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まえがき:本文は暁美ほむらのループの一幕を題材とした短編の一発ものです。また、週刊少年漫画レベルと自分では判断したためタグ付けこそしていませんが、人によっては「残酷な描写」と思われる可能性のある描写が存在しますので、そう言った描写が苦手な方はここで戻るボタンを押していただけると幸いです。
魔法少女まどか☆マギカ ほむらVSまどか 魔法少女大決戦! さよなら永遠の友達―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
人を見かけで判断するな、と人は言う
人を見かけで判断しない者は愚か者だ、と人は言う
さて、今宵の王子様は一体どちらで判断すべきなのでしょう?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
良く晴れた、三日月の綺麗な深夜、既に歩く人もいなくなった公園。
私―暁美ほむら―は地面に転がる“ソレ”を取り上げる。
黒く、まるで感情という名の色を纏めて混ぜ込んだような濁った色をした宝石。ソウルジェム、魔法少女が魔法少女たる所以とも言える“ソレ”は、今私の手の中でしだいにひびが刻まれて、砕けようとしている。まるで、内包した感情が行き場を失い、宝石を砕いて外に逃げようとしているかのようにも見える。
「そ…れを……返…………せ…」
私の足元で声がする。美樹さやか、このソウルジェムの持ち主。いや、持ち主というのは少し語弊がある。このソウルジェムこそが彼女自身であり、魂の器であると言える。故に人としての肉体はソウルジェムである彼女が無意識に操作する端末である、と言った方が正しい。
魂というソフトを肉体というハードから切り離し、ソウルジェムという宝石のハードに移し分別した状態、と例えるのが近いかもしれない。
「ソウ…ジェ………ム…か…えせ……」
美樹さやかは既に息も絶え絶えの状態にある。彼女は私との交戦以前からソウルジェムを限界近くにまで酷使していた。自身の人間関係の縺 れ、魔法少女の理想と真実の違いによる苦悩、ソウルジェムを省みない無茶な戦闘、そのどれもがソウルジェムを濁らせるには十分な要因足りえる。
彼女は、魔女との戦いに偶然居合わせた私に対し、半ば当てつけのように戦いを挑んできた。見境のない攻撃を繰り返す彼女に対して、私は挑発し、その攻撃を捌くだけでよかった。酷使されたソウルジェムはすぐに限界に達した。
魔法少女への変身は解け、その場に崩れ落ちる美樹さやか。彼女の本体とも言えるソウルジェムを庇う力ももうないだろう。
このまま放っておくと彼女のソウルジェムは砕け、グリーフシードと化し、魔女という名の絶望の怪物を生み出す。
魔女を倒すことにより亡骸のようにその場に残るグリーフシードにはソウルジェムの穢れを吸い取り劣化から回復させる力がある。私のグリーフシードのストックは先ほど倒した魔女から回収した一つだけ。魔女と化した美樹さやかを倒しソウルジェム浄化の為のグリーフシードを手に入れるのも一つの手ではあるが、既に今日一度戦った私にとって魔女との連戦は避けたいのも事実。
美樹さやかのソウルジェムから魔女結界の広がる兆候が見え始める。決断までの猶予は少ない。
手の中にあるソウルジェムに対して軽く力を込める。完全にグリーフシードになる前に破壊してしまえば魔女は生まれない。
『まどかの友達を見殺しにしていいのか』という躊躇が脳裏をよぎる。
しかし、すぐさまこの世界の美樹さやかの行動を思い出す。恋愛の縺れ、魔法少女の真実、自分勝手な絶望、それらから端を発した彼女の行動をどのように鑑 みても、そのどれもが、今美樹さやかを救っても無駄だと、また同じようなことをやるだけだと、私の躊躇を否定する。
「…か…え……」
ソウルジェムに先ほど以上の力を加える。宝石は割れ、私の手を傷つける。
「………………」
微かに動いていた美樹さやかの人としての肉体が完全に停止する。
罪悪感が全くないわけではない。しかし、これでまどかを魔法少女へと導く要因が一つ減った、と考えるとその罪悪感も次第に薄れていく。親しい者からの誘いは魔法少女への一歩を踏み出すのに大きな助力となる。それを絶てたことをよしとしましょう。
「……」
すぐにこの場から移動しなくてはならない。既に人気がなくなったからといって絶対に人が来ないわけではない。魔女空間以外で変身姿を見られるのはよろしくない。特に今は美樹さやかの死体がある。これと一緒にいるところを見られたものならば面倒なことになりかねない。
ザッ、という砂にバックが落ちたような音が聞こえる。私はそちらの方向へ視線を向ける。ただの見知らぬ通行人ならば時間停止の魔法で急ぎ逃げるまで。よほどでなければ見間違いか何かだと思うだろう。見知らぬ通行人ならば私が一瞬にして消えたようにしか見えないのだから。
そう“見知らぬ通行人”ならばである。
「うそ……さやかちゃん…なんで……」
「まどか…」
鹿目まどか。私の最も大切な人にして守るべき対象。私が幾度も幾度も時間を遡行 してまで救いたい人。そして、この現場を最も見られたくない人。
「どうやら間に合わなかったみたいだね」
まどかとは別の、もう一つの声がする。まどかの影から四足の白い小動物が出てくる。いや、外見だけでいえば動物よりぬいぐるみの方が近い。キュゥべえ、今の声の主であり、人間の願いを一つだけ叶えることによりその人間を魔法少女へと変化させ、戦わせ、絶望させ、そして、その絶望から生まれるエネルギーを得ることを目的とした存在。
「すまなかった、まどか。もう少し早くボクが君に伝えることが出来れば、君の言葉でこの決着を回避できたかもしれないのに」
「そんな…どうして……なんでこんなことに……さやかちゃんは…」
まどかが大粒の涙を流してその場に立ちすくむ。弁解の言葉が紡げない。まどかが悲しみに暮れて心が折れそうになる場面は今までの世界でもあったことだが、何度直面しても動揺がぬぐえない。
「気にすることはないよ、まどか。これはきみのせいじゃないんだ。酷い言い方をするかもしれないがこれは魔法少女にはありふれた行為の一つなんだよ」
「……どういうことなのキュゥべえ」
「魔法少女が魔法少女を殺すケースは今までなかったわけじゃないんだ。さまざまな時代、世界で行われてきたことなんだよ。とはいえ、その殺害理由自体は、今までの経験からの推測に過ぎないけど、ほとんどは一致している。それは『グリーフシードの奪い合い』だよ。グリーフシードの枯渇は自身の生命活動の危機、ひいては心的平穏の危機にも繋がるからね。邪魔な存在は排除してしまえばいい、そういうことになるね」
「……さやかちゃんもそのせいで死んだっていうの」
「さぁ?それはぼくにはわからないよ。僕たちはあくまで暁美ほむらが美樹さやかにとどめを指すところしか見ていないからね」
「……」
頭が冷えてくる。それと同時にキュゥべえの意図も理解できた。
あれはまどかに美樹さやかの蘇生を願わせることによって魔法少女の『契約』を交わすつもりね。気にすることはない、などと言われてまどかはそのまま気にしないような子じゃない。むしろ言われるほどに気にかけてしまう。インキュベーターめ、『グリーフシードの奪い合い』なんて適当な方便まで使って。
時間を停止させてまどかをキュゥべえから引き離すために、私は私の左腕に付いた盾に一瞬だけ視線を移し、意識する。まどかへの説明は後回しにする。
「動かないで!!」
まどかの叫び声。思わず意識が乱され、時間停止の魔法が中断される。まどかは私の能力を知らないはずなのに。
まどかの言葉によって一瞬動きを止めてしまった。それが致命的な結果となった。
「キュゥべえ。私を魔法少女にして。願いは……」
時間停止は……間に合わない。
「やめて!だめ!まどかああああ!!」
私は静止の言葉を叫ぶ。
「私をどんな魔法少女よりも、どんな魔女よりも強い、絶対に強い魔法少女にして!!」
まどかの言葉と共に、まどかを中心とした辺り一帯に閃光と衝撃が広がる。私はその閃光と衝撃に対し反射的に盾を構え、目を薄めて防御した。
瞬間、膨大なエネルギーの矢が私の髪を掠めた。私の後ろに鎮座していた公園のオブジェが音を立てて崩れ落ちる。
まどかが……
まどかが私を撃った…
閃光が完全に消える。眼前には魔法少女へと変身し弓を構えるまどかの姿。
「待って。話を聞いてまどか。これには理由が…」
瞬時に私の足元へ威嚇射撃。
「もう…嫌だよね、こんなの…」
まどかの攻撃が開始される。まどかはその場から動かずエネルギー矢を射続ける。エネルギー矢はそれぞれ拡散、誘導、炸裂し私を攻撃する。私は回避か防御に専念させられる。それだけの攻撃密度だ。時間停止の為に集中する隙がない。
攻撃の最中 まどかが絞り出すかのように言葉をつむぎ始める。
「……さやかちゃんはね。ただちょっと失敗しちゃっただけなの。あれでさやかちゃんってね、少し引っ込み思案なところがあるの。大事なことほど少し後ろ髪を引かれただけで遠慮しちゃうの。私は、そこは引かなくてもいいのに、ってよく思うんだけどね。だから、上条君とのこともそう。さやかちゃんが遠慮しちゃったから上条君は仁美ちゃんとくっついちゃった。それが別に悪いことってわけじゃないんだけどね。私も二人を応援したいし。それだけなら酷い言い方だけど普通の失恋だから」
「まどか!」
まどかの攻撃の隙を見つけ、叫ぶ。同時に盾に閉まってあるハンドガンを取りだし、構える。打つ気はない。まどかのことを撃ちたくない。
まどかの攻撃が止む。互いに構えて動きを止める。
「ただ、さやかちゃんの失恋は普通じゃなかった。魔法少女になっちゃたから。そのことに負い目感じちゃったから。さやかちゃんにはどうしようもできなくなっちゃった。今まで頑張ってきたのに。マミさんもそう。どんなに辛いことがあっても、どんなに悲しいことがあっても、明るく、まるでヒーローのように一人で戦い続けてきた。ずっと一人で。誰でも助けを呼びたくなるような状態でも、明るく皆のための未来を願って戦い続けていた。でも、そのマミさんももういない。魔法少女の真実を知って、塞ぎこんで家からも出てきてくれない。…でも、すごいよね。こんな真実を知っても、絶望に耐えて魔女にならないなんて、流石はマミさんだよ。私にはとても真似できないよ…」
言葉の最後で、まどかは微かに私に笑みを見せてくれた。乾いた笑顔。ある意味で一番見たくないまどかの笑顔。
「…希望の未来を願ったのに、そのせいで絶望させられるなんて間違ってる」
「なら、まどかは何をするつもりなの。そんな姿になってまで」
もしかしたら、もしかしたら、その願い次第ではまどかと共にワルプルギスの夜と戦い、勝利して、一時の平穏を得られるかもしれない。そんな私の本来の目的、約束を無視した浮ついた希望の情景が頭を過 る。が、そんな淡い希望をまどかの言葉が打ち砕く。
まどかは弓をおろし、明確たる意志を持った表情で私に告げる。
「全ての魔女と魔法少女は――私が倒す!」
その瞬間、時間が止まる。比喩表現ではない、私が実際に止めた。まどかが弓をおろしたことが時間停止の為に必要な隙となった。まどかの隙を見て時を止める。そう決めていたからこそ成功した時間停止。
しかし……停止した時間の中で私の思考は、それこそ比喩ではなく、電池の切れた時計のように停止していた。まどかの言葉の真意をすぐに理解できなかったからだ。ただ一つだけ“まどかが私を倒す”それだけは理解できた。
止まった時間のなか逃げるように私はその場から立ち去った。
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あの公園からやや離れた並木道。私はそこのベンチに座って美樹さやかと戦う前に戦った魔女との戦闘で消耗した弾薬をマガジンに込めている。何か手を動かしてないと落ち着かない。
思えば初めてのことだ。私がまどかに言葉ではなく実際の攻撃で糾弾されるのは。
まどかに向けられる矢は、心底、胸が冷える。こんなに心揺さぶられるとは思わなかった。
「…私は、一体何をやっているの」
言葉に出してしまった。瞬間、手に持っていたマガジンを投げ出し自分の体を両の手で抱く。
考えるな。考えるな。考えるな。考えるな。自分の行動の意味、それは私が考えてはいけないことだ。思考を無理やり切り替える。
私の時間遡行能力は厳密には正しく時間遡行している能力ではない。遡行した先は私がそれまで生きてきた過去とは別のものになる。私の時間遡行能力は、正しくはある時点の―私の場合は、私が見滝原中学に転校する十日前の―私の生きてきた世界に極めて似ているが、しかし、確実に違うところのある別の世界、パラレルワールドに存在する私に、この私の意識と魔法少女として能力を飛ばす魔法だ。
だから、パラレルワールドであるが故にこの世界の“まどか”は、私が初めて出会った“まどか”とも、私がかつて約束を交わした“まどか”とも別の存在ということになる。
それでも、私は今までは気に留めていなかった。私がキュゥべえに願った願いは“まどかとやり直すこと”。時を操る能力はまどかとやり直したいという思いから得た能力でしかない。願いの真ん中にはまどかがいる。だからこそかどんなに時間を遡行してもまどか自身の変化はそれほど大きいものではなかった。パラレルワールドは、それこそ私が何をしようが関係なく、例えばまどかの命を狙う美国織莉子のような魔法少女が何の前触れもなくいきなり見滝原に現れるように、その世界のキャストは世界世界で様変わりして、世界ごとの揺らぎを私に見せつけてくるのにもかかわらずである。
だから、まどかが私を撃つなんて考えなかった。
だから、まどかが私を撃つなんて考えたくもなかった。
そんなことはあり得ないと思っていた。
「やれやれ、おつかれみたいだね」
声の方に顔を向ける。身を構える余裕すらない。
「インキュベーター」
「君のそんな顔は初めて見たよ」
いつの間にか現れたキュゥべえは私の座るベンチの空いたスペースに悠々と飛び乗る。
「いつも表情を崩さない君でもそんな顔をすることがあるんだね。なるほど、君の行動から想定はしていたけど、それほどまでに君にとってあの鹿目まどかという存在は大事なわけか」
「……あなたの目的は達せられたでしょう。失せなさい」
「そうだね。僕の目的は達成した。鹿目まどかは魔法少女となった。後は彼女が絶望して魔女になればこの世界は救われる」
「…あなたにとっての世界は、でしょう」
まどかが魔女となった世界を思い出す。その世界のキュゥべえ曰く、魔女となったまどかによって地球は滅ぶことになる。
体を抱いていた両腕を離し、左腕の盾をさする。
そう、私はこの能力で何度でもやり直せる。この世界もまたなかったことにして、一からやり直せば、きっと。
「それでいいのかい、きみは」
「……どういうこと?」
キュゥべえはやれやれといった風に首を振り、語り始める。
「君の行動から、君の能力が時間の停止及び一定期間限定の遡行能力だということは推察がついている。毎度の君の急な出現と消失、君の戦闘方法から時間停止能力の所有。加えて、君の身辺を調べた結果、かつての君は病弱で気弱な少女だったはずなのに、ある時点から急に行動的になり、性格もまるで別人のようになった。瞬時に変わった、というと言うより別人になった、と言う方が早いだろう。後は君が時間操作能力を持つ魔法少女であるということからの推察だよ。君はその時点のこの世界の君に遡行してきたんだ。まちがっているかい?」
「……答える気はないわ」
時間遡行能力に起点と終点が定められている、ということに言及がないことを除けば、概ね合っている。が、素直に答える気はない。
「それで、私の能力が、あなたの言う“それでいい”と何の関係があるのかしら?」
「簡単な話だよ。君の時間遡行能力、そして、鹿目まどかへの極度の執着から逆算すれば、君のその願いは鹿目まどかの為の物だということが分かる。しかし、その君がこの世界の鹿目まどかを放っておいていいのかい。この世界の鹿目まどかはきっとワルプルギスの夜と戦うことになるだろう。自分しかまともに戦える魔法少女はいない、そう考えてね。その結果がどういうことになるかは数多の世界を旅してきた君は知っているんじゃないかな。君はそれでいいのかい?」
「……」
考えていなかった。そう、さっきの私はまどかを見捨てようとした。これは今までの私ではなかったこと。まどかを助けられなかったことならある。数え切れないほどある。だが、この世界はまだ違う。まだ、まどかは生きている。敵対こそしてしまったが生きている。今この世界のまどかを諦めて、時間遡行を考えるということはこの世界のまどかを見捨てることに等しい。
まどかに撃たれたからといってどうかしていた。私は決めていたはずだ、まどかを救うと。
「まさか、あなたに励まされることになるとは思わなかったわ」
「そうかい。それなら良かったよ。じゃあもう一つ君にヒントをあげるよ。彼女の願いは絶望から生まれたものだ。夢をかなえたい、何かを良くしたい、といった明るい未来を願う希望ではなくて、間違っているのは嫌だ、認めたくない、逃げたい、という絶望の願いだ。願いの先には何もない」
「…どういう意味?」
「鹿目まどかの戦いは絶望と共にあるということだよ。ただでさえ魔力を使えばソウルジェムは穢れるというのに、絶望しながらの戦闘行為となるとその進行の度合いは美樹さやかの比じゃないだろうね」
「何故わざわざ私にそのことを?」
「そうだね。僕の良心と言ったところで君はそれを信用しないだろう」
「ええ。そのとおりよ」
それに、もうゆっくりと話を聞いていられる状況じゃなくなるみたいね。
靴音が近づいてくる。それから遅れて、少しずつ微かに荒れた息遣いが聞こえてくる。うっすらと見え始めた人影が月明かりに照らされて次第にその姿に色を帯びさせていく。
「やっと見つけたよ。ほむらちゃん」
制服姿のまどか。笑顔のまどか。さっき見たような乾いた笑顔ではない。私の好きな、それこそまどかをまどかたらしめている優しい笑顔。私が最も見たい笑顔。……その笑顔を見て、引きずられるように思い出してしまう。その笑顔が、かつて私が見てきたまどかが、その決意を固めたときに見せる笑顔に最も近しい笑顔であることを。
「お疲れ様、まどか。ここ見つけるの大変じゃなかったかしら?」
「うん、ちょっと疲れちゃったかな。ほむらちゃん急にいなくなっちゃうんだもん。まだ話してる途中だったのに… 隣、座っても良いかな?」
視線を隣―キュゥべえのいた場所―に向ける。既にその姿はなかった。
「ええ、かまわないわ」
「じゃあ、おじゃましまーす」
まどかが私の横に座る。魔法少女の姿を人に見られないようにするためなのか、変身もせずに走り回って探したようね。汗のにおいが私の鼻腔をくすぐる。私は盾からポケットハンカチを取り出しまどかの額を流れる汗をぬぐう。
「わわわっ、ほむらちゃんそれくらい自分でできるよう」
「気にしないで。疲れているのでしょう。汗くらい拭 いてあげるわ」
「む~」
まどかは何か言いたげな膨れた顔をしていたが、すぐに思い直したのかベンチの背に身を預けて、体から力を抜き、目をつぶる。とりあえずここは私に身を任せてくれるようだ。
穏やかな時間が過ぎる。願うことならば、魔法少女も魔女も何もかもを忘れてずっとこうしてまどかと一緒に過ごしていたい。そんな気分にもさせられる。
「……ねぇ、ほむらちゃん」
「なにかしら?」
「公園に行く前にキュゥべえから聞いたの。ほむらちゃん時間を操って過去に戻れるんだよね?」
「……ええ。戻れるわ。」
「私の為に何度も時間を繰り返しているって本当?」
「本当よ。私は…貴女を救うためにここにいる」
「そう、なんだ。ずっと、ずっと私を守っててくれたんだ。私が学校で初めてほむらちゃんと会って、友達になったあの時よりも、ずっと前から」
まどかが体を預けていたベンチから身を起こし俯く。その体は微かに震えていて、まるで話を聞いたことを後悔するかのように表情を隠している。
「……なんで私なの。なんで私だけ助けるの?どうしてあの時さやかちゃんを見捨てたの?さやかちゃんのソウルジェムが限界だったのはわかってる。でも、それでも、まださやかちゃんは魔女になっていなかった。まだ、魔法少女だったのに……」
「私は、大切にしてる貴女一人を守ることすらできない。何度繰り返しても、何度策を巡らせても、私は貴女を守れなかった。だから、そんな無力な私には美樹さやかを救えるような余裕はなかった。貴女を救うためには、貴女を魔法少女にしないでワルプルギスの夜を倒すためには、力を残しておく必要があった。もし、そのことが貴女の心を傷つけたのだとしたら謝るわ」
「…謝るなんて、ずるいよ、ほむらちゃん。今までほむらちゃんがやってきたことがみんな私の為、なんてことを言われたら私、これからしようとしててることを後悔しちゃいそうだよ」
「……」
「ねぇ、ほむらちゃん。ほむらちゃんが私を助けてくれるのも、ほむらちゃんが今までに出会った別の時間の私のせいなの?」
「別にあなたのせいというわけではないわ。ただ、別の時間の貴女と約束したの。貴女が魔法少女にならないように助けてほしい、と託されてね」
「そう…なんだ。キュゥべえの言ってたことは本当だったんだ。そのためにほむらちゃんは何度も何度も同じ時間を。…じゃあ、ほむらちゃんと約束をした私に代わって言うね。……ありがとうほむらちゃん」
そう言うと、まどかは顔を上げてこちらを向く。その瞳には先ほどのような口にした後悔とは無縁の、まるでするべきことを確信したかのような、意思の輝きを秘めている。
「それから、もうひとつ。これはこの世界の私の言葉。ごめんね、ほむらちゃん。私、今日までのほむらちゃんの頑張りを無駄にしちゃうかもしれない。もしかしたら、私もほむらちゃんともっと仲良く出来たかもしれないのに」
私の頑張りを無駄にしちゃうかもしれないから、ごめんね、ね。やはりどんな世界であっても、まどかはまどかということなのね。さっきまで命をかけて戦っていたというのに、どこまでいっても優しい。
互いが互いの瞳を見つめ、言葉もなく時間が過ぎる。いや、それは私の勘違い。実際には一瞬と呼べるような時間しか流れていない。本当ならば一瞬であるにもかかわらず十分にも感じられるような、実際の時の流れとは別の、不思議な時間感覚だった。私たちの意思はすれ違っているのに、それでもなおどこかで繋がっているのではないか。そんな奇妙で心地よい錯誤を感じてしまう。そんな一瞬の感覚だった。
しかし、そんな感覚は一度意識してしまうと急速に崩壊してしまう。しかし、崩壊して然るべき感覚だろう。この感覚は私の独りよがりの物。私はまどかと、それこそ独りよがりの錯誤なんかではなく正しくまどかを知るために、言葉を綴る。
「今度は私の方から聞いても良いかしら?」
「……うん」
一呼吸置く。この質問が、このまどかとの一時の平穏を壊してしまうような気がしたから。しかし、聞かないわけにはいかない。意を決して言葉にする。
「まどかはあの願いで一体何をしようとしているの?」
まどかがさっき言った“これからしようとしていること”。それは魔法少女の契約を、目前で死んだ美樹さやかの蘇生ではなくて、自身の強さを求めたことと関係ないはずはない。しかし、それでまどかは何をするのか。私はそれを知らなければいけない。
まどかは思いをはせるかのように空を見上げる。
「…さやかちゃんには悪いことをしちゃったかな。あの時、さやかちゃんを救うことも私には出来たのに。でも、きっと誰かがやらなきゃいけない事だと思ったから」
「やらなきゃいけない事?」
「私ね、さやかちゃんが死んで、こんなことになった今でも、希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、そんなのは違うって言い張れるよ。……でもね、もしその希望が絶望への落とし穴なんだとしたら、私はそんなのは認められない。認めちゃいけないと思うの。だからそうなる前に終わらせるの」
まどかの考えが分かってきた。しかし、それは無謀としか言えないもの。
「そう、私が全ての魔女と魔法少女を倒すの。この手で。魔法少女が絶望して魔女になる前に、希望を胸に抱いたまま、絶望に気付かないままに!!」
希望を胸に抱いた魔法少女を、絶望に染まる前にそれに気づかないままに消滅させる。ある意味では魔法少女にとって最高の死に方と言えるだろう。形はどうであれその願いは誰かの為に祈られたもの、優しすぎるまどからしい願いだった。
まどかの力なら出来るかもしれない、一瞬そんな考えが浮かぶ。その力を願う祈りによって高められたまどかの力なら。でも、不可能だ。その願いは果たされる前にまどかのソウルジェムは容易く限界を迎えてしまうだろう。
「本当にそんなことが出来ると思っているの?」
「わからない。でも、もう絶望するのも見るのもいやだから」
「……わざわざそのことを私に話したのは?」
「うん、キュゥべえから聞いたほむらちゃんの願いが私だったから、私が戦わないことだったから、だよ。だからこそ、ほむらちゃんにはちゃんと話しておきたかったの。私の願いはほむらちゃんの願いと相いれられることはないから」
「私は貴女を止めるわ。貴女の願いは貴女自身の破滅にしかならない。貴女は戦わせるわけにはいかない」
「ごめんね、ほむらちゃん。でも、私も絶望の未来は壊してみせるって決めたの。だから、ここで止まるわけにはいかない」
雨が降り始める。魔法少女の運命はまるでこの雨のようだ。その運命が希望であろうが絶望であろうが誰にでもわけ隔てなく降り注ぐ。
まどかがベンチから立ち上がり、こちらに振り向き笑顔を見せる。まどかがこのベンチに来た時に思い出した笑顔と同じ笑顔だ。今まで見てきたまどかが、決意を固めた時に見せた笑顔と同じ笑顔。
「じゃ、始めよっか」
その言葉で私はまどかに向かって引き金を引く覚悟を決めた。
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「やれやれ、やっと始まったようだね」
暁美ほむらの座っていたベンチから少し離れた家の屋根の上。僕―インキュベーター―はそこから鹿目まどかと暁美ほむらの戦いの趨勢 を観察している。
鹿目まどかを魔法少女にする目的は達せられた。彼女に美樹さやかの死体もしくは重度の疲弊状態を見せることによって精神的恐慌状態に陥らせ、感情のままに契約をさせる当初の予定は失敗に終わった。しかし、本来予測していた願いとは別の願いとはいえ鹿目まどかが魔法少女になったことは事実だ。この場はそれで良しとしよう。むしろその願いによって想定外の副産物を得たともいえる。
願いによる鹿目まどかの戦闘能力のさらなる向上。これは思わぬ収穫だ。次の目的への大きな助力となる。
次の目的。暁美ほむら。彼女はこの世界における極めつけのイレギュラーだ。もしも、彼女が時間遡行能力により過去に戻り、この世界に過去から干渉することが可能なのだとしたら、せっかく鹿目まどかから得られるエネルギーによりこの世界が救われるというのに、それが無為に帰してしまうかもしれない。彼女をそのまま放っておくわけにはいかない。
だからこそ、僕は美樹さやかを誘導して暁美ほむらと戦う舞台を用意した。そして、その決着がつく頃―当然美樹さやかは暁美ほむらには勝てないだろう―鹿目まどかをその場に寄こした。鹿目まどかには事前に、“暁美ほむらが鹿目まどかの為に契約し、時間遡行能力を持つに至った魔法少女”であることは伝えてある。同時に、暁美ほむらの行動は全て君の為のものであり、君の為ならば君の友人を殺すことも厭わないだろう、そう言い含めて。
これにより僕の予測では、鹿目まどかは美樹さやかの死を否定したいあまりに、一時の感情に身を任せ、美樹さやかの回復を祈り、魔法少女への変身を遂げる。そして、目前で自分本位な時間の周回を行い、鹿目まどかの為と言いつつその周りのものを破壊する暁美ほむらとの戦闘になるはずだった。
結果は、見ての通りである。過程こそ別の物になったとはいえ、それはたいした問題ではないだろう。鹿目まどかと暁美ほむらは戦う。そして、暁美ほむらは負ける。いくら彼女が時間遡行者であり、人一倍の魔法少女としての経験を持っていたとしても鹿目まどかには敵わない。世界を救うほどのエネルギーを内在した、それこそ世界最強と言っても過言ではないあの魔法少女には、絶対に。
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まどかのエネルギー矢の攻撃を盾で防ぐ。もしくはぎりぎりのところで回避する。戦闘が始まってからしばらく、戦況はこの繰り返しになる。合間に銃で狙おうにも、狙いをつける前に次のエネルギー矢の脅威が私に迫ってくる。
まどかの攻撃は的確だ。先ほどの攻撃と同じようにエネルギー矢は爆散し、私を執拗に狙い追い続けている。いや、正しくは“私”ではない“私の盾の機構”を狙っている。
まどかは何故、時間停止の能力の仕組み―盾の内部機構を動かし、それをスイッチにして私が時間停止の魔法を使っていること―を知っているのだろうか。盾への執拗な攻撃が繰り返される。時間停止ができない。とても初めて変身して戦う魔法少女の戦いとは思えなかった。
エネルギー矢の攻撃から逃げるように上空へ回避、盾で攻撃を防ぎつつ、盾の中から複数の手榴弾を纏めて取り出し、落とすようにばら撒く。当てるつもりはない、視界を少し遮らせればそれで十分。
手榴弾が炸裂。炎と煙、閃光が辺りを包み、まどかの姿が見えなくなる。しかしそれはまどかも同じこと。私の横をエネルギー矢の束が通り抜けてゆく。回避機動を取りつつ、時間停止の為に集中。
盾が半回転し、そこに組み込まれた砂時計が完全に横を向き、時を刻む砂がその流れを停止する。時が止まる。振り続けていた雨はその場に停止し、辺りを包む炎と煙は雨によって流されることなくその場に留まり続ける。
上空からまどかを見下ろしていた私は地面に降り立ち、まどかのいる方向に向けて歩き出す。弓を引き絞った状態で停止したまどかに対し、私は両者が手を伸ばせば触れ合えるほどの距離まで近づき、その場で立ち止まる。時間さえ止めてしまえばあとはすることは一つ。盾の中からハンドガンを取り出し、まどかに向けて構える。体に数発撃ちこみ、魔力を自身の回復に使わざるを得ない状況に追い込む。これで決着がつく。
「!?」
瞬時にその場から飛び退く。
まどかの胸についている桜桃色のソウルジェムが、魔法を使用する時のように陰りを揺らめかせているように見えた。私はまどかに触れていない。私に触れられない限り、この時の止まった世界で私以外の物は、その動きを止めているはずなのに。
周りを見渡す。雨は空中で動きを止めたまま、炎と煙は揺らぎもしていない。時間は止まったまま動き出してはいない。
まどかの方に視線を向け直す。瞬間、私の視界はエネルギー矢の光に包まれた。
「ぐっ」
不意の攻撃に盾を構えることは出来たが、防ぎきれない。踏ん張りが利かず吹き飛ばされる。
地面に投げ出された私は上体だけを起こし、まどかの方へ視線を向ける。まどかは、まるで時が止まっていないかのごとく嬉々とした振る舞いで周りを見渡している。
「わぁ~、すごいねほむらちゃん。これが時間の止まった世界なんだ。」
「何故…」
「雨がお饅頭みたいな形してそこら中に浮いてて、それが街の明かりを受けてキラキラと反射して……すごく、綺麗」
「何故、貴女がこの止まった時の中を動けるの?」
興味深げに周りをきょろきょろと見まわしていたまどかは、一瞬動きを止めた後に、ゆっくりと体ごとこちらに顔を向ける。表情こそ笑顔だが、その動きには悠然としたものがある。
「私の願いは、全ての魔法少女と魔女を倒して、絶望の未来を迎えないようにすること。この力はそのために得た力。だから、どんな魔法少女にも負けないよ。ほむらちゃんの時間操作の魔法にも……負けない」
時間停止を解除。空中に停止していた雨粒が一度にその動きを取り戻し、地面に吸われてゆく。
「……ほむらちゃん。もう、やめにしない」
「何を言っているの?」
「戦ってみてわかったの。ほむらちゃんの魔法は時間停止だけ。銃での攻撃も私の弓には遠く及ばない。ほむらちゃんは私には勝てないよ」
まどかは倒れている私に近づき、右手を差し伸べる。
「だから、ほむらちゃんにお願いがあるの。こんなことはもう止めて、私と一緒に戦わない?私とほむらちゃんの二人で魔女と魔法少女を倒そう。ほむらちゃんの言うように私一人じゃ無理なのかもしれないけど、きっと二人でなら出来るはずだから」
それは甘美な誘いだった。まどかの手は、私にとって一種の救いも同然である。今すぐにでもその手を取ってこの戦いを止めてしまいたい。まどかとの戦いなんてやめて、二人であの時のように一緒に戦って、笑って、歩んでいきたい。
…でも、それはできない。私はまどかと共に闘うのではなく、まどかを守るって決めたから。
「ごめんなさい、まどか」
言葉を掛けるのと同時に体のばねを使いその場から飛び退き、体勢を立て直す。そして、真正面にいるまどかに向けて改めて銃を構える。
まどかもそれに呼応するように弓を構え直し、ゆっくりと弦を引き絞る。
「ううん、気にしないで」
「これで…最後にしましょう」
「うん……」
数瞬の沈黙の後、まったく同じタイミングに引き金が引かれ、矢が放たれる。私は引き金を絞るのと同時にまどかの方へ一直線に走りだした。
私の放った銃弾はまどかのエネルギー矢と接触、その場で光に飲み込まれ消滅する。
眼前には私の銃弾をかき消したエネルギー矢。私はそれに突っ込む形になる。しかし、防御はしない。まどかの放つエネルギー矢は私の目前で三つに分裂し、一つは左肩の横を通り抜け、一つは右腹部を掠り、最後の一つは首の中心部を直撃、貫通する。私はその衝撃で吹き飛ばされそうになるのを堪え、そのまままどかの方へ駆ける。
「!?」
「――――――!!!」
驚きのあまり二の矢を放ちそびれるまどか。そのまどかに向かって私は声にならない叫び声を上げながら、その両太股に向かって銃弾を放つ。まどかの太股に二つの銃弾は掠めるように命中。一瞬糸の切れた操り人形のようにバランスを崩すまどかに対し、私は勢いのままにぶつかり、押し倒す。まどかの上に馬乗りになり、足で両腕を固定し、銃をまどかの胸のソウルジェムに突きつける。
「―――――――」
声が出ない。魔法少女にとって人間の肉体は操り人形と同じようなものである。普通の人間なら死ぬような怪我でも魔法少女なら死なない。魔法少女にとって守るべき本当の体はソウルジェムである。だから、人の肉体が死ぬような怪我を負ったとしても魔力がある限り、治る早さと方法に個々人の差があれど、死ぬ前の状態にまで完治できる。
「ぐ……がっ………」
ズタズタにされた首内部の血管から溢れだす血液が、肉体が完治しきる前に喉へと逆流し、口から吐き出される。私から吐き出された血液はそのまま馬乗りにされたまどかへと降りかかる。
「…ほむらちゃん……」
まどかが心配そうな声で私に話しかけてくる。今命の危険に晒されているのは私ではなく、自分だというのに。
戦いが小康状態になったことにより、魔力が首の怪我へと集中される。怪我は魔力によって高められた代謝機能により急速に塞がり、元の怪我のない状態まで回復していく。
私は銃を構えたまま言葉を紡ぎ出す。
「やっぱり、貴女はどこまでいっても優しいのね。本当…魔法少女には向いてないわ」
「…どういうこと?」
「まどか。貴女は私の命を一瞬たりとも狙わなかったわ。どんなに苛烈に見える攻撃もぎりぎりで避けられるか、もしくは、盾で防げるかの攻撃しかしてこなかった」
そう、最初から繰り返された執拗な盾への攻撃は、私の時間停止の魔法を遮るための物ではない。あれは、そもそも盾で防がれること事態が目的だった。そうでなければ、まどかは時の止まった世界に入ることが出来るのに、わざわざ膨大な魔力を消費しての高密度の攻撃をしてきたことへの説明が付かない。
私がまともな反撃が出来ないほどの攻撃、時間停止能力への介入、まどかにはその二つを出来ること。それに加えて、まどかの『どんな魔法少女よりも、どんな魔女よりも強い、絶対に強い魔法少女にして』という願いの内容を考えれば“まどかが私よりも圧倒的に強い”というのはすぐに思いつくことだった。
「貴女は私の命を奪わないで、私に対して魔法少女としての圧倒的な力の差を見せつけることでこの場を終えようとしたわね?」
まどかは顔を俯かせ、少し逡巡するかのようなそぶりを見せる。しかし、それは一瞬だけで次の瞬間にははっきりとした声で私に語りかけてくる。
「…やっぱりほむらちゃんはすごいや。これだけの力の差があったのにひっくり返しちゃうんだもん」
「それは、貴女がやさしすぎるからできたことよ。私は今までに何度も何度も貴女を見てきた。だからよく知っているのよ。貴女は自分の目的の為に関係のない犠牲を強いることが出来るような人間じゃないことは」
「あはは、ほむらちゃんには敵わないよ」
まどかが魔法少女の変身を解く。それは実質上のまどかの降伏宣言だった。よかった、まどかが負けを認めてくれた。体中に張っていた緊張の糸が緩む。まどかの胸をポイントしていた銃を盾の中にしまい、まどかから降りて、改めて倒れているまどかの横に座り直す。
「さあ、帰りましょうまどか。貴女にはこれからも今までと同じように学校に通って、今までと変わらない生活をしていてほしい。魔法少女になったからと言って何かをしようなんて思わないで。グリーフシードのことなら心配しなくていいわ。今は一つしか予備がないけど、私があなたの分のグリーフシードも確保す……」
「ほむらちゃん、ごめんね。それは無理みたい」
「え…」
まどかがゆっくりとした動きで右手を私の目の前まで持ち上げ、その拳を広げる。手の中にあるのはまどかのソウルジェム。それも普通の魔法少女よりもはるかに早く穢れを貯め込んだ、グリーフシードへの変貌を寸前にまで控えたソウルジェム。
「ッ!? どうしてまどかのソウルジェムが」
言葉を口にした瞬間思い出す。
『鹿目まどかの戦いは絶望と共にあるということだよ。ただでさえ魔力を使えばソウルジェムは穢れると言うのに、絶望しながらの戦闘行為となるとその進行の度合いは美樹さやかの比じゃないだろうね』
インキュベーターが私に向けて言った言葉。今のまどかは絶望と共にある。故にソウルジェムはすぐに穢れてしまう。まさかここまで穢れの進行が早いものだとは思わなかった。だから、戦闘中も特別気にかけていなかった。組み伏せた後も銃口に隠れていたために、きちんと見ていなかった。
「罰が当たっちゃったのかな。私、絶望とかそんな嫌なものは全部壊れてなくなっちゃえばいい、って思ってたの。でもね、その考えは駄目なの。皆皆希望と絶望の両方を持って生きてる、それが当たり前。だから、私一人が、それが嫌だからって勝手に奪っちゃうのはやっぱり駄目なの。でも我慢できなかった。皆が絶望に堕ちていくのが分かっていて何もしないでいるなんて我慢できなかった」
「しゃべらないで。すぐにグリーフシードを出すわ」
盾の中からグリーフシードを取り出し、左手でまどかの腕を支え、手の平の上に乗るソウルジェムにあてがおうとする。
あてがう瞬間、まどかの体が光に包まれる。魔法少女へと変身するための光。
「まどか、何を!?」
魔法少女姿となったまどかは私の不意を突いて、上体を起こし、私の手の中にあるグリーフシードを奪う。そして、空いた何も持っていない右手で私の左腕を押さえつける。
まどかは私の左手の甲に付いている宝石、私のソウルジェムにグリーフシードを無理矢理あてがった。グリーフシードは私のソウルジェムの穢れを勢いよく吸い取っていく。
「何をしているの!!早く手を放して!!」
まどかの暴挙を止めるために腕を振り解こうにも、まどかの押さえつける力が強すぎて一切左腕が動かせない。
グリーフシードが私のソウルジェムの穢れを吸い取り終える。魔女との戦闘、美樹さやかとの戦闘、まどかとの戦闘、それらの戦いで穢れた私のソウルジェムはグリーフシード一つで綺麗にその穢れを解消し、元の輝きを取り戻した。
そして、私のソウルジェムの穢れを吸い取ったグリーフシードはほとんど限界だった。これ以上は碌 に穢れを吸い取ることはできない。まどかのソウルジェムの穢れを吸い取ることはできない。
「まどか…貴女…なんてことを」
まどかの変身が解け、そのまま力なく地面に倒れこむ。こんな状態のソウルジェムでまともに変身していられるわけがない。
急いでまどかのソウルジェムにグリーフシードをあてがう。グリーフシードはまどかのソウルジェムの穢れを微かに吸い取ったが、すぐに限界が来てしまった。
「よかった…これでほむらちゃんはまだ生き続けることが出来るね…」
「そんなの、いいわけないじゃない!!どうしてこんなことを?まだ私のソウルジェムには余裕があったのに。貴女を助けることが出来たのに…」
そう言うとまどかは微かに笑みを浮かべた。まるで自分がやったことに満足しているかのように。
「ねぇ、ほむらちゃん。私ね、気付いてたの。私がまともに戦える魔法少女じゃないって事。あの公園でほむらちゃんと戦ったすぐ後にね。だって、前に見せてもらったマミさんやさやかちゃんのソウルジェムよりずっと穢れがたまるのが早いんだもん。変身してるだけで目に見えて穢れていくなんて思わなかったよ。…うん、だから、私の願いはあの瞬間に終わってたの」
「まどか…」
「でも、それでも私、自分を抑えきれなかった。そのまま諦めることなんて、できなかった。だから、もう一度ほむらちゃんと戦えば、もしかしたら何とかなる方法が見つかるんじゃないかな~、なんて馬鹿なこと考えて。…ごめんね、ほむらちゃん。私のわがままでこんな闘いを始めて」
雨が霧雨のようになり、視界が霞んでいく。
今になってやっとわかった。戦いの最中、まどかが私に向けて差し伸べた手は私の為だけに差し伸べた手じゃなかった。あれはまどかの叫び声。自分で自分を止めようと思っても、止めることが出来なくて。どうしようもなくて。だから、私に助けを求める為に伸ばした手だった。なのに、私はその手をはねのけてしまった。
もう、私には何もできない。まどかを救えない。今の私にはまどかの為に涙を流すことくらいしかできない。
「私は、まどかが望むなら、何度だって、誰とだって、戦っても良かった。貴女が私と一緒に戦うことで希望を見つけることが出来るのなら、私は貴女と共に永遠に戦い続けても良かった…」
まどかがゆっくりと首を振る。
「それは違うよ、ほむらちゃん。私は別に戦いをしたかったわけじゃないの。ただ、絶望の未来を迎えること、それに抗うことを止めること、その両方を我慢できなかっただけ。たぶん、こんなことになった今でもできない。だから、ほむらちゃんからグリーフシードをもらっても、きっと私は戦うことを止めないと思う。でも、それはほむらちゃんにすごく迷惑をかけちゃう。私は、そんな自分も許せないの。そうしたら、こうなっちゃった」
「そんな…そんなの。私は…私は……貴女が生きていてくれればそれでよかった!! それ以外ことなんてどうでもいい。貴女さえいてくれれば、私はどんなことにでも耐えることが出来たのに」
「ほむらちゃん……」
まどかの手がゆっくりと私の頬に伸びてくる。
「泣かないで、ほむらちゃん。ほむらちゃんはさ、綺麗なんだから、そんな顔似合わないよ」
まどかの指が頬を流れる涙を拭う。まどかは笑顔だった。私の好きな、まどかの笑顔。
「ありがとう、こんなわがままな私にここまで付き合ってくれて。でも、もういいんだよ。ほむらちゃんは、もっと自由に生きていいの。こんなわがままな私なんて忘れて、鳥のようにもっと、もっと自由にね」
ピキリ 霧雨と雑音の中、ひびの入る音が一際響いて聞こえる。私とまどかに終わりを告げる音。
「もう時間がないみたいだね。…ほむらちゃん。最後にもう一つだけお願い聞いてくれるかな?」
「ええ。何でも言って」
まどかはゆっくり右手を持ち上げ、その中に包まれた壊れかけのソウルジェムを私に見せる。
「私の最後の戦い、見届けてほしいの」
「心配しないで、ちゃんと見届けるわ」
まどかはその言葉を聞くと安心したかのように眼を一瞬だけつぶった。
私は、精一杯の笑顔を作り、両の腕でまどかの力ない右腕を支える。まどかの腕から微かな鼓動を感じる。
「じゃ、始めるね」
右腕から感じる鼓動が早く、強くなる。まどかのソウルジェムを握る指から光が漏れる。もう変身できるような余力はない。文字通り死力を尽くし、最後の魔力を右手に集中させることで体を動かしている。下手をすればソウルジェムを砕く前に穢れが限界に達して、グリーフシードが誕生してしまう、そんな瀬戸際の戦い。
「――――」
――まどかのソウルジェムが砕け散る。同時にまどかの腕から感じていた微かな鼓動が消える。
「お疲れ様、まどか…」
自分自身が生み出す絶望を否定するための、自らの手で自分を殺す戦い。まどかの最後の戦い。まどかはその戦いに勝った。まどかの死に顔は安らかに見えた。まだ未練があるはずなのに、それでもまどかは自分に満足しているかようだった。
「やれやれ、まさかこういう結末になるとはね。つくづく人間というものは僕たちの理解の外側にいる生き物だと痛感させられるよ」
インキュベーターの声が脳に直接響く。周りを軽く見渡してもその姿は見受けられない。
「で、君はこれからどうするつもりなんだい?暁美ほむら」
「そんなもの、決まってるわ」
倒れているまどかを横抱きの要領で抱きあげる。降りしきる雨がまどかの体から急速に熱を奪い去り、既にその体からは温もりを感じることができなかった。
盾の砂時計が完全に落ち切るまで―私が時間遡行の能力を使えるようになるまで―にはまだ時間がある。ならば、今はこの世界のまどかの為にやれる限りのことを尽くすことにしよう。出来ることはたくさんあるはず。
それにしても……
「まどか、貴女は一つ勘違いしてるわ……」
私に、鳥みたいに自由になってほしい、とまどかは言った。しかし、それは違う。私は私の自由意思でまどかを守っている。それこそ鳥で例えるのなら“幸福な王子”の燕と同じ。私は貴女がいてこその私なのよ。
…それも少し違うわね。そもそも私は王子様がボロボロになることの手伝いなんてできない。
いや、今はそんなことはどうでもいいわ。
「今はゆっくり、お休みなさい。王子様 」
まどかの頬に残る雨で流れきれなかった私の血を唇で拭う。
(「魔法少女まどか☆マギカ ほむらVSまどか 魔法少女大決戦! さよなら永遠の友達」 了)
人を見かけで判断するな、と人は言う
人を見かけで判断しない者は愚か者だ、と人は言う
さて、今宵の王子様は一体どちらで判断すべきなのでしょう?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
良く晴れた、三日月の綺麗な深夜、既に歩く人もいなくなった公園。
私―暁美ほむら―は地面に転がる“ソレ”を取り上げる。
黒く、まるで感情という名の色を纏めて混ぜ込んだような濁った色をした宝石。ソウルジェム、魔法少女が魔法少女たる所以とも言える“ソレ”は、今私の手の中でしだいにひびが刻まれて、砕けようとしている。まるで、内包した感情が行き場を失い、宝石を砕いて外に逃げようとしているかのようにも見える。
「そ…れを……返…………せ…」
私の足元で声がする。美樹さやか、このソウルジェムの持ち主。いや、持ち主というのは少し語弊がある。このソウルジェムこそが彼女自身であり、魂の器であると言える。故に人としての肉体はソウルジェムである彼女が無意識に操作する端末である、と言った方が正しい。
魂というソフトを肉体というハードから切り離し、ソウルジェムという宝石のハードに移し分別した状態、と例えるのが近いかもしれない。
「ソウ…ジェ………ム…か…えせ……」
美樹さやかは既に息も絶え絶えの状態にある。彼女は私との交戦以前からソウルジェムを限界近くにまで酷使していた。自身の人間関係の縺
彼女は、魔女との戦いに偶然居合わせた私に対し、半ば当てつけのように戦いを挑んできた。見境のない攻撃を繰り返す彼女に対して、私は挑発し、その攻撃を捌くだけでよかった。酷使されたソウルジェムはすぐに限界に達した。
魔法少女への変身は解け、その場に崩れ落ちる美樹さやか。彼女の本体とも言えるソウルジェムを庇う力ももうないだろう。
このまま放っておくと彼女のソウルジェムは砕け、グリーフシードと化し、魔女という名の絶望の怪物を生み出す。
魔女を倒すことにより亡骸のようにその場に残るグリーフシードにはソウルジェムの穢れを吸い取り劣化から回復させる力がある。私のグリーフシードのストックは先ほど倒した魔女から回収した一つだけ。魔女と化した美樹さやかを倒しソウルジェム浄化の為のグリーフシードを手に入れるのも一つの手ではあるが、既に今日一度戦った私にとって魔女との連戦は避けたいのも事実。
美樹さやかのソウルジェムから魔女結界の広がる兆候が見え始める。決断までの猶予は少ない。
手の中にあるソウルジェムに対して軽く力を込める。完全にグリーフシードになる前に破壊してしまえば魔女は生まれない。
『まどかの友達を見殺しにしていいのか』という躊躇が脳裏をよぎる。
しかし、すぐさまこの世界の美樹さやかの行動を思い出す。恋愛の縺れ、魔法少女の真実、自分勝手な絶望、それらから端を発した彼女の行動をどのように鑑
「…か…え……」
ソウルジェムに先ほど以上の力を加える。宝石は割れ、私の手を傷つける。
「………………」
微かに動いていた美樹さやかの人としての肉体が完全に停止する。
罪悪感が全くないわけではない。しかし、これでまどかを魔法少女へと導く要因が一つ減った、と考えるとその罪悪感も次第に薄れていく。親しい者からの誘いは魔法少女への一歩を踏み出すのに大きな助力となる。それを絶てたことをよしとしましょう。
「……」
すぐにこの場から移動しなくてはならない。既に人気がなくなったからといって絶対に人が来ないわけではない。魔女空間以外で変身姿を見られるのはよろしくない。特に今は美樹さやかの死体がある。これと一緒にいるところを見られたものならば面倒なことになりかねない。
ザッ、という砂にバックが落ちたような音が聞こえる。私はそちらの方向へ視線を向ける。ただの見知らぬ通行人ならば時間停止の魔法で急ぎ逃げるまで。よほどでなければ見間違いか何かだと思うだろう。見知らぬ通行人ならば私が一瞬にして消えたようにしか見えないのだから。
そう“見知らぬ通行人”ならばである。
「うそ……さやかちゃん…なんで……」
「まどか…」
鹿目まどか。私の最も大切な人にして守るべき対象。私が幾度も幾度も時間を遡行
「どうやら間に合わなかったみたいだね」
まどかとは別の、もう一つの声がする。まどかの影から四足の白い小動物が出てくる。いや、外見だけでいえば動物よりぬいぐるみの方が近い。キュゥべえ、今の声の主であり、人間の願いを一つだけ叶えることによりその人間を魔法少女へと変化させ、戦わせ、絶望させ、そして、その絶望から生まれるエネルギーを得ることを目的とした存在。
「すまなかった、まどか。もう少し早くボクが君に伝えることが出来れば、君の言葉でこの決着を回避できたかもしれないのに」
「そんな…どうして……なんでこんなことに……さやかちゃんは…」
まどかが大粒の涙を流してその場に立ちすくむ。弁解の言葉が紡げない。まどかが悲しみに暮れて心が折れそうになる場面は今までの世界でもあったことだが、何度直面しても動揺がぬぐえない。
「気にすることはないよ、まどか。これはきみのせいじゃないんだ。酷い言い方をするかもしれないがこれは魔法少女にはありふれた行為の一つなんだよ」
「……どういうことなのキュゥべえ」
「魔法少女が魔法少女を殺すケースは今までなかったわけじゃないんだ。さまざまな時代、世界で行われてきたことなんだよ。とはいえ、その殺害理由自体は、今までの経験からの推測に過ぎないけど、ほとんどは一致している。それは『グリーフシードの奪い合い』だよ。グリーフシードの枯渇は自身の生命活動の危機、ひいては心的平穏の危機にも繋がるからね。邪魔な存在は排除してしまえばいい、そういうことになるね」
「……さやかちゃんもそのせいで死んだっていうの」
「さぁ?それはぼくにはわからないよ。僕たちはあくまで暁美ほむらが美樹さやかにとどめを指すところしか見ていないからね」
「……」
頭が冷えてくる。それと同時にキュゥべえの意図も理解できた。
あれはまどかに美樹さやかの蘇生を願わせることによって魔法少女の『契約』を交わすつもりね。気にすることはない、などと言われてまどかはそのまま気にしないような子じゃない。むしろ言われるほどに気にかけてしまう。インキュベーターめ、『グリーフシードの奪い合い』なんて適当な方便まで使って。
時間を停止させてまどかをキュゥべえから引き離すために、私は私の左腕に付いた盾に一瞬だけ視線を移し、意識する。まどかへの説明は後回しにする。
「動かないで!!」
まどかの叫び声。思わず意識が乱され、時間停止の魔法が中断される。まどかは私の能力を知らないはずなのに。
まどかの言葉によって一瞬動きを止めてしまった。それが致命的な結果となった。
「キュゥべえ。私を魔法少女にして。願いは……」
時間停止は……間に合わない。
「やめて!だめ!まどかああああ!!」
私は静止の言葉を叫ぶ。
「私をどんな魔法少女よりも、どんな魔女よりも強い、絶対に強い魔法少女にして!!」
まどかの言葉と共に、まどかを中心とした辺り一帯に閃光と衝撃が広がる。私はその閃光と衝撃に対し反射的に盾を構え、目を薄めて防御した。
瞬間、膨大なエネルギーの矢が私の髪を掠めた。私の後ろに鎮座していた公園のオブジェが音を立てて崩れ落ちる。
まどかが……
まどかが私を撃った…
閃光が完全に消える。眼前には魔法少女へと変身し弓を構えるまどかの姿。
「待って。話を聞いてまどか。これには理由が…」
瞬時に私の足元へ威嚇射撃。
「もう…嫌だよね、こんなの…」
まどかの攻撃が開始される。まどかはその場から動かずエネルギー矢を射続ける。エネルギー矢はそれぞれ拡散、誘導、炸裂し私を攻撃する。私は回避か防御に専念させられる。それだけの攻撃密度だ。時間停止の為に集中する隙がない。
攻撃の最中
「……さやかちゃんはね。ただちょっと失敗しちゃっただけなの。あれでさやかちゃんってね、少し引っ込み思案なところがあるの。大事なことほど少し後ろ髪を引かれただけで遠慮しちゃうの。私は、そこは引かなくてもいいのに、ってよく思うんだけどね。だから、上条君とのこともそう。さやかちゃんが遠慮しちゃったから上条君は仁美ちゃんとくっついちゃった。それが別に悪いことってわけじゃないんだけどね。私も二人を応援したいし。それだけなら酷い言い方だけど普通の失恋だから」
「まどか!」
まどかの攻撃の隙を見つけ、叫ぶ。同時に盾に閉まってあるハンドガンを取りだし、構える。打つ気はない。まどかのことを撃ちたくない。
まどかの攻撃が止む。互いに構えて動きを止める。
「ただ、さやかちゃんの失恋は普通じゃなかった。魔法少女になっちゃたから。そのことに負い目感じちゃったから。さやかちゃんにはどうしようもできなくなっちゃった。今まで頑張ってきたのに。マミさんもそう。どんなに辛いことがあっても、どんなに悲しいことがあっても、明るく、まるでヒーローのように一人で戦い続けてきた。ずっと一人で。誰でも助けを呼びたくなるような状態でも、明るく皆のための未来を願って戦い続けていた。でも、そのマミさんももういない。魔法少女の真実を知って、塞ぎこんで家からも出てきてくれない。…でも、すごいよね。こんな真実を知っても、絶望に耐えて魔女にならないなんて、流石はマミさんだよ。私にはとても真似できないよ…」
言葉の最後で、まどかは微かに私に笑みを見せてくれた。乾いた笑顔。ある意味で一番見たくないまどかの笑顔。
「…希望の未来を願ったのに、そのせいで絶望させられるなんて間違ってる」
「なら、まどかは何をするつもりなの。そんな姿になってまで」
もしかしたら、もしかしたら、その願い次第ではまどかと共にワルプルギスの夜と戦い、勝利して、一時の平穏を得られるかもしれない。そんな私の本来の目的、約束を無視した浮ついた希望の情景が頭を過
まどかは弓をおろし、明確たる意志を持った表情で私に告げる。
「全ての魔女と魔法少女は――私が倒す!」
その瞬間、時間が止まる。比喩表現ではない、私が実際に止めた。まどかが弓をおろしたことが時間停止の為に必要な隙となった。まどかの隙を見て時を止める。そう決めていたからこそ成功した時間停止。
しかし……停止した時間の中で私の思考は、それこそ比喩ではなく、電池の切れた時計のように停止していた。まどかの言葉の真意をすぐに理解できなかったからだ。ただ一つだけ“まどかが私を倒す”それだけは理解できた。
止まった時間のなか逃げるように私はその場から立ち去った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あの公園からやや離れた並木道。私はそこのベンチに座って美樹さやかと戦う前に戦った魔女との戦闘で消耗した弾薬をマガジンに込めている。何か手を動かしてないと落ち着かない。
思えば初めてのことだ。私がまどかに言葉ではなく実際の攻撃で糾弾されるのは。
まどかに向けられる矢は、心底、胸が冷える。こんなに心揺さぶられるとは思わなかった。
「…私は、一体何をやっているの」
言葉に出してしまった。瞬間、手に持っていたマガジンを投げ出し自分の体を両の手で抱く。
考えるな。考えるな。考えるな。考えるな。自分の行動の意味、それは私が考えてはいけないことだ。思考を無理やり切り替える。
私の時間遡行能力は厳密には正しく時間遡行している能力ではない。遡行した先は私がそれまで生きてきた過去とは別のものになる。私の時間遡行能力は、正しくはある時点の―私の場合は、私が見滝原中学に転校する十日前の―私の生きてきた世界に極めて似ているが、しかし、確実に違うところのある別の世界、パラレルワールドに存在する私に、この私の意識と魔法少女として能力を飛ばす魔法だ。
だから、パラレルワールドであるが故にこの世界の“まどか”は、私が初めて出会った“まどか”とも、私がかつて約束を交わした“まどか”とも別の存在ということになる。
それでも、私は今までは気に留めていなかった。私がキュゥべえに願った願いは“まどかとやり直すこと”。時を操る能力はまどかとやり直したいという思いから得た能力でしかない。願いの真ん中にはまどかがいる。だからこそかどんなに時間を遡行してもまどか自身の変化はそれほど大きいものではなかった。パラレルワールドは、それこそ私が何をしようが関係なく、例えばまどかの命を狙う美国織莉子のような魔法少女が何の前触れもなくいきなり見滝原に現れるように、その世界のキャストは世界世界で様変わりして、世界ごとの揺らぎを私に見せつけてくるのにもかかわらずである。
だから、まどかが私を撃つなんて考えなかった。
だから、まどかが私を撃つなんて考えたくもなかった。
そんなことはあり得ないと思っていた。
「やれやれ、おつかれみたいだね」
声の方に顔を向ける。身を構える余裕すらない。
「インキュベーター」
「君のそんな顔は初めて見たよ」
いつの間にか現れたキュゥべえは私の座るベンチの空いたスペースに悠々と飛び乗る。
「いつも表情を崩さない君でもそんな顔をすることがあるんだね。なるほど、君の行動から想定はしていたけど、それほどまでに君にとってあの鹿目まどかという存在は大事なわけか」
「……あなたの目的は達せられたでしょう。失せなさい」
「そうだね。僕の目的は達成した。鹿目まどかは魔法少女となった。後は彼女が絶望して魔女になればこの世界は救われる」
「…あなたにとっての世界は、でしょう」
まどかが魔女となった世界を思い出す。その世界のキュゥべえ曰く、魔女となったまどかによって地球は滅ぶことになる。
体を抱いていた両腕を離し、左腕の盾をさする。
そう、私はこの能力で何度でもやり直せる。この世界もまたなかったことにして、一からやり直せば、きっと。
「それでいいのかい、きみは」
「……どういうこと?」
キュゥべえはやれやれといった風に首を振り、語り始める。
「君の行動から、君の能力が時間の停止及び一定期間限定の遡行能力だということは推察がついている。毎度の君の急な出現と消失、君の戦闘方法から時間停止能力の所有。加えて、君の身辺を調べた結果、かつての君は病弱で気弱な少女だったはずなのに、ある時点から急に行動的になり、性格もまるで別人のようになった。瞬時に変わった、というと言うより別人になった、と言う方が早いだろう。後は君が時間操作能力を持つ魔法少女であるということからの推察だよ。君はその時点のこの世界の君に遡行してきたんだ。まちがっているかい?」
「……答える気はないわ」
時間遡行能力に起点と終点が定められている、ということに言及がないことを除けば、概ね合っている。が、素直に答える気はない。
「それで、私の能力が、あなたの言う“それでいい”と何の関係があるのかしら?」
「簡単な話だよ。君の時間遡行能力、そして、鹿目まどかへの極度の執着から逆算すれば、君のその願いは鹿目まどかの為の物だということが分かる。しかし、その君がこの世界の鹿目まどかを放っておいていいのかい。この世界の鹿目まどかはきっとワルプルギスの夜と戦うことになるだろう。自分しかまともに戦える魔法少女はいない、そう考えてね。その結果がどういうことになるかは数多の世界を旅してきた君は知っているんじゃないかな。君はそれでいいのかい?」
「……」
考えていなかった。そう、さっきの私はまどかを見捨てようとした。これは今までの私ではなかったこと。まどかを助けられなかったことならある。数え切れないほどある。だが、この世界はまだ違う。まだ、まどかは生きている。敵対こそしてしまったが生きている。今この世界のまどかを諦めて、時間遡行を考えるということはこの世界のまどかを見捨てることに等しい。
まどかに撃たれたからといってどうかしていた。私は決めていたはずだ、まどかを救うと。
「まさか、あなたに励まされることになるとは思わなかったわ」
「そうかい。それなら良かったよ。じゃあもう一つ君にヒントをあげるよ。彼女の願いは絶望から生まれたものだ。夢をかなえたい、何かを良くしたい、といった明るい未来を願う希望ではなくて、間違っているのは嫌だ、認めたくない、逃げたい、という絶望の願いだ。願いの先には何もない」
「…どういう意味?」
「鹿目まどかの戦いは絶望と共にあるということだよ。ただでさえ魔力を使えばソウルジェムは穢れるというのに、絶望しながらの戦闘行為となるとその進行の度合いは美樹さやかの比じゃないだろうね」
「何故わざわざ私にそのことを?」
「そうだね。僕の良心と言ったところで君はそれを信用しないだろう」
「ええ。そのとおりよ」
それに、もうゆっくりと話を聞いていられる状況じゃなくなるみたいね。
靴音が近づいてくる。それから遅れて、少しずつ微かに荒れた息遣いが聞こえてくる。うっすらと見え始めた人影が月明かりに照らされて次第にその姿に色を帯びさせていく。
「やっと見つけたよ。ほむらちゃん」
制服姿のまどか。笑顔のまどか。さっき見たような乾いた笑顔ではない。私の好きな、それこそまどかをまどかたらしめている優しい笑顔。私が最も見たい笑顔。……その笑顔を見て、引きずられるように思い出してしまう。その笑顔が、かつて私が見てきたまどかが、その決意を固めたときに見せる笑顔に最も近しい笑顔であることを。
「お疲れ様、まどか。ここ見つけるの大変じゃなかったかしら?」
「うん、ちょっと疲れちゃったかな。ほむらちゃん急にいなくなっちゃうんだもん。まだ話してる途中だったのに… 隣、座っても良いかな?」
視線を隣―キュゥべえのいた場所―に向ける。既にその姿はなかった。
「ええ、かまわないわ」
「じゃあ、おじゃましまーす」
まどかが私の横に座る。魔法少女の姿を人に見られないようにするためなのか、変身もせずに走り回って探したようね。汗のにおいが私の鼻腔をくすぐる。私は盾からポケットハンカチを取り出しまどかの額を流れる汗をぬぐう。
「わわわっ、ほむらちゃんそれくらい自分でできるよう」
「気にしないで。疲れているのでしょう。汗くらい拭
「む~」
まどかは何か言いたげな膨れた顔をしていたが、すぐに思い直したのかベンチの背に身を預けて、体から力を抜き、目をつぶる。とりあえずここは私に身を任せてくれるようだ。
穏やかな時間が過ぎる。願うことならば、魔法少女も魔女も何もかもを忘れてずっとこうしてまどかと一緒に過ごしていたい。そんな気分にもさせられる。
「……ねぇ、ほむらちゃん」
「なにかしら?」
「公園に行く前にキュゥべえから聞いたの。ほむらちゃん時間を操って過去に戻れるんだよね?」
「……ええ。戻れるわ。」
「私の為に何度も時間を繰り返しているって本当?」
「本当よ。私は…貴女を救うためにここにいる」
「そう、なんだ。ずっと、ずっと私を守っててくれたんだ。私が学校で初めてほむらちゃんと会って、友達になったあの時よりも、ずっと前から」
まどかが体を預けていたベンチから身を起こし俯く。その体は微かに震えていて、まるで話を聞いたことを後悔するかのように表情を隠している。
「……なんで私なの。なんで私だけ助けるの?どうしてあの時さやかちゃんを見捨てたの?さやかちゃんのソウルジェムが限界だったのはわかってる。でも、それでも、まださやかちゃんは魔女になっていなかった。まだ、魔法少女だったのに……」
「私は、大切にしてる貴女一人を守ることすらできない。何度繰り返しても、何度策を巡らせても、私は貴女を守れなかった。だから、そんな無力な私には美樹さやかを救えるような余裕はなかった。貴女を救うためには、貴女を魔法少女にしないでワルプルギスの夜を倒すためには、力を残しておく必要があった。もし、そのことが貴女の心を傷つけたのだとしたら謝るわ」
「…謝るなんて、ずるいよ、ほむらちゃん。今までほむらちゃんがやってきたことがみんな私の為、なんてことを言われたら私、これからしようとしててることを後悔しちゃいそうだよ」
「……」
「ねぇ、ほむらちゃん。ほむらちゃんが私を助けてくれるのも、ほむらちゃんが今までに出会った別の時間の私のせいなの?」
「別にあなたのせいというわけではないわ。ただ、別の時間の貴女と約束したの。貴女が魔法少女にならないように助けてほしい、と託されてね」
「そう…なんだ。キュゥべえの言ってたことは本当だったんだ。そのためにほむらちゃんは何度も何度も同じ時間を。…じゃあ、ほむらちゃんと約束をした私に代わって言うね。……ありがとうほむらちゃん」
そう言うと、まどかは顔を上げてこちらを向く。その瞳には先ほどのような口にした後悔とは無縁の、まるでするべきことを確信したかのような、意思の輝きを秘めている。
「それから、もうひとつ。これはこの世界の私の言葉。ごめんね、ほむらちゃん。私、今日までのほむらちゃんの頑張りを無駄にしちゃうかもしれない。もしかしたら、私もほむらちゃんともっと仲良く出来たかもしれないのに」
私の頑張りを無駄にしちゃうかもしれないから、ごめんね、ね。やはりどんな世界であっても、まどかはまどかということなのね。さっきまで命をかけて戦っていたというのに、どこまでいっても優しい。
互いが互いの瞳を見つめ、言葉もなく時間が過ぎる。いや、それは私の勘違い。実際には一瞬と呼べるような時間しか流れていない。本当ならば一瞬であるにもかかわらず十分にも感じられるような、実際の時の流れとは別の、不思議な時間感覚だった。私たちの意思はすれ違っているのに、それでもなおどこかで繋がっているのではないか。そんな奇妙で心地よい錯誤を感じてしまう。そんな一瞬の感覚だった。
しかし、そんな感覚は一度意識してしまうと急速に崩壊してしまう。しかし、崩壊して然るべき感覚だろう。この感覚は私の独りよがりの物。私はまどかと、それこそ独りよがりの錯誤なんかではなく正しくまどかを知るために、言葉を綴る。
「今度は私の方から聞いても良いかしら?」
「……うん」
一呼吸置く。この質問が、このまどかとの一時の平穏を壊してしまうような気がしたから。しかし、聞かないわけにはいかない。意を決して言葉にする。
「まどかはあの願いで一体何をしようとしているの?」
まどかがさっき言った“これからしようとしていること”。それは魔法少女の契約を、目前で死んだ美樹さやかの蘇生ではなくて、自身の強さを求めたことと関係ないはずはない。しかし、それでまどかは何をするのか。私はそれを知らなければいけない。
まどかは思いをはせるかのように空を見上げる。
「…さやかちゃんには悪いことをしちゃったかな。あの時、さやかちゃんを救うことも私には出来たのに。でも、きっと誰かがやらなきゃいけない事だと思ったから」
「やらなきゃいけない事?」
「私ね、さやかちゃんが死んで、こんなことになった今でも、希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、そんなのは違うって言い張れるよ。……でもね、もしその希望が絶望への落とし穴なんだとしたら、私はそんなのは認められない。認めちゃいけないと思うの。だからそうなる前に終わらせるの」
まどかの考えが分かってきた。しかし、それは無謀としか言えないもの。
「そう、私が全ての魔女と魔法少女を倒すの。この手で。魔法少女が絶望して魔女になる前に、希望を胸に抱いたまま、絶望に気付かないままに!!」
希望を胸に抱いた魔法少女を、絶望に染まる前にそれに気づかないままに消滅させる。ある意味では魔法少女にとって最高の死に方と言えるだろう。形はどうであれその願いは誰かの為に祈られたもの、優しすぎるまどからしい願いだった。
まどかの力なら出来るかもしれない、一瞬そんな考えが浮かぶ。その力を願う祈りによって高められたまどかの力なら。でも、不可能だ。その願いは果たされる前にまどかのソウルジェムは容易く限界を迎えてしまうだろう。
「本当にそんなことが出来ると思っているの?」
「わからない。でも、もう絶望するのも見るのもいやだから」
「……わざわざそのことを私に話したのは?」
「うん、キュゥべえから聞いたほむらちゃんの願いが私だったから、私が戦わないことだったから、だよ。だからこそ、ほむらちゃんにはちゃんと話しておきたかったの。私の願いはほむらちゃんの願いと相いれられることはないから」
「私は貴女を止めるわ。貴女の願いは貴女自身の破滅にしかならない。貴女は戦わせるわけにはいかない」
「ごめんね、ほむらちゃん。でも、私も絶望の未来は壊してみせるって決めたの。だから、ここで止まるわけにはいかない」
雨が降り始める。魔法少女の運命はまるでこの雨のようだ。その運命が希望であろうが絶望であろうが誰にでもわけ隔てなく降り注ぐ。
まどかがベンチから立ち上がり、こちらに振り向き笑顔を見せる。まどかがこのベンチに来た時に思い出した笑顔と同じ笑顔だ。今まで見てきたまどかが、決意を固めた時に見せた笑顔と同じ笑顔。
「じゃ、始めよっか」
その言葉で私はまどかに向かって引き金を引く覚悟を決めた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「やれやれ、やっと始まったようだね」
暁美ほむらの座っていたベンチから少し離れた家の屋根の上。僕―インキュベーター―はそこから鹿目まどかと暁美ほむらの戦いの趨勢
鹿目まどかを魔法少女にする目的は達せられた。彼女に美樹さやかの死体もしくは重度の疲弊状態を見せることによって精神的恐慌状態に陥らせ、感情のままに契約をさせる当初の予定は失敗に終わった。しかし、本来予測していた願いとは別の願いとはいえ鹿目まどかが魔法少女になったことは事実だ。この場はそれで良しとしよう。むしろその願いによって想定外の副産物を得たともいえる。
願いによる鹿目まどかの戦闘能力のさらなる向上。これは思わぬ収穫だ。次の目的への大きな助力となる。
次の目的。暁美ほむら。彼女はこの世界における極めつけのイレギュラーだ。もしも、彼女が時間遡行能力により過去に戻り、この世界に過去から干渉することが可能なのだとしたら、せっかく鹿目まどかから得られるエネルギーによりこの世界が救われるというのに、それが無為に帰してしまうかもしれない。彼女をそのまま放っておくわけにはいかない。
だからこそ、僕は美樹さやかを誘導して暁美ほむらと戦う舞台を用意した。そして、その決着がつく頃―当然美樹さやかは暁美ほむらには勝てないだろう―鹿目まどかをその場に寄こした。鹿目まどかには事前に、“暁美ほむらが鹿目まどかの為に契約し、時間遡行能力を持つに至った魔法少女”であることは伝えてある。同時に、暁美ほむらの行動は全て君の為のものであり、君の為ならば君の友人を殺すことも厭わないだろう、そう言い含めて。
これにより僕の予測では、鹿目まどかは美樹さやかの死を否定したいあまりに、一時の感情に身を任せ、美樹さやかの回復を祈り、魔法少女への変身を遂げる。そして、目前で自分本位な時間の周回を行い、鹿目まどかの為と言いつつその周りのものを破壊する暁美ほむらとの戦闘になるはずだった。
結果は、見ての通りである。過程こそ別の物になったとはいえ、それはたいした問題ではないだろう。鹿目まどかと暁美ほむらは戦う。そして、暁美ほむらは負ける。いくら彼女が時間遡行者であり、人一倍の魔法少女としての経験を持っていたとしても鹿目まどかには敵わない。世界を救うほどのエネルギーを内在した、それこそ世界最強と言っても過言ではないあの魔法少女には、絶対に。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
まどかのエネルギー矢の攻撃を盾で防ぐ。もしくはぎりぎりのところで回避する。戦闘が始まってからしばらく、戦況はこの繰り返しになる。合間に銃で狙おうにも、狙いをつける前に次のエネルギー矢の脅威が私に迫ってくる。
まどかの攻撃は的確だ。先ほどの攻撃と同じようにエネルギー矢は爆散し、私を執拗に狙い追い続けている。いや、正しくは“私”ではない“私の盾の機構”を狙っている。
まどかは何故、時間停止の能力の仕組み―盾の内部機構を動かし、それをスイッチにして私が時間停止の魔法を使っていること―を知っているのだろうか。盾への執拗な攻撃が繰り返される。時間停止ができない。とても初めて変身して戦う魔法少女の戦いとは思えなかった。
エネルギー矢の攻撃から逃げるように上空へ回避、盾で攻撃を防ぎつつ、盾の中から複数の手榴弾を纏めて取り出し、落とすようにばら撒く。当てるつもりはない、視界を少し遮らせればそれで十分。
手榴弾が炸裂。炎と煙、閃光が辺りを包み、まどかの姿が見えなくなる。しかしそれはまどかも同じこと。私の横をエネルギー矢の束が通り抜けてゆく。回避機動を取りつつ、時間停止の為に集中。
盾が半回転し、そこに組み込まれた砂時計が完全に横を向き、時を刻む砂がその流れを停止する。時が止まる。振り続けていた雨はその場に停止し、辺りを包む炎と煙は雨によって流されることなくその場に留まり続ける。
上空からまどかを見下ろしていた私は地面に降り立ち、まどかのいる方向に向けて歩き出す。弓を引き絞った状態で停止したまどかに対し、私は両者が手を伸ばせば触れ合えるほどの距離まで近づき、その場で立ち止まる。時間さえ止めてしまえばあとはすることは一つ。盾の中からハンドガンを取り出し、まどかに向けて構える。体に数発撃ちこみ、魔力を自身の回復に使わざるを得ない状況に追い込む。これで決着がつく。
「!?」
瞬時にその場から飛び退く。
まどかの胸についている桜桃色のソウルジェムが、魔法を使用する時のように陰りを揺らめかせているように見えた。私はまどかに触れていない。私に触れられない限り、この時の止まった世界で私以外の物は、その動きを止めているはずなのに。
周りを見渡す。雨は空中で動きを止めたまま、炎と煙は揺らぎもしていない。時間は止まったまま動き出してはいない。
まどかの方に視線を向け直す。瞬間、私の視界はエネルギー矢の光に包まれた。
「ぐっ」
不意の攻撃に盾を構えることは出来たが、防ぎきれない。踏ん張りが利かず吹き飛ばされる。
地面に投げ出された私は上体だけを起こし、まどかの方へ視線を向ける。まどかは、まるで時が止まっていないかのごとく嬉々とした振る舞いで周りを見渡している。
「わぁ~、すごいねほむらちゃん。これが時間の止まった世界なんだ。」
「何故…」
「雨がお饅頭みたいな形してそこら中に浮いてて、それが街の明かりを受けてキラキラと反射して……すごく、綺麗」
「何故、貴女がこの止まった時の中を動けるの?」
興味深げに周りをきょろきょろと見まわしていたまどかは、一瞬動きを止めた後に、ゆっくりと体ごとこちらに顔を向ける。表情こそ笑顔だが、その動きには悠然としたものがある。
「私の願いは、全ての魔法少女と魔女を倒して、絶望の未来を迎えないようにすること。この力はそのために得た力。だから、どんな魔法少女にも負けないよ。ほむらちゃんの時間操作の魔法にも……負けない」
時間停止を解除。空中に停止していた雨粒が一度にその動きを取り戻し、地面に吸われてゆく。
「……ほむらちゃん。もう、やめにしない」
「何を言っているの?」
「戦ってみてわかったの。ほむらちゃんの魔法は時間停止だけ。銃での攻撃も私の弓には遠く及ばない。ほむらちゃんは私には勝てないよ」
まどかは倒れている私に近づき、右手を差し伸べる。
「だから、ほむらちゃんにお願いがあるの。こんなことはもう止めて、私と一緒に戦わない?私とほむらちゃんの二人で魔女と魔法少女を倒そう。ほむらちゃんの言うように私一人じゃ無理なのかもしれないけど、きっと二人でなら出来るはずだから」
それは甘美な誘いだった。まどかの手は、私にとって一種の救いも同然である。今すぐにでもその手を取ってこの戦いを止めてしまいたい。まどかとの戦いなんてやめて、二人であの時のように一緒に戦って、笑って、歩んでいきたい。
…でも、それはできない。私はまどかと共に闘うのではなく、まどかを守るって決めたから。
「ごめんなさい、まどか」
言葉を掛けるのと同時に体のばねを使いその場から飛び退き、体勢を立て直す。そして、真正面にいるまどかに向けて改めて銃を構える。
まどかもそれに呼応するように弓を構え直し、ゆっくりと弦を引き絞る。
「ううん、気にしないで」
「これで…最後にしましょう」
「うん……」
数瞬の沈黙の後、まったく同じタイミングに引き金が引かれ、矢が放たれる。私は引き金を絞るのと同時にまどかの方へ一直線に走りだした。
私の放った銃弾はまどかのエネルギー矢と接触、その場で光に飲み込まれ消滅する。
眼前には私の銃弾をかき消したエネルギー矢。私はそれに突っ込む形になる。しかし、防御はしない。まどかの放つエネルギー矢は私の目前で三つに分裂し、一つは左肩の横を通り抜け、一つは右腹部を掠り、最後の一つは首の中心部を直撃、貫通する。私はその衝撃で吹き飛ばされそうになるのを堪え、そのまままどかの方へ駆ける。
「!?」
「――――――!!!」
驚きのあまり二の矢を放ちそびれるまどか。そのまどかに向かって私は声にならない叫び声を上げながら、その両太股に向かって銃弾を放つ。まどかの太股に二つの銃弾は掠めるように命中。一瞬糸の切れた操り人形のようにバランスを崩すまどかに対し、私は勢いのままにぶつかり、押し倒す。まどかの上に馬乗りになり、足で両腕を固定し、銃をまどかの胸のソウルジェムに突きつける。
「―――――――」
声が出ない。魔法少女にとって人間の肉体は操り人形と同じようなものである。普通の人間なら死ぬような怪我でも魔法少女なら死なない。魔法少女にとって守るべき本当の体はソウルジェムである。だから、人の肉体が死ぬような怪我を負ったとしても魔力がある限り、治る早さと方法に個々人の差があれど、死ぬ前の状態にまで完治できる。
「ぐ……がっ………」
ズタズタにされた首内部の血管から溢れだす血液が、肉体が完治しきる前に喉へと逆流し、口から吐き出される。私から吐き出された血液はそのまま馬乗りにされたまどかへと降りかかる。
「…ほむらちゃん……」
まどかが心配そうな声で私に話しかけてくる。今命の危険に晒されているのは私ではなく、自分だというのに。
戦いが小康状態になったことにより、魔力が首の怪我へと集中される。怪我は魔力によって高められた代謝機能により急速に塞がり、元の怪我のない状態まで回復していく。
私は銃を構えたまま言葉を紡ぎ出す。
「やっぱり、貴女はどこまでいっても優しいのね。本当…魔法少女には向いてないわ」
「…どういうこと?」
「まどか。貴女は私の命を一瞬たりとも狙わなかったわ。どんなに苛烈に見える攻撃もぎりぎりで避けられるか、もしくは、盾で防げるかの攻撃しかしてこなかった」
そう、最初から繰り返された執拗な盾への攻撃は、私の時間停止の魔法を遮るための物ではない。あれは、そもそも盾で防がれること事態が目的だった。そうでなければ、まどかは時の止まった世界に入ることが出来るのに、わざわざ膨大な魔力を消費しての高密度の攻撃をしてきたことへの説明が付かない。
私がまともな反撃が出来ないほどの攻撃、時間停止能力への介入、まどかにはその二つを出来ること。それに加えて、まどかの『どんな魔法少女よりも、どんな魔女よりも強い、絶対に強い魔法少女にして』という願いの内容を考えれば“まどかが私よりも圧倒的に強い”というのはすぐに思いつくことだった。
「貴女は私の命を奪わないで、私に対して魔法少女としての圧倒的な力の差を見せつけることでこの場を終えようとしたわね?」
まどかは顔を俯かせ、少し逡巡するかのようなそぶりを見せる。しかし、それは一瞬だけで次の瞬間にははっきりとした声で私に語りかけてくる。
「…やっぱりほむらちゃんはすごいや。これだけの力の差があったのにひっくり返しちゃうんだもん」
「それは、貴女がやさしすぎるからできたことよ。私は今までに何度も何度も貴女を見てきた。だからよく知っているのよ。貴女は自分の目的の為に関係のない犠牲を強いることが出来るような人間じゃないことは」
「あはは、ほむらちゃんには敵わないよ」
まどかが魔法少女の変身を解く。それは実質上のまどかの降伏宣言だった。よかった、まどかが負けを認めてくれた。体中に張っていた緊張の糸が緩む。まどかの胸をポイントしていた銃を盾の中にしまい、まどかから降りて、改めて倒れているまどかの横に座り直す。
「さあ、帰りましょうまどか。貴女にはこれからも今までと同じように学校に通って、今までと変わらない生活をしていてほしい。魔法少女になったからと言って何かをしようなんて思わないで。グリーフシードのことなら心配しなくていいわ。今は一つしか予備がないけど、私があなたの分のグリーフシードも確保す……」
「ほむらちゃん、ごめんね。それは無理みたい」
「え…」
まどかがゆっくりとした動きで右手を私の目の前まで持ち上げ、その拳を広げる。手の中にあるのはまどかのソウルジェム。それも普通の魔法少女よりもはるかに早く穢れを貯め込んだ、グリーフシードへの変貌を寸前にまで控えたソウルジェム。
「ッ!? どうしてまどかのソウルジェムが」
言葉を口にした瞬間思い出す。
『鹿目まどかの戦いは絶望と共にあるということだよ。ただでさえ魔力を使えばソウルジェムは穢れると言うのに、絶望しながらの戦闘行為となるとその進行の度合いは美樹さやかの比じゃないだろうね』
インキュベーターが私に向けて言った言葉。今のまどかは絶望と共にある。故にソウルジェムはすぐに穢れてしまう。まさかここまで穢れの進行が早いものだとは思わなかった。だから、戦闘中も特別気にかけていなかった。組み伏せた後も銃口に隠れていたために、きちんと見ていなかった。
「罰が当たっちゃったのかな。私、絶望とかそんな嫌なものは全部壊れてなくなっちゃえばいい、って思ってたの。でもね、その考えは駄目なの。皆皆希望と絶望の両方を持って生きてる、それが当たり前。だから、私一人が、それが嫌だからって勝手に奪っちゃうのはやっぱり駄目なの。でも我慢できなかった。皆が絶望に堕ちていくのが分かっていて何もしないでいるなんて我慢できなかった」
「しゃべらないで。すぐにグリーフシードを出すわ」
盾の中からグリーフシードを取り出し、左手でまどかの腕を支え、手の平の上に乗るソウルジェムにあてがおうとする。
あてがう瞬間、まどかの体が光に包まれる。魔法少女へと変身するための光。
「まどか、何を!?」
魔法少女姿となったまどかは私の不意を突いて、上体を起こし、私の手の中にあるグリーフシードを奪う。そして、空いた何も持っていない右手で私の左腕を押さえつける。
まどかは私の左手の甲に付いている宝石、私のソウルジェムにグリーフシードを無理矢理あてがった。グリーフシードは私のソウルジェムの穢れを勢いよく吸い取っていく。
「何をしているの!!早く手を放して!!」
まどかの暴挙を止めるために腕を振り解こうにも、まどかの押さえつける力が強すぎて一切左腕が動かせない。
グリーフシードが私のソウルジェムの穢れを吸い取り終える。魔女との戦闘、美樹さやかとの戦闘、まどかとの戦闘、それらの戦いで穢れた私のソウルジェムはグリーフシード一つで綺麗にその穢れを解消し、元の輝きを取り戻した。
そして、私のソウルジェムの穢れを吸い取ったグリーフシードはほとんど限界だった。これ以上は碌
「まどか…貴女…なんてことを」
まどかの変身が解け、そのまま力なく地面に倒れこむ。こんな状態のソウルジェムでまともに変身していられるわけがない。
急いでまどかのソウルジェムにグリーフシードをあてがう。グリーフシードはまどかのソウルジェムの穢れを微かに吸い取ったが、すぐに限界が来てしまった。
「よかった…これでほむらちゃんはまだ生き続けることが出来るね…」
「そんなの、いいわけないじゃない!!どうしてこんなことを?まだ私のソウルジェムには余裕があったのに。貴女を助けることが出来たのに…」
そう言うとまどかは微かに笑みを浮かべた。まるで自分がやったことに満足しているかのように。
「ねぇ、ほむらちゃん。私ね、気付いてたの。私がまともに戦える魔法少女じゃないって事。あの公園でほむらちゃんと戦ったすぐ後にね。だって、前に見せてもらったマミさんやさやかちゃんのソウルジェムよりずっと穢れがたまるのが早いんだもん。変身してるだけで目に見えて穢れていくなんて思わなかったよ。…うん、だから、私の願いはあの瞬間に終わってたの」
「まどか…」
「でも、それでも私、自分を抑えきれなかった。そのまま諦めることなんて、できなかった。だから、もう一度ほむらちゃんと戦えば、もしかしたら何とかなる方法が見つかるんじゃないかな~、なんて馬鹿なこと考えて。…ごめんね、ほむらちゃん。私のわがままでこんな闘いを始めて」
雨が霧雨のようになり、視界が霞んでいく。
今になってやっとわかった。戦いの最中、まどかが私に向けて差し伸べた手は私の為だけに差し伸べた手じゃなかった。あれはまどかの叫び声。自分で自分を止めようと思っても、止めることが出来なくて。どうしようもなくて。だから、私に助けを求める為に伸ばした手だった。なのに、私はその手をはねのけてしまった。
もう、私には何もできない。まどかを救えない。今の私にはまどかの為に涙を流すことくらいしかできない。
「私は、まどかが望むなら、何度だって、誰とだって、戦っても良かった。貴女が私と一緒に戦うことで希望を見つけることが出来るのなら、私は貴女と共に永遠に戦い続けても良かった…」
まどかがゆっくりと首を振る。
「それは違うよ、ほむらちゃん。私は別に戦いをしたかったわけじゃないの。ただ、絶望の未来を迎えること、それに抗うことを止めること、その両方を我慢できなかっただけ。たぶん、こんなことになった今でもできない。だから、ほむらちゃんからグリーフシードをもらっても、きっと私は戦うことを止めないと思う。でも、それはほむらちゃんにすごく迷惑をかけちゃう。私は、そんな自分も許せないの。そうしたら、こうなっちゃった」
「そんな…そんなの。私は…私は……貴女が生きていてくれればそれでよかった!! それ以外ことなんてどうでもいい。貴女さえいてくれれば、私はどんなことにでも耐えることが出来たのに」
「ほむらちゃん……」
まどかの手がゆっくりと私の頬に伸びてくる。
「泣かないで、ほむらちゃん。ほむらちゃんはさ、綺麗なんだから、そんな顔似合わないよ」
まどかの指が頬を流れる涙を拭う。まどかは笑顔だった。私の好きな、まどかの笑顔。
「ありがとう、こんなわがままな私にここまで付き合ってくれて。でも、もういいんだよ。ほむらちゃんは、もっと自由に生きていいの。こんなわがままな私なんて忘れて、鳥のようにもっと、もっと自由にね」
ピキリ 霧雨と雑音の中、ひびの入る音が一際響いて聞こえる。私とまどかに終わりを告げる音。
「もう時間がないみたいだね。…ほむらちゃん。最後にもう一つだけお願い聞いてくれるかな?」
「ええ。何でも言って」
まどかはゆっくり右手を持ち上げ、その中に包まれた壊れかけのソウルジェムを私に見せる。
「私の最後の戦い、見届けてほしいの」
「心配しないで、ちゃんと見届けるわ」
まどかはその言葉を聞くと安心したかのように眼を一瞬だけつぶった。
私は、精一杯の笑顔を作り、両の腕でまどかの力ない右腕を支える。まどかの腕から微かな鼓動を感じる。
「じゃ、始めるね」
右腕から感じる鼓動が早く、強くなる。まどかのソウルジェムを握る指から光が漏れる。もう変身できるような余力はない。文字通り死力を尽くし、最後の魔力を右手に集中させることで体を動かしている。下手をすればソウルジェムを砕く前に穢れが限界に達して、グリーフシードが誕生してしまう、そんな瀬戸際の戦い。
「――――」
――まどかのソウルジェムが砕け散る。同時にまどかの腕から感じていた微かな鼓動が消える。
「お疲れ様、まどか…」
自分自身が生み出す絶望を否定するための、自らの手で自分を殺す戦い。まどかの最後の戦い。まどかはその戦いに勝った。まどかの死に顔は安らかに見えた。まだ未練があるはずなのに、それでもまどかは自分に満足しているかようだった。
「やれやれ、まさかこういう結末になるとはね。つくづく人間というものは僕たちの理解の外側にいる生き物だと痛感させられるよ」
インキュベーターの声が脳に直接響く。周りを軽く見渡してもその姿は見受けられない。
「で、君はこれからどうするつもりなんだい?暁美ほむら」
「そんなもの、決まってるわ」
倒れているまどかを横抱きの要領で抱きあげる。降りしきる雨がまどかの体から急速に熱を奪い去り、既にその体からは温もりを感じることができなかった。
盾の砂時計が完全に落ち切るまで―私が時間遡行の能力を使えるようになるまで―にはまだ時間がある。ならば、今はこの世界のまどかの為にやれる限りのことを尽くすことにしよう。出来ることはたくさんあるはず。
それにしても……
「まどか、貴女は一つ勘違いしてるわ……」
私に、鳥みたいに自由になってほしい、とまどかは言った。しかし、それは違う。私は私の自由意思でまどかを守っている。それこそ鳥で例えるのなら“幸福な王子”の燕と同じ。私は貴女がいてこその私なのよ。
…それも少し違うわね。そもそも私は王子様がボロボロになることの手伝いなんてできない。
いや、今はそんなことはどうでもいいわ。
「今はゆっくり、お休みなさい。王子様
まどかの頬に残る雨で流れきれなかった私の血を唇で拭う。
(「魔法少女まどか☆マギカ ほむらVSまどか 魔法少女大決戦! さよなら永遠の友達」 了)
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございました。もしよろしければ、感想、誤字脱字報告、ここはどうなんだ?という指摘等等、があればよろしくおねがいします。
余談
本文のタイトルは今年の特撮映画のタイトルまんまのパロディです。他にも本文中にも少しばかりのヒーロー物パロディが入ってます。よろしければ見つけてみてください(シリアス物に何故パロディ入れた?とかも指摘されそうですが)
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