放射線被ばくに関するQ&A
質問
回答
私たちは普段どのくらいの放射線を浴びているのですか?
- 私たちは放射線検査を受ける以外にも、地球上に存在する天然の放射性物質から常に放射線を浴びています。また、このような放射線の他にも、宇宙から降り注いでいる宇宙線から被ばくしています。このように私たちが1年間に被ばくする線量は、地域によって差がありますが年間約2.4ミリシーベルトです。
外部被ばく 宇宙線から
大地から0.38
0.48内部被ばく 食物などから
空気中のラドンなどの吸入から0.24
1.30合計 約2.4mSv
放射線は私たちの身体にどのような影響を与えるのですか?
- 放射線が人体に与える影響としては、放射線を浴びた本人に影響が現れる身体的影響と、その人の子供に影響が現れる遺伝的影響があります。また、身体的影響は急性障害と晩発障害に分けられます。
身体的影響
- 全身に強い放射線を受けたときの身体的影響は、数週間以内に現れる急性障害と数年から十数年後に現れる晩発障害があります。身体的影響の現れ方は受けた放射線の量が同じでも年齢、性別などによって差があり、胎児や子供は大人より放射線感受性が高い傾向があります。
急性障害
- 急性障害は、一般的に細胞分裂の盛んなところほど感受性が高くなり、人の組織では骨髄やリンパ節、生殖腺、腸管、皮膚などに影響が現れます。症状として下痢・嘔吐、発熱や白血球・リンパ球の減少や、やけど、脱毛などがあげられます。
全身に7Gv(7,000mGy)の放射線を浴びると生存不可能ですが、体の一部であれば必ずしも致命的にはなりません。
晩発障害
- 晩発障害は、急性障害が現れないような弱い放射線を受けたあとに、何年または何十年後に白血病やがんになることです。
遺伝的影響
- 遺伝的影響は、生殖腺が高レベルの放射線を受けると、生まれてくる子供に異常があったり、正常に生まれてきてもその後の世代に影響を及ぼしてしまうことで、放射線によって生殖細胞が突然変異を起こして生じるものです。しかし、自然に突然変異が現れるときと同じなので、放射線の影響かどうかの区別は非常に難しいとされています。
胎児は細胞分裂が盛んで、受精から1ヶ月以内は、組織や器官の基本構造が作られるので、放射線の影響はかなり受けやすくなります。この時期は女性の腹部X線検査に関して十分な注意が必要となります。
回復現象
- 同じ放射線を浴びるにしても、少量の放射線を長時間にわたって受けた場合と、強い放射線を一度に浴びた場合とでは、影響をかなり違います。前者の方がはるかに放射線障害は少なくなります。これは細胞や組織の持つ損傷回復力が放射線による障害の発生を上回って働くためです。
- したがって、年間約2.4mSvという自然放射線よる被ばくで、障害の発生はまずありません。
障害の種類 障害名 急性障害 造血器障害(出血傾向、白血球減少、発熱、強い場合は死亡)
皮膚障害(脱毛、赤斑など)晩発障害 生殖器障害(精子数減少、不妊)
白血病、肺がん、乳がん、骨肉腫、白内障など
慢性白血球減少症
被ばくする線量によってどのような影響が出るのですか?
- 身体の外から放射線を被ばくする場合(体外被ばく)、強い放射線を受けてもその受けた範囲が小さければ影響が軽くなります。つまり同じ放射線量を浴びるとしたら、全身に浴びるより一部に浴びるほうが、かなり被ばくによる障害は軽くなります。また身体の内から放射線を被ばくする場合(内部被ばく)は、放射性物質の半減期(放射線が半分になる時間)が重要な鍵になってきます。
体外被ばくとは、自然放射線、X線撮影、がんの放射線治療、事故による放射線漏れなどにより、体の外部から被ばくすることをいいます。
ちなみに、東海村臨界被曝事故で被ばくした3人のうち一番重傷だった人は、17,000mSvの放射線を浴びてしまいました。一番軽症の人も4,000mSv被ばくしています。下に示した表から被ばくの多さが想像できます。
内部被ばくは、放射性物質が体内に入ったときに体の内部から被ばくすることです。一度体内に入ってしまうとそれが外に放出されない限りなくなりません。しかし、人は誰でも体内にカリウム40という原子を持っていて、これにより年間約0.35mSvほど被ばくしています。
線量(mSv) 全身被ばく時の症状など 部分被ばく時の症状 0.05 原子力発電所周辺の線量 0.30 胸のX線検査 2.40 1年間の自然放射線量 250.00 臨床症状なし 臨床症状なし 500.00 白血球の一時減少 1,000.00 吐き気、嘔吐、倦怠感 1,500.00 発熱 3,000.00 意識障害 皮膚:脱毛 4,000.00 60日以内に50%死亡 5,000.00 皮膚:赤斑
生殖腺:永久不妊7,000.00 100%死亡 皮膚:やけど 8,500.00 皮膚:水ぶくれ、ただれ 10,000.00 皮膚:潰瘍 60,000.00 がん治療(数週間かけての全線量)
放射線被ばくをすると"発がん"するのですか?
- 被ばくをすれば、誰でも必ずがんになるというわけではありません。ただ、被ばくをしなかった場合に比べ、発病の確率は高くなります。これを確率的影響といいます。
遺伝的影響や身体的影響のうち白血病やがんなどの症状は、被ばく線量が増加するほど発生確率も単調に高くなり、発病した場合の重篤度は被ばく線量の大小には関係しないという特徴を持っていると考えられています。
一方、放射線被ばくの量がある量(しきい値)を超えると必ず発生する症状があり、これを確定的影響といいます。急性障害と晩発障害のうち白内障などがその例で、しきい値を超えて被ばくすると、被ばく線量が大きくなるにつれて症状は重くなっていきます。一般人がしきい値を超えた被ばくを受け、急性障害が現れるということは、がん治療などの医療目的の照射を除いて、まずあり得ません。
しかし、できる限り無用な被ばくを避けることは大切なことです。
病院での放射線検査はどれくらい被ばくするのですか?
- 実際に、各放射線検査でどのくらい被ばくするのかを説明します。
X線一般撮影
- 公益社団法人 日本診療放射線技師会では、医療被ばく線量低減目標値(ガイドライン)を設けて、被ばく低減化に努めています。当院では入射表面線量がこのガイドラインに適合するように線量を決めて撮影しています。このガイドライン内の被ばく線量であれば、放射線による影響がでることはまずありません。
撮影部位(撮影方向) ガイドライン
(mGy)撮影部位(撮影方向) ガイドライン
(mGy)頭部(正面/側面) 3/2 足関節 0.3 頚椎(正側面) 0.9 前腕部 0.2 胸椎(正面/側面) 4/8 手指部 0.1 胸部(正面/側面) 0.3/0.8 小児胸部(0~5才) 0.2 腹部(正面) 3 小児腹部(0才) 0.3 腰椎(正面/側面) 5/15 小児腹部(3才) 0.5 骨盤(正面) 3 小児腹部(5才) 0.7 股関節(正面) 4 乳幼児股関節 0.2 大腿部 2 乳房撮影 平均乳腺線量 2 膝関節 0.5 乳房撮影 入射表面線量 10
上部消化管、注腸検査
- 消化管検査は、透視を伴う検査であるために、透視の時間が術者や患者さんによって異なり、被ばく線量が大きく異なってきます。しかし、被なくによる影響を心配するよりも、消化管の腫瘍などを早期に発見し、早期治療を受けることの方が患者さんへのメリットが大きくなります。
一般的な検査時の被ばく線量は以下に示します。
上部消化管検査時の患者さんの被ばく線量(mGy)甲状腺 赤色骨髄
(男性)赤色骨髄
(女性)肺
(男性)肺
(女性)生殖腺
(男性)生殖腺
(女性)乳腺 胎児 0.07 1.17 1.14 5.32 4.76 0.004 0.45 0.53 1.1
注腸検査時の患者さんの被ばく線量(mGy)赤色骨髄 卵巣 睾丸 胚芽/胎児 8.2 16 3.4 6.8
CT検査
- 各部位のCT検査時の一般的な被ばく線量を示します。CT検査をした場合でも、急性障害や遺伝的影響がでることはまずありません。
頭部CT検査時の患者さんの被ばく線量(mGy)赤色骨髄 乳腺 甲状腺 卵巣 睾丸 胚芽 2.7 0.03 1.9 0.005以下 0.005以下 0.005以下
胸部CT検査時の患者さんの被ばく線量(mGy)赤色骨髄 乳腺 甲状腺 卵巣 睾丸 胚芽 5.9 21 2.3 0.08 0.005以下 0.06
腹部CT検査時の患者さんの被ばく線量(mGy)赤色骨髄 卵巣 睾丸 胚芽/胎児 5.6 8.0 0.7 8.0
骨盤CT検査時の患者さんの被ばく線量(mGy)赤色骨髄 卵巣 睾丸 胚芽/胎児 5.6 23 1.7 25
アイソトープ検査
- この検査は、身体の中に直接、アイソトープ(放射性医薬品)を投与するので、内部被ばくがあります。投与されたアイソトープは実効半減期(放射能が半分になる物理的時間と、アイソトープが身体の代謝によって体外にでる時間を考慮して、放射性物質が半分になるまでの時間)で減少していき、身体から消失するまでの間、被ばくし続けます。
しかし、放射能も低く、代謝により短時間で身体の外に排出されるため、身体への影響はほとんどありません。
各アイソトープ検査で被ばく線量の高い3つの臓器の吸収線量を示します。(単位はmGy/MBq)
骨シンチ骨表面 膀胱 赤色脊髄 実効線量
(mSv/MBq)標準的な投与量
(MBq)5.6 8.0 0.7 8.0 740
心筋シンチ睾丸 腎臓 大腿下部 実効線量
(mSv/MBq)標準的な投与量
(MBq)0.56 0.54 0.36 0.23 74~110
IVR
- IVRは、治療であるため検査と異なり透視時間が数時間に及ぶ場合があります。透視時間が長くなれば脱毛や皮膚の発赤、潰瘍などの皮膚障害が発現する可能性があります。これらの障害は検査終了後ではなく数日あるいは数週間後に出現します。しかし、これらの障害が出たとしてもIVRによる患者さんのメリットが大きいため、必要不可欠な被ばくであるといえます。
放射線を受けると子供ができなくなりますか?
- かなり高い放射線を被ばくしない限り、一時的であっても不妊になることはありません。つまり、少しでも被ばくしたら不妊になる可能性があるのではなく、一定の線量を被ばくしないと不妊にはなりません。
なお、不妊になるのは生殖腺が下記の線量を被ばくした場合だけで、身体の他の部分を被ばくしても不妊にはなりません。通常の放射線検査で150mGy異常の被ばくすることはないので、不妊の心配はありません。
不妊になるしきい線量は以下のように報告されています(単位はmGy)
男性 女性 一時的不妊 150 650 永久不妊 3,500~6,000 2,500~6,000
妊婦が放射線検査を受けても大丈夫ですか?
- 妊娠に気づかずに放射線検査を受けてしまい、後になって胎児が被ばくしたことが分かった場合でも、胎児に放射線の影響が現れるような被ばく(100mGy以上の被ばく)はほとんどないので、胎児の放射線被ばくを理由に妊娠中絶をする必要はありません。
胎児の発育段階ごとの放射線の影響は以下のように報告されています。(単位はmGy)
胎児の時期 受精後の日数 放射線の影響 しきい線量 着床前 受精~9日 胚芽死亡(流産) 100 器官形成期 3~8週 奇形 100 胎児期 8~15週 精神発達の恐れ 300
新生児や小児が放射線検査を受けても大丈夫ですか?
- 新生児や小児は成人と異なりほとんどの骨髄が赤色骨髄なので同じX線検査でも赤色骨髄の被ばく線量が多くなります。赤色骨髄に有意な被ばくをすると、白血病が問題になります。
よって、新生児(未熟児)や小児のX線検査の際には、照射野を必要な範囲に絞ることが成人患者以上に要求されます。例えば、成人患者の胸部撮影をする場合に、頭頚部、上腕部が入ってしまっても、赤色骨髄の線量に大きな違いはありませんが、新生児(未熟児)や小児の場合は、上腕骨、頭部の骨にも赤色骨髄が存在するので赤色骨髄の線量は大きくなります。
しかし、生殖腺に鉛入りのプロテクターを置くことにより、生殖腺の被ばくを大幅に減少させることができます。
遺伝的影響については、疫学調査でも放射線被ばくによって遺伝性の疾患が統計的に有意に増加したという結果は出ていません。従って、遺伝的影響を心配する必要はありません。
赤色骨髄の割合新生児 100% 5歳児 70% 成人 30%
子供や老人が放射線検査をするとき、介助者の被ばくは大丈夫ですか?
- 子供や老人、または身体の不自由な患者さんの撮影中に、身体を支えなければならない場合があります。しかしこの場合、X線は患者さんを中心に照射されるため、介助者が直接被ばくすることは少なく、患者さんからの散乱線(直接照射されるX線よりも少ない放射線)による被ばくがほとんどです。
また、介助者には不必要な放射線を防ぐプロテクタを着用すればほとんど被ばくしません。
介助者は成人の方だけで、女性の場合には妊娠していないことを確認して介助していただいています。ただし、妊娠していたとしてもプロテクタを着用していれば胎児は被ばくしません。
したがって、介助につくことで被ばくすることはほとんどありません。