ボトックス注射の脇汗への効果。多汗症は保険適用も
多汗症治療にも使われるボトックス注射。
私は脇の皮膚を切開してワキガ手術を行っているので、ボトックス注射の手軽さには魅力を感じます。
ボトックスの最大のメリットは、汗がだらだら落ちる夏だけでも注射を打つと快適に過ごせる事。
しかしボトックスはメリットだけでなく注意点もあります。
こちらのページでは、脇汗へのボトックス注射の効果、副作用、ボトックスの選び方についてまとめてあるので、ぜひ参考にしてくださいね。
ボトックス注射の脇汗への効果<目次>
そもそもボトックスとは?
ボトックスとは、A型ボツリヌス菌毒素をアメリカのアラガン社が医薬品とした生成した製品名です。
「毒素」というと、毒なの!?と怖くなってしまいますが、毒性のないA型ボツリヌストキシンの事なので危険物ではありません。
一般的に「ボトックス」という言葉が出回っていますが、ボトックスは商品名の事で、アラガン社製以外のA型ボツリヌス菌毒には、イギリス製のディスポート、韓国製のリジェノックス、ニューロノックスなどの商品があります。
サランラップが本当は商品名なのに一般名詞のように出回っているような感じですね。
こちらでは、わかりやすいようにA型ボツリヌス菌毒=ボトックスという前提で書いています。
ボトックスがなぜワキ汗を止める効果があるのか?
ボトックスは神経の先端をブロックし筋肉の動きを弱める働きをします。シワを消す為にボトックス注射を使う事もありますが、これは表情筋の働きを抑えるからです。
筋肉の働きと汗は関係ないんじゃないの? と思いますが、筋肉を動かすよう脳から指令が出ると、いきなり筋肉が動くのではなく神経を通って指令が伝達されるんですね。
この神経を伝達する物質をアセチルコリンというのですが、ボトックスはアセチルコリンの放出をブロックする作用をします。
ワキ汗の場合ですが、体温があがったり緊張をすると脳が「汗を出せ」と指令を出します。
そして汗腺から汗が出るわけですが、この脳の指令を伝達する役目もアセチルコリンが担っています。
つまり、ボトックス注射によりアセチルコリンが出なくなり、脳の指令が汗腺にいかなくなり、汗が止められるという仕組みです。
ボトックス注射の脇汗への効果は?どのくらい持続する?
ボトックス注射の効果が出るのはだいたい注射をした翌日から1週間後です。2週間くらいたってから効果が表れる人もいます。
持続期間は約3か月~6か月。
夏に向けて、暑くなり始める5月ごろからボトックス注射を受ける人が増えてきます。
ボトックス注射を受ける間隔はどれくらい?
ボトックス治療は最低3か月は開けて治療をする必要があります。
ワキ汗治療の場合、1年に1回~2回程度受ける人が多いようです。
ボトックスは治療を重ねる事で持続効果が長くなると言われています。ただし、繰り返しボトックスを打つことで効果が効きづらくなるケースもあります。(参考:ボトックスは毎年繰り返しても大丈夫?)
ボトックス注射はワキガにも効果がある?
軽度のワキガには効果がみられるケースもあります。
ただ臭いレベルが中度以上の場合は期待できません。ボトックスは臭いよりも汗で困っている人に向いている施術法です。
施術の様子について。どのくらいで終わる?
片脇に30か所~50か所、ボトックス注射を打ちます。両脇合わせて約10分程度です。
ボトックス注射の痛みは?
痛みが少なくて済むよう極細の針を使い、また痛み防止の為、クーリングや冷却装置を使いながら施術をします。
しかし30か所以上注射をするので、痛みはそれなりにあります。
お願いすれば麻酔を使ってくれるクリニックもあるので(基本、麻酔は別料金)、痛みが心配な方は事前にお願いしてみましょう。
ボトックス当日は腋毛を剃っていった方が良い?
クリニックや病院によって、剃毛する必要がある所と不要な所があります。事前に個別に確認してください。
施術後に気を付ける事は?
施術当日は飲酒や激しい運動、施術した箇所のマッサージは控える必要があります。
それ以外は日常生活で注意する事はありません。入浴も可能です。
ボトックス注射の後遺症・副作用は?
内出血が起こる可能性がありますが、1週間程度で目立たなくなります。
その他の副作用としては、ワキ以外、首や背中での発汗増加が認められたケースがあります。(全体の2.1%程度)。
また腕のひきつれを訴えるケースも少数ながらあります。
妊娠中もボトックス注射を受ける事はできる?
妊娠中・授乳中のボトックス投与に関する安全性がまだ確立されていない為、ボトックス注射は受けられません。
また妊娠の可能性のある方も受けられません。
その他、ボトックス注射を受けられない人
- 重症筋無力症のような神経・筋疾患を患っている人
- 筋弛緩作用のある薬を服用されている人
- ボトックス治療でアレルギーを発症した事のある人
ボトックスは毎年繰り返し打っても大丈夫?
ボトックスは繰り返し打つ事で、持続効果が長くなる傾向があります。
その一方、繰り返す事で効き目が無くなってしまう事が稀にあります。
これはボトックスに対して体内で抗体ができてしまい、ボトックスが再び身体へ入ってくると体内の免疫システムが異物として判断し攻撃をしてしまうからです。
抗体というとちょっとわかりづらいですが、アレルギーや花粉症と同じ仕組みです。体内の免疫システムが、ボトックスを「敵だ!」と認識してしまい、敵であるボトックスが効果を発揮すると困るので、効き目をなくしてしまう状態になってしまっているという事です。
ちなみにボトックスでのアレルギー反応は、可能性はありますが非常に稀だといわれています。
ボトックスを繰り返し打っても良いか?というと抗体が作られるかどうかは個人差があるので何とも言えないのですが、抗体が作られにくいといわれているボトックスがあります。
抗体が作られにくく純度が高いボトックス
ボツリヌス製剤には複合タンパクが含まれている為、何度か注射をすると抗体ができて効き目がなくなる事があります。
しかし含有タンパクの量が少ない高純度のボトックスを選ぶ事で、抗体ができる可能性を低くする事が出来ます。
それがボトックス・ボトックスビスタ・ゼミオンの3つのボトックスです。
高純度!タンパク含有量の少ないボトックス
ボトックス(アラガン社・アメリカ製)
世界で最も流通しているA型ボツリヌストキシン製剤。アメリカのFDA(日本の厚生労働省に相当する機関)で認可を受け、最も信頼性・安全性が確立されています。
ボトックスビスタ(アラガンジャパン社、グラクソスミスクライン社・アメリカ製)
アメリカのアラガン社製のものを日本法人であるアラガンジャパン社、グラクソ・スミスクライン社が輸入しているもので、アラガン社製のボトックスと同じものです。日本の厚生労働省が認可したA型ボツリヌストキシン製剤で安全性・効果とも保障されています。
ゼオミン(メルツ社、ドイツ製)
アメリカのFDAに認可を受けたA型ボツリヌストキシン製剤。高純度でほとんどタンパクが含まれません。繰り返し使用しても効果が減らず、ボトックス注射で効果がなくなった人に使うケースもあります。高価で現在の所、導入しているクリニックは多くはありません。
ボトックス(A型ボツリヌストキシン製剤)は、他にイギリス製、アイルランド製、中国製、韓国製などもありますが、最も安全性が高いといわれるのが上の3つの種類です。
ゼミオンは現在の所、導入しているクリニックは少ないのですが、ボトックス・ボトックスビスタを使っているクリニックは多く、見つけやすいでしょう。
クリニックによっては、ボトックスやボトックスビスタの他、独自に輸入した韓国製やイギリス製のものを同時に扱っている所も多く、患者が好きなボトックスを選べる所もあります。
ボトックスは値段で効果が変わる?
長期的に見て、値段が高いものの方が効果があるといえます。
アラガン社のボトックス、ボトックスビスタ、ゼミオンのように国の認可を受けているものやFDA(アメリカで認可を受けているもの)は値段が高め。それ以外にクリニックや美容外科が独自に海外から輸入しているボトックスは値段が安い傾向にあります。
値段が安いから全てダメという事ではないのですが、中国製や韓国製のものには不純物が多く含まれる事もあり安全面については疑問を投げる医師もいます。
不純物が多いと耐性ができやすくなり一度耐性ができてしまうと、高純度のボトックス注射をしても効果が思ったように出なくなります。
もし繰り返しボトックス注射を受ける予定があるのであれば、ボトックス、ボトックスビスタ、ゼオミンのような高純度の物が、長期的に効果が出やすくなります。
参考までに日本でよく使われているボトックスの平均的な値段を表にしました。(クリニックによって値段は違います)
両脇をボトックス注射する場合の料金
| 商品名 | 製造国 | おおよその値段(両脇) |
|---|---|---|
| ボトックス(アラガン社) | アメリカ | 70,000円~120,000円 |
| ボトックスビスタ(アラガン社・グラクソスミスクライン社) | アメリカ(販売国が日本) | 70,000円~120,000円 |
| ゼミオン(メルツ社) | ドイツ | 100,000円~ |
| リジェノックス(HANS Biomed社) | 韓国製 | 25,000円~60,000円 |
| ディスポート(イプセン社) | イギリス製 | 50,000円~100,000円 |
先ほど、クリニックによってはいくつかボトックスの種類を揃え患者が好きなものを選べる所があると述べましたが、例えば日本全国に治療院がある湘南美容外科では、アメリカアラガン社製のボトックスと韓国リジェノックス社製のものを選べます。
脇汗にボトックスは保険適用してもらえる?
医師に「重度の原発性腋窩多汗症」と診断された場合、保険適用してもらう事が出来ます。
| わき汗ボトックスの自由診療 | わき汗ボトックスの保険診療 |
|---|---|
| 10万円前後 | 3万円前後 |
重度の原発性腋窩多汗症の診断には、次の①~③の条件を満たしている必要があります。
①薬剤が原因の多汗ではなく体質的なものである事
②原因不明の過剰な発汗が半年以上持続している事に加え、以下の6項目のうち2項目以上満たす
最初に症状がでたのが25歳以下である
両側かつ左右対称性に多汗がみられる
睡眠中には発汗がとまっていること
1週間に1回以上、多汗のエピソードがあること
家族歴がみられること
それらによって日常生活に支障をきたすこと
③発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある、または常に支障がある
注意)手足・足底・頭部顔面に関しては、ボトックス注射は保険適用にはなっていません。
簡単にまとめると、保険適用してもらうには「コレといって原因はないのに常に脇汗が大量に出て日常生活に支障をきたしている」と医師に診断してもらう必要があります。
単にワキ汗がひどい、という状態では保険適応できず上記の条件を満たしている必要があります。
また条件を満たしていたも、日常生活に支障がなければ保険適応にはならないので、病院の診察へ行くときには、日常生活で困っている事をしっかりと伝えてくださいね。
保険診療で使うボトックスの種類は?安いからって粗悪なものは使わない?
安く施術してもらえる保険診療のボトックス。
怪しい不純物の多いボトックスを使っているのでは?とちょっと不安にもなりますよね。
でも、保険診療で重度原発性腋窩多汗症に使うのは、厚生労働省が認可した製品だけで、グラクソスミスクライン社のボトックスビスタが該当します。
純度が高いボトックスの所でお伝えした、良質なボトックスです。
保険適用してもらえば値段が安くすむ上、純度の高いボトックスを打ってもらえるので多汗で困っている人はぜひ医師に保険適用か診断をしてもらってください。
保険診療で受けたい場合は必ず事前にクリニックに連絡を
ボトックスを保険診療で受ける際、手続き書類をクリニックや病院側で保険医療用ボトックスを販売しているグラクソ・スミス・クライン社に発注し、その後の施術となります。
薬の取り寄せには患者の同意書も必要となるので、手続きに時間が必要です。
クリニックや病院へ訪れてすぐに施術!というわけにはいかないのがやや不便です。
初診から施術日の流れについては、事前に病院へ確認をとるようにしてくださいね。
手軽に汗を止められるボトックス注射。身体に抗体を作らない為にもできるだけ質の良いものを使う事をおすすめします。
条件にあえば保険診療も可能なので、ワキ汗で日常生活が困っているという方は、保険適応している病院に相談してみると良いですね。