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亜鉛情報

亜鉛とは

  • 亜鉛は、鉛と混同され、極端な場合は同じものと理解されている場合がありますが、全く異なる金属です。
    亜鉛は有害な鉛とは異なり、人体に必須な微量元素です。
  • 名前の由来
    亜鉛は、色、形が鉛と似ていることや酸化すると鉛と同じように光沢を次第に喪失する点から、『準ずる』や『2番目』の意の『亜』を『鉛』に付け『亜鉛』となったと言われています。

1.亜鉛の基礎特性

分類 項目・特性単位亜鉛アルミニウム
基本 元素記号
Zn
Fe
Cu
Al
原子番号
30
26
29
13
原子量
65.38
55.85
63.55
26.98
結晶構造
最密六方格子
体心立方格子
面心立方格子
面心立方格子
地殻存在度 (*1)
0.008%
7.1%
0.0075%
8.4%
海水中の濃度 (*2)
ng/L
200
60
200
300
物理的特性 密度
g/cm3
7.13
7.87
8.93
2.70
融点
419.5
1536
1083.4
660.1
沸点
907
2860
2582
2520
比熱
J/(kg・K)
394
456
385
917
線膨張係数
×10-6/K
31
12.1
17.0
23.5
熱伝導度
W/(m・K)
119.5
78.2
394
238
体積抵抗率
(電気伝導度)
×10-3μΩ・m
(%IACS)
59.6
(29)
101
(17)
16.94
(102)
26.7
(65)
機械的特性 引張強度
N/mm2
107 (*3)
362 (*4)
265 (*5)
123 (*6)
耐力
N/mm2
37 (*3)
193 (*4)
172 (*5)
122 (*6)
伸び
%
61 (*3)
45 (*4)
39 (*5)
9 (*6)
硬さ
Hv
35 (*3)
100 (*4)
78 (*5)
38 (*6)
縦弾性係数
kN/mm2
104.5
211.4
129.8
70.6
横弾性係数
kN/mm2
41.9
81.6
48.3
26.2

※:特記なきデータは、日本伸銅協会 伸銅品デ-タブック P47 による
*1): 国立天文台 理科年表2009 P630
*2): 国立天文台 理科年表2009 P945
*3): 弊社ZAPシ-ト(2.0t)の測定例
*4): SPCC-SD(1.0t)の測定例
*5): C1220-質別1/4H (0.35t)[リン脱酸銅]の測定例
*6): A1050-質別H24(1.0t)の測定例

2.亜鉛の用途

  • 亜鉛は、『トタン』に代表されるめっき用途が一番多く日本全体の消費量の57%を占め、次に銅との合金である真鍮(黄銅とも言う)の伸銅品用途の13%で、ダイキャスト用途の9%、無機薬品用途の7%と続き、その他の用途が14%となっています(*1)。その他の用途には、船舶や港湾用の亜鉛陽極、自動車用ヒュ-ズ材、印刷板、電池、刻印用金型などがあります。
    また欧米では屋根材、外壁材の建材や道路標識、表札、銘板、飾り額などとしても広く用いられており、
    米国の1セント硬貨(愛称ペニ-)は、亜鉛合金(Zn-2.5%Cu)です。
  • 酸化亜鉛(亜鉛華)は、最も多く用いられるのがゴムの加硫促進剤で、顔料、セラミック、塗料、化粧品、医薬品等でも用いられています。また最近では液晶パネルなどで使用される透明電極やLED、センサ-への用途研究が行われています。
  • 硫化亜鉛は、ブラウン管、蛍光灯などの蛍光体、レンズなどの反射防止用薄膜材、顔料などに使用されています。
  • 硫酸亜鉛の用途には、顔料、木材の防腐剤、医薬品、触媒等があります。

*1): 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 鉱物のマテリアルフロ-2006

3.亜鉛と人

3-1)人体の亜鉛含有量

亜鉛は、成人の体内には約2g含まれており、鉄に次いで多く存在する金属元素です。

元素 亜鉛含有量 備考
3~4g
 
亜鉛
2g
亜鉛は体を構成する全ての細胞及び体液に存在するが、含有量の高い組織は、骨格筋(約60~70%)と骨(約20~30%)で両者合わせて生体内の総亜鉛量の約90%を占める。濃度別では前立腺、骨、眼の脈絡膜、骨格筋、腎臓で高い(*1)。
0.06g
 
マンガン
0.012g
 
モリブデン
0.006g
 
クロム
0.002g
 
コバルト
0.001g
 

(体重60kgの成人の含有量)

3-2)人体への影響(*a)
■亜鉛の働き
  • 亜鉛は、人体に必須なミネラルであり、人が生存するための重要な役割を多く担っています。
  • 例えば亜鉛は、免疫機能、成長、皮膚代謝、中枢神経系の機能維持、老化防止等に関与し、またホルモン補因子として作用し性腺機能や妊娠維持にも影響を及ぼしています。
  • このように亜鉛が多くの役割を果たすのは、亜鉛が多くの生命維持に必要な約300種の酵素の活性化や多くのタンパク質の構造維持に必須で、生体における酸化還元反応、免疫反応にも関与するなど、生体内の反応の根幹に係わる役割を果たしているためと言われています。
■欠乏症
  • 亜鉛は上記のように生命や健康維持に重要な役割を果たすため、欠乏すると様々な症状が発現しますが、次表に主な症状を示します。また亜鉛の欠乏症状は、鉄、銅、マンガンと言った必須微量元素の中では最も多く臨床学的に観察されています。
症状 説明
成長障害
  • 亜鉛は、骨形成を促進する作用を有しており、骨成長と骨量の維持に影響を及ぼす。
  • 亜鉛が成長期に不足すると、軽度では発育速度の低下を、重度では発育遅延となり小人症を誘発する。イランの風土病と言われいた小人症は、亜鉛欠乏によるもので硫酸亜鉛の投与により身長が1年で13cmも伸び大幅な改善を見た。
  • 胎児の亜鉛は、母親の血液中の亜鉛濃度に依存し、主に肝臓と骨に蓄積されるが、出生後の急速な発育に利用される。
  • 乳幼児の健全な成長のため、粉ミルクに適量添加されているが、欧米ではフロ-アップミルクにも添加されている。
  • 亜鉛の高い骨形成促進作用と骨吸収(骨塩溶解)抑制作用により、骨粗しょう症の治療薬として開発が期待されている。
生殖機能低下
  • 亜鉛欠乏は、性腺機能の発達を低下させるだけでなく、成熟後においても男性性機能の低下に影響する。
  • 亜鉛欠乏は、精巣における精子形成が阻害され精子減少症を誘発し、精子の安定性にも影響を与えるとの研究例がある。
免疫機能低下
  • 亜鉛欠乏は、我々が先天的に有する自然免疫系および病気になることで後天的に得る獲得免疫系の何れにおいても、その免疫力を低下させ、ウイルスに感染し易くなり、身近な所では風邪を引きやすくする。
  • 亜鉛は、我々の免疫システムでは、免疫に有効なビタミン、ミネラルの中で最も大きく影響するとの報告もある。
治癒機能低下
  • 亜鉛は皮膚や骨の新陣代謝にも関わり、不足すると切創の治りが遅延する。
    このため傷薬、目薬、胃潰瘍治療薬等の薬品成分として使用されている。
味覚障害
  • 舌で味を感じる器官である味蕾には亜鉛が多く含まれ、欠乏すると味蕾細胞がうまく新陳代謝できなくなり、味覚の鈍化や甘さを苦く感じるなど異常を来し、食欲不振にも繋がる。
  • 特に高齢者の食欲不振や減退は、亜鉛不足による場合が多い。
皮膚疾患
  • 亜鉛欠乏起因の皮膚疾患としては遺伝性及び後天性腸炎性肢端皮膚炎がよく知られている。後天性のものは低亜鉛母乳、高カロリ-輸液、治療乳などによる亜鉛摂取不良が原因である。
  • 脱毛症は、亜鉛欠乏症の代表例の一つで、硫酸亜鉛投与が有効との研究がある。
  • 褥瘡(床ずれ)の発症、治癒遅延の多くも亜鉛欠乏が原因との報告がある。

その他、亜鉛が関与している考えられている症状には、色々なものがありますが、次にその例を列挙します。

<糖尿病>
  • 糖代謝の分野では、インスリンに含まれ、亜鉛自体もインスリンに似た作用を持つことから、現在糖尿病薬への亜鉛の活用が研究されています。
<下痢>
  • 発展途上国では下痢性疾患により毎年150万人の子供達が命を落としていますが、ユニセフ、WHOから対応策として、症状を軽減し、症状の期間を短縮する目的で亜鉛薬使用が示され、プログラムとして実行されています。
<加齢性黄斑変性>
  • 高齢者に多い目の疾患で、酷い場合は失明に至りますが、血中の亜鉛濃度の低下と関連性が指摘されています。
  • その他、目の疾患では夜盲症の防止、白内障の進行を抑制する効果もあると言われています。
■過剰症

一般に生体に有益な栄養素、薬、必須元素であっても、過剰に摂取すると有害になりますが、亜鉛も同様です。

<経口摂取の場合>
  • 亜鉛の経口毒性は低く、よほど大量の亜鉛を摂取しない限り、過剰症は起こることはないと考えられてます。
  • 亜鉛めっきした食器の酸性飲料による中毒例では、発熱、むかつき、ふるえ、胃痛、下痢などの症状が、摂取後4~12時間で起こっています。
  • 嘔吐を生じさせる摂取量は、水中亜鉛濃度が675ppm~2280ppmで、20~40ppmで金属味が現れます。
  • 慢性症状は、貧血、下痢、免疫障害等で、50~60mgを毎日継続摂取すると銅、鉄の吸収を阻害するため起こる恐れがあります。
<吸入摂取の場合>
  • 亜鉛の溶解時に発生する亜鉛のヒュ-ム(酸化亜鉛)を吸入すると、2~8時間後に亜鉛熱と言われる発熱症状を呈することがありますが、数時間で殆ど完全に回復します。
  • 因みに酸化亜鉛ヒュ-ムの許容濃度は5mg/m3 (ACGIH-TWA)です。
3-3)亜鉛摂取量(*b)

(mg/日)農林水産省より亜鉛の摂取量の推奨値、目安が次表のように示されています。

  男性 女性
推奨量 目安量 上限量 推奨量 目安量 上限量
0~5ヶ月
-
2
-
-
2
-
6~7歳
7
-
-
7
-
-
12~14歳
11
-
-
9
-
-
18~29歳
12
-
40
9
-
35
18~29歳 妊婦
-
-
-
11
-
35
授乳婦
-
-
-
12
-
35
30~49歳
12
-
45
9
-
35
30~49歳 妊婦
-
-
-
11
-
35
授乳婦
-
-
-
12
-
35
70歳以上
11
-
40
9
-
30
3-4)食物の亜鉛含有量(*c)

(食品の可食部100g中の亜鉛含有量[mg])

食品 亜鉛含有量(※)食品亜鉛含有量(※)食品亜鉛含有量(※)
牡蠣(かき)
13.2
牛肉(ロ-ス)
5.6
抹茶
6.3
アサリ
1.0
鶏肉(もも)
2.3
ピュアココア
7.0
するめ
5.4
鶏卵(卵黄)
4.2
バナナ
0.2
毛がに
3.3
プロセスチ-ズ
3.2
みかん
0.1
伊勢エビ
1.8
生乳
0.4
精白米
1.4
秋刀魚
0.8
味付け海苔
3.7
さつまいも
0.2
鰹節
2.8
絹ごし豆腐
0.5
キャベツ
0.2
3-5)その他

亜鉛は、栄養機能食品として下記表示が厚生労働省(*d)より認可されています。

  1. 「亜鉛は、味覚を正常に保つのに必要な栄養素です。」
  2. 「亜鉛は、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。」
  3. 「亜鉛は、たんぱく質・核酸の代謝に関与して、健康の維持に役立つ栄養素です。」

4.屋外暴露における亜鉛の色調変化




ステンレス板上にZAPテ-プを貼付した供試材を、準工業地帯(埼玉県上尾市)に位置する当社工場内の天曝台(右図参照)に暴露面を南向きに暴露し、その色調を色彩色差計で適宜測定した。




<色調(明度)の変化>
  • 色の数値表示には、JIS Z8729でも採用されているL*a*b*(※)表色系を用い、ここではそのうち数値変化の大きいL*の測定結果を右図に表す。
  • また写真.1には、暴露前から暴露7年後までの外観を示す。

※:色を数値化するには、マンセル記号などあるが、L*a*b*表色系は国際照明委員会(CIE)で規格化された最も一般的な表色系である。L*は明度で、数が大きくなると白っぽくなり(100で真っ白)、数が減ると黒っぽくなること(0で真っ黒)を表す。またa*b*は色相と彩度を示す。

写真.1 屋外暴露における外観変化

<色調(明度)、外観の変化>
  • 図.1から屋外暴露により亜鉛は、徐々に黒っぽくなり、最終的にはシルバ-グレイの落ち着いた色調に5年程度で変化することが判る。さらに写真.1から暴露180日では疎らであった腐食生成物が、暴露7年後では緻密な腐食生成物に変化していることが観察できる。
<腐食生成物の同定>
  • 亜鉛にシルバ-グレイの色調を付与する腐食生成物は、薄膜X線回折により塩基性炭酸亜鉛(*1)と同定された。
  • 亜鉛に生じる本化合物は、銅板の緑青と同様に保護皮膜の機能があるため、亜鉛の腐食速度を一般的には1~3μm/年に抑制する。
  • 亜鉛板の高耐久性と渋いシルバ-グレイの色調がフランス等欧州では好まれ、古くから屋根材として使用され、100年以上の経過した物件も散見される(本適応例では,屋根強度を確保するため銅などが微量添加されている)。
  • なお、亜鉛に生成される一般的な腐食生成物は、塩基性炭酸亜鉛だが、暴露環境により種々変化するため色調も環境により変動する。
*1): 2ZnCO・3Zn(OH)

5.亜鉛の抗菌性




培養した大腸菌(IFO3301株)を懸濁させた蒸留水150μLを、供試材である亜鉛板(ZAPテ-プ)、アルミ板上に滴下し、湿度環境下に所定時間接触させた。
その後、当該菌液を拭き取りSCD寒天培地に塗布し、36℃×約18hr培養しコロニ-数を計測した。
なお供試材は、脱脂処理、乾熱滅菌(150℃)を施した後、上記試験を行った。




右図に試験結果を示す。

  • アルミニウムには抗菌力が認められないのに対し、亜鉛は3時間以内に菌のコロニ-が100個以下に減少させることから、高い抗菌力があることが判る。
  • また亜鉛の高い抗菌力は、1.6年屋外暴露したものでも確認されており、屋外での長期暴露おいても維持される。
  • さらに、亜鉛の抗菌性は大腸菌以外の一般細菌、ブドウ球菌属、及びMRSAを含む黄色ブドウ球菌でも観察されている(*e)。
  • このような亜鉛の抗菌性を活用し、加湿器やエアコンの抗菌部品として採用された。

参考文献献・注記
*a):本内容は、主に下記の文献、書籍、HP等を参考に取り纏めたものであり、保証するものではありません。

*1): 柳澤裕之.治療.別冊.2005,vol.87、p.4-8.
*2): 日本鉛亜鉛需要研究会編.亜鉛ハンドブック.改訂版,p.112-127.
*3): 笹原武志.鉛と亜鉛.2011,vol.262,p.45-47.
*4): 桜井弘.生命元素事典.オ-ム社,2006,p.94-101.
*5): 池田稔.治療.別冊.2005,vol.87, p.21-26.
*6): 倉澤隆平.治療.別冊.2005,vol.87、p.9-15.
*7): 児玉浩子ほか.治療.別冊.2005,vol.87、p.16-20.
*8): 板東浩.治療.別冊.2005,vol.87、p.77-82.
*9): 松田一郎ほか.最新医学.1990,vol.45,no.4,p.758-763.
*10): 荒川泰明ほか.ビタミン.2008,vol.82,no.10,p.539-542.
*11): 花田勝美.皮膚病診療.1993,15,p.761-765.
*12): 山崎雙次.治療.別冊.2005,vol.83、p.83-87.
*13): 深田俊之ほか.日本医事新報.2007,vol.4343,p.63-69
*14): International Zinc AssociationのHP.http://www.zinc.org/.(access2012-02-15).
*15): 日本ユニセフ協会のHP.http://www.unicef.or.jp/index.html.(access2012-02-22).
*16): World Health OrganaizationのHP.http://www.who.int/en/.(access2012-02-22).
*b):農林水産省のHP『必要な食品成分』.http://www.maff.go.jp/j/fs/diet/nutrition/need.html.(access2012-02-17).
*c):五訂増補日本食品標準成分表(文部科学省)
*d):食安新発第0325001号
*e): 笹原武志.鉛と亜鉛.2011,第262号,p.45-47

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