◇多汗症の治療法のうち、腋の下の汗腺を除去する手術について解説しています。また、ワキガとの関連についても述べています。

◆ 腋の下の多汗症(腋窩多汗症)とワキガ(腋窩臭症)

○ ワキガと腋の下の汗

ワキガ(腋臭)は専門的には腋窩臭症(エキカシュウショウ)、腋臭症(エキシュウショウ)などと呼ばれています。一方、腋の下の多汗症は腋窩多汗症(エキカタカンショウ)と呼ばれています。
まずは、両者の相違についてみておきたいと思います。

ワキガと多汗症

汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺がありますが、腋の下には、その両方が存在します。
ワキガはアポクリン腺から分泌される汗が要因となります。一方、多汗症の原因となっている汗はエクリン腺から分泌されます。

アポクリン腺の汗には炭水化物、タンパク質、アンモニアなどが多く含まれ、それが皮膚常在菌などの働きで化学分解されると、特殊な臭気を発します。
エクリン腺の汗の主成分は水分と塩分ですが、微量ながらアンモニアなどが含まれるため、運動などをして衣服が汗でびっしょりになると、「汗臭く」なります。

ワキガと普通の汗臭さとは、原因も臭いも別種のものですので、腋の下の臭いにもお悩みの方は、まずその違いを確認して区別しておく必要があります。ワキガの手術をしても、多汗症はほとんど改善されません。

ワキガについては、次のページをご覧ください。

  体臭、気になっていませんか(健康ネット

    ○「からだ」→「皮膚」とたどって下さい。
    ○エクリン腺とアポクリン腺の対比、アポクリン汗の性状や人種による比較、ワキガ治療・対策について詳しく述べられています。
  わきが(腋臭症)岡山市医師会「診療一口メモ」より)
 

エクリン腺とアポクリン腺

エクリン腺はほとんど全身の皮膚に分布しており、汗の排出孔が表皮に直接開口しています。主に体温を調節する働きをしています。
アポクリン腺は腋の下(腋窩)、まぶた、耳の孔(外耳道)、外陰部など一部の皮膚に限られてみられます。エクリン腺より皮膚の深い場所にあり(真皮とその下の皮下脂肪の間に存在する)、排出孔は、毛孔(体毛が生えてくる孔)の中に開口しています。

エクリン腺は生命維持に欠かせず、一生涯機能しますが、アポクリン腺は思春期頃から発達して機能し始め、老人になると停止します。女性の場合は、月経の度にアポクリン腺の機能が活発化するといわれています。

なお、エクリン腺とアポクリン腺の相違については、次のページにまとめられています。

  エクリン腺とアポクリン腺(ライオン)

◆ 腋の下の多汗症

腋の下の汗は温熱性発汗

腋の下の汗は、精神性発汗と温熱性発汗の両方があると、かつてこのホームページでも説明したことがありましたが、『汗の常識・非常識』(小川徳雄・著、講談社ブルーバックス)によるとそうではないことが指摘されています。

    「興奮したりすると、他の部位でまだ汗が現れていないときに手のひらや足のうらと同様に汗がドッと増えるので、『腋窩では温熱性発汗も精神性発汗も現れる』と記載してある専門書が多い。しかしあくまでも温熱性発汗で、それが早く現れるに過ぎない」(91ページ)

同書によりますと、温熱性発汗は全身ほぼ同時に出現しますが(立位、座位の場合)、腋の下は他の部位よりずっと早く温熱性発汗が始まるようです。つまり、温熱性発汗が出現する体温が低いということになります。ただし、その後体温が上がっていっても汗の増え方は少ないようです。

腋の下の多汗症について

上のことを踏まえますと、腋の下の多汗症については、一つ次のことが言えることになります。

  • 腋の下の多汗症は、普通の人よりもいっそう早く温熱性発汗が始まることによる。つまり、温熱性発汗が出現する体温が普通の人よりも低いために、発汗頻度が高くなる。
  • 体温上昇に連れて汗も増えていくが、汗の出るスタート地点が早いために普通の人が汗をかき始めるような体温でも、すでに多量の発汗を生じている。

しかし、多汗症ということについては、さらにいくつか考え合わせなければならないことがあると思います。

  • まず、発汗量の問題です。温熱性発汗が早く生じるだけでなく、発汗量自体も多い可能性があります。少なくとも、普通の人がピーク時に発汗する量が、常に出続けているような状態であるといえます。
  • また、汗の増え方も、体温上昇に連れて徐々に増えていくのではなく、出始めると一気に多量に発汗し、その後も汗がなかなか止まらない、ということがいえます。
    例えば、冬に室内で発汗した後、寒い屋外に出た場合、身体が震えながらも汗は止まらないという事態が起こります。
    そしてこのような発汗パターンは、手のひら・足の裏のそれと一致しており、多汗症という側面からみた場合、温熱性発汗というより精神性発汗の汗の出方を示しているといえます。これは温熱性と精神性の発汗の相互干渉によるものなのでしょうか。

いずれにせよ、温熱性の刺激(体温上昇)に敏感に反応する腋の下であることは、確かでしょう。

◆ 形成外科、美容外科のワキガ・多汗症治療

◆胸部交感神経遮断術の中でも書きましたが、「腋の下のみの多汗症」の場合は、ETSはあまり適切な選択とは言えません。
そこで、腋の下の汗腺を除去する手術をお考えになる方もいらっしゃると思います。
また、美容外科の広告で「ワキガ・多汗症」の文字を目にしたことのある方も多いでしょう。
その辺のことも踏まえて、腋の下の多汗症治療法である汗腺切除について解説します。

ワキガ治療と多汗症治療

美容外科では、ワキガ治療も多汗症治療も行われていますが、手術治療については注意しておかなければいけないことがあります。

腋の下にはアポクリン腺とエクリン腺の両方が存在しており、すでに述べたように前者がワキガ、後者が多汗症に関わってきます。

美容外科などで行われているワキガの外科的治療は、臭いの元となる腋の下のアポクリン汗腺を切除するというものですが、多汗症治療の場合も美容外科では基本的に同じ方法をとります。この場合はアポクリン汗腺だけでなく、エクリン汗腺を含むより広範な部位を切除することになります。

ワキガの人には多汗を伴っていることも多いらしく、両方を治療する場合にアポクリン汗腺だけでなく、多汗の範囲に応じてエクリン汗腺の切除も行われているようです。言わばワキガ治療の延長としての多汗症治療と考えることができると思います。ただ、ワキガに伴う多汗の場合は、そのほとんどが多少湿る程度の比較的軽度のものではないかと思います。

汗腺切除によって、代償性発汗が生じることはありません。一方、ETSは発汗をつかさどる交感神経を遮断する手術であり、代償性発汗はこの場合に生じます。
【ご注意】
汗腺切除によって、上半身に汗をかかなくなり、下半身に大量の汗をかくようになって悩んでいるという報告を受けました(2002/7/17)。
(※当サイトでは、汗腺切除とETSは、治療法も発汗抑制機序も異なると考えられるので、混乱を避けるために、代償性発汗という名称はETSの場合にのみ用いるようにしています)
上記のように、汗腺切除によって、代償性発汗と似た副作用が生じる場合もあるということに、ご注意願いたいと思います。

ワキガ治療と汗腺切除の手術方式

形成外科の先生から頂いた解説です。参考になさってください。

わきがの予防と治療


平成11年8月1日  形成外科医師

 いわゆる、「わきが」といわれる腋の臭いはどうしておこるのでしょうか?汗には体温を下げる作用がある暑いときにかく汗と、冷や汗のように精神的に緊張したときに出る汗があります。わきの下はどちらの汗もかきますが、特に精神的な影響を受けて発汗する"アポクリン腺"という組織がわきがの人では発達していることがわかっています。アポクリン腺から出る汗は少量ですが体の表面の細菌によって分解されにおいを発生します。

<予防方法>
 汗のにおいを予防するには、つねに清潔を保ち悪臭を作り出す細菌をふやさないことが大切です。そのためには、まめに入浴したり汗をかいたらふきとることなどあたりまえのことですが、外出先では消毒用アルコールをコットンにしみこませたものを携帯し、これで時々拭くと効果的です。また汗を抑えるスプレーは一時的には効果がありますが、時間がたって付け直すときにはきれいにふき取ってから新たに付けないと、細菌が繁殖してかえって不潔になりやすいので注意しましょう。
 消毒用アルコールは薬局で安く手に入ります。または、スーパーマーケットなどで手をきれいにするためのアルコールがあり、油分が含まれているので肌が荒れにくいと思います。

<根本的な治療>
 現在のところ、汗腺を取り除く手術が最も効果のある治療法です。

剪除法
 わきの下の目立たないところに切開を入れ皮膚の裏側から汗の腺をていねいに取り除きます。
 わきの下の皮膚は良く動くところなので、手術後約1週間はわきの下をガーゼで圧迫し安静を保ちます。その後1週間でほぼ普通の生活ができますが、激しいスポーツは1ヵ月位は休みます。
 この方法でほとんど気にならない程度に治すことができます。

吸引法
 吸引法は小さな切開から、細い管で、汗の腺を削り、吸いとる方法です。汗の腺の取れ方は、剪除法と比較するとやや少ないですが、最大のメリットはきずあとがほとんど目立たなくなることです。

 その他、掻破法、超音波吸引法、内視鏡手術など多くの方法が発表されています。腋臭症の治療は、方法によっては健康保険が使えるところもあります。
 先ず、<予防方法>で手入れして、それでも気になって悩みが強ければ、あまり心配せず形成外科か皮膚科で相談するとよいでしょう。緊急を要する手術ではないので、手術を受けるときは、あまり急いで決めず、良く検討し、例えばかかりつけの医師に紹介してもらうなど、安心してかかれる良い病院を選ぶことが大切です。


ちなみに、軽いワキガにお悩みの場合は、「HミッテルS」という塗り薬である程度改善された方もおられるようです。

美容外科・形成外科のワキガ・多汗症治療については、他に下記のページなどを参照してください。

汗腺切除の効果

これまでの伝言板の投稿を見る限りでは、エクリン汗腺切除による腋の下の多汗治療の効果はあまりよいものとは言えません。
若干の改善がみられた場合でも、持続せず再発することが多いようです。
理由の一つとして、エクリン汗腺を完全に除去することが難しいことが考えられます。また、再発は汗腺が復活するためと思われます。

美容外科では「ワキガ・多汗症治療」と謳われていますが、あくまでもワキガ治療の延長としての多汗症治療と考えておく方がよいかもしれません。

病院の選び方

腋の多汗症については、高い費用を払ってあまり適切ではない治療を受けてしまわれた方もいらっしゃると思います。また、ワキガの治療をすれば、多汗症も治るかのように思う人もいらっしゃるようですが、多汗症は治りません。
病院によっては、多汗症に対する理解が薄く、エクリン汗腺の切除自体が的確に行われない場合も見受けられます。ご注意ください。

なお、医療法で病院や医院は広告が規制されており、場所や電話番号などは広告できますが、どんな治療を行っているかについては新聞・雑誌・テレビなどで出すことはできません。ですから法律を守っている病医院は、週刊誌などに派手な広告は出していません。

ワキガ・多汗症治療は普通の美容のための手術とは違い、方法によっては保険が使えます。美容外科を標榜している病院よりも、まず形成外科に相談に行き、保険適応の手術を受けるのもよい方法だと思います。

美容外科に関する参考ホームページです。
 美容外科WEB

    [美容外科Q&A] [体験者の声]など。美容外科でワキガや多汗症治療を受けた人の体験談を読むことができます。