子どもに多い糖尿病?!1型糖尿病の原因と治療。2型糖尿病との違いは?

糖尿病というと大人の生活習慣病というイメージが強いですが、子どもにも発症する糖尿病はご存知ですか?小さな子どもから高齢者にも発症する、生活習慣病とは違うもう一つの1型糖尿病についてご紹介いたします。

1人の医師・医学生がチェック済み

血糖値が高い状態が続くことによって、目や腎臓などに異変が起こる糖尿病
これは、一般的には生活習慣の不摂生によって起こることが多いです。
しかし、糖尿病には実は2種類あり、生活習慣が原因で起こるものとは違う、もう1つの糖尿病があります。
まずはその違いについてご説明致します。

1型糖尿病と2型糖尿病の違い

糖尿病には大きく分けて2種類あります。

2型糖尿病

何らかの原因によって、体内で作られるインスリンが少なくなる状態(インスリン分泌能低下)と、インスリンが働きづらい状態(インスリン抵抗性増大)によって起こります。

主に運動不足や過食、肥満、加齢などによって起こることが多く、また家族に糖尿病の方がいることが多いです。
一般的に言われる、生活習慣病のイメージがある糖尿病はこの2型糖尿病となります。
発症初期や状態によって、必ずしもインスリンが必要とはしない場合もあります。

 

インスリン抵抗性(インスリンが働きづらい状態)という言葉、よく耳にするものの難しいかもしれないのでここでご説明いたします。

インスリンというホルモンは、体の血液の中にあるグルコース(糖分)を細胞の中に取り入れる役割をもっています。

これによって、
①細胞にエネルギーであるグルコースが入ってくるので、細胞の活動の源となる。
②血液から細胞にグルコースが移動するため、血中のグルコースが下がる(血糖値が下がる)。
といった作用があります。

「糖尿病では血糖値が高い」というのは、この②の作用が低下または無くなるからです。

さて、「インスリン抵抗性」とは、この血液から細胞にグルコースを送るというインスリンの作用が効きにくくなった状態をいいます。

そのため2型糖尿病では、インスリンの分泌低下に加えて、より血糖値が高い原因となってしまっているのです。

ヨクナル提携医師・医学生:筑波大学医学群医学類卒

1型糖尿病

インスリンが作られる膵臓のβ細胞が破壊されることによって発症します。
インスリンが体内で作られないため、注射などによるインスリンに依存する必要があります。
1型糖尿病には遺伝とは関係ないとされています。

1型糖尿病はその進行度合いによって、さらに3つに分かれます。

劇症1型糖尿病

1型糖尿病の中でも特に急激に発症、進行するタイプです。

糖尿病発症後、多くは1週間以内に膵臓が破壊されてしまい、意識障害が起こるケトアシドーシスという状態になります。
急速にインスリン依存が進行しますので、入院しての治療が主となります。
難病指定の一つとなっています。

これは小児に起こることはまれであり、成人~高齢者に起こるとされています。

急性1型糖尿病

喉の渇きや多尿、体重減少などの糖尿病症状が起きてから、およそ3か月程度でインスリンが必要となります。
一般的な1型糖尿病というのは、これに当てはまります。

子どもに当てはまる1型糖尿病はこのタイプが殆どです。
好発年齢は8~12歳で、思春期がピークとなります。

緩徐進行1型糖尿病

始めは2型糖尿病と同様にインスリン治療を必ずしも必要としないのですが、数年かけて徐々に膵臓の機能低下によってインスリンが必要となるものです。
こちらは2型糖尿病との違いが分かりづらいのですが、1型糖尿病特有にみられる血液検査によって区別されます。

こちらも小児で発症することはなく、中年~高齢者に多くみられます。

 

この「緩徐進行1型糖尿病」は、1型糖尿病と同じ作用が名前の通り「緩徐に進行するもの」とお考えください。

1型糖尿病は、劇症1型糖尿病とまではいかないまでも、比較的急速に下記にご説明の自分の免疫機能の異常で、インスリンを分泌する細胞を破壊してしまいます。
そのため、すぐにインスリン分泌は無くなってしまい、インスリン注射による治療が必要となります。

この緩徐進行1型糖尿病も、原因は同じ自分の免疫の異常と考えられていますが、インスリンを分泌する細胞の破壊のスピードがゆっくりなのです。
そのため、すぐにインスリンが全く出ない状態にはならず、数年から数十年かけて最終的にインスリンが全くでない状態になります。

「進行がゆっくり」かつ「好発年齢が中年の方」なので、2型糖尿病と誤診されることもありますが、上記の通り原因は1型糖尿病と同じため、血液検査などでは下記でご紹介されている自己抗体などが検出され続ける状態となります。

ヨクナル提携医師・医学生:筑波大学医学群医学類卒

1型糖尿病になる原因は?

1型糖尿病の進行による分類を上述いたしましたが、それとは別に発症機序の違いによって2つに分かれています。

自己免疫によるもの

身体の中に備わっている自己免疫機序が、あやまって膵臓β細胞を攻撃してしまい、破壊されることによって起こるものです。
血液検査にて自己抗体(抗グルタミン脱炭酸酵素:抗GAD抗体、膵島細胞抗体:ICA、インスリン自己抗体IAAなど)が陽性であることで判断できます。
上記の緩徐進行1型糖尿病も、この自己抗体が陽性のため1型糖尿病に分類されています。

特発性

特発性とは原因不明ということです。
上記の自己抗体が陽性ではないため、自己免疫機序が証明できない状態のまま、インスリン依存状態となってしまうものです。

1型糖尿病にウイルスは関係あるの?

1型糖尿病にはウイルス感染が関係するのではないかという論文がありますが、否定的な報告もあるため確立したものはありません。
これは今後の研究によってその原因が解明されることに期待が集まっています。

 

1型糖尿病とウイルス感染の関係はまだ解明はされていませんが、原因の一因だといわれているのが事実です。
特に1型糖尿病の中でも急速な転機を辿る劇症1型糖尿病は、風邪のような症状が起こった後に発症したという報告が多くあります。

原因となるウイルスは数種類考えられていますが、コクサッキーBウイルスやムンプスウイルス(おたふくの原因)と呼ばれるウイルスなどがよく原因として挙げられています。

その他、サイトメガロウィルス・風疹ウイルス・エコーウイルス・EBウイルス・ロタウイルス・ピコルナウイルスなどといったウイルスが原因として考えられています。

ヨクナル提携医師・医学生:筑波大学医学群医学類卒

1型糖尿病の治療方法とは

いずれの分類でも1型糖尿病はインスリンが分泌される膵臓が破壊されてしまうため、膵臓を治さないといけません。
しかし、今の医療では膵臓そのものを治療することができないため、日々インスリンを補充する必要があります。

また、膵臓移植という選択肢もありますが、まだまだ少ないのが現状です。

インスリン注射(無痛注射器)

インスリンは日に3-4回打つ必要があります。
またその前に血糖測定もあるため、本人やその家族の肉体的・精神的な苦痛が大きいものです。
それを少しでも和らげるために日々世界中で研究・開発がすすめられています。

また、夏の大敵である「蚊」が持っている針を医療に応用できないかという話もあります。

持続皮下インスリン注入方法

世界中で使用者が増えているのが、持続皮下インスリン注入方法(インスリンポンプ)です。
携帯電話くらいの大きさの装置でポケットやベルトなどに固定し、お腹やお尻に細いカテーテルを入れた状態で微量のインスリンを注入し続けるというものです。

最近では機器の開発によって、食事後の量を多くしたり、夜間時の量を少なくしたりするなどの細かい調整も可能になってきています。

日本ではまだ普及が少なく、適応も低血糖を頻繁に起こすなどの血糖値が不安定な方に限られていますが、今後普及が進むことで、血糖管理や負担が軽くなることが期待されます。

最新の研究

海外での最新研究の一つで、マサチューセッツ工科大学とハーバード大学の研究チームが行っているもので、再生医療によってインスリン注射を不要にする研究が行われております。

実際の臨床に適応されるにはまだ時間が必要ですが、1型糖尿病の方にとって福音といえるものでしょう。

年代別の注意点

次に1型糖尿病と診断された方とその家族のために年代別の注意点をご紹介いたします。

妊娠/出産

糖尿病の方でももちろん妊娠・出産は可能です。
しかし、安全な出産を迎えるために厳格な血糖コントロールが必要です。
一人で悩まずにパートナーと相談し、協力しあうことが必要不可欠です。

乳幼児期

この時期は親に依存する時期です。
主には母親が管理することが多いですが、父親やその周りの家族一丸となっての協力姿勢が必要不可欠です。

乳幼児のため血糖が不安定で痙攣を伴うような重症低血糖を起こしやすい時期ですが、日々の血糖治に一喜一憂することなく、先を見据えた治療を目標に置く必要があります。

他の子どもたちと区別することなく、たっぷりと愛情を注いであげてください。

学童期

この時期の目標は学校生活を安全に過ごすことが一番です。
糖尿病の療育指導は特別なことではなく健康教育であり、その子の努力を認め健全な自尊心を育成することが大切です。

学校側にも説明し、協力理解を得ることと同時に過剰な特別扱いにならない配慮も必要です。
子どもだけお弁当ではなく、みんなと一緒に食べることをなるべく優先させたいものです。

思春期

この時期は、成長ホルモンや性ホルモンの影響で血糖値が不安定となる時期であり、精神的にも多くの課題を抱える時期です。
特に思春期に発症した場合は、糖尿病に対して否定的な感情を持つことも少なくありません。
家族は放置・過干渉に注意が必要と難しい時期になります。

また、進学や就職は糖尿病を理由にあきらめる必要はありませんが、低血糖発作によって人身に危険が生じる職業は避けた方がいいことは伝えましょう。

就労期

糖尿病があっても職業の制約がないように自己管理できることが重要です。
低血糖発作などの問題から、パイロットやタクシー・バスの運転手は安全上の理由から制限・条件がつけられています。

また、電気工事や大工など高所作業関係の仕事や、水中での仕事なども命の危険が伴うため十分に配慮することが大切です。

世界で活躍している1型糖尿病の方々

1型糖尿病を持ちながらも、スポーツ界で活躍している人たちがいます。

○ビル・ガリクソン
プロ野球選手、アメリカのメジャーリーグ・日本巨人でも選手として活躍。

○岩田稔
阪神タイガースの選手。

○大村詠一
エアロビック競技 2011年日本代表

○米国のプロ自転車チーム Team Novo Nordisk
選手全員が1型糖尿病患者でありながら、世界各国のレースに参戦。

やりたいことにどうしても制限がつけられてしまうのが糖尿病患者ですが、一方でできることに一生懸命に挑戦する人もいます。
叶えられる夢は、諦めなくていいのです。

さいごに

子どもの1型糖尿病への偏見が少しでもなくなればと思い綴らせて頂きました。
しかし、2型糖尿病の子どもが増えているもの事実です。
飽食時代と運動不足によって、糖尿病以外の生活習慣病でも若年齢化が進んでいます。

とある、糖尿病専門医が経験したもっとも若い2型糖尿病患者の年齢は2歳だったそうです。
それは親が早く大きくなってほしいという願いから、粉ミルクを“規定量よりも濃くして”与え続けた結果、発症してしまったとのことでした。

1型糖尿病の予防はできませんが、2型糖尿病は生活習慣の改善で予防・改善できる病気です。
健康がいつまでも長続きするように生活習慣の是正が一番大切です。

最終更新日:2016-10-08

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