運動時の消費エネルギーを知る
猫が1日に必要とするエネルギーのことを「1日当たりのエネルギー要求量」(DER)と言います。このエネルギーは「安静時エネルギー要求量」(RER)、「運動時エネルギー要求量」(EER)、「食餌性熱効果」(TEF)、「熱産生適応性」(AT)といった細かい要素から構成されています。このうち、「運動時エネルギー要求量」以外は大きく変動することはありません。従って、猫の消費エネルギーを増やしてダイエットにつなげるには、必然的にこの「運動時エネルギー要求量」を増やす必要があります。これはつまり「猫との遊びの時間を増やす」ということです。
運動時エネルギー要求量
猫の「運動時エネルギー要求量」(Excercise Energy Requirement, EER)、すなわち猫が歩いたり走ったりしたときの消費エネルギーを計算する公式は以下です。 若干ややこしいですが、公式中の「ERR」とは「Energy Requirement for Running」の略で、先述した「EER」とほぼ同じ意味になります。公式中の「d」は「走行距離(km)」、「BW」は「体重(kg)」を意味し、BWの右肩にある小さな数字は累乗を表す指数です。公式に当てはめて出てきた数値は、体重1kg当たりの消費エネルギーになりますので、これに実際の体重を掛けたものが移動に要した総消費エネルギーということになります。
しかしこの公式はマイナスの累乗が入り計算が非常に煩雑なので、答えだけを一覧化した方がはるかに実用的でしょう。最初の表が10m移動したときの消費エネルギーを、そして二番目の表が1km移動したときの消費エネルギーを示しています。表中の「kg」が猫の体重、「kcal」が消費カロリーです。例えば「体重3kgの猫が10m連続で歩いたときの消費カロリーは2.9kcalで、1km連続で歩いた時の消費カロリーは6kcal」といった具合になります。より細かな数字に関してはこちらをご覧ください。
しかしこの公式はマイナスの累乗が入り計算が非常に煩雑なので、答えだけを一覧化した方がはるかに実用的でしょう。最初の表が10m移動したときの消費エネルギーを、そして二番目の表が1km移動したときの消費エネルギーを示しています。表中の「kg」が猫の体重、「kcal」が消費カロリーです。例えば「体重3kgの猫が10m連続で歩いたときの消費カロリーは2.9kcalで、1km連続で歩いた時の消費カロリーは6kcal」といった具合になります。より細かな数字に関してはこちらをご覧ください。
猫の運動エネルギー早見表(10m)
| kg | kcal | kg | kcal |
| 1 | 1.3 | 6 | 4.9 |
| 1.5 | 1.7 | 6.5 | 5.2 |
| 2 | 2.1 | 7 | 5.4 |
| 2.5 | 2.5 | 7.5 | 5.7 |
| 3 | 2.9 | 8 | 6.0 |
| 3.5 | 3.2 | 8.5 | 6.2 |
| 4 | 3.6 | 9 | 6.6 |
| 4.5 | 3.9 | 9.5 | 6.8 |
| 5 | 4.2 | 10 | 7.1 |
| 5.5 | 4.5 | 10.5 | 7.3 |
猫の運動エネルギー早見表(1km)
| kg | kcal | kg | kcal |
| 1 | 3 | 6 | 10 |
| 1.5 | 3.9 | 6.5 | 10.5 |
| 2 | 4.8 | 7 | 11 |
| 2.5 | 5.6 | 7.5 | 11.6 |
| 3 | 6 | 8 | 12 |
| 3.5 | 7 | 8.5 | 12.6 |
| 4 | 8 | 9 | 13 |
| 4.5 | 8.2 | 9.5 | 13.6 |
| 5 | 9 | 10 | 14 |
| 5.5 | 9.4 | 10.5 | 14.5 |
猫に必要な運動量を知る
上で示した運動エネルギー早見表を使えば、ダイエット中の猫に必要な運動量を計算することも、ある程度可能です。例えば体重5kgの猫の消費エネルギーを15kcal増やそうと思えば、「目標消費エネルギー15kcal÷10m当たりの消費エネルギー4.2kcal」となり、10mダッシュをおよそ3.6セット行えばよいことがわかります。同様に、体重10kgの猫の消費エネルギーを30kcal増やそうと思えば、「目標消費エネルギー30kcal÷10m当たりの消費エネルギー7.1kcal」となり、10mダッシュをおよそ4.2セット行えばよいことがわかります。
ただし、計算上の消費カロリーと実際の消費カロリーを近づけるためには、「10mずつ断続的に運動する」という条件が必要となります。10m×10セットの運動と、50m×2セットの運動では、共に合計100m動いているにもかかわらず、消費エネルギーが同一とはなりません(猫の体重が4kgの場合、前者が36kcalで後者が7.6kcal)。これは、連続して動いたときのほうがエネルギーの消費効率が高まってしまうためです。消費エネルギーを増やしたい場合は、小さな距離を休み休み移動させた方が効果的と覚えておけばよいでしょう。なお猫のより正確な消費エネルギーを知りたい場合は、累乗機能の付いた計算機と表計算ソフトなどを用いて、先述した非常にややこしい公式に数値を当てはめながら求める手間が必要です。
ただし、計算上の消費カロリーと実際の消費カロリーを近づけるためには、「10mずつ断続的に運動する」という条件が必要となります。10m×10セットの運動と、50m×2セットの運動では、共に合計100m動いているにもかかわらず、消費エネルギーが同一とはなりません(猫の体重が4kgの場合、前者が36kcalで後者が7.6kcal)。これは、連続して動いたときのほうがエネルギーの消費効率が高まってしまうためです。消費エネルギーを増やしたい場合は、小さな距離を休み休み移動させた方が効果的と覚えておけばよいでしょう。なお猫のより正確な消費エネルギーを知りたい場合は、累乗機能の付いた計算機と表計算ソフトなどを用いて、先述した非常にややこしい公式に数値を当てはめながら求める手間が必要です。
荷物を持っているとき 猫が何らかの荷物を持っているときの消費エネルギーは「1km消費エネルギー(kcal)×荷物の重さ(kg)÷体重(kg)」で計算できます。たとえば、体重10kgの猫が2kgの荷物を持っているときは、「14kcal×2kg÷10kg=2.8kcal」で、およそ2.8kcal消費するという計算です。しかしダイエット中の猫にわざわざウエイトで負荷をかける必要はありませんので、この公式はあまり使わないでしょう。
猫の運動量を増やす
移動距離当たりの消費エネルギーがわかり、猫に課す目標運動量が決まったら、実際に猫の運動量を増やすよう仕向けます。具体的には猫と遊ぶを参考にしながらやってみましょう。ポイントは、移動距離は短くても断続的に運動させるという点です。なお、猫の運動量はいきなり増やすのではなく徐々に増やすよう注意します。また足腰に故障を抱えている場合は無理をして運動をさせる必要はありません。まずは摂取カロリーを減らすをメインのダイエット法にし、ある程度理想体重に近づいてきたら運動量を増やすという順番で構いません。
猫が極端な肥満に陥ってる場合は「ハイドロセラピー」と言う選択肢も考慮します。これは水の浮力を利用して無理なく体を動かすことができるセラピーのことです。しかし一般的に猫は水に入ることが嫌いです。またセラピーのたびごとにキャリーに入れられて外出するというのも猫にとってはストレスでしょう。相応の経済力も必要ですので、プラスよりもマイナスの側面の方が多いと判断された場合は潔く家庭内運動に切り替えることも大事です。
猫の運動量を増やすことは、ダイエットにおいて重要であることは確かですが、運動量の増加によって猫の体重を減らすことは基本的に難しいと考えておいた方が現実的です。理由は以下。
猫が極端な肥満に陥ってる場合は「ハイドロセラピー」と言う選択肢も考慮します。これは水の浮力を利用して無理なく体を動かすことができるセラピーのことです。しかし一般的に猫は水に入ることが嫌いです。またセラピーのたびごとにキャリーに入れられて外出するというのも猫にとってはストレスでしょう。相応の経済力も必要ですので、プラスよりもマイナスの側面の方が多いと判断された場合は潔く家庭内運動に切り替えることも大事です。
猫の運動量を増やすことは、ダイエットにおいて重要であることは確かですが、運動量の増加によって猫の体重を減らすことは基本的に難しいと考えておいた方が現実的です。理由は以下。
成猫はあまり遊ばない
室内飼いの猫にとっての運動には、主に以下のようなものがあります。
猫は2歳を過ぎたころから徐々に子猫らしさを失い、動くものを捕らえようとする遊び心がかげりを見せ始めます。また動かなくてもエサはもらえると学習していますので、「獲物を取らなくちゃ!」というプレッシャーがほとんどありません。さらに太り気味の猫は通常の猫よりも疲れやすいため、激しい運動をなるべく避けようとします。こうしたさまざまな理由により、肥満猫に運動させることは思ったほど簡単ではないのです。
室内猫の主な運動
- 部屋の中をウロウロする
- 高いところにジャンプする
- 夜中の大運動会
- 同居している猫と遊ぶ
- 飼い主と遊ぶ
猫は2歳を過ぎたころから徐々に子猫らしさを失い、動くものを捕らえようとする遊び心がかげりを見せ始めます。また動かなくてもエサはもらえると学習していますので、「獲物を取らなくちゃ!」というプレッシャーがほとんどありません。さらに太り気味の猫は通常の猫よりも疲れやすいため、激しい運動をなるべく避けようとします。こうしたさまざまな理由により、肥満猫に運動させることは思ったほど簡単ではないのです。
猫の散歩と外歩き 猫の運動量を増やす目的で散歩させたり、外を自由に歩かせるのはお勧めできません。ハーネスをつけた散歩は、猫の野性を目覚めさせ、夜鳴きにつながる可能性があります。また猫を部屋から解放し、外を自由にほっつき歩かせるのは、病気や事故の可能性を高めてしまいます。ずっと室内にいるよりも外に出た方が消費カロリーがアップすることは確かです。しかしそれに伴うリスクが、運動によるメリットを上回ってしまうため避けたほうがよいでしょう。
猫はスプリンター
猫の筋肉はそもそも短距離走向けに作られており、長時間の運動には向いていません。このスプリンター仕様の筋肉が、猫の消費エネルギー増加を阻んでいます。
猫の筋肉解剖図でも解説した通り、猫の筋肉は犬のものと比べ、「TypeIIx」という筋繊維を多く含んでいます。この筋繊維の特徴は「無酸素運動は得意だが有酸素運動が苦手」という点です。「無酸素運動」とは、出す力は強いけれども、短時間しか続かないタイプの運動のことで、「有酸素運動」とは、出す力は弱いけれども、長時間続けることができるタイプの運動のことを指します。大まかな説明は以下。
ダイエットにおいては、弱い強度で長時間継続する有酸素運動の量が成功のカギを握っています。しかし猫はこの有酸素運動が生まれつき苦手なため、どうしても運動を介した減量が難しくなってしまうのです。
猫の筋肉解剖図でも解説した通り、猫の筋肉は犬のものと比べ、「TypeIIx」という筋繊維を多く含んでいます。この筋繊維の特徴は「無酸素運動は得意だが有酸素運動が苦手」という点です。「無酸素運動」とは、出す力は強いけれども、短時間しか続かないタイプの運動のことで、「有酸素運動」とは、出す力は弱いけれども、長時間続けることができるタイプの運動のことを指します。大まかな説明は以下。
筋収縮の3様式
- クレアチン=リン酸系 クレアチン=リン酸系は、筋肉の中にあるクレアチン=リン酸をエネルギー源として収縮し、酸素を必要としない無酸素運動を生み出す。極めて強い力を出せるが、5~15数秒しか持たない。例えば、100メートル走におけるスタートダッシュなど。
- 解糖系 解糖系(かいとうけい)は、血中のグルコース(ブドウ糖)や筋肉の中にあるグリコーゲン(ブドウ糖の塊)をエネルギー源として収縮し、酸素を必要としない無酸素運動を生み出す。強い力を出せるが、持続時間はよくて数十秒。例えば、100メートル走におけるスタート後の疾走など。
- 有酸素系 有酸素系は、主として脂肪細胞にある中性脂肪(トリアシルグリセロール)をエネルギー源として収縮し、酸素を必要とする有酸素運動を生み出す。弱い力しか出せないが、極めて長い時間持続する。例えば、マラソンなど。
ダイエットにおいては、弱い強度で長時間継続する有酸素運動の量が成功のカギを握っています。しかし猫はこの有酸素運動が生まれつき苦手なため、どうしても運動を介した減量が難しくなってしまうのです。
やってはいけないこと
以下は猫の消費エネルギーを増やすときについついやってしまいがちな間違いです。こうした予備知識があると、ダイエットの成功率が高まります。
いきなり運動させるのはダメ
過剰な運動はダメ
飼い主がせっかちな場合、早く結果を出したいがために、猫に対して過剰な負荷をかけてしまうことがあります。例えばトレッドミルに乗せて延々と歩かせるなどです。しかしこうした過剰な運動は、猫の福祉にとって最良とは言えないでしょう。まず第一に、太り気味な体で過剰な運動をすると、靭帯や腱といった関節部位を痛めやすくなってしまいます。そして第二に、猫が運動嫌いになってしまう危険性があります。
体重が減らないことも問題ですが、体重が短期間で急激に減りすぎることもまた問題です。飼い主は事前に計画したダイエット計画にのっとり、猫の体重が許容範囲内で推移していることを確認しながら行う必要があります。ダイエットの基本で説明した通り、適切な体重の減少は1週間で0.5~1.5%、1ヶ月で2~6%程度です。過剰な運動で一時的に体重が減っても、リバウンド、筋骨格系の障害、運動嫌悪といったリスクが高まってしまいますので、ダイエットにおいては禁忌となります。 急激なダイエットがもたらす結果としては、2014月10月に急死したデブ猫「キングレオ」(King Leo)が好例でしょう。この猫は7月に道路わきで保護され、そのあまりの肥満体からダイエット計画が進められていました。しかし公開されているデータを見る限り、どう考えても「過激なダイエット」としか言いようがありません。以下は、「キングレオ」の実際の減量記録と、本来の適正ペースを比較したグラフです。「8月12日時点で11.2kg」、「9月8日時点で9.6kg」、「10月3日時点で8.8kg」という公開データを基にしてあります。縦軸が「体重」(kg)、横軸が「期間」(月)、赤と青の直線で挟まれた範囲が減量の「適正ペース」で、ピンクの直線が実際の減量ペースです。 グラフからわかるように、「キングレオ」の体重の減り方は明らかに速すぎです。この猫は結局、10月29日に急死してしまいました。彼の急死とダイエットとの因果関係は不明ですが、少なくとも「全く無関係」とは言えないでしょう。いくら体重が減ったとしても、その結果として命を落としてしまっては意味がありません。減量のペースは、「適正ペース」におさまるように管理することが何より重要です。
体重が減らないことも問題ですが、体重が短期間で急激に減りすぎることもまた問題です。飼い主は事前に計画したダイエット計画にのっとり、猫の体重が許容範囲内で推移していることを確認しながら行う必要があります。ダイエットの基本で説明した通り、適切な体重の減少は1週間で0.5~1.5%、1ヶ月で2~6%程度です。過剰な運動で一時的に体重が減っても、リバウンド、筋骨格系の障害、運動嫌悪といったリスクが高まってしまいますので、ダイエットにおいては禁忌となります。 急激なダイエットがもたらす結果としては、2014月10月に急死したデブ猫「キングレオ」(King Leo)が好例でしょう。この猫は7月に道路わきで保護され、そのあまりの肥満体からダイエット計画が進められていました。しかし公開されているデータを見る限り、どう考えても「過激なダイエット」としか言いようがありません。以下は、「キングレオ」の実際の減量記録と、本来の適正ペースを比較したグラフです。「8月12日時点で11.2kg」、「9月8日時点で9.6kg」、「10月3日時点で8.8kg」という公開データを基にしてあります。縦軸が「体重」(kg)、横軸が「期間」(月)、赤と青の直線で挟まれた範囲が減量の「適正ペース」で、ピンクの直線が実際の減量ペースです。 グラフからわかるように、「キングレオ」の体重の減り方は明らかに速すぎです。この猫は結局、10月29日に急死してしまいました。彼の急死とダイエットとの因果関係は不明ですが、少なくとも「全く無関係」とは言えないでしょう。いくら体重が減ったとしても、その結果として命を落としてしまっては意味がありません。減量のペースは、「適正ペース」におさまるように管理することが何より重要です。