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30代、40代のビジネスパーソンを中心に、糖尿病や高血圧、メタボ、皮膚トラブルなどについて専門家に解説をしてもらう連載。社会保険中央総合病院 皮膚科 松田芳和先生による「男の皮膚トラブル」シリーズ5回目は、突然、身体のどこかに赤い斑が出てそれが強烈にかゆくなったりする「蕁麻疹」について。
「蕁麻疹=アレルギー」だけではないって知っていましたか?
症状、メカニズム、原因、治療や予防を解説してもらいます。
Q1 蕁麻疹とはどんな病気? その症状は?
蕁麻疹という名前は誰でも聞いたことがあると思いますし、今まで蕁麻疹を経験されたことがある人も多いのではないかと思います。ただ、受診される患者様の中には、湿疹などの他の皮膚疾患を「蕁麻疹」と思っていらっしゃる人や、「蕁麻疹といえばアレルギー」と思い込んでいらっしゃる人も多いように思います。
実は蕁麻疹といっても、その中にはいろいろな病型があり臨床症状や原因も異なります(表1)。これらすべてについて触れるのはとてもスペースが足りませんので、今回は頻度の高いIの「特発性蕁麻疹」と、IIの「刺激誘発型の蕁麻疹」の中の「アレルギー性蕁麻疹」を中心に説明させていただきます。 特発性蕁麻疹とは まずIの「特発性蕁麻疹」ですが、実はこの病型が最も多くみられるもので、医療機関を受診する蕁麻疹全体の8割程度を占めます。
典型的症状は、明らかな原因もなく、ある時突然、境界がはっきりした円形や環状、不整な地図状のわずかに盛り上がった赤い斑(はん)が出現します。こうした斑は、激しいかゆみを伴います。また全身のどこにでも出てくる可能性があり、一度発症すると基本的にはその後、毎日のように出現します。
そして、最も特徴的なのは、これらの皮疹は、通常数十分以内に跡形もなく消えてしまったり、場所が移動したりすることです。例外を除き、1日以上同じ部位に持続して出現することはありません。
これは他の皮膚疾患ではみられない特徴であり、蕁麻疹を鑑別する際の重要な情報になります。形式的に発症してからの症状が出ている期間が1カ月以内のものを急性蕁麻疹、1カ月以上経過したものを慢性蕁麻疹と呼んでいます。 刺激誘発型の蕁麻疹とは 次にIIの刺激誘発型の蕁麻疹ですが、これらは特定の刺激や負荷により皮疹が出現するタイプです。
中でもアレルギー性蕁麻疹は、おそらくみなさんが考えている蕁麻疹に近い病型ではないかと思います。実際には、アレルギー性蕁麻疹は、蕁麻疹全体の数%を占める程度です。特定の原因物質への曝露により、その数分から数時間後に特発性蕁麻疹と同様の皮疹が出現し、やはりしばらくすると治まってきます。原因物質への曝露がない限りは症状が出ることはありません。
ただ、アレルギー性蕁麻疹は、まれにアナフィラキシーといわれる血圧低下や気管支喘息発作、あるいは最重症のショック状態、また食物が原因の場合では口腔粘膜の腫れや違和感、悪心、嘔吐、下痢、呼吸が苦しいなどの症状が出ることがあり、注意が必要です。このケースでは、再び同じ原因物質に曝露すると同じ症状が起こるため、原因を特定することが重要で、それ以降は原因を回避する必要があります。
その他の病型の蕁麻疹の症状も原因や誘因が異なりますが、共通の症状としまして突然出現して、しばらくすると跡形もなく消えてしまうというのが他の皮膚疾患とは異なる特徴です。
Q2 蕁麻疹のメカニズムは? 引き起こす原因とは?
では、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。 蕁麻疹の本態は皮膚表面そのものの炎症ではありません。皮膚表面(表皮)の内側にある真皮といわれる層の上部で、毛細血管の拡張や血管壁の透過性の亢進が起こり、血管内から血漿(けっしょう)成分が漏れ出てきてその場に蓄積します。そして、浮腫といわれる状態を形成します。これが蕁麻疹の本態です。このたまった液体がまた血管内に戻って、血管の拡張もおさまると、跡形なく消えてしまうわけです。
では、どうして血管が拡張したり、透過性が亢進したりするのでしょうか。
これにはさまざまな化学伝達物質が関与していますが、中でも最も重要なものは、ヒスタミンという物質です。
ヒスタミンは真皮内に存在している肥満細胞という細胞に、何らかの刺激が加わったときに放出されます。この刺激を引き起こすものこそが、蕁麻疹の原因といえるのですが、簡単に決定することができません。蕁麻疹診療ガイドラインでは表2のように直接的誘因と背景因子に分けて挙げられていて、これらが複合して病態形成に関与するものと考えられています。そして、これらの最も深く関わる因子によって蕁麻疹の病型が分類されることになります。 特発性蕁麻疹と、刺激誘発型の蕁麻疹、原因がはっきりするのは?
ここで病型別に考えてみます。
まず、最も頻度の高いIの特発性蕁麻疹では残念ながらはっきりした直接的誘因がなく、感染、食物、疲労、ストレスなどが背景因子となり得ますが、いずれの因子も病態の全容を説明できるものではありません。医療機関を受診されたほとんどの患者さんが「原因は何ですか?」と尋ねるのですが、医療機関では「はっきりとした原因はわかりません」と答えることになってしまうのです。
次に、IIの刺激誘発型の蕁麻疹では特発性蕁麻疹とは異なり、原因として特定の刺激や負荷が存在します。アレルギー性蕁麻疹では、食べ物、薬物、植物、昆虫の毒素など症例によって異なりますが、基本的には原因物質の曝露の数分後から30分以内に発症することが多いため、患者様自身がある程度原因を特定できることが多いと思われます。このケースの発症メカニズムは以前より詳細に研究されており、I型アレルギー反応(即時型アレルギー反応)と言われます。先程出てきた肥満細胞の表面にはIgEという抗体の一種がくっついており、原因物質がこのIgEと結合すると、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、その後の一連の反応が起こるというものです。
その他の病型として、例えば物理性蕁麻疹では、皮膚表面の機械的擦過、寒冷曝露、日光照射、温熱負荷、圧迫、水との接触、振動などの刺激が原因となります。食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは、特定の食物摂取+運動負荷が原因となります。コリン性蕁麻疹では、入浴、運動、精神的緊張など発汗ないし発汗を促す刺激が原因となります。
なお、以前はI型アレルギー反応が蕁麻疹の主なメカニズムであると思われていましたが、近年はIgEを介したI型アレルギーが原因となる蕁麻疹は、実際にはそれほど多くないと考えられています。
Q3 蕁麻疹の原因を調べる方法はあるの?
まず、Iの特発性蕁麻疹では明らかな原因が認められないために、通常は特に検査も行いません。血液検査を希望する患者さんが多いのですが、そこから蕁麻疹の原因に関する情報は得られないからです。
ただ、難治性の慢性蕁麻疹では基礎疾患のスクリーニングのために行うこともあります。
次にIIの刺激誘発型の蕁麻疹では、Q2でも述べたように、多くの場合その経過から原因を推測することが可能です。
同じ刺激や負荷をもう一度与えて、症状が誘発されることを確認することで原因を確定することができますが、アナフィラキシー反応が起きるリスクもあるため有用とは言えず、必ずしも行うべきものではありません。
ではどうやって調べるのか。刺激性誘発型の蕁麻疹で、I型アレルギーが関わっていると思われるアレルギー性蕁麻疹や接触蕁麻疹では、いくつかの比較的安全な検査方法があります。
まず1つは、血液検査で血清中の各抗原に対する特異的IgEという抗体の量を測定するというものです。ただ、その結果の解釈は単純ではなく、食物が原因と思われる場合などで有用な場合もありますが、値が高いからと言って必ずしもそれが原因であると断定することはできず、あくまでも参考になると考えたほうがいいと思います。
この血液検査に比べて信頼度の高いものとして、抗原塗布試験、プリックテスト、スクラッチテスト、皮内反応といった一連の検査法があります。これらは実際に原因の可能性がある物質を皮膚にそのまま塗布したり、皮膚に少し傷をつけてから塗布したりして、その部位に蕁麻疹が誘発されるかどうかを見る検査です。比較的安全ではありますが、アナフィラキシー反応が起きる可能性がまったくないとは言えないので、慎重に行う必要があります。
Q4 蕁麻疹の治療は? 予防法は?
蕁麻疹の治療として、原因、悪化因子の除去や回避が基本であり、特に原因が明らかであるIIの刺激誘発型の蕁麻疹では重要となります。
薬物療法としてはQ2に出てきたヒスタミンの作用をブロックする抗ヒスタミン薬が中心となります。この薬剤はヒスタミンがヒスタミンH1受容体に結合することを阻害することで効果を発揮します。Iの特発性蕁麻疹では、薬物療法を継続して病勢を鎮静化することが目標となります。
抗ヒスタミン薬にもいろいろ種類がありますが、大きく第1世代と第2世代に分けられます。第1世代はヒスタミンの作用のみを阻害しますが、第2世代はヒスタミン以外にも肥満細胞からさまざまな化学伝達物質が放出されるのを阻害する作用を併せ持っていて、抗アレルギー薬とも呼ばれます。一般的に抗ヒスタミン薬は中枢神経にも作用するために、副作用として鎮静作用、つまり眠くなるものが多いのですが、第2世代はこの点も改善されていて中枢への移行が少なくなっており、眠気の副作用が少なくなっています。
以上の点から、現在は第2世代が主流となっています。ただ、抗ヒスタミン薬の効果は個人差があり、1種類の薬剤で効果が得られない場合は他の種類に変更したり、追加したり、投与量を増やしたりします。 抗ヒスタミン薬以外の薬は?
抗ヒスタミン薬以外にもいくつか効果が期待できる内服薬はありますが、あくまでも補助的であると考えます。
症状が重いケースや、抗アレルギー薬とそれ以外の補助的な内服薬を併用しても症状が治まらないケースでは、ステロイドの内服を行うこともあります。なお、外用薬については、基本的に効果はあまり期待できず、通常は使用しません。
どれくらいの期間、内服を続けるかについては、一定期間(特に決まりはありませんが1週間程度と考えます)症状が出現しなければ一度内服を中止してみるか、減量または内服間隔をあけてみて経過をみます。再び症状が出てくる場合は、もとの内服方法に戻しますが、経過が良好の場合はさらに減量または内服間隔をあけます。これを繰り返して、3日に1回内服する程度で症状が出なくなったら、頓服に切り替えます。特に慢性蕁麻疹では長期間内服が必要となることもあり、急がずにゆっくりと減量していくことが大切です。 予防はできるの?
予防に関しては、特発性蕁麻疹では通常必要はありませんが、アレルギー性蕁麻疹では抗原を含む食品の誤食や昆虫毒の刺入など、原因の除去や回避が完全にできない可能性があります。その場合はすぐに対処できるように抗ヒスタミン薬をあらかじめ常備していただくこともあります。
また、出現する症状がアナフィラキシー反応に進行する可能性がある場合は、携帯用アドレナリン自己注射キット(商品名エピペン)を、使用法をよく理解していただいたうえで携帯していただくこともあります。
ただし、薬物治療により抗原に対する過敏性そのものを改善したり、予防的に薬剤を内服することによって症状が出現することを完全に防ぐことはできません。 (文/松田芳和=社会保険中央総合病院 皮膚科) 【関連記事】
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