フォームドミルクとは
牛乳にエスプレッソマシンから出るスチーム(蒸気)を入れることで、「温めながら泡立て」てカフェラテやカプチーノに最適な状態を作り出したものがフォームドミルクです。
スチームドミルクという言い方もありますが、人によってニュアンスが違い、両者の間に明確な定義はありません。ただ、傾向としてスチームドミルクが単に「スチームによって温められたミルク」を指すことが多いのに対し、フォームドミルクは、スチーム等の方法(ミルクフローサーを含む)によって適切な温度に泡立てられた、「ミルクと気泡(フォーム)が混じった状態」を指すことが多く、カフェラテやカプチーノに使用される事が圧倒的に多いのは後者の表現です。
「バブル(泡)」ではなくて「フォーム(細かい気泡が集まった状態)」の言葉が指すとおり、いかに細かくツヤのあるミルクフォームを作ることが出来るかどうかが、美味しいカフェラテやカプチーノ、ひいては美しいラテアートを描くことが出来るかどうかの最大の鍵となります。
準備としては、まず使用するミルクと牛乳は冷蔵庫で冷やしておきます。
ミルクのスチーム(泡立て)は、「①空気を入れる→②攪拌させて気泡を潰し細かくする」という流れで行うのですが、この時、出来るだけ①を短時間で済ませて②の時間を長く取ることが出来ると、気泡がより細かいフォームドミルクを作ることが出来ます。スチーム開始時の温度が高いと、最終的な目標温度(ゴール)まで早く到達してしまうため、②の時間が短くなってしまいます。ですから、ミルクとピッチャーは最初(スタート)時の温度を下げるために冷やしておく方がいいということです。もう一点、こちらは特にピッチャーに対してより言えることですが、スタート時の温度がバラバラだと感覚がつかみにくくなってしまいますので、常に同じリズムやタイミングでスチームが出来るようにコンディションを一定に保つためという理由もあります。
ミルクのスチームはとても繊細な感覚によって行われる作業です。技術がないうちは特に、技術以外のところで押さえるべきポイントはきちんと押さえておきましょう。
ちなみにミルクですが、乳脂肪分3.5%~4%の「成分無調整乳」を用意しましょう(種類別名称の表示は「牛乳」です)。「乳飲料」や「低脂肪乳」とかではダメということです。
出来ないわけではないのですが、乳脂肪分が低すぎると温めた時のミルクの粘度が上がりにくく、とろりとしたフォームドミルクを作りにくくなります。これは、フォームドミルクを作るのに、牛乳の脂肪分に含まれるタンパク質の熱変性の性質を利用するためです。反対に乳脂肪分が高すぎると、ミルクの粘度は出しやすいですが、ミルクの味(コク)の主張が強くなりすぎて、エスプレッソとの調和を壊してしまいます。
結果として、3.5~4%ぐらいが適正な範囲と言えます。
その他としては、ミルクの鮮度もわりと重要な要素です。できる限り新鮮な牛乳を準備し、開封後は速やかに使い切るようにしましょう。
ミルクピッチャーに関しては、こちらのページをご参照ください。
スチームのやり方
ミルクのスチームは、上の項目でも述べていますが「空気を入れる→攪拌させて気泡を潰し、細かくする」という流れで進みます。
① まず、冷やしたピッチャーに冷えたミルクを注ぎます。この時のミルクの量は最低でピッチャー容量の1/3、最高で1/2です。それ以上でも以下でも、スチームがやりづらくなります。
例えばカプチーノ1杯を作る際、20ozのピッチャーに1/2も入れると、明らかにミルクが余ってしまいます。このあたりは、作りたいミルクの量に合わせたサイズのピッチャーを用意すべきでしょう。
(最大でこのあたりになるはずです)
ですが、スチームに慣れない頃は、ある程度の量があったほうが作りやすいものです。なぜなら、量があった方がミルクが目標温度まで上がるのに時間がかかるため、その分落ち着いて作業ができるからです。
最初はある程度の量でミルクの泡立てを行って感覚をつかみ、慣れてきたら徐々に必要な分だけを泡立てられるように調整していくといいでしょう。
② ミルクの準備が出来たら、スチームノズルを軽く回して空吹かしを行います。これは、前回のスチーム時に残った水蒸気がノズルの中で結露して水滴になっているため、そのままスチームを行ってしまうと水がミルクの中に入ってしまうためです。
ミルクの中に水が入るということは、すなわち加水されてミルクの乳脂肪分が低下するということですから、せっかく乳脂肪分3.5以上の牛乳を用意しても、その前提が変わってしまうことになります。必ず空吹かしをするクセをつけるようにしましょう。
③ 空吹かしを行ったら、スチームノズルをミルクの中に1~2cm「沈めてから」スチームを開きます。(スチームを出してからノズルをミルクに沈めようとすると飛び散ります)
ピッチャーの位置を徐々に下げて、「ミルクの液面とノズルの先が付くか付かないか」のポジションをキープします。最初は「キーン」という音がし(パワーのあるマシンの場合)、その後「キュルキュル、チチチ」という音と共にミルクが空気を取り込んで体積(ボリューム)が増えていきます。
ここでミルク表面とノズルの先に間隔が開きすぎてしまうと、そこから大きな泡を取り込んでしまうことになり、粗い泡のフォームドミルクになってしまいます。
この「ミルク液面とノズルの先の間隔調整ミス」が、スチーム初心者の方が最も陥りやすいミルクフォームの失敗原因 No.1 です。
ピッチャーを下げるスピードが早すぎれば、液面とノズル先端の間隔が開いてしまい泡が粗くなります。
ピッチャーを下げるスピードが遅すぎれば、空気が入らずミルクのボリューム自体が増えません。
必ずミルク液面とノズルの先は「付くかつかないかのギリギリ」を保てるスピードでピッチャーを下げるようにしましょう。
空気を取り込んで、カフェラテであれば最初のミルクの体積の1.1倍~1.2倍。カプチーノであれば1.4倍程度まで増やしたところで、ノズルの先をミルクの中に1cmほど沈めます。
この「空気を取り込んでミルクをボリュームアップさせる」作業は、その次の「攪拌」にできる限り長い時間を取るために、5~7秒程度(業務用マシンの場合)の短時間のうちに行います。温度で言うと、だいたい40度に到達するまでには完了させたい作業です。
マシンのパワーやクセ、やノズルの角度、ノズルの先端形状、ミルクの量やピッチャーによって「空気を取り込みやすい位置や角度」があると思いますので、出来だけスムーズにミルクを取り込める位置を見付けてください。
④ ミルクのボリュームアップを行いノズルをミルクの中に沈めたら、ここから先は一切空気を入れる作業は行いません。絶対にノズルの先をミルクから出さず、位置を固定し、ただ「ミルクの中に綺麗な対流を起こして撹拌し、泡を潰して細かくしていく」作業です。
空気を入れないので、チチチといった音はしません。「シュー…」という蒸気の出る音がするだけです。
この時のスチームバルブは全開に開きます。「あまりにマシンのパワーが強すぎる」という場合を除いて基本的に全開です。蒸気圧が弱いと対流も弱くなり、泡がきちんと潰れず、きめ細かいフォームドミルクにならない為です。ボリュームアップ時は全開で回す人とそうでない人がいますが、この攪拌時は全開にした方が綺麗なフォームが出来ます。
この時のポジションは、「ピッチャーの直径を3等分した円周上のどこか」がやりやすいと思います。
(この赤い円周上のどこかです。マシンやピッチャーに合わせてミルクが綺麗に回る位置を見つけましょう。)
このあたりに、出来るだけ「ノズルを立てて」挿入することで、「縦に近い斜めのスムーズなミルクの回転」を生み出すことが出来ると、ミルクが攪拌されて泡が細かくなっていきます。
ノズル角度を寝かしすぎてしまうと、ミルクは横向きにぐるぐる回るだけで、泡が潰れて(細かくなって)いきません。ミルクをピッチャーの底に当てる対流で泡を潰していく感覚です。
⑤ ピッチャーの持ち手と反対側の手でミルクピッチャーを支えながら、手のひらの感覚で温度をはかっていきます。
「熱っ」となったぐらいが適温です。適温になったところでスチームを止め、完全に蒸気が止まってからピッチャーを抜きます。
スチーム終了時のミルクのボリュームは、最初の状態に比べてカフェラテなら1.2倍。カプチーノなら1.4倍前後です。
この、「適温」はバリスタの好みや客層に合わせて変化はしますが「60度前後」で、より具体的に数字を出すと、最低が55度、最高で65度です。
この温度帯が、ミルクの甘みを最も感じやすい温度だからです。
55度を超えないと、ミルクの甘味が十分に引き出されず、フォームの粘度も出てこずに「とろり」としたミルクになりません。
65度を超えてしまうと、ミルクの風味が飛んでしまうと同時に、泡が粗くなっていき、舌触りも悪いものになってしまいます。目一杯まで上げたとしても、70度が限界でしょう。
コーヒーに関しては日本人は熱いものを好む傾向がありますので(特にうちの店の立地はその傾向が強い)僕は63度で作っていますが、カプチーノやカフェラテというものは基本的に出来てすぐに口をつけられる温度で出すことは最低条件だと思います。というか美味しいフォームドミルクを作れば必然的にそうなります。
スチームの練習にあたって、最初の段階では「必ず温度計を使って温度を測り、体に温度感覚を染み込ませる」ように練習しましょう。
(温度や対流の動きを確認するだけの練習であれば、ミルクを使わず水でも可能です)
「65度以上まで上げてしまう『オーバースチーム』によって、ミルクの泡が荒くなってしまう」又は「温度が低すぎてミルクの粘度(とろみ)が出ない」という温度のミスが、スチーム初心者の方が最も陥りやすいミルクフォームの失敗原因 No.2です。
試しにわざとオーバースチームを起こしてみると、ボソボソして大きな泡が出来ていくのが分かると思います。
繰り返し練習すれば、人間の感覚というものは不思議なもので、温度計無しで何度やっても誤差±1度以内で収まるようになります。
⑥ ミルクのスチームが終わったら、ノズルの先端についたミルクを布巾できれいにして、再度空吹かしを行います。
スチーム終了時にノズルがミルクを吸ってしまうので、ノズルの中に残ったミルクがノズルを劣化させてしまったり、長い時間放置すればミルクが腐敗し衛生状態が悪くなります。
必ず空吹かしを行うことで、ノズルの中のミルクを出しましょう。
その後、ピッチャーをトントンと作業台に打ち付けて大きな泡を潰し、クルクルと回転させて、ピッチャー内のミルクと泡を空気に触れさせると共に、均一になじませます。
こうすることでガラスのような光沢を持ち、視認出来ないぐらい細かい泡の、シルクのように きめ細かいミルクフォームが完成します。
スチームが上手く出来ないという人の中には、「この作業で泡を潰して細かくするんだ!」とばかりに頑張ってトントン・クルクルしている人もいるのですが、ミルクのスチーミングは蒸気を止めた段階で8割方終了しています。上手くスチームが出来れば、蒸気を止めた時点でピッチャーの中に大きな泡はほとんど存在していませんし、そのまま注いでもラテアートが描けるほどに、十分細かいフォームになっています。最後の「トントン・クルクル」はあくまでも最後の仕上げと位置づけ、その前の「スチームでの攪拌」に意識を集中するように心がけましょう。
ミルクスチームの動画を掲載しておきますので、参考にご覧下さい。