ダフ屋

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ダフ屋(ダフや)とは、いわゆる転売屋の一種で、乗車券入場券や観覧券など(以下「チケット類」)を転売目的で入手し、チケット類を買えなかった人や買いたい人に売りさばく者、または業者のこと。ダフ屋がチケット類を不正に売りさばいたり、売りさばこうとする行為を、ダフ屋行為という。「だふ」という言葉は、チケット類を意味する「ふだ(札)」を逆にした倒語である。

チケット類を転売目的で購入し、またはチケット類を公衆に転売することは、基本的には違法であり、各種法令の適用により検挙、逮捕される事例がある。

チケット転売の取締根拠

迷惑防止条例

2009年時点で47都道府県中40都道府県の迷惑防止条例でダフ屋行為は禁止されており、次の2つの行為のいずれかを行うとダフ屋行為として刑事罰の対象となる(未遂も処罰される)。

  • 転売目的でチケット類を公衆に対して発売する場所において購入し、または購入しようとすること。
  • 公衆の場で、チケット類を他者に転売し、または転売しようとすること。

またダフ屋行為を処罰する条例を制定していないのは7県である。ただしそのような地方においても物価統制令を根拠に取り締まりを行っている場合がある(後述)

ダフ屋行為が禁じられたのは、戦後の食糧難の時代において、配給券の買い占め行為が存在し、放置しておいてはそれによる餓死者が出る恐れがあったため、時代の要請として緊急に取り締まる必要があったことが契機である。また、東京都で最初に迷惑防止条例が制定されダフ屋行為規制が盛り込まれた1962年当時は暴力団の資金源を絶つ目的の他、ダフ屋によるつきまといや押売りなどの愚連隊による不良行為が問題となっており、その排除が大きな目的の一つに挙げられていた。

かつてはダフ屋は暴力団の関係者が多いとされたが、インターネットの普及により一般人がチケット類を大量に購入してインターネットオークション後述)で高額で売りさばく例が増加している。暴力団の関係者ではない一般人のダフ屋を指して「シロダフ」(「素人(シロウト)のダフ屋」という言葉から。)とも呼ばれる。

物価統制令第9条の2および第10条では、「不当に高価な」または「暴利となるべき」価格によって売買の契約をし、又は売買により金銭を受領する事を禁じており、違反すると同法第34条により「10年以下の懲役または500万円以下の罰金」に処されることとなっている。

迷惑防止条例等と異なり、客体の限定すらなく、一見すると資本主義、自由主義経済に矛盾する規定とも受け取られかねないが、昭和32年(1957年)の事件において「ダフ屋」と名指しして処断した最高裁判例が存在する。(昭和36年2月21日最高裁判所第三小法廷判決、物価統制令違反事件、事件番号昭和32(あ)1039)

物価統制令では売買の買い方も処罰の対象となる。1997年時点でダフ屋行為を処罰する条例がなかった京都府において物価統制令の適用による取り締まり事例が存在する。

古物営業法の対象は、チケット類を含む古物全般であるが、そもそもダフ屋が古物営業許可を取得せずに大量、反復継続してチケット類を転売買していたところ、古物営業法違反で逮捕された事例がある。(チケット類を含む証票券類も、古物営業法の古物の対象である)

チケット購入時の規約に違反して、チケットを転売目的で購入した者に対し詐欺罪を適用して検挙した事例がある。

また、サービス利用の際に、チケット類とともに会員証や本人確認書類の提示を求められる場合には、他人の会員証や本人確認書類を使用すれば詐欺罪に該当する。

会員証や本人確認書類そのものが真正ではなく偽造、変造した物であれば、文書偽造の罪にも該当する(後述)。

ダフ屋の対象等

ダフ屋にとって仕入れ対象のチケット類は「イベントの恩恵を受けられる人の数に上限が存在する」という性格がある。そのため、通常の商品のように需要に対して供給が不足している場合に供給を増やすという対応が取りにくく、「供給不足・需要過剰」になりやすいという特徴がある。チケット類について「通常購入価格より高い値段でも買いたいという消費者が存在する」という状況下で「通常購入価格で購入して通常購入価格より高い値段で転売すれば利益が出る」という金銭的動機からダフ屋行為が行われる。人気チケット類をいち早く入手できる人を「チケットゲッター」と呼称することもある。

ダフ屋の対象となるチケット類のイベントの例としては以下のものがあり、人気があればあるほど対象となりやすい。

  • スポーツの試合
  • 音楽コンサート
  • 展示物
  • 遊具
  • 交通機関の指定席

ダフ屋の売買場所

ダフ屋の場所としては主に以下の場所があげられる。

チケット転売に付随する犯罪

ダフ屋からチケット類を(高額で)購入した者が、身分証明書を偽造して行使し、検挙や逮捕される事例が出ている。

購入者側ではなく、ダフ屋が不正入場に便宜を図る目的で身分証明書を偽造し、転売チケットの購入者に行使させる事例もある。

身分証明書は購入チケット類の名義の本人確認のために運営側が行う場合があるが、ここで偽造や変造をした身分証明書を提示すれば、有印公(私)文書偽造罪や同変造罪、同行使罪などの文書偽造の罪に問われる。

実例・法律の適用

インターネットオークション等

インターネットオークションや、チケット転売サイト等において、チケット類を出品する場合は、転売目的や営業性、反復継続性によっては各種法令の適用により検挙、逮捕される事例がある。

ネットオークションを利用したダフ屋行為の逮捕として、以下の例がある。インターネットオークションが「公衆の場」に該当するかどうかは定まった見解が存在しないため、迷惑防止条例の「転売目的でチケット類を公衆に対して発売する場所において購入すること」が適用されたものである。

  • 2002年・2009年に、三鷹の森ジブリ美術館のチケット類およびその引換券をコンビニエンスストアにおいて転売する目的でチケット類を大量に購入した人物がそれぞれ逮捕されている。
  • 2007年4月、アメリカの女性歌手であるビヨンセのコンサートチケット類を転売目的で購入した男が逮捕されている。
  • 2008年に、JRの人気夜行快速「ムーンライトながら」の1編成に3席しかない1人掛け席を転売する目的でチケット類を大量に購入していた人物が逮捕されている。
  • 2014年、宝塚歌劇の公演チケットなどを転売目的で購入した男が逮捕されている。
  • 2015年2月、JRの指定席券などを高値で転売した者が逮捕された。
  • 2016年、嵐のコンサートチケットをインターネット上で転売買していた女が逮捕(古物営業法の無許可営業による)
  • 2017年、乃木坂46のライブで、転売により譲り受けたチケットおよび偽造した身分証明書を提示した中学生教諭の男が検挙された。同様に、AKB撮影会に入場させる目的で学生証類を偽造し続けていた男が逮捕されている。
  • 2017年、スマートフォン利用して発行されるチケット類に対し、他人にスマートフォンを貸す目的でチケット類を購入した男が、詐欺罪で逮捕されている。

有料で販売されているチケット類に絡むダフ屋行為として取り締まられているが、整理券や予約券のように無料で受け取った場合は「不特定の人に転売する目的でチケット等の購入すること」の「チケット等の購入」に該当しないため「転売目的でチケット類を公衆に対して発売する場所において購入すること」で取り締まることができず、「公衆の場で、チケット類を他者に転売すること」に該当しない限りは取り締まりができないという問題がある。

  • 2005年日本国際博覧会では「サツキとメイの家」という『となりのトトロ』にちなんだ人気パビリオンの予約整理券(無料)が事前にコンビニエンスストアに設置されたLoppiなどのチケット販売機などから大量予約され、2005年4月分が予約開始から1時間で完売するなど僅かな時間で予約枠が満杯になり、これがインターネットオークション上で数千円 - 4万円で売買されたり、同オークションシステムを利用しているインターネット通販の販売店が商品に添付する景品として利用するという事態が発生した。この問題により一般の入場者は整理券の入手が困難となり、逆にパビリオンでは一日800人の予約枠一杯に占有されたチケット類が実際には利用されず来場者がまばらとなったため、急遽「転売し損ねて来ないであろう予約」を見越して1割ほど予約人数枠を拡大したり、一度に最大6人分まで予約可能としていたのを4人分に制限する・同万博の前売り入場券に記載された整理番号を添付しないと入手できなくするなどの方策を打ち出した。

これ以降に同様の例は度々似たようなケースもみられるようになっている。このような状況に対して、警視庁幹部筋は「新しく法律を作る必要がある」としている。

ただし、元々は無料券であっても金券ショップで購入して転売した場合は「転売目的でチケット類を公衆に対して発売する場所において購入すること」に該当して取り締まりの対象となる。元々は無料券だったダフ屋行為の逮捕としては以下の例がある。

  • 2011年5月に、大相撲の技量審査場所の無料入場券を転売する目的で金券ショップで無料券を大量に購入した人物が逮捕されている。

ダフ屋行為に対応するために、施設側が「チケットの転売を禁止する方針」を発表し、チケット購入に際して使用したクレジットカードなどで購入者と来場者が同じであることを確認するなどのダフ屋対策をしている例もある。

  1. 広辞苑および前田勇著「上方語源辞典」(1965)より。ショバ代が場所に、ゴト師が仕事に由来しているのと同じで、このような倒語は、多くが江戸時代の商人の間で広まった
  2. 「愚連隊にとどめを刺す―都で全国初の防止条例」『朝日新聞』1962年9月8日付朝刊
  3. ^ a b 産経新聞 2005年2月17日
  4. 価格等が物価統制令第九条ノ二にいわゆる不当に高価な額であるか否かは、取引当時若しくはその前後における同種又は類似の物資に対する法令告示等による統制価格或は公正な普通一般の取引界における市場価格等を参酌した社会経済維持の適正価格を標準として決定すべきであることは、当裁判所の判例とする所である。(昭和二五年(れ)第九七八号同年一〇月二六日第一小法廷判決、刑集四巻一〇号二一八九頁)而して多衆を相手とする劇場その他の興業場の入場券の適正価格は、入場券の正常な取引のなされるそれ等の窓口売出価格であると解すべきである。本件についてこれを見るに、被告人がいわゆる「ダフ屋」であり、仲間と共に営利の目的で販売するため、予め原判示劇場入場券を或る数買占めたのであり、このことが自ら、その窓口における入場券の売切れを促進する結果を招き、それがため窓口において入場券を求め得ない入場希望者と被告人との間に窓口売出価格一七〇円の右入場券が二〇〇円乃至三〇〇円で売買せられることゝなつたのであつて、被告人の原判示所為は、劇場入場券の正常な取引を阻害して、多衆を相手とする劇場入場券の価格を、正常な取引における価格に比し不当に高価ならしめるものというべきである。
  5. 期限なく行われるために一見は上限がないと思えるようなものであっても、チケット類の中身について月日や日時のレベルを求める場合は上限が事実上存在することにある。
  6. スポーツの試合が行われる競技施設、コンサート会場、イベント会場など
  7. 日経新聞,2005年2月17日