ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 それは 先輩達のちょっとした会話から始まった。一応、赤葦くんも女の子ですから、そういう事は気になるんです。昼休み、赤葦はいつも彼氏の木兎と屋上で弁当を食べている。でも最近は木葉と小見と猿杙と鷲尾が加わるようになった。毎日 賑やかな昼休みだ。そこへ小見が週刊誌を持って来てみんなに見せた。「なぁ、今週のこのアイドル超カワイイんだけど!見て見て!」「どれどれ?」「うぉー!Eカップ!スゲー、巨乳じゃん!顔もカワイイし!」え?Eカップってどんな大きさ!オレはBカップだけど…。赤葦は自分の胸を見つめる。「そうかぁ?先週のほうが可愛かったよなぁ?」「でも、この子 細いなぁ!体重40㎏だって!折れそう!なんか、守ってあげたいって感じー!」え!体重40㎏?あり得ない!赤葦は耳を疑った。「ん?女の子ってこのくらいなんじゃねーの?」「そうだよなぁ!」赤葦は聞き流していたが流石に体重40㎏にはおどろいて それを見たくなった。「ちょっとオレにも見せて下さい。」「え?…はい。」小見が赤葦もこんなの興味あるの?と不思議そうな顔をしながらも週刊誌を手渡す。身長 162㎝ 体重 40㎏ Eカップセミロングの笑顔の可愛いアイドルが水着姿で掲載されている。ほっ、細い!これが男の子が憧れる女の子なんだ!赤葦は自分と当てはめてみる。身長はこの子より全然高いが体重が…。すごく落ち込んでしまった。「かっ、可愛い子ですね。男の人は やっぱりこういう人がタイプですか?」赤葦は顔が引きつっているが、先輩達は声を揃えて理想のタイプだと言う。「まぁ、だいたいそうだよなぁ。」「そうだなぁ。」「うん、うん。」赤葦の体はアイドルとは違う。男子バレー部に入り、他の男子と同じ いや、それ以上の練習をしているのだから勿論体には筋肉が付いている。男子に比べたら細いが、女子から比べたら ちょっとたくましい。アイドルの様な体型になったら木兎は喜ぶのか?赤葦は暫く考えていた。そして、赤葦は食べていた弁当を半分残した。それを見て木兎が「あかあし どうした?腹でも痛えの?」「えぇ、まぁ、ちょっと食欲なくて…。」赤葦の身長は175㎝女子にしては高い。体重は…?赤葦は理想の体型に近付こうとスマホでモデルの体重を調べてみる。赤葦と同じくらいの身長の人が50㎏ぐらいだ。それ以下の人もいる。赤葦はショックだった。あと、10㎏以上 体重を減らさないとモデルの体型にはなれない。「よし!ダイエットをしよう!」次の日から それは決行された。朝はしっかり食べようと ご飯と味噌汁サラダを食べて、いつも通り朝練へ。昼食は おにぎり1個と野菜ジュース。みんなが食べているのを見てるのは辛いので 1人図書室で読書をする。先輩達とは暫く一緒に食べないと宣言した。部活が始まる頃には お腹はペコペコだ。食欲を抑えようと水ばかりを飲んでいた。夕食は食べずに牛乳だけ飲んで早目に寝る。カルシウムはしっかり摂らないとね。これで栄養はバッチリ!そう思っているのは赤葦だけでかなり過酷なダイエットだ。それを続けて1週間。赤葦の体重は2㎏減った。こんなに我慢してもたったの2㎏?赤葦は愕然とした。もっと頑張らないと!「最近、赤葦痩せたな。」「いや、あれ やつれてるっていわねぇか?」「そうだな。」部活の休憩中に いつもの自主練メンバーが赤葦の噂をしている。当の本人は辛そうに壁に寄りかかって座っている。木兎が赤葦に声をかける。「あかあし。」「なんですか?」「お前、痩せたな。」「え?本当ですか?」赤葦は嬉しそうだ。ダイエットの効果だ!痩せた事に木兎が気付いてくれたのだ。「具合 悪いのか?」「え?悪くないですよ?」「なんか 悩みでもあるのか?」「悩みなんてないですよ。」木兎はすごく心配そうだ。「ちゃんと飯 食ってんのか?」「…たっ、食べてますよ。」「なら、いいけど。悩みがあるなら言えよ。」赤葦はちょっとムッとした。どうして木兎さんは痩せた自分を誉めてくれないのか。こんなに努力しているのに。やっぱり もっと痩せないとダメなんだ。よし、帰ったら走るぞ!具合が悪そうに見えるならサプリを飲もう。鉄分不足かな。ダイエットを始めて10日。赤葦は空腹と、思う様に体重が減らない事でイライラしている。体もいうことをきかない。すごく怠い。昼休みサラダを味わって食べた後、図書室へ行こうとした時、木兎が赤葦に会いに来た。教室のドアのところで鉢合わせだ。「あかあし。どこ行くんだよ。」「これから図書室です。ちょっと勉強をしに…。」「ちゃんと昼飯くったのかよ。」「食べましたよ。」「何食ったんだ?」木兎の声は少し怒っているようだ。「何って…」ちょっと こっち来いと木兎は赤葦を人気のない体育館裏へ連れて行く。「お前 ちゃんと飯食ってんのか?最近やつれてきてるぞ!顔色だって悪いし!なんか悩んでるの?本当、心配なんだよ!」 「大丈夫ですよ、木兎さん。オレ、なにも悩みなんてないです。ただ、…その、ちょっと…ダイエットしてるだけです。まだ、少し…」「馬鹿野郎!!なに考えてんだ!そんな事する必要ないだろ!」赤葦が言い終わる前に木兎の怒声が飛ぶ。かなり怒っている様だ。「なんで起こるんですか?木兎さん、細い人が好きなんでしょう?」赤葦は木兎を睨みつける。「オレが いつ そんな事言ったんだよ。」木兎も負けずに睨み返す。「この間の昼休み、週刊誌見ながら みんなで言ってたじゃないですか!」「はぁ?そんな事 言ったか?」「言いました!」木兎は記憶を辿り考え込んでいる。「目標体重までは まだまだですけど、頑張りますから。」「今すぐ 止めろ!」木兎は冷たく言う。「は?」「ダイエット、今すぐ止めろ!」「…イヤです。」「お前、このままじゃ倒れるぞ!」木兎は眉間に皺を寄せて怒鳴り散らす。「大丈夫です。ちゃんと食べてますから。」「何を?」「サラダとか…」それを聞いて木兎は呆れてしまった。「本当に、今すぐ止めろよ。」そう言い残し、木兎は教室に戻って行った。次の日も赤葦は怠そうだ。ダイエットは まだ続けているらしい。練習もみんなについていくのがやっとだ。木兎はどうしたら赤葦がダイエットを止めてくれるのか考えていた。あいつ、案外 意地っ張りだからなぁ。いつものメンバーでやっている自主練も赤葦は散々だった。上手くトスが上がらないのだ。それに木兎がキレた。「あかあし、お前まだ続けてるのか?」「え?あ、…あの」木兎は今まで見たことのないくらい恐い顔で赤葦を睨みつけている。「すっ、すみません。今度はちゃんと、トス上げますから。」「そんな体じゃ、バレーなんかできねぇよ。」「できます!」「無理だね。実際、トス 全然上がんねぇじゃん。もう 辞めちまえ、バレーなんか!」木兎は冷たく言い放ち 体育館を出て行く。それを 木葉と小見が追いかける。「木兎、ちょっと待てよ!何もあんな事言わなくても…。言い過ぎじゃねぇの?」「何も分かってねぇんだよ!あいつは!」「何かあったのか?」木葉と小見に聞かれ、実は…と 赤葦がダイエットをしている事、止めろと言ったのに続けている事を2人に話した。「見た目は男だけど、やっぱり女の子なんだなぁ。」と、小見が言う。「ちょっとオレ、赤葦と話してくる。」木葉は少し考え込んでいたが、すぐに赤葦の所へ戻って行った。赤葦は体育館に座り込み俯いている。木兎に言われた事が相当ショックだった様だ。必死に泣くのを堪えている。猿杙と鷲尾は どうしたらいいかわからずに ただ、赤葦を見守るしかできないでいる。すると、木葉が赤葦に近付き隣に座り 赤葦の顔を覗き込む。「…赤葦。」「…木葉さん。」木葉は静かに話し出す。「お前がどうして痩せようとしているのか オレは知らないけど、この前 お前がオレに言った事 覚えてるか?」「・・・・」「お前、オレに言ったろ?自分のトスで木兎やオレたちが いっぱいスパイク決めて、いっぱい試合に勝って みんなで全国行きたいって。…今のお前にそれができるのか?そんな状態じゃ練習さえ満足にできない。木兎にバレー辞めろって言われても仕方ないだろ?」赤葦は木葉に言われて思い出した。木葉に告白された時、バレーを辞めると言った木葉に自分が言った言葉を。そうだった!オレは木兎さんとバレーをやるために梟谷学園に男として入ったんだ!今の自分では練習さえできない。体力が落ちている。木兎が起こるのも当たり前だ。「オレ、木兎さんに謝らないと。」立ち上がった途端に目の前が真っ暗になり、赤葦は倒れそうになる。「おい!大丈夫か?」それを木葉が抱き込む様に支える。立ち眩みだ。無理なダイエットのせいで 貧血気味なのだろう。顔色も良くない。少しすると落ち着いたのか 赤葦が目を開ける。猿杙と鷲尾も心配そうに赤葦の顔を覗き込んでいる。「もう 大丈夫です。すみません。」「お前ら何してんだよ!」そこへ木兎と小見が戻ってきた。「別に何も。赤葦が倒れそうになったから支えていただけで…。」「ちゃんと食わないからだぞ!ほら、これ食え!」木兎が赤葦に手渡したのはコンビニのシャケおにぎりと、果汁100%のオレンジジュースだ。「木兎さん、これ…」「んぁ?部活終わったら食べようと思って朝 買ってあったんだ。お前にやるよ。」「ありがとうございます。…それで、あの、木兎さん、…すみませんでした。オレ…」「もう いいよ。それ食ったら帰るぞ。」木兎と赤葦は駅までの道のりを2人で歩いて帰る。もう、辺りは暗くなっている。木兎の隣を歩いていた赤葦が木兎の手を握る。木兎は驚いて隣の赤葦を見ると、恥ずかしそうに俯いていた。「あかあし?」少し話しがしたいから 公園に行こう と赤葦に誘われた。木兎は赤葦の手を引き 近くの公園へ行く。公園は人気がなく、静かだ。赤葦は公園を歩きながら話しを始めた。「木兎さん、オレ、今日 木葉さんに説教されて それで思い出したんです。どうして梟谷の男子バレー部に入ってバレーをしたかったのかって事を。なのにこんな事して、みんなに迷惑をかけてすみませんでした。」「うん。もうダイエットなんかするなよ。やつれたお前なんか もう見たくないよ。」「木兎さん。オレが もし 太っても、ずっと好きでいてくれますか?」「バレーができる範囲内ならいいんじゃねぇの?それよりオレが太ったらどうよ?それでも あかあしは オレの事好きでいてくれるのか?」「イヤです。無理ですね。」赤葦は意地悪そうにニヤリと笑う。「ヒドイ。あかあし…。」「嘘ですよ。木兎さんはオレを変えた人ですから嫌いになんかなれません。きっと、ずっと好きですよ。」赤葦は照れた様に言う。木兎はポカンとしている。話しがわからないのだ。「オレが赤葦の何を変えたの?」ふふふと笑って赤葦は言う。「内緒ですよ。これからも ずーっと一緒にいられたら、そうしたら 教えてあげます。」「ちぇーっ!ケチー!」木兎は口を尖らせて不服そうだ。が、いつもの赤葦に戻ってくれて 木兎は安心している。本当に良かった。そう思っていたら急に赤葦が立ち止まる。「どうした?あかあし。」赤葦は繋いでいる手に更に力を込めて木兎の手を握る。何かを言いたいらしい。「あ、あの。…ちょっと耳を貸して下さい。」「あ、うん。」木兎は言われた通り少し屈んで赤葦の口元へ耳を近付ける。すると赤葦は両手を添えて ボソボソと自分の想いを木兎に伝える。その言葉に木兎も顔を赤くする。「あかあし、意外と積極的だな。」「だって…!木兎さんの誕生日にしか…してないから。」そう言って 赤葦も顔を赤くする。木兎は赤葦の肩を抱き寄せる。それを合図に 赤葦も目蓋を閉じる。…ちゅっ。木兎は赤葦に優しくキスをする。少しの間、2人の時間が止まる。ずっとこのままでいたい。その後、2人は幸せそうに見つめ合い、赤葦が恥ずかしそうに言う。「木兎さん、好きです。」「オレもだよ、あかあし。」月だけが そんな2人を見ていた。