下まぶた(目の下・目元)のたるみやくぼみ、目袋があると老けて見えるだけではなく、疲れた印象になってしまいます。
ここでは、気になる目袋・下まぶた(目の下・目元)のたるみの原因や治療法について、「六本木境クリニック」院長、境隆博先生にお話を伺いました。
境先生は、形成外科医および美容外科医として「眉下切開」などまぶたのたるみ治療の豊富な経験を持ち、刺青除去手術などにおいて日本で屈指の技術力をお持ちのドクターです。
目袋・下まぶた(目の下・目元)のたるみの原因
Q:年齢を重ねた方はもちろん、若くても目袋や下まぶたや目の下のたるみに悩まされている人がいます。目袋や下まぶたのたるみの原因について詳しく教えてください。
境先生:下まぶたや目の下のたるみの主な原因には、皮膚のゆるみと眼窩脂肪(がんかしぼう)の突出です。眼窩脂肪とは、下図のように、眼球の周囲に存在する脂肪です。
加齢によって目の周りの筋肉である「眼輪筋」(がんりんきん)が衰えたり、眼球を支える支持組織がゆるむと、眼球の位置が下がり、眼窩脂肪を圧迫します。すると、上図右側のように、眼窩脂肪が徐々に下まぶたの方に押し出されていきます。こうしてできた膨らみを「目袋」(めぶくろ)と呼びます。
また、日本人の下まぶたの特徴は彫りが浅いため、西洋人ほど目がくぼんではいません。そのため、もともと目袋が目立ちやすく、若くとも下まぶたがたるんでいたり、目の下に常にクマがあるように見えてしまう方もいます。
目袋や下まぶた(目の下・目元)のたるみを改善・解消する方法
Q:目袋や目の下(下まぶた)のたるみの原因は皮膚のゆるみと眼窩脂肪ということですが、どのような治療方法があるのでしょうか。
境先生:日本人の下まぶたの若返り手術では、目袋を縮小させる、すなわち膨らみを作っている眼窩脂肪を除去することによって満足をえられる場合が多いと言えます。
しかし、目袋の下は、逆に窪みが気になることが多い部位です。窪みがある場合、目袋の膨らみとの高低差でたるみが目立ったり、目の下にクマがあるようにみえてしまいます。また、単に目袋を縮小させても貧層な印象になるなど、別の問題が発生します。さらに、目元だけに限らず、ほうれい線など他の部位のたるみも同時に改善したいと考えている方も多くいらっしゃいます。
そのため、目袋や下まぶたのたるみを改善する治療には様々な手法があり、代表的な施術には、以下のようなものがあります。
・経結膜脱脂(けいけつまくだっし)法:下まぶたの裏側から目袋の原因である余分な眼窩脂肪を除去して目袋のボリュームを減少させる方法
・下眼瞼形成術(下眼瞼リフト):余った皮膚の切除を行う手術の総称、眼窩脂肪の除去やゆるんだ眼輪筋の処理などを必要に応じて行う場合が多い
・ミッドフェイスリフト:目元だけではなく頬のたるみやほうれい線などを含めて改善する目的で行う手術。下眼瞼形成術と同様の切開から行うことが多い。
・注入治療:目袋の下の窪んでいる部分にヒアルロン酸や脂肪などを注入し、凹凸を減らしてたるみを目立たせなくする方法
経結膜脱脂(けいけつまくだっし)法の特徴と問題点
Q:目袋や目の下(下まぶた)のたるみ治療には、様々なものがあることが分かりました。それぞれについて詳しくお伺いしたいのですが、まずは経結膜脱脂法についてご説明をいただけますか?
境先生:経結膜脱脂とは、まぶたの裏側(結膜側)を通常は小さく切開し、目袋の原因である余分な眼窩脂肪を除去する方法です。まぶたの裏側を切開するため、顔の表側に傷が残ることはありません。また、ダウンタイムも短いのが特徴です。
経結膜脱脂法は、目袋が気になるという方に適した方法で、30代から50代では良い結果を出しやすい手術といえます。しかし、高齢者の方や、目の下のちりめんじわが多い方、皮膚のたるみの強い症例では、皮膚の内側にある脂肪を取り除いてしまうと余った皮膚によってたるみやシワが目立つようになり、満足な結果が得られにくいと言われています。
この場合には、下まぶたのたるんだ皮膚の切除や、加齢によって衰えた眼輪筋などの処置を合わせて行う必要があり、上述の「下眼瞼形成術(下眼瞼リフト)」の方が望ましいとされています。
下眼瞼形成術(下眼瞼リフト)
Q:続いて、下眼瞼形成術について教えてください。
境先生:下眼瞼形成術では、余った皮膚の切除、ゆるんだ眼輪筋の処理、突出した眼窩脂肪の処理などを行います。ダウンタイムは比較的長く、内出血や腫れは2~3週間程度続くこともあります。下眼瞼形成術(下眼瞼リフト)には術式やバリエーションが多数ありますが、代表的な方法は以下のようなものです。
(1)剥離する深さによる分類
剥離する層(深さ)によって「皮弁法」と「筋皮弁法」といった分類があります。ともに、下まつ毛のすぐ下の切開から剥離します。皮弁法では、眼輪筋に手を加えずに皮膚切除だけを行うことがありますが、弛緩した組織も処理することができます。
筋皮弁法では余った皮膚を切除するだけではなく、眼輪筋を引き締めます。この眼輪筋を引き締める際には、単に切除して縫い縮めるだけではなく、眼輪筋を吊り上げて骨膜に固定する方法もあります。
また、皮弁法でも眼輪筋に手術操作を加えたり、脱脂を行うことができますが、基本的には、筋皮弁法の方が可能な操作のバリエーションが豊富な印象があります。皮弁法と筋皮弁法はともにバリエーションがあり、手術術式に関しては、医師によって意見が分かれるようです。
皮弁法にしても筋皮弁法にしても、皮膚切除量の見極めは難しく、切除が少ないと効果が出にくく、逆に切除しすぎると「下眼瞼外反(かがんけんがいはん)」と言って、まぶたの粘膜部分が露出する「アッカンベー」をしているような状態が長期間続くことがあります。そのため、結膜側から様々な手術操作を行う方法も報告されています。
下眼瞼形成術(下眼瞼リフト)のその他の術式
Q:皮弁法、筋皮弁法以外の下眼瞼形成術の分類や術式についてはいかがでしょうか。
境先生:下眼瞼形成術(下眼瞼リフト)では余った皮膚の切除を行いますが、ゆるんだ眼輪筋の処理、突出した眼窩脂肪の処理、外眼角の形成なども適宜行います。皮膚を水平方向(まぶたに沿った方向)に吊り上げ緊張を与えて引き締め効果を出すことができます。
下眼瞼形成術(下眼瞼リフト)には術式やバリエーションが数多くあります。まず、睫毛下切開から皮弁(皮膚)か筋皮弁(皮膚と眼輪筋が一体となったもの)を拳上します。前述のように筋皮弁法の方が加えることができる操作のバリエーションが多いと言われています。
眼瞼脂肪突出による目袋の縮小には眼窩脂肪を切除するか、眼窩隔膜を補強して眼瞼脂肪突出を内側に押し込めるか、または眼窩脂肪を全体的に引き伸ばし眼窩下縁骨膜に縫合して平坦にする方法(ハムラ法)があります。tear troughと言われる内側のくぼんだ部分へ眼窩脂肪や眼輪筋を移動する方法も報告されています。
東洋人は特に、手術によって目袋の突出が改善すると、目の下からほほの上部前面が窪んで見えてしまいます。目の下に窪みがあると、貧層に見えてしまうため、脂肪を取り除くのではなく移動させる方法や、頬のリフトアップをあわせて行う方法・ヒアルロン酸などの注入治療も行われています。
ミッドフェイスリフト
Q:ほうれい線など、他の部位のたるみ治療も一緒に行うという「ミッドフェイスリフト」はどのような施術なのでしょうか。
境先生:目の下のたるみや目袋(膨らみ)以外にも、くぼみやシワ、クマなど、目の付近に老化を感じる要因は様々です。ミッドフェイスリフトは、目袋や下まぶたのシワ・たるみ、眼窩下縁のくぼみの改善に加えて、さらに下方の頬前面のたるみ改善とほうれい線や口角にかけての老化による諸症状の改善が目的で行われる手術です。
ミッドフェイスリフトは中顔面を引き上げる手術で、やはりバリエーションがあります。多くの場合、下眼瞼形成術(下眼瞼リフト)と同じように下まつ毛のすぐ下を切開・下まぶたを広範囲に剥離し、皮膚や筋膜を引き上げて骨膜に固定します。また、こめかみ付近の切開からの手術操作によるミッドフェイスリフトも行われています。
切るミッドフェイスリフトと併用して、特殊な糸を使用して頬の脂肪を引き上げる方法も報告されています。これは「ケーブルスーチャー法」と呼ばれ、ゴアテックス素材の糸とパッチを皮下に埋め込み、頬の脂肪を持ち上げて骨膜に固定する方法です。
いずれにせよ、切るミッドフェイスリフトを行うとダウンタイムは長く、特に目元は強く腫れます。また、仕上がりと効果の持続性についても注意が必要です。リフトアップ効果を出すために引き上げすぎてしまうと、引きつれたような不自然な仕上がりとなりがちです。逆に引き上げが弱いと効果が少なく長持ちしないと言われており、そのバランスを上手くとるのは大変難しいと言えます。
注入治療
Q:注入治療は、切開をしないためにダウンタイムが短く、手軽な印象ですが、目袋や目の下のたるみに対して効果的な施術なのでしょうか?
境先生:ヒアルロン酸などを注入する施術はダウンタイムが短く、身体への負担が少ないという意味では手軽な方法と言えるでしょう。
しかしヒアルロン酸などを目の下にたくさん入れると、目の下全体が膨らみ、逆にたるみが悪化したように感じられることがあります。注入直後は仕上がりがよく感じても、すぐに目袋が目立つようになり、注入を繰り返さなければならなかったり、注入した物質の重みにより、目の下から下の部分のたるみが悪化することがあります。
また、当然ですが、眼窩脂肪や皮膚に対しての処理はしていないので、根本的な解決には繋がりません。
目元にはどのような治療を選ぶべきか
Q:目元の老化には様々な要因が絡んでおり、それを解消する治療にも様々なものがあることが分かりました。「できるだけローリスクで、目元を若返らせたい」という場合、どのような治療を選ぶべきなのでしょうか。
境先生:まず大切なのは、目袋や目の下のたるみが気になるからといって、そこにだけ注目しても良い結果は得られない可能性があることを意識する必要があります。私がカギになると思うのは、頬の脂肪です。頬の脂肪が下垂すると、下図のようにゴルゴラインや目の下の窪みが発生します。
そうすると目袋の膨らみと、その下にある窪みの高低差が広がり、余計に目の下がたるんでいるように見えてしまいます。また、ほうれい線が気になるなど、別の部位にも下垂が生じているケースが多いことでしょう。
そのため、「単に目袋を縮小すればよい」と考えるのではなく、他の部位、特に頬の脂肪の下垂も同時に改善できる施術が望ましいと思います。
とはいえ、先にご説明した通り、「下垂してボリュームが減ったところにヒアルロン酸などを追加する」ということをすると、その重みで頬の脂肪が余計に下垂し、その下垂した頬の脂肪の重さでほうれい線やマリオネットラインが悪化しがちです。
私が個人的におすすめする施術は「スプリングスレッド」という、伸び縮みする糸で下垂した頬の脂肪や皮膚を元の場所に戻し、必要に応じて眼窩脂肪を除去する「経結膜脱脂」を行う方法です。目の下のたるみや目袋の突出が軽度の場合には、上述のスプリングスレッドのみで十分目元のたるみも改善できます。
スプリングスレッドは伸縮する糸のため、切るフェイスリフトや他の糸によるリフトアップと比較すると引きつれなどが起きにくく、効果が長持ちします。また、これだけで目元のたるみもかなり改善できますが、経結膜脱脂を同時に実施した場合でも、「目元のくぼみやゴルゴラインが悪化し、余計に老けて見えるようになってしまった」ということになるのを防ぐことができます。
当たり前ですが、顔の部位同士は繋がっています。思わぬ結果にならないよう、何かしらの治療を受ける際は経験と実績がある医師にじっくりと相談し、他の部位への影響なども確認するようにしましょう。