりやすいのも同じ理由です。

  この手術で使うゴム手袋は1889年に米国の外科医ハルステッドが考えました。手術室のナースが消毒剤で手が荒れて困っていました。ハルステッドは彼女のためにゴム手袋を使わせました。するとナースの手荒れがよくなっただけではなく、手術の感染率が激減しました。こうして米国のボルティモアから全米へ手術用手袋が普及しました。手術室ナースはハルステッドの恋人で、医学史に残るラブストーリーと言われています。

 私が札幌美容形成外科を開業する時に、一番充実させたのが滅菌設備と手術器具です。札幌美容形成外科には合計4台の滅菌器があります。目に見えない部分ですがこれが外科の基本です。器械は高価でたくさん揃えることは大変です。しかし、外科の基本を無視しては安全に手術はできません。残念なことですが、美容外科の中にはこの手術器具の滅菌という基本中の基本を守っていない施設があります。他人に使用した器械を簡単に洗って、消毒剤で簡単に消毒しただけで次に使用しているところもあります。

 キャンペーンで割安だからといって、価格でクリニックを選ぶととんでもない目に遭うことがあります。自分の体は自分で守ってください。

2007年05月16日

タンポンショック

 昨日書いた脂肪吸引によるショックはブドウ球菌という細菌が出す毒素によって起こります。
このブドウ球菌によるショックをToxic Shock Syndrome、略してTSSと呼びます。

 1970年代に欧米でタンポンショックという病気が報告されました。
タンポンを使用した女性が急に具合が悪くなり最悪の場合は死にいたることがあります。

 女性の生理用品であるタンポンは医療用具です。厚生労働省の認可が必要で滅菌されています。タンポンの説明書には必ずTSSについての記載があります。機会があれば読んでみてください。

 こちらのトキシックショック症候群情報サイトによると、イギリスの人口約5800万人のうち、毎年報告されている発症件数は約40件で、そのうち半数がタンポンを使用している女性です。TSSは、ほとんどの医師が一生の間に一度も治療をする機会がないくらい非常にまれな病気です。極めてまれですが、TSSは命にかかわる場合があります。患者数が少ないですが、不幸にも英国では年間2、3人がTSSにより死亡しています。
TSSは、男性、女性また子どもの誰でもかかる可能性がある病気です。
報告されているTSS発症者の半数はタンポンを使用している女性で、残りの半数は、例えば熱傷、炎症性の腫瘍、虫刺されや手術後の局所感染によるものです。TSSを引き起こす毒素から保護するために必要な抗体は、年齢とともに増加します。そのため、TSSの危険性は若い人ほど高くなります。

 私は、このTSSの患者様を治療したことがあります。
その方はタンポンでTSSになったわけではありませんが極めて重症でした。

  通常の生理で普通にタンポンを使ってもTSSにはなりません。問題なのはタンポンをとり忘れる人(信じられないかもしれませんが、とり忘れて次に入れてしまう人がいます)。仕事で疲れて、朝入れたタンポンをそのままにして寝てしまう人。病院などに勤務する女性で、多剤耐性の黄色ブドウ球菌(MRSA)が手について、MRSA付きタンポンを使用してしまう人などなど…。
 婦人科の先生は、とり忘れて腟の中でとんでもない悪臭を放っていたタンポンを取り出すことがあるそうです。
 タンポン使用時には、次のことを忘れないで、衛生的に使用してください。
・タンポンの挿入時と取り出すときは手を洗う。
・タンポンは、説明書に記載されている通り、定期的に交換する。
・一度に2つ以上挿入しない。
・夜寝る前には、新しいタンポンと交換し、朝起きたら取り除く。
・生理期間の最後には、タンポンを取り除く。
 脂肪吸引で死亡することはマレです。タンポンで死亡することも極めてマレです。
ただ、タンポンといえど正しく使わないととんでもない目にあいます。

 自分の体は自分で守らなくては誰も守ってくれません。
タンポンでショック死するなんて信じられないと思うでしょうが正しく使わないと怖いのです。

2007年05月15日

脂肪吸引のトラブル


Plastic and Reconstructive Surgery,Vol.106p204,2000より引用

 この症例はPRSという米国形成外科学会雑誌に掲載された学術論文です。
 患者様は20代の女性。日本のある美容外科で腹部・殿部・大腿の脂肪吸引を受けました。
 手術の翌日、脂肪吸引を受けた部位の痛みがあり手術を受けた病院へ入院しました。その翌日には状態が悪化し、大学病院の救急部に転院しました。手術後の感染によって腹部から大腿部にかけて広範囲に壊死になってしまいました。血圧は低下し感染症でショック状態になっていました。
 呼吸不全で生命の危険があったため2週間は人工呼吸器の助けを借りました。腹部から大腿にかけて壊死になった皮膚と軟部組織を2日目と12日目に除去しました。キズは体表面積の22%にもなり重症のヤケドと同じ状態でした。約1ヵ月間の集中治療で一命を取り留めたものの、大きなキズが残りました。

以下がPRSに掲載されたタイトルと原文の一部です。
 
Toxic Shock Syndrome after Suction Lipectomy.
Plastic and Reconstructive Surgery:Volume 106(1)July 2000 p204-207.
 Case Report
  A woman was admitted to our hospital 2 days after suction lipectomy. The patient had received aesthetic suction lipectomy of the abdomen, buttocks, and thighs during an office procedure by a cosmetic surgeon. On postoperative day 1, the patient contacted the cosmetic surgeon complaining of wound-related pain and was admitted to the cosmetic surgery hospital. On postoperative day 2, the patient was referred to the emergency department of our hospital.
 The patient was in toxic shock. Chest x-ray showed acute respiratory distress syndrome, which required intubation and controlled ventilation for 2 weeks and intensive medical treatment for about 1 month. Surgical debridement was repeated on hospital days 2 and 12, leaving open wounds covering 22 percent of the total body surface area. Signs of multiple organ failure resolved slowly, and desquamation of the skin on the palm was observed 18 days after suction lipectomy. The patient was transferred to a regular ward 29 days after admission, and her wounds were covered with a meshed autograft. The patient required intensive medical treatment for about 1 month and great effort to adapt herself psychologically after the illness.

 この論文には次のコメントが掲載されました。
 すべての形成外科医は日常診療に潜んでいる潜在的な危険性を認識し警戒すべきである。貴重な症例報告で注意を喚起してくれ、卓越した治療で生命を救ってくれた著者に感謝する。
 This report of toxic shock and necrotizing fasciitis after suction lipectomy is an important reminder that should alert all plastic surgeons of the potential dangers lurking in almost every routine case. I thank the authors not only for bringing this case to our attention, but also for outlining the superb postoperative care that saved this patient's life.

 あまり知られていない事実ですが、脂肪吸引により日本では何件もの死亡事故が起こっています。
大手美容外科で行ったからといっても安心はできません。どんな手術にもリスクはつきものです。

 重要なのは、事故を起こさないようにする経験と技術です。
新米のパイロットが操縦する旅客機には恐ろしくて搭乗できません。救急や感染に対する知識も必要です。感染を起こさないようにする設備も必要です。整備不良の飛行機は事故を起こします。

 美容外科は決して楽で儲かる診療科目ではありません。

一朝一夕に促成栽培でなれる科目でもありません。
この日記を読んでいただいている、医学生や研修医の先生に対する私からの警告です。

2007年05月14日

医学部にへき地枠

2007年5月13日の北海道新聞に
医学部に「へき地枠」-国公立大に創設検討-という記事が掲載されていました。

 記事の内容です。
 政府、与党は12日、深刻化する医師の不足や偏在を解消するため、すべての都道府県の国公立大学医学部に、卒業後のへき地での勤務を義務付ける枠を設ける方向で調整に入った。定員100人当たり5人程度を「へき地枠」として増員する案が上がっている。
 医学部の定員をめぐっては、東北など10県の大学医学部で最大10人まで最長10年にわたり増員する措置のさらなる拡充が政府、与党の検討項目に上がっており、「へき地枠」創設はそれを一段と進め全国に拡大する形だ。
 与党幹部と厚生労働相ら関係閣僚で構成し、近く開かれる医療問題に関する政府与党協議会で検討し、6月に策定する政府の「骨太の方針」に盛り込みたい考えだ。
 これに関連して自民党の丹羽雄哉総務会長は12日、新潟市での講演で、卒業後にへき地などでの勤務を義務付けている自治医科大の例を挙げ「これを47都道府県の国公立大に拡大したらどうか。実現すれば医師不足は間違いなく解消する」と強調した。

 私が、医学部で4年間教員をした経験と、医学部の学生や研修医を知る立場から発言させてもらうと、これで北海道の僻地医療は改善されません。

 北海道新聞の解説にも書かれていますが、医学生が順調に医学部を卒業するまで6年。私の時代でも6年間で卒業できたのは90%弱です。医師国家試験まで順調に合格したのは80%強でした。今は国家試験合格後2年間の臨床研修があります。研修を終えたばかりの医師では頼りなくて一人で僻地医療は担え(ニナエ)ません。医師の養成には時間がかかります。

 医学生や研修医は医療現場をよく見て自分の将来を決めます。今の若者は、3Kの職場は嫌います。医学部も同じです。小児科は診療報酬が低く、きつく辛いので嫌われています。産科は肉体的にきつく訴訟も多いので嫌われています。一般の3Kは「きつい(Kitsui)」「汚い(Kitanai)」「危険(Kiken)」。医者の3Kは「きつい(Kitsui)」「危険(訴訟が多い)(Kiken)」「給料安い(Kyuryou)」だと聞いたことがあります。

 若い医師が一番心配するのは、一人で指導者がいない僻地勤務をして医療事故を起こすことです。医療事故をおこさなくても、患者様からのクレームでめげます。『今度来た先生はヤブだ!』という住民の言葉でやる気をなくします。良い指導者がいないと名医になれません。

 自治医大出身で美容外科医になった先生はあまり聞いたことがありません。しかし、国が日本を守るために作った防衛医科大学校を卒業した医師で、現在は美容外科を専業にしていらっしゃる先生はいらっしゃいます。

 職業選択の自由は憲法で保障された基本的人権の一つです。いくら国の政策で僻地枠を作っても、へき地に勤務して医師が幸せになる条件を整えなければへき地に医師は赴任しません。

 今の若い先生は、美容外科が楽で儲かると考えて選択しています。
楽ではなく儲からないことを少しずつ解説します。

2007年05月13日

72.1%の病院が労基法違反

昨日の医師と労働基準法についてのつづきです。
医療法で‘病院(20床以上のベッドがある医療機関)’には当直医が勤務することが義務付けられています。例外的に病院と院長の自宅が同一敷地内にある場合は、宅直(タクチョク)といって自宅で当直をすることが認められますが、原則は病院の当直室で勤務です。当直医は夜間も入院患者に対応しなければならないので宅直でも晩酌はできません。

  大学病院は各診療科毎に当直医がいますが、一般病院では、20床の個人病院から1000床を超える大病院まで、最低一人の当直医が当直をしています。問題になるのは100床以下の病院です。病院の種類(救急患者を扱うか?老人病院か?など)や規模によって、医師の定数が法律によって決められています。ベッド数が少なければ医師定数が3人でも病院として認可されます。
 ところが、3人で当直を回すとなると一ヵ月に最低10回は当直勤務です。ここで労働基準法に引っかかることになります。昨日も書きましたが、労基法では当直は週一回、日直は月一回が限度です。こうなると3人しか医師がいない病院は‘絶対’に違反になります。

 厚生労働省HPを調べたところ、厚労省でもこの問題を検討していることがわかりました。平成17年4月25日に行われた第4回医師の需給に関する検討会議事録が検索できました。読むのがイヤになる位、長い冗長な文章です。
 この中に労働基準局監督課の庭山監督官の答弁がありました。労働基準局では平成15年から平成16年に、全国47都道府県の596病院で監督実施を行いました。この596病院のうち何らかの法違反があったのが430病院です。違反率72.1%です。
 驚くべきとことに、この72.1%という違反率は、病院に限らずどんな事業場でもこのぐらいあると書かれていました。庭山監督官の言葉で『こういう言い方もなんですが、特別な違反率ではありません』と書かれていました。
 もし、手術の失敗率が72.1%だったら絶対に手術は受けません。
返品率が72.1%だったら企業は間違いなく倒産です。
労働基準法は違反するためにある法律でしょうか?

 労働基準監督署は‘署’という肩書きがつくお役所です。もし、警察署で違反率72.1%の犯罪を見逃していたら日本はとんでもない国になります。税務署が72.1%の脱税を見逃していたら日本は倒産します。

 厚生労働省は医療と労働の両方を監督する官庁です。‘女性は産む器械’と発言していた大臣もいました。政府は、もう少し医療を真剣に考えないと、参議院議員選挙で手痛い目にあうと思います。

2007年05月12日

医師と労基法

私は医師になってから25年間以上、勤務医をしていました。
医師は患者様の急変に備えて、一年365日24時間待期しています。昔はポケットベルでした。
休日に買い物をしている時も常に携帯していました。ポケベルが鳴ると、『あぁ、昨日手術したあの患者さんかなぁ…?』なんて考えながら公衆電話を探して電話したものです。

  札幌美容形成外科を開業してからも同じように対応しています。
2007年2月21日からは夜間はテープによる案内にしましたが、緊急連絡先はご案内しています。
医療法による規定はありませんが、私の方針で24時間連絡ができるようにしています。

 私が学会出張などで、電話対応ができない時は職員に頼んで電話応対をしてもらっています。
自分が医師として勤務していた時には、待期に対して手当が出たことはなく、特に考えもしませんでした。それが医師として当たり前だと思っていました。ところが、診療所の経営者になって立場が変わりました。社会保険労務士に相談したところ、待期は労基法施行規則第23条による断続的な宿直・日直業務に該当するので、労働基準監督署に届けを出すべきだと助言を受けました。

 厚生労働省HPには詳しい記載がないので、神奈川県商工労働部HPで調べました。宿直又は日直業務で断続的な業務とは、本務に関する労働時間に引き続き、又は休日になされる勤務の一態様であって、本務とは別個の、構内巡視、文書や電話の収受又は非常事態に備えて待機するもので、常態としてほとんど労働する必要のない勤務です。労基署長の行う許可については、①「勤務の態様」(下記のとおり)、②「宿日直手当」(原則同種労働者1人1日の平均額の1/3を下らないこと)、③「宿日直の回数」(原則日直月1回宿直週1回以内)、④「その他」(宿直勤務については、相当の睡眠設備の設置)の各項目の基準をすべて満たしていることが必要です。
 これを読んで医師の勤務実態と極めてかけ離れていることに驚きました。労基法では当直は週一回、日直は月一回が限度です。3人しか医師がいな病院で当直が週一回しかできないのでは医療法を守れません。今でも、大部分の勤務医は日曜出勤手当もなく、日曜日に回診に行くのが当然だと思われています。先生の都合で回診時間がずれたりすると病棟の看護師さんに怒られます。
 Dr.コトーじゃないですが、僻地の診療所に一人で勤務している医師は、休む暇もなく拘束されています。大病院の勤務医は救急当番や緊急手術をした後に、次の日も平常勤務は当たり前です。私が帯広厚生病院形成外科部長だった時にも、部下の先生を午後から帰してあげたことなどなかったと記憶しています。市立札幌病院でも同じでした。

 美しい国をつくりたい日本の首相は、現在の医師不足をなんとか解消したいと考えているようです。北海道知事も僻地の医師不足を解消しようと努力しているようです。
 もし、日本の政治家が本当に良い医療を提供しようと考えているなら、労働基準監督署に医師の勤務実態を調査・改善させて、医師にも人並みの休日を与えてください。

2007年05月11日

汗の臭い

自分はわきがじゃないか?
と悩んでいる方の中には、汗の臭いをワキガと勘違いしている方がいらっしゃいます。
 人間の体から出るものは必ず臭いがします。動物でも同じです。私がよく説明に使うたとえです。

ペットショップに行くと可愛い仔犬がたくさんいます。どんなに可愛い仔犬でもおしっこをすると臭います。ペットショップでは頻回にシーツを交換して対応しています。
人間もふつうの汗でしたら制汗剤で十分に対処できます。

 ワキガの方はほぼ100%耳垢が湿っています。耳垢が湿っていても、ワキガの臭いがしなければ手術の必要はありません。
 私が子供の頃は、家にお風呂がない家庭もたくさんありました。風呂に入るのも毎日ではありませんでした。銭湯には必ず定休日があり、昔の札幌では確か月曜日でした。風呂に入れない日は体を拭くだけで済ませたものです。
 今の時代は学生さんでも、バス・トイレつきのマンションが当たり前です。毎日、必ずシャワーに入りシャンプーもします。
 これだけお風呂やシャワーがあっても臭いが気になる人は手術を受けると快くなります。

ただ、何度も書いているようにワキガ手術は簡単ではありません。
手術後に安静にしていないと必ずキズが残ります。

 心ない美容外科では、単に汗の臭いが気になって相談に来ているだけなのに『あなたはワキガです』と‘診断’して手術を薦めるところがあります。広告宣伝費を一ヶ月に何百万円もかけているところは、せっかく来た‘お客様’を逃すわけには参りません。必要がない手術を薦めてお金をとるところがあります。
 
美容外科が他の診療科より低く見られるのは、こうした業界の体質によると思います。
私も残念に思いますが事実です。
どこのクリニックがよいか見分けるのは本当に難しいことです。
汗の臭いとワキガの臭いは違います。心配でしたら相談にいらしてください。

2007年05月10日

形成外科に対する想い

ここ数日の日記を読み返してみました。
IBM健康保険組合を厳しく追及しているように感じました。別にIBMのHPに文句があるわけではありません。私が25年以上経験してきた形成外科が正当に評価・理解されていないことに対する怒りです。

形成外科は英語のPlastic Surgeryを訳して作った日本語です。同じ漢字を使う中国語では、Plastic Surgeryは整形外科です。日本の整形外科は中国語では骨科です。こちらの方がわかりやすいと思います。
 形成外科ってどんな科?と聞かれて、即座に正しく答えられる先生や看護師さんはあまりいらっしゃいません。美容外科と形成外科の違いもはっきりしない方が多いと思います。

 美容整形という日本語があります。美容形成とは言いませんね。簡単に言うと形成外科は健康保険が使える科、美容外科は保険が使えない科です。
 私が形成外科医になった昭和55年には、北海道で形成外科があったのは、北大病院、旭川厚生病院、美唄労災病院、釧路労災病院の4施設だったと記憶しています。
 当時は、北大に北海道中から患者様が集まり、手術を受けるまで3年待ちなんていうのもザラでした。ヤケドで指が動かない患者様、交通事故で顔にひどいキズが残っている方、生まれつきの病気で早く手術を希望されている方などなど…。

 当時は札幌医大でも旭川医大でも形成外科の講義はなく、医学部を卒業しても形成外科とはどんな科か知らない先生がたくさんいました。

 年配の先生でも形成外科を知っている方は少なく、私たちが保険診療をして手術料を請求しても、これは不適切だと査定されたことが何度もありました。

 北大形成外科の先輩は、講演会などを通じて形成外科はどんなにすばらしいかを機会あるごとに啓蒙していかれました。一度でも形成外科のすばらしさを理解していただけると、形成外科に対する偏見はなくなります。
 人間で一番大切なのは心の中身で外見は二の次という意見もあります。でも医学の進歩で外見をよくすることができるようになりました。
 美容外科に保険がきかないのはもっともですが、形成外科に使うお金は決して医療費の無駄遣いにはなりません。外見がよくなれば心もより強くなれます。
 医学生や医師の中には、形成外科をちょっとかじって、お金儲けのために美容外科医になろうという人もいます。

 本物の形成外科医はキズを治すのに命を懸けています。形成外科も美容外科もお金儲けだけを考えていると絶対に長続きしません。

2007年05月09日

小耳症と永田悟先生

5月6日に小耳症(ショウジショウ)という生まれつき耳がない病気について記載しました。
実は、この小耳症の子供さんに耳をつくるのは、形成外科の中でも最も難しい手術と言われています。
大学病院の有名な先生がした手術でも不満足な例があるのが小耳症です。

  日本に小耳症手術では世界一の先生がいます。日本国内より海外で有名です。
PRSという形成外科では世界一の雑誌に何度も論文が掲載されました。
海外で手術のデモンストレーションを何度もなさっていらっしゃいます。

 その先生が永田悟(ナガタサトル)先生です。
今回、小耳症のことを書いたので永田先生を想い出して検索してみたところ、埼玉県で開業されたことを知りました。
 ここが永田先生のHPです。Microtia(マイクロシアと発音します)とは英語で小耳症のことです。アドレスの
http://www.nagata-microtia.jpは外国人医師が見てもすぐに永田先生だとわかります。

 永田先生の手術はNagata-method(ナガタ-メソッド)として世界的に認められています。
日本人の名前がついている手術で、これほど世界的に有名な手術はありません。間違いなく世界一です。
 小耳症は頻度が少ない耳の形態異常です。
確かに、耳がなくても日常生活に支障はないかもしれません。自分の子供が生まれて、もし耳がなくて、幼稚園や小学校で‘耳なし○○’といじめられたら…。

 聴覚という身体の機能にさしさわが無くても、小耳症は健康保険で治療すべき疾患だと思います。
耳つくりに命をかけているのが永田先生です。