まず「眼の構造と機能」「ぶどう膜炎/要約・症状・合併症・治療」「炎症治療上の注意」をご覧になってから お読み下さい
原田病・交感性眼炎とは
・原田病とは「ぶどう膜炎」の一種です。この病気については 1928年に原田永之助が研究報告を行ったため, 原田病と命名されました。フォークト・小柳・原田症候群と呼ばれることもあります。
・原田病とは,血液中の白血球のひとつである「リンパ球」が自分の眼のぶどう膜,皮膚,毛髪などにある,メラニン色素をもった細胞を破壊する病気です。
・このため眼では「ぶどう膜炎」が起こるほか,皮膚や毛髪のメラニンを持つ細胞が破壊されると頭髪の白髪・脱毛,皮膚の白斑(はくはん,しろなまず)などが起こります。
2.交感性眼炎とは
・片眼に角膜や強膜を貫通する切り傷や刺し傷,眼球破裂などの外傷を受けたとき, 眼球内に異物が飛びこんだとき,片眼の手術(白内障,緑内障,網膜剥離,硝子体切除術などの眼内の手術)を受けたとき などで, これらの外傷や手術のあと3週間~3ヵ月たってから, 両眼に原田病と同様の病気が起こった場合には,この病気を「交感性眼炎(こうかんせい がんえん)」と呼びます。
・交感性眼炎は,眼の外傷や手術を受けたという病歴があることを除けば,まったく原田病と同一のものであると考えられています。以下の説明では交感性眼炎の名前は挙げませんが,まったく原田病と同じと ご理解下さい。
原田病の原因
・発病の「引き金」になるものとして,ウイルス感染なども否定できませんが,まだ原因となる特定のウイルスや病原体は証明されておらず,原田病がなぜ,どのようにして発病するのかは よく分かっていません。
原田病の初期症状
・原田病はかならず両眼同時に起こるため,症状に多少の左右差はあっても,片眼が発病しないですむことはありません。発病初期には「目がかすむ,見えにくい,ものがゆがんで見える, 実際とは別の色に見える,黄色っぽく見える」などの症状があります。これはぶどう膜炎と,ぶどう膜炎によって起こる部分的な網膜剥離(下・左端の写真参照)があるための症状です。
・網膜剥離とは網膜と脈絡膜の間に水がたまる状態で,網膜剥離があると脈絡膜と網膜の間の栄養や老廃物の受渡しがうまく行かず, 網膜の機能が障害されます。
2.眼以外の症状
-1) 頭痛・頭髪の知覚過敏
---脳の髄膜炎を起こすと頭痛があります。
-2) 頭髪の知覚過敏
---頭髪に触れるとピリピリするような違和感を感じます。
-3) 頭髪の脱毛,白髪
---頻度は高くありませんが,一時的に頭髪がかなり抜け落ちたり,
---白髪を生じることが あります。病気がなおるとこれらの症状も
---なくなることが多いのですが,一部の人では完全にはもとに戻らない
---こともあります。
-4) 耳の症状
---内耳が障害されると耳鳴や難聴が出現します。発病直前に風邪のような
---症状があることも少なくありません。
発病初期の治療
・発病後2週間以内に治療を開始し,十分なステロイド薬(副腎皮質ホルモン・・リンデロン,プレドニン,メドロール,ソルメドロール など) を使って治療すれば,通常は後遺症なしに病気は完全になおります。
・しかし病気が重症の人では,いくら完全に治療しても,ぶどう膜炎が慢性化することがあります。また初期に診断が困難であったり,治療が十分できなかったときには,炎症は慢性になることが多いようです。
・治療を開始するときは,やや大量のステロイド薬を使用し,症状の改善に合わせて薬を減量してゆきます。このため若干の副作用は避けられません。発病初期に診断がついた人は,できれば最初は4週間ほど入院して,からだの安静を保って頂くのが望ましいのです。入院しておられれば,治療による眼症状の変化,からだの異常,治療による副作用などをできるだけ早く把握して,これらに応じた検査や対策をすぐに行うことが可能です。
・発病後,少なくとも約4~6ヵ月間はステロイド薬を次第に減量しながら内服して頂きます。炎症のために脈絡膜の色素細胞(メラニン色素をもつ)が ある程度破壊され減少するので,眼底は赤くみえる(夕焼け状,上の眼底写真-中央-参照)になることが多いものの,視力や視野に自覚できる障害が残ることはほとんどありません。
2.ステロイド薬の副作用
・ステロイド薬の副作用については, 「ぶどう膜炎/治療」の説明をご覧下さい。
3.ステロイド薬の減量と炎症の再発
・ステロイド薬を十分使えば, 原田病のぶどう膜炎は抑えることができます。ステロイド薬は最初に使い始めた量から次第に減らしてゆきますが,病気の様子を見ながら個々の患者さんで,減らし方を加減します。
・ステロイド薬を早く減らしすぎると,ぶどう膜炎は再発しやすくなります。ステロイド薬をどの程度減らすと炎症が再発するかは,患者さんによって異なります。個々の患者さんの「再発しやすさ」を予知することは ある程度は可能でも,再発の有無や時期を完全に予測することははできません。
・副作用の点からは,患者さんも医師も, できるだけ早く薬を減らしたいと思っています。原田病での標準的なやりかたでステロイド薬を減量していくと, まだステロイド薬を使用しているのに約 1/3の人には再発が起こります。最終的にはうまく完治した患者さんでも,ステロイド薬を減量する途中で,ぶどう膜炎が2~3回程度再発することも珍しくありません。ステロイド薬を多い目に,かつ長い目に使えば病気は再発しにくくなりますが,副作用は起こりやすく, その程度も強くなります。
・したがって必要な量のステロイド薬を使用して「炎症を抑え,再発を防ぐ」ようにしながら, できるだけ早く使用量を減らして「副作用を少なくする」のが理想です。しかし現実には個々の患者さんの重症度や薬の効果が異なるために,「ステロイド薬を必要最小限で使用し,再発しない範囲でできるだけ早く減量すること」はぶどう膜炎の診療を専門とする医師にとっても容易ではありません。
4.炎症が再発した場合
・炎症が再発すれば,ステロイド薬を,その時点での使用量の2~5倍程度に増量しなければなりません。ステロイド薬の投与期間は1回の再発が起こるごとに,2~3ヵ月は長くなります。しかし再発時にステロイド薬を必要なだけ増量し,前回よりもゆっくり減量することが, この病気の慢性化を防ぐための基本的な治療法ですから, 再発があっても病気を完全になおすために,薬を少しの期間余分に服用して下さい。
原田病の慢性化
・慢性化には2種類の型があります。原田病が6ヵ月前後の初期治療を型通り行ったにもかかわらず,完全になおらずに,その後もステロイド薬を減量・中止するとすぐに炎症が再発するため, ステロイド薬の [減量→再発→増量] を繰り返すことになるのが軽症型です。
・このような患者さんには以下のような特徴があります。
------・ステロイド薬による初期治療は ほぼ一般的な方式で行われている。
------・炎症によるぶどう膜の障害が少なく, 再発性炎症も比較的軽症である。
・このような型の場合には,炎症は消失・再発を繰り返しますが,少量のステロイド薬を継続して服用して頂き, 非常に緩徐に薬を減量することによって, 2~3年のうちに服用を中止できるようになって,やがて完治します。
・このような治療を行えば,白内障以外の合併症も少なく,最終的に視力や視野に障害が残ることは ほとんどありません。
・病気がなおったようにみえても,まったく安心とはいえませんので,3年間くらいは3か月に1回程度の定期診察を受けて下さい。
2.慢性型 (遷延型)
・慢性化した第2の型で,原田病ではもっとも重大な状態です。ステロイド薬の内服を継続しなければ,炎症がすぐに再発して視力が落ちてきます。このような患者さんには以下のような特徴があります。
------・ステロイド薬による初期治療は十分行われなかった。
--------または炎症が完治していないのに治療を中断し, その後
--------数ヵ月間は治療されなかったか, ごく不十分な治療しか
--------受けていなかった。
------・ぶどう膜や網膜の障害が強く, 視力が低下したり,
--------視野が狭くなっていることも少なくない。
・この型では,放置すると高度な炎症を反復し,網膜と脈絡膜の破壊や緑内障により,失明のおそれがあります。
・数年から10年以上にもわたってステロイド薬の服用を続けても,ぶどう膜炎は再発を繰り返します。この炎症によって脈絡膜の色素細胞は次第に破壊され,脈絡膜に接する網膜も障害を受けます。脈絡膜の破壊(上・右端の眼底写真参照)が徐々に進行するので,少なくともある程度は視力が低下し,視野が狭くなるのは避けられません。
・合併症として,白内障, 緑内障, 網膜の障害なども次々と起こり, 十分に治療していても,これらの合併症に関連して視力が低下し,視野が狭くなるのを防げないことがあります。
慢性型(遷延型)の経過
・定期的に通院し,その時点で得られる最良の視力(炎症がほとんどない状態での視力)が ほぼ維持できる程度に炎症をおさえる必要があります。このためにステロイド薬(通常はプレドニン)の必要量を決めて連用しますが,炎症がうまくおさえられるなら できるだけ隔日で朝食後に服用します。炎症が強くなったときだけ,一時的にステロイド薬を増量することが必要です。
・このような時期が数年~10年以上にわたって続くので, できるだけ眼に障害を残さぬよう, またからだに回復不能の副作用がでないように注意して気長に治療することが必要です。このような状態が続いたあと,つぎの 2) の状態に変わってゆきます。
2.ステロイド薬を常用しなくてもよい時期
・ぶどう膜炎が軽くなってくると, ステロイド薬を服用しなくても炎症が起こらなくなります。ただし, まったく炎症が起こらないわけではなく,数ヵ月ごとに炎症が再発しますが,このときだけ短期間ステロイド薬を服用したり,結膜下, 眼球の後方, 筋肉内などにステロイド薬を注射することによって,炎症は容易に抑えることができます。
・このような状態が数年続いたのち,ほとんど炎症が起こらないようになります。
3.皮膚の白斑,毛髪の白変
・身体各所の皮膚が部分的に白くなります。これは皮膚のメラニン色素を持った細胞がリンパ球に破壊されるために起こるものです。また頭髪をはじめとする体毛が白くなたます。これも同様に毛のメラニンがなくなってしまうためです。これらの症状は一部は改善しても,完全にはもとには戻りません。
4.慢性化したぶどう膜炎の治癒判定
・原田病の炎症が2~3年の間完全におさまった状態が続かないと,完治したとはいえません。また10年以上にわたって治癒したと思われていた人に, 突然炎症が再発することがあります。しかし, このような炎症は治療で比較的容易におさまり,以後は再び平穏に戻ります。
慢性型の治療
・慢性化した場合には, 短期間で完治させるような治療法はありません。炎症の治療が不十分になると合併症のために失明することもまれではありません。したがって長期の通院と適切な検査や治療が必要になります。
・病気が慢性になった人は, 比較的少量のステロイド薬(プレドニン 1~4 錠) を「1日おき, 朝食後」に内服します。慢性化しても炎症があまり起こらなくなった人では,症状が悪化したときだけステロイドの内服,結膜下注射,筋肉注射などを行います。
・急に視力が悪くなった場合には,放置すると重大な障害を残すことがあるので,遅くとも4~5日以内に診察を受けて下さい。
2.緑内障で失明しやすい
・緑内障もよく起こる合併症で, 原田病で視力がかなり悪くなっている人では緑内障が原因であることが少なくありません。眼圧が上がっていても,患者さん自身ではあまり気がつかないことも多く, 眼科医にかからずに放置すると失明の危険があります。病気がなおらないからといって勝手に通院を止めず,必ず定期的に眼科医の診察や治療を受けて下さい。
・病気がなおったようにみえても,3年間くらいは3か月に1回程度の定期診察を受けて下さい。