腋臭症とは?
わきがの医学的定義
アポクリン腺の過剰分泌により腋窩(わき)から特有な臭いを発する状態をいいます。
通常思春期から始まります。
驚きの事実
日本人の起源から「わきが遺伝子」まで
多汗症が主に欧米で深刻なのと逆に、腋臭症(わきが)は日本、韓国、台湾と中国の一部で治療対象となっています。
欧米では腋臭や体臭は生理学的現象の1つとされ、不快に思う人も少なく、治療する人はほとんどいません。そのため英文の研究報告も少なく、あってもほとんどは日本、韓国、台湾、中国です。(腋臭や耳あかの研究は日本が一番進んでいるかもしれません)
後述しますが、腋臭は耳垢と密接な関係があります。これは日本人のルーツ研究に重要な因子となっています。日本人は大きく2つに分けられるようです。先住民族である「縄文人(古モンゴロイド)」と朝鮮半島から渡来した「弥生人(新モンゴロイド)」です。
ある学説によると縄文人は黒人白人と同じように耳垢は湿っており(腋臭あり)、弥生人の耳垢は乾いていた(腋臭なし)と言われています。
世界中ほとんどの人が腋臭もしくは体臭をもっていて、我々新モンゴロイドだけが「無臭」なのです。
最近の研究で「16番目の染色体にあるABCC11遺伝子が、わきがや軟耳垢に関わっている」ことが解明されています。
腋臭症の原因
なぜ臭うのか?
後述しますが、汗腺にはアポクリン腺とエクリン腺があり、前者の分泌亢進が腋臭の原因です。
アポクリン腺からの汗自体は無臭なのですが、低級脂肪酸を含んでおり、それが皮膚表面の細菌によって酸化され、さらにアンモニアなども加わって不快な臭いになるといわれています。
腋臭症の疫学
どういうひとに多いのか?
男女比は1:1でほぼ同じか女性がやや多い
平均発症年齢は男性18歳、女性16歳というデータがあります。女性の方が性徴が早いため発症も早いといわれています。性周期とも若干関係があり、生理中ににおいが強くなったり、排卵期に強くなる女性がいます。
臭いは汗の量に比例するため、発症時期は夏が最も多い
アポクリン腺は左右ほぼ同じだが、まれに汗や臭いに左右差を認めることがある。
(理由はよくわかりませんが、確かにそういう人はいます)
アポクリン腺は性腺の1つ(いわゆるフェロモン)と言われているため、通常思春期に始まり、中年以降軽減していきますが、中年以降は加齢臭が混在してくるため、「中年期にピークがくる」という報告もあります。
毛深い人にやや多い傾向があります。
(脱毛や剃毛すると臭いは軽減します)
食事との関係も示唆されており、脂肪が多く肉を好む人ほど臭いが強いといわれています。動物性たんぱく質や脂肪はにおいの原料ですから。ある文献によれば「和食中心の生活をすればにおいは軽減する」そうです。「和食は究極の消臭剤」だそうです。
戦前の古い文献では「肝機能や血液型とは関係ない」ことがわかっています。
自律神経と腋臭の関係も示唆されています。腋臭症患者は他に比べて自律神経の不安定な人が多く、手術により改善することがわかっています。
わきがと多汗症はどう違うのか?
汗腺には2種類ある
ほとんどのサイトではわきがと多汗症はセットになっています。それは同じ汗関係の病気であり、治療方法が似ているからで、実はまったく違う病態。本来は別個に語られるべきなのです。
全身には約400万個の汗腺があるといわれており、そのうち100万個がわきがに関係するアポクリン腺、残りの300万個が多汗症の原因となるエクリン線で、自律神経(交感神経)に支配されています。
アポクリン腺から出る汗は粘稠で、毛穴(脂腺)を通して出るため皮脂と混じり、更に細菌に分解されてにおうのです。動物の芳香腺が退化したものなので、フェロモンと関係すると言われています。体臭のきつい白人や黒人は、日本人の数倍アポクリン腺が多いといわれています。
一方エクリン腺から出る汗はサラサラしていて直接皮膚から分泌されます。無色無臭で、わきがとは直接関係ありませんが、足の多汗症では蒸れるために細菌で分解されてにおいを発します。
では多汗症のひとはエクリン腺の数が多いのか?と思いますけど、それを調べた文献によると腺の数は変わらないそうです。つまり1個1個の分泌量が多いのだと考えられます。
アポクリン腺は他にもある
わき以外にも存在する。
アポクリン腺はわき以外にも、外耳道(耳の穴)、乳輪、陰部に存在します。
特に陰部からも特有の臭いを発する場合があり、俗に「すそわきが」と呼ばれています。
耳垢と腋臭の関係
遺伝するのか?
あらゆる生物には「遺伝形質」があり、優性と劣性に分かれます。人間の代表的なものに肌の黒、白や髪の直毛、巻毛などがあります。肌では黒、髪では巻毛が優性形質なので、直毛の白人と巻毛の黒人の夫婦からは通常巻毛の黒人の子供が生まれるのです(若干薄くなりますけど)。
同じように、耳垢も軟耳垢(wet)と乾耳垢(dry)に分かれ、前者が優性形質、後者が劣性形質なので、軟耳垢と乾耳垢の夫婦からは通常軟耳垢の子供が生まれます。ただ形質によって完全(100%)遺伝する場合と不完全な場合があります。耳垢は不完全なので、子供全員が軟耳垢になるとは限りません。約80%に家族内発生を認めるという報告があります。
軟耳垢は俗に「アメ耳」とか「ネコ耳」、「ジル耳」とか呼ばれています。白人黒人のほぼ100%はwetですが、日本人は80%以上がdry。乾耳垢は前述したように新モンゴロイドの特徴なのです。
耳垢が湿っている日本人は約16%、残りの84%は乾いています。
軟耳垢は外耳道のアポクリン腺分泌物によるので、腋臭と軟耳垢の関係は以下のようになります。
- 腋臭症のほぼ全員(98%)が軟耳垢。
- 軟耳垢の多く(約80%)に腋臭がある。
- 乾耳垢で腋臭はまれ。
多汗症との関係
約60%に多汗症を合併する
腋臭症では約60%に多汗症を合併するといわれています。
逆に多汗症患者のどれくらいが腋臭なのかというデータはありません。
当院での検査・診断
伊藤の分類
わきが(腋臭症)に関するチェックシートのようなものが、よくわきがサイトに掲載されていますが、単刀直入に、
- 耳垢が湿っている。
- 両親のどちらかがワキガ、もしくは耳垢が湿っている。
の2項目を満たせば「腋臭症」という診断がついてしまいます。
多汗症ではヨードでんぷん反応を用いて範囲などを他覚的にしらべることができますが、腋臭の場合は「ガーゼテスト」でレベル診断をします。これはガーゼをワキにはさんで数分汗ばむ運動(階段昇降など)をしたあとに医師やスタッフがガーゼのにおいをかいで判定するというもので、下記のように分類します。
- レベル1 におわない
- レベル2 ごくわずか
- レベル3 鼻を近づけるとわかる(軽度)
- レベル4 鼻を近づけなくてもわかる(中等度)
- レベル5 手に持っただけでわかる(重度)
当院ではレベル3以上を「手術適応」としていますが、年齢、意思などを考慮してレベル2でも手術することがあります。
レベル1、2の場合は、制汗剤、脱毛、ボトックス治療をおすすめします。
まとめ
難しい話をしてきたので、これまで書いたことをまとめます。
- 汗腺にはアポクリン腺とエクリン腺の2種類ある。
- アポクリン腺は耳の中、わき、乳輪、陰部などにあり、日本人の16%は分泌が活発なため軟耳垢になり、細菌の作用によりワキから特有のにおいを発する。
- 軟耳垢や腋臭は優性遺伝なので、両親のどちらかが軟耳垢だと腋臭になる可能性が高い。
- 腋臭患者のほぼ全員が軟耳垢だが、軟耳垢のひと全てが腋臭ではない。乾耳垢で腋臭は極めてまれ。
- 腋臭は女性の方がやや多く、思春期から始まり、50代(更年期)以降軽快する。
- 半数以上が多汗症を伴っている。
- 軽度であれば制汗剤、脱毛、ボトックスなどで対処可能。中等度以上であれば手術も考慮する。
腋臭症の治療法
手術する?しない?治療アルゴリズム
診断がついた。ではどうやって治療するのか?
ですが、これが多岐にわたり、しかもそれぞれに一長一短があります。
侵襲の少ないものから順に解説していきます。
予防方法
ちょっとしたことで気にならなくなることもあります。
- 食事
前述しましたが、動物性たんぱく質や脂肪はにおいの材料となります。それらの摂取をできるだけ控え、和食中心の食事にします。 - 喫煙
タバコのにおいを混じると不快さが増すようです。禁煙を勧めます。 - 衣服
医学的データはありませんが、化学繊維(ポリエステル、レーヨンなど)はにおいを増強するようです。コットンやウールなど天然繊維を着るように心がけます。 - 精神状態
物事を深く考えすぎたり、緊張しすぎると自律神経のバランスが崩れ、汗やにおいが増えます。くよくよ悩まず、人前でも常にリラックスしていることが重要です。
治療法① 外用薬
まずはこれから試す価値大!
20%塩化アルミニウムに10%グリセリンのシンプルな組成。
防腐剤、香料、アルコール不使用。
100ml 2,100円。
基本的には制汗剤ですが、結果的ににおいも抑えるため、わきがの方にも有効です。
外用薬(塗り薬、ローションなど)は手軽で副作用も少なく、軽症の方には第一選択といえるでしょう。
ドラッグストアに行くと多くの制汗剤が売られていますが、一般的な「汗止め」はこれらで十分事足りますが、わきが・多汗症では無効なことも多いと思います。
← やはり一番効くのは「塩化アルミニウム」
各医療機関で独自のレシピで処方されており、20%前後のものが一般的です。使い方は、コットンなどに適量取りサッとひと塗りするだけ。直後から制汗効果を実感できるひともいますが、普通は数日かかります。寝る前に塗って、朝シャワーなどで洗い流すとかぶれなどを起こしにくくなります。
作用機序ですが、以前は「アルミニウム粒子が汗腺にふたをする」といわれていました。現在ではアルミニウムイオンが汗腺の細胞膜レベルで作用するという考えが一般的です。
市販では「オドレミン」という名前で売られていますが、濃度は不明。値段もやや高めなので、できれば皮膚科や形成外科で処方してもらう方がいいでしょう。
1978年と古いデータですが、「98%の患者に制汗作用が認められた」との報告があります。一方で45%がひりひり感を訴えたとのことです。
「25%塩化アルミニウムにアルコールを混ぜたものを使うと95%に効果がみられた」という文献もありますが、日本人はアルコールに弱いひとも多く、当院処方のものは「アルコールフリー」です。
治療法② 新しい消臭制汗クリーム
セルニューデオドラントクリーム
セルニューデオドラントクリーム
30g 2,000円(税別)
NOV 常盤薬品(NOEVIA GROUP)
軽くのびて、べたつかない感触のデオドラントクリームです。
汗をおさえて気になるにおいをしっかり防ぎます。
【ご使用方法】
適量を手にとり、わきなどのにおいが気になるところになじませます。
一日朝・晩2回、清潔なお肌へのご使用をおすすめしています。
※「セルニューデオドラントクリーム」は、わき以外にも足等のにおいの気になる部分にお使い頂けます。
※顔・粘膜および除毛直後の肌へのご使用はお避けください。
【適量の目安】
片側のわきでパール粒大
【全成分表示】
有効成分:クロルヒドロキシAl
その他の成分:水、シクロペンタシロキサン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、エタノール、BG、ポリアクリル酸アルキル、ジメチコン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、架橋型ジメチコン、グリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル、ビタミンE、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩、ヒドロキシアパタイト、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、セリサイト、酸化亜鉛
※1 有効成分 ※2 酸化亜鉛、ヒドロキシアパタイト ※3 湿潤剤 ※4 dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩:湿潤剤 ※5 製品の抗酸化成分
治療法③ ボツリヌス製剤の注射(ボトックス,ニューロノックス)
手術せずに効果を出したい場合に
制汗ローション同様、汗を抑えることで結果的ににおいも減るため、わきがの方で受けらる患者様も多くいます。
料金(麻酔クリーム込、税込)
42,000~84,000円
(注射する量により異なりますが、通常量で6,3000円)
「内服も制汗剤もいまひとつ、汗は止めたい、でも手術はしたくない」となれば、ボツリヌス製剤の注射という手があります。
両わきや手のひら、額などあらゆる発汗場所に注射することができます。わきの場合、まずヨードでんぷん法で汗の範囲を確認。発汗エリアよりひと回り大きめにマーキング。次に麻酔クリームを塗り30分ほどおくと、注射時の痛みがかなり軽減できます。麻酔が効いたらマーキングの範囲内に1cm置きにごく少量(1単位)づつ、片方で30~50単位、皮内か皮下に注射します。
注射してから4~7日後に効果が出てきます。6~10ヶ月持続するといわれています。
過去の文献では、わきで82%、手のひらでは100%の患者に効果が見られたとのことです。後述する「代償性発汗」もほとんどありませんし、治療費の高ささえ目をつぶれば最もすすめられる治療法かもしれません。
10~20%の患者にプラセボ(偽薬)効果があるとようで、いかに精神的な要素が大きいかという証明になります。
実際の動画をご覧になりたい方はコチラから
(苦手な方は見ないで下さい)
治療法④ 手術
手術以上に効果的な治療はない。
何といっても、手術以上に効果的な治療はありません。ただ、手術にはある程度のリスクが伴います。
この手術が他の美容外科手術と違うところは、「見かけと結果が一致しない」という点です。
つまり、二重や鼻の手術では、見かけがかっこよければそれで成功ですが、この手術はむしろ不十分な手術ほどキズがきれいで、きちんと汗腺を取れば取るほど、リスクは高くなり、キズあとは残りやすくなります。
残念なことに、一部、リスクを恐れて(もしくは確信犯的に)、ほんのちょっとだけ取っておしまいにするクリニックもあります。
手術その1 ~ 皮膚切除
もはや過去の手術法?
わきの下の有毛部を切って縫い縮めてしまうという原始的な手術法。ですが以前はこれが主体で、たまに「昔この手術を受けた」という患者さまが来られることがあります。確かに効果テキメンですが、キズの引きつれが強くなることがあります。「保険点数表」には今も記載されていて、自己負担額は後述する剪除法より安く、3万円程度です。
当院では初回からこの手術を勧めることはありません。ただ、他院で不適切な手術を受けたかたの再手術に皮弁法に皮膚切除を併用することがあります。
手術その2 ~ 剪除法(皮弁法)
日本におけるスタンダード手術
治療費用は両方で4~5万円。
使う薬や通院回数によって異なります。
実際の手術・症例写真をご覧になりたい方はコチラから。
(苦手な方は見ないで下さい)
現在最も一般的に行われているのがこの手術。
わきに1、2か所4~5cmの切開を入れ、皮膚を裏返して汗腺をじかに見ながらハサミで切除していく方法。「汗腺全て取れるか?」というご質問を受けますがそれは不可能。でも80-90%は取れているといわれています。
手順としては、まず麻酔。
- 局所麻酔薬をわきの皮膚に注射します。
- 手術範囲に応じて4cm前後の皮膚切開を1、2か所入れ、皮下脂肪層と筋膜の間を剥離します。
- 皮膚を裏返すと茶褐色の汗腺が見えるので、皮下血管網を傷つけないよう注意深く取っていきます。ある程度取れたら、中をよく洗浄しキズを縫います。
- 閉鎖の最後に皮膚の下に血が溜まらないようにドレーンという管を入れます。
- 皮膚が皮下組織と密着するよう拳大の綿を縫いつけます(タイオーバー固定)。
- 弾性包帯で肩関節をがっちり固定。
綿を使うかガーゼにするか、縫い付けるかテープで固定するか、固定期間などは術者によってさまざまです。
手術後の経過はおおよそ以下のようになります。
| 術後1日目(翌日) | 再診していただき、化膿や出血、皮膚の状態などをチェックします。 |
|---|---|
| 術後3日目 | 異常なければドレーンを抜きます。 |
| 術後5-7日目 | 縫い付けてある綿を取ります。キズを含め全身シャワーが可能になります。状態によってはあと1週間くらい夜のみ綿を挟んで寝ていただきます。 |
| 術後12-14日目ころ | 抜糸をします。入浴が可能になります。 |
| 術後3-4週間目 | 肩の挙上が制限なく可能になります。片方づつ手術した場合、この時点でもう片方の手術ができます。 |
よく「再発」についてご質問を受けます。他院で再発と言われたという患者さまが来られますが、きちんと切除されていれば理論的に再発はほとんどないと考えます。剥離だけすると、一時的に神経支配が途絶えたり、腺管が寸断されたためににおいが減って手術成功となりますが、数週間で神経支配が復活したり、腺管が回復したりすると再びアポクリン腺は活動しだします。
ですから、手術直後すごくよくても徐々に戻ってくるようなことがあれば、それは「再発」ではなく、「取り方が甘かった」ということになるかと思います。
その場合の再手術も可能ですのでご相談下さい。
手術その3 ~ クアドラカット法
ご予算が許すのであれば、剪除法よりもクアドラカットをお勧めします。
※現在、約6割の方が剪除法、4割の方がクアドラカットを選ばれています。
ストライカーという
アメリカ製のシェーバー
以前は剪除法より効果が劣るとされていましたが、シェーバーの改良が進んだため、現在ではほぼ同じ効果が得られます。
傷あとも小さくて済みますし、剪除法よりもトラブルも少なく、何といっても経過が早いのがこの方法です。欠点は保険が利かないこと。
当院での手術費用は両方で42万円。
片方づつされる場合は初回25。2万円、反対側16。8万円となります。
ご予算が許すのであれば、剪除法よりもクアドラカットをお勧めします。
※現在、約6割の方が剪除法、4割の方がクアドラカットを選ばれています
この方法は、吸引管の先にシェーバーと呼ばれる歯(内筒)がついていて、汗腺を切除しながら吸引して外に出すものです。掃除機の先に電気かみそりが付いているようなものとお考え下さい。
左:内筒(ギザギザの歯が回転するのではなく、1秒間に3000往復することで汗腺を除去します)
中:多汗症用の外筒
右:腋臭症用の外筒
エクリン腺とアポクリン腺では大きさが違うのでそれぞれに適した外筒を使います。
わきに局所麻酔をしたのち、腕側と胸側に5mm程度の切開をおき、特殊な剥離器械を使って汗腺と皮下組織の間を剥離します。その後、シェーバーを入れて汗腺を切除・吸引していきます。
切除し終わったら、洗浄して残った汗腺を洗い流し、ドレーンを挿入。剪除法と同じ綿を縫い付けて圧迫します。
経過については、日本語版HPをご参照下さい。
実際は3日後にはドレーンを抜き、圧迫の綿が取れ、1週間で抜糸、2週間前後で肩もフルに動かせるようになります。つまり剪除法より1、2週間早く復帰できます。
術後合併症(リスク)について
インフォームド・コンセント(説明と同意)
どのような手術においても効果がある反面ある程度のリスクはつきものです。
手術を受けられるときは必ずそのリスクについても説明を受けご理解下さい。
術後合併症には術後早期に起こるものとキズが治ってから起こるものがあります。
下記のうち、1~5は早期に起こるもの、6~8はキズが落ちついてから起こり比較的長期にわたるものです。
実際に起きた合併症の写真をご覧になりたい方はコチラから
(苦手な方は見ないで下さい)
術後の硬結や拘縮は痩せていて皮下脂肪の少ない方ほど強く出ます。これに対しては「ヒルドイド」というクリームを使います(保険診療可)。
色素沈着はなかなか改善しないのが現状です。日焼けしやすい肌質で、浅黒い肌の方は色素や傷跡が残りやすくなります。ビタミンC内服(保険可)、もしくは、ハイドロキノン製剤やトレチノインの外用で対処します(保険外)。体質によることが多いためクアドラカットでも保証対象外とさせていただきます。
- 腫れ、痛み、出血など
一般的な手術後合併症のリスクは稀ですが有り得ます。
当院の腋臭症手術で化膿(感染)を起こすことは極めて稀です。
剪除やクアドラカット特有の合併症としては、リンパ液が貯まることがあります。これは、ある程度落ち着いてからおきることが多いです。術後間もないのに、重いものをもったり、油断して動かしすぎると発症します。 - テープかぶれ
本当に申し訳ないのですが、半分くらいの患者さまに起こります。 - 肩こり
これも肩を動かせないので起こることがあります。ご希望に応じて薬を処方いたします。 - 何よりも最も気を付けていただきたいのが、出血→血腫→皮膚壊死→再手術
手術のときにドレーンという血を抜く管を入れますが、抜ききれないほど出血すると皮膚の下に血がたまってしまい「血腫」を作ります。ほとんどの場合は小さい血腫なので自然に吸収されるのを待ったり、針で穴を開けて押し出したりすれば解決できますが、稀に大きな血腫を作ることがあります。治療を躊躇すると皮膚壊死を起こし、再手術が必要になる可能性が出てきますので、早めに切開して血腫除去を行います。出血原因のほとんどが当日の安静不足です。
「子供を抱っこした」、「寝相が悪く、痛みで起きたら出血していた」
というエピソードがあります。2日目以降に出血することはほとんどありません。脇を軽くしめ、肩を動かさないよう細心の注意を払って下さい。 - その他、神経損傷や血管損傷など極めてまれな合併症の報告もあります。
- しこり(硬結)、黒ずみ(色素沈着)、引きつれ(拘縮)などは比較的起こります。状態やご希望に応じて薬を処方します。通常数ヶ月かかって少しづつ良くなりますが、1~2年経っても残っていた場合はその後も改善しない可能性があります。
- 知覚異常(痛み、しびれ、鈍麻)
通常手術した部分はしばらく感覚が鈍くなります。数ヶ月かけて回復してきます。患者様によっては上腕(二の腕)から手首にかけてしびれや引きつれなどを感じる方もいますが、これも通常数週間で回復します。
これら合併症は、手術手技の問題というより、患者さま自身の安静、体質、セルフケアなどによっても経過が変わります。 - 汗の質の変化。他覚的にはわからないのですが、「以前よりも濃い汗になった」、「違うにおいがする」という患者さまがまれにいます。
- 毛穴のつまり(粉瘤)
数ヶ月してから起こる可能性があります。早めに圧出などの処置をすると治ることもありますが、放置すると徐々に大きくなり手術が必要になります。さらに放置すると化膿して膿瘍を作ることもあります。これは汗腺をきちんと取れば取るほどできやすくなります。私見ですが、汗腺を切除するときに脂腺を傷つけないようにすれば粉瘤を作りにくくなると思いますが、テクニック的には難しいです。 - 術後臭
ごく稀に「手術前と違うにおいがする」と言われる方がいます。 - 再発・再生
よく「再発」についてご質問を受けます。他院で再発と言われたという患者さまが来られますが、きちんと切除されていれば理論的に再発はほとんどないと考えます。剥離だけすると、一時的に神経支配が途絶えたり、腺管が寸断されたためににおいが減って手術成功となりますが、数週間で神経支配が復活したり、腺管が回復したりすると再びアポクリン腺は活動しだします。
ですから、手術直後すごくよくても徐々に戻ってくるようなことがあれば、それは「再発」ではなく、「取り方が甘かった」ということになるかと思います。
その場合の再手術も可能ですのでご相談下さい。
術後の評価
患者さまからの声
術後3ヶ月経過観察させていただき、問題なければ一旦終了します。
患者からいただいたご感想を紹介します。
術後3ヶ月前後で自己評価をお願いしています。これはVAS(VisualAnalogueScale)と言われるもので、元々は痛みの評価に使われるものを利用して術後の結果を表しています。10cmの線をひき、右端が「治療前と同じ」左端が「まったく感じない」として、自分の状態が今どのあたりなのかを示してもらうのです。
上の例では、手術前と比べて、においは約90%、汗は95%減少したということになります。「手術に対する成績表」ともいえましょう。
- クアドラカット、20代男性
- 手術前は毎日何度も制汗剤を塗るのが大変でしたが、術後は制汗剤を使うことがほとんどなくなり、制汗剤で荒れていた皮膚の黒ずみがなくなりました
- 剪除法、30代男性
- キズは若干目立つが、腋毛がうっすら生えてきたら隠れて目立たなくなった。においも汗もなく快適
- 剪除法、30代女性
- 主人に内緒で受けようと思ったが、担当医のアドバイスで正直に打ち明けました。洗髪や食事など協力してもらえたので助かりました。家族からは『そう言えば前はにおいがきつかった』と言われました。
他にも「小さい子供がいるので片方づつ手術を受けて正解でした」
というお声もあれば
「この手術には勇気や勢いが必要。思い切って両方同時にやってよかった。片方づつなら、片方終わった時点であきらめていたかもしれない」
というお声もあります。