2015.03.14
ダーモスコピー(dermoscopy)検査
ダーモスコピー検査は、2000年頃より皮膚腫瘍診断に取り入れられた機器であり、病変を10~20倍に拡大して観察する実体顕微鏡です。皮膚の表面にゼリーやアルコールを塗ることで、光の散乱が少なくなり、色調のコントラストが上がり、より鮮明な皮膚病変を観察することができます(図1)。
2006年より保険収載され、現在は、悪性黒色腫、基底細胞がん、ボーエン病、色素性母斑、老人性色素斑、脂漏性角化症、エクリン汗孔腫、血管腫等の色素性皮膚病変の診断の目的で使われています。
熊本市民病院皮膚科では、5種類のダーモスコピー(図2)を駆使してより詳細な病変の観察と診断を行っています。
ホクロ(黒子)について
ホクロの語源は、母糞(ははくそ)→はくろ→ほくろと変化したという説があります。つまり、お母さんのお腹の中にいるときに皮膚にくっ付いたものがホクロと考えられていました。実際には、大部分のホクロは小児期以降に発生します。生まれつきのホクロは決して多くはありません。皮膚科的には、生れつきの皮膚の奇形のことを母斑(ホクロ)といいます。母斑細胞といわれる皮膚とは異なる起源の細胞が増殖しているものが母斑細胞性母斑であり、これがホクロです。
母斑細胞性母斑には、①先天性母斑、②Unna母斑、③Spitz母斑、④Clark母斑、⑤青色母斑の5種類があります。それぞれに特徴があり、見た目も様々です。
先天性色素性母斑
生れてすぐに見つかるホクロ。平坦なものから、盛り上がるもの、太い毛が生えたものなど様々な形のものがあります。ダーモスコピーでは特徴はdotsといわれる点々が見られることが多い。
Unna母斑
最も一般的に見られる盛り上がったホクロ。顔面や頭部に多くみられ、毛が生えていることが多い。ダーモスコピーでは、敷石様の色素斑やリング状の血管拡張が見られることが多い。
Spitz母斑
以前は、若年性メラノーマと言われたこともある、メラノーマとの鑑別が難しいホクロ。これ自体が悪性化することはないと考えられています。ダーモスコピーでは、特徴的なStreak(棘)がみられることが多い。
Clark母斑
別名、赤ボクロといわれる赤っぽくて、平坦なホクロ。白人種で、家族にメラノーマ患者がいて、Clark母斑が多発したときにはメラノーマのリスクが高いと考えられます。日本人では、メラノーマのリスクとはされていませんが、早期のメラノーマとの鑑別が困難な場合が少なくない。ダーモスコピーでは、網目状の色素沈着が特徴的。
青色母斑
皮膚の真皮で、母斑細胞が増殖したホクロであり、基本的には悪性化することはない。
足の裏のホクロについて
日本人のメラノーマ(悪性黒色腫、ホクロのがん)の40~50%は足の裏に発生します。ところが、日本人の約10人に1人が足の裏にホクロを持っていると推測されます(Kogushi-Nishi. JAAD 60:767-771,2009)。日本人の全メラノーマの発生頻度は、1年間に1人/50,000人との推計があります。その40~50%が足の裏に発生するとしたら、足の裏にメラノーマを持っている人の割合は、一年間に、約10万人に1人の割合となります。つまり、足の裏のホクロの1/10,000程度はメラノーマの可能性があると考えられる。
このようなメラノーマの診断で、最も有効なのがダーモスコピー検査です。日本皮膚科学会皮膚腫瘍ガイドラインでは、「メラノーマの部分生検は行いべきでない」としています。メラノーマの部分生検が推奨されないのは、腫瘍にメスを入れることで転移を引き起こす可能性が否定できないためです。ダーモスコピーは、レンズを皮膚に接着させるだけであり、非侵襲性で痛みもありません。勿論、転移を引き起こす心配もありません。
一見、黒っぽく見える足底の色素斑も、ダーモスコピーで観察すると線状の色素斑であったり、点状の色素斑であったり、色々なパターンがある。その観察により良性/悪性の予想が可能である。
爪の色素斑について
爪に見られる黒い線状の色素斑のことを黒色線条(メラノニキア)といいます。日本人の悪性黒色腫(メラノーマ)の20%は、爪の部分に起こるとされており、その初期病変の多くはメラノニキアと考えられています。従って、メラノニキアが悪性であるのか良性であるのかの判断は重要ですし、そのためにはダーモスコピー検査が最も有用です。
2002 年にRonger らは、爪の色素斑について、7 つのシェーマを定義し、そのなかで、悪性(malignant melanoma in situ)を疑うべき所見として下記の3 つを提唱しています。
さらに、2014 年にInoue らが、dots/globules(斑点)も悪性を疑うべき所見であることを提唱しました(In J Dermatol 53,88-92,2014)。
ただし、10 歳未満に発症したメラノニキアの場合には、仮に、悪性所見を認めたとしても自然に消えていくことがあり、経過観察するべきとされています。
顔のシミについて
皮膚には色々な腫瘍が発生します。特に、顔は衣服を着用しないために常に日光、紫外線の影響を受けています。従って、皮膚の老化が最も現れやすい部位です。一般にいわれる「顔のシミ」については、良性の腫瘍、皮膚がん、皮膚がんの前状態など様々な病変が含まれています。それらを確定診断(確実に診断する)のためには、実際に皮膚を切除して病理検査(顕微鏡で皮膚の細胞を観察する)が必要です。しかしながら、皮膚生検検査には麻酔が必要ですし、切った跡には傷が残ります。ダーモスコピー検査を用いると、90%以上の確立で診断が確定できるとされています。
ナローバンドUVB治療機
紫外線は、その波長によりUVA,UVB,UVCに分けられます。一般には紫外線は人体、特に皮膚に対して有害ですが、一部の紫外線は皮膚病の治療に用いられます。特に、波長が315nm(ナノメートル)の紫外線は、ナローバンドUVBをいわれ、皮膚の炎症を治療するのに有効であり、副作用も少ないとされています。当院では、紫外線治療としてこのナローバンドUVBと従来のPUVA(ソラレン+UVA)治療を行っています。適応としては、尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎、痒疹などの炎症性疾患をはじめ、皮膚の悪性リンパ腫治療なども行っています。
皮膚パッチテストについて
刺激物質が皮膚と接することで湿疹などの炎症反応を起こすことを接触皮膚炎(Contact dermatitis)といいます。「ハゼ負け」や「湿布負け」がその典型ですが、中には原因が分からない接触皮膚炎も多くあります。
図1 湿布薬による接触皮膚炎
接触皮膚炎は、刺激性とアレルギー性に分けられます。石油が皮膚につくと誰でもかぶれます。これが刺激性接触皮膚炎です。一方、「ハゼ負け」は起こるヒトと起こらないヒトがいます。それは、アレルギーを獲得しているかどうかの違いによります。これがアレルギー性接触皮膚炎です。ヒトは様々な物質でアレルギーを獲得することが知られていますが、最近は金属アレルギーの増加が社会問題となっています。その理由の一つは、装飾品や医療材料として色々な金属が使われるようになってきたためと考えられています。
ところで、アレルギーはI~IV型に分類されます(クームス分類)。I型アレルギーが即時型アレルギーといわれ、アナフィラキシーと呼ばれるショック状態を引き起こす危険なアレルギーです。それに対して、IV型アレルギーは、遅延型アレルギーと呼ばれ、原因刺激が起こった後24~48時間後に反応が起こります。接触皮膚炎は、その多くがこのIV型アレルギーで起こることが知られています。そのために原因物質の検索は困難な場合が少なくありません。何故なら、皮膚炎が起こっても、原因物質への接触は数日前であったりするために気付かないからです。この、IV型アレルギー(遅延型アレルギー)の原因検索方法は皮膚パッチテストしかありません。
当科における金属パッチテスト
現在、当科では接触皮膚炎のパッチテスト試薬は歯科金属スタンダート系列(トリイ)しか入手できません。同スタンダード試薬を使って、皮膚パッチテストを行っています。
方法
皮膚(背中など)にテープで金属スタンダード系列を貼り、48時間後と72時間後に判定します。できれば、一週間後にもう一度判定することをお薦めします(自己判定でも可)。
試薬を含んだ検査キット(絆創膏)を背中に貼り付けます。月曜日に貼った場合には水曜日と木曜日の判定になります。火曜日に貼った場合には、木曜日と金曜日に判定となります。従って、皮膚パッチテストは月曜日か火曜日しか行えません。また、試験キットを背中に貼り付けている間は、激しいスポーツや入浴ができません。
| 月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 |
| 試薬調布 | → | 48時間判定 | 72時間判定 | |
| 試薬調布 | → | 48時間判定 | 72時間判定 |
パッチテスト判定基準 (日本皮膚科学会接触皮膚炎ガイドラインより)
反 応
本邦基準
反応なし
軽度の紅斑
±
紅斑
+
紅斑+浮腫、丘疹
++
紅斑紅+浮腫+丘疹+小水疱
+++
大水疱
++++
図2.パッチテスト。背中に検査薬がしみ込んだ絆創膏を張ります。
図3.金属パッチテスト判定。48時間後の判定では明らかな陽性は認めませんが、72時間後の判定では、③(塩化第二スズ)⑤(塩化白金酸)に陽性所見を呈しています。
種々の金属による病型・病状によるその感作源(日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドラインより)
| 原因物質 | 感作源 |
|---|---|
| コバルト | メッキ,合金工業,塗料(エナメル,ラッカー),染着色(青色系),顔料,陶器うわぐすり,乾湿指示薬,ハエ取紙,粘土,セメント,ガラス工業,乾燥剤 |
| ニッケル | ニッケルを含む種々の合金製装身具(バックル,ガーター,腕時計,時計バンド,イヤリング,ネックレスなど),ニッケルメッキ,ニッケル触媒,媒染剤,塗料(ペンキ,ニス),陶磁器,セメント,電気製版,乾電池,磁石,ビューラー |
| クロム | クロムメッキ工業,印刷業(青色),試薬,塗料(ペンキ, ニス),媒染剤,陶磁器うわぐすり,皮なめし |
| 水銀 | 錫亜鉛合金,治金,漂白クリーム,化粧用クリーム剤(保存剤としてまれに含有),消毒剤,農薬(水銀製剤),防腐剤,分析試薬, イレズミ (赤色),金属うわぐすり,染料,皮革,皮なめし,フェルト,木材防腐(亜鉛,錫),有機合成触媒(塩化ビニールなど),乾電池および鏡の製造,写真工業,アルミニウム電気 |
| 銅 | メッキ,治金(合金製造),顔料,農薬(稲,麦,果樹),媒染剤,皮革,皮なめし,人絹染料,人絹工業(銅アンモニア法),乾電池,木材防腐剤 |
| マンガン | 特殊合金,ステンレス, 医薬品,肥料,塗料,染料, ほうろう,織物, マッチ |
| 亜鉛 | 歯科用セメント,化粧品,医薬品(亜鉛華デンプン,亜鉛華絆創膏,亜鉛華軟膏),医薬部外品(脱臭剤, アストリンゼン,脱水剤),塗料,印刷インキ,絵具,顔料,錆止め顔料, 陶磁器うわぐすり,ガラス, アクリル系合成繊維 |
| 金 | 貴金属装飾品,貴金属回収作業,メッキ |
| パラジウム | 眼鏡フレーム,腕時計,電気製品 |
| 白金 | 貴金属装飾品,貴金属回収作業,メッキ |
| アルミニウム | 化粧品,香料,医薬品,農薬,歯磨き,絵具, クレヨン,顔料,塗料,皮なめし,ガラス, エナメル, 陶磁器, セメント混合剤,焼きみょうばん,ベーキングパウダー,写真, メッキ,灯油,軽油,繊維 |
| 錫 | 合金,医薬品,顔料,感光紙,缶製品,衣類 |
| 銀 | 装身具,メッキ,貨幣,飾り物,鏡, 医薬品,食器 |
蕁麻疹について
蕁麻疹は、「一過性の限局した浮腫」と定義されます。つまり、盛り上がった赤いできもの(膨疹;ぼうしん)が出たり、引っ込だりする病気です。一日以上、同じ場所に赤みが続いていたら、それは蕁麻疹ではありません。
蕁麻疹の原因は多岐に渡りますが(表1)、最も多いのは原因不明の突発性蕁麻疹です(表2)。蕁麻疹はアレルギーで起こると考える人が多いですが、食事などのアレルギーで起こる蕁麻疹はごく少数であり、大部分では原因不明です。ただし、蕁麻疹が起こる機序は分かっているので治療することは比較的簡単です。
図1.下肢の蕁麻疹:境界明瞭な盛り上がった紅斑で、皮疹が移動するのが特徴。
蕁麻疹の診断
・見るだけで、診断は可能ですが、一定時間で蕁麻疹が消えることを確認するには赤い部分をマジックなどで縁取りして一定時間(6時間)以内に赤い部分が移動することを確認すると、より診断が確実になります:マジック法
・一見、何もないようなところをペン先などで擦ると蕁麻疹を誘発することができる場合があります:皮膚描記症(dermographism).(図2)
図2.皮膚描記症:何もない部分をペン先などで擦ることにより蕁麻疹が誘発できる。
蕁麻疹の機序
・肥満細胞といわれる血球に何らかの刺激(アレルギー刺激、機械的資源、薬剤、運動、気象など)が加わり
・肥満細胞が脱顆粒(破裂)して、内部に蓄えたヒスタミンなどの化学伝達物質を放出します。
・化学伝達物質は、血管に作用して血管から水分が漏れて皮膚に溜まります。一部は、神経終末に作用して激しい痒みを起こします。
この状態が蕁麻疹です。
図3.蕁麻疹の機序
そこで、
蕁麻疹の治療は、
・肥満細胞を安定させる
・ヒスタミンの働きを抑える
・ヒスタミンが血管に作用しなくする必要があります。そのために、抗ヒスタミン剤の内服を行います。
・塗り薬は、蕁麻疹には基本的に無効です。
一定期間、蕁麻疹がでないような状態を続けると、蕁麻疹は自然と出なくなることが多いとされています。その目安は2週間程度です。つまり、薬を飲んで蕁麻疹がでないような状態を最低でも2週間は継続する必要があります。1カ月以上続く蕁麻疹を慢性蕁麻疹と定義し、難治な蕁麻疹と考えられます。
以上の理由により、蕁麻疹の治療は、発症した初期の治療が重要です。適切な治療がされないままに放置されると慢性化して難治性蕁麻疹に陥ることもあります。
皮膚がんについて
1. 皮膚の構造
① ヒトの皮膚は、表面より表皮、真皮、脂肪組織の3層構造よりなります。
② 最外層の表皮を作っている細胞は、ほとんどが角化細胞(ケラチノサイト)です。この角化細胞は、生まれてから死ぬまでに、基底細胞→有棘細胞→顆粒細胞→角層と変化します。それぞれの細胞がある部分を、基底層、有棘層、顆粒層、角層とよびます。
③ この角化細胞ががんになったのが、基底細胞がんと有棘細胞がんです。
④ また、角化細胞はメラニンという色素を含んでいるためにヒトには色があります。角化細胞にメラニンを供給しているのがメラノサイトであり、このメラノサイトががん化したものがメラノーマです。
⑤ 皮膚がんは患者数が多いほうから基底細胞がん、有棘細胞がん、メラノーマの順番です。ただし、悪性度は逆で、メラノーマ>有棘細胞がん>基底細胞がんの順番です。
基底細胞がん(Basal cell carcinoma, BCC)
基底細胞がんは、皮膚がんの中でも最も患者数が多いがんですが、
1. 転移を起こさない。
2. 従って、基本的には命には関わらない。
3. ただし、十分な手術を行わないと再発する。
を特徴とします。
基底細胞がんの分類
基底細胞がんは、その形や性格により以下の6つの病型に分類されています。
つまり、
1. 結節潰瘍型:最も多い型で、表面には潰瘍を伴うことが多い
2. 瘢痕化扁平型:中央は瘢痕様で、周囲には堤防状の盛り上がりが見られる。
3. 表在型:扁平で、体幹に多い
4. 斑状強皮症型:中央が窪んで、皮膚が硬くなってように見える。
5. 破壊型:結節潰瘍型が進行した型。
6. Pinkus 腫瘍:
基底細胞がんの治療
①検査
基底細胞がんは基本的には転移することはないので、CT やMRI などによる転移の検査をする必要はありません。ただし、手術が必要な場合には、手術(局所麻酔または全身麻酔)のための検査が必要になります。
②手術
推奨文:臨床的に条件の良い基底細胞がんのほとんどは,3~10mm 離して切除することにより,高い完全切除率と長期寛解が得られる.(皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインより)
1. 斑状強皮症型以外の型では、腫瘍より3~5mm離して切除する。
2. 斑状強皮症型では、腫瘍より7~10mm離して切除する。
③抗がん剤、放射線療法、免疫療法などについては、基底細胞がんは転移を起こさないので、基本的に不要です。
④放射線療法は基底細胞がんの治療として有効であるが、手術と比較した場合には治療成績で劣る。手術ができない場合には放射線療法を検討する価値があります。
④経過観察
基底細胞がんは、転移は起こさないが再発する可能性は高い(20%~40%が再発すると言われている)ので、治療後で、キズが落ち着いたら、自分で定期的に再発がないか(黒い斑点ができていないか。潰瘍ができていないかなど)をチェックする(セルフチェック)。もし、怪しいと思ったら早期に再診するようにしてください。
有棘細胞がん(Squamoid cell carcinoma,SCC)
皮膚の表皮細胞由来の皮膚がんで、基底細胞がん以外のものを有棘細胞がんといいます。その特徴は、先行病変(がんを発生する皮膚病)を多く認めることです。例えば、怪我や火傷のあとかた、日光照射、砒素(ひそ)曝露、放射線、ウイルス感染、ときには、先天性の母斑(皮膚の奇形)などが有棘細胞がんの先行病変となりえます。
有棘細胞がんは、皮膚がんの中では、基底細胞がんに次いで多いがんですが、
1. 放置すると転移します。
2. 従って、命には関わります。
3. 臨床的には結節や潰瘍を作り、大きくなると特有の悪臭があります。
4. 前駆病変を含めると最も多い皮膚がんです。早期(前駆病変)での手術が勧められます。
前駆病変
1. 日光角化症
長年の日光曝露によって起こった皮膚の老化(がん化)であり、5 年以内に20~40%が有棘細胞がんになるとされる。ほとんどが、顔面と手背に発生する。
2. ボーエン(Bowen)病
以前は、砒素(ひそ)摂取との関係が言われていたが、最近はウイルス感染との関与が指摘されている。
3.(熱傷)瘢痕
熱傷瘢痕上に起こった有棘細胞がん。熱傷による引きつれを放置すると、数年~数十年後にがん化することがある。
4. 脂腺母斑
大部分が頭部に発生する先天性の皮膚奇形。生まれつきの脱毛(禿げ)として気づく場合が多い。放置すると殆どが、中年期までにがん化する。
有棘細胞がんの治療
検査
前駆病変の時には、基本的には転移することはないので、CT やMRI などによる転移の検査をする必要はありません。ただし、大きくなって表面が潰瘍を形成するような状態では、CT, MRI, エコー検査などで全身の転移の有無を検査します。
手術
推奨文:原発巣は最低限4mm 離して切除する。高リスク病変(解説および別表参照)の場合は6mm~10mm 離して切除する。(皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインより)
仮に、全身検査にてリンパ節転移が疑われた場合にはセンチネルリンパ節生検(後述)やリンパ節郭清術の適応になります。
抗がん剤
抗がん剤については、術後の抗がん剤は勧められない。転移を起こした有棘細胞がんに対する抗がん剤治療は数種類のレジメがあります。
経過観察
有棘細胞がんは、転移を起こす可能性があるので、キズが落ち着いたら、自分で定期的に再発がないかをチェックする(セルフチェック)。もし、怪しいと思ったら早期に再診するようにしてください。
メラノーマ(malignant melanoma, MM, 悪性黒色腫)
メラノーマは、皮膚がんの中で最も予後の悪いがんの1 つです。メラノーマの患者数は全皮膚がんの5%程度に過ぎませんが、皮膚がんで亡くなる人の80%以上はメラノーマの患者さんです。
これは、
- 早期にリンパ節や肺に転移を起こす
- 有効な抗がん剤が少ない(抗がん剤が効きにくい)
- 放射線感受性が低い(放射線治療が効かない
- 免疫反応を生じやすく(immunologic tumor)、いわゆるがんに対する免疫療法(モノクローナル抗体、T 細胞認識腫瘍退縮抗原、遺伝子治療)が期待されています。
などによります。ただし、
メラノーマの分類
メラノーマは、その形や性格により以下の4 つの臨床病型に分類されています。
つまり、
1. 悪性黒子型黒色腫(LMM):顔に多く発生します。(欧米人に多い)
2. 表在拡大型黒色腫(SSM):背中や腕などに多く発生します。(欧米人に多い)
3. 結節型黒色腫(NM):四肢や体に多く発生します。
4. 末端黒子型黒色腫(ALM):足の裏は手の平に多く発生します。(黄色人種に多い)
メラノーマの進行度(病期の進み具合)
メラノーマのステージ分類
◆ステージ0~IV までに分類する。
◆ステージが進むに従って完治が難しくなる。
◆ステージを決定するのは、
・腫瘍細胞の深さ。
・腫瘍表面の潰瘍のある、なし。(腫瘍から血が出たりしていないか)
・リンパ節転移のある、なし。
・他への転移のある、なし。
pT N M 分類
例えば、深さが1mm(pT1)で、潰瘍がなく(a)、リンパ節転移、他への転移もなければ、pT1aN0M0 で、ステージIA の状態となります。
皮膚悪性黒色腫の病期分類(UICC,2010 改訂)
| UICC病期 | pT分類 | N分類 | M分類 |
| Stage 0 | pTis | N0 | M0 |
| Stage IA | pT1a | N0 | M0 |
| Stage IB | pT1b | N0 | M0 |
| pT2a | N0 | M0 | |
| StageⅡA | pT2b | N0 | M0 |
| pT3a | N0 | M0 | |
| StageⅡB | pT3b | N0 | M0 |
| pT4a | N0 | M0 | |
| StageⅡC | pT4b | N0 | M0 |
| Stage ⅢA | pT1a~4a | N1a,2a | M0 |
| Stage ⅢB | pT1a~4a | N1b,2b,2c | M0 |
| pT1b ~4b | N1a,2a,2c | M0 | |
| Stage ⅢC | pT1b~4b | N1b,2b | M0 |
| Any pT | N3 | M0 | |
| StageⅣ | Any pT | Any N | M1 |
メラノーマの治療
検査
メラノーマの治療の主なものは手術、抗がん剤治療および転移の有無の検査です。手術前に皮膚以外への転移がないかどうかの検査を行います。
転移の有無の検査
a.エコー検査:リンパ節転移の有無などを検査します。
b.CT検査:肺は肝臓などの内臓への転移の有無などを検査します。(初期のメラノーマでは省略することもあります)
c.MRI検査:脳への転移の有無などを検査します。(初期のメラノーマでは省略することもあります)
d.PET-CT検査:全身の転移を検査します。(初期のメラノーマでは省略することもあります)
e.手術(局所麻酔または、全身麻酔)のための検査
手術
1. 進行度(腫瘍の大きさや深さ)によって異なりますが、所属リンパ節への転移の有無をセンチネルリンパ節生検術(付参照)にて判定します。
2. 腫瘍は、辺縁より。0.5cm(Stage 0の場合)、1.0cm(Stage 1~2の場合)、2.0cm(Stage 2~3の場合)離して切除します。
3. 手術前の検査にてリンパ節への明らかな転移を疑われる場合には、センチネルリンパ節生検術は行わずに、リンパ節郭清術を行います。
抗がん剤
進行度により、Stage1A以外の場合には基本的にインターフェロンによる免疫療法による治療が必要になります。
経過観察
1. 退院後は、定期的(当初は、1~2週間に1度程度、その後は、進行度によって、3ヶ月ごと、6ヶ月ごと、12ヵ月後と)に外来を受診していただき、メラノーマの再発・転移の有無を検査します。
2. 具体的には、診察、エコー、CTなどの画像検査と採血検査を行います。
附)センチネルリンパ節について
メラノーマはほとんどの場合、リンパ行性転移を起こします。つまり、がん細胞が体のあちこちにいきなり飛んでいくのではなく、
1. がん細胞が、皮膚のリンパ管に入り、
2. 所属のリンパ節まで流れていき、そこで増殖します。
3. その後、周辺のリンパ節へも転移していきます。
4. つまり、初期の頃には、転移するリンパ節は、1~2個の限られたものであると考えられます。
5. この、最初に転移するリンパ節のことを、センチネルリンパ節といいます。センチネルとは、歩哨(見張り番)のことです。
6. つまり、センチネルリンパ節を摘出して、そこにがん細胞の転移がなければ、まだ、転移を起こしていない初期のメラノーマであると考えられます。
7. この、センチネルリンパ節を採って、がん細胞がないことを確かめる手技をセンチネルリンパ節生検術といいます。
8. 近年、このセンチネルリンパ節生検術の有用性が、メラノーマや乳がんで確認されており、保険適応されています。
乳房外パジェット病(extramammary Paget’s disease)
乳房外パジェット病は、以前は稀な皮膚がんでしたが、近年の高齢化に伴い増加が著しい皮膚がんの1つです。人種差が大きく、欧米人とくらべて日本人などの東洋系に多いとされています。乳房外パジェット病は、皮膚がんとしては、in situ(表皮内がん)に分類されますが、進行すると乳房外パジェットがん(腺がん)となり、リンパ節転移や遠隔転移をおこして死亡することもあります。
1. ほとんどが、陰部に発生する。稀に腋窩や臍部にも生じる。
2. 外陰部に発生する紅斑のために、白癬(いんきん、たむし)やオムツかぶれと誤解されている例が多い。
3. アポクリン汗腺由来の腺がんと考えられている。
4. 表皮内がんであるが、毛嚢(毛穴)部分の表皮にもがん細胞が存在するため、毛嚢部を完全に切除しないと再発・転移する。
5. がんの境界が不明瞭な場合が多い
6. がん細胞が色々なホルモン受容体を有するので、ホルモン療法や分子標的薬が効果的である。
7. 放射線感受性は良好であるが、放射線療法での完治は望めない。
などの特徴がある。
乳房外パジェットの治療
検査
転移の有無の検査
a.エコー検査:リンパ節転移の有無などを検査します。
b.CT検査:肺、肝臓などの内臓への転移の有無などを検査します。(進行した乳房パジェットがんで行う)
c.PET-CT検査:全身の転移を検査します。(進行した乳房外パジェットがんでは、骨転移を起こしやすい)
d.手術(局所麻酔または、全身麻酔)のための検査
e.mapping biopsy:乳房外パジェット病では腫瘍の境界が不明瞭な場合が多く、がんの範囲を肉眼所見だけで判断することが困難です。その場合には明らかながんの範囲から1cm離して6~12箇所の皮膚を病理検査し、予めがん細胞の有無を確認します。
手術
手術範囲
推奨文(皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインより)
乳房外パジェット病の原発巣を完全切除するのに必要な皮膚側の切除範囲(切除マージン)に関する信頼性の高いエビデンスは存在しないが、病巣の肉眼的境界が明瞭な部分や、mapping biopsyで陰性と判定された部位については、1cm程度の切除マージンでよいと考えられる。その他の境界不明瞭な部位については、3cm程度のマージンが推奨される。
センチネルリンパ節生検:
手術前検査にて乳房外パジェットがんと診断された場合には、センチネルリンパ節生検(前述)を行います。
リンパ節郭清:
手術前検査にて明らかなリンパ節転移を認めた場合には、リンパ節郭清術を行います。
③抗がん剤
転移した場合には数種類の抗がん剤レジメおよび分子標的薬がある。
④経過観察
退院後は、定期的(当初は3ヶ月ごと、6ヶ月ごと、12ヵ月後と)に外来を受診していただき、乳房外パジェット病の再発・転移の有無を検査します。
具体的には、診察、エコー、CTなどの画像検査と採血検査を行います。