『WOC Nursing』2015年1月号<高齢者のかゆみ-見逃しで痛い眼にあう前に>より抜粋。
高齢者の日常のスキンケアについて解説します。
Point
- 高齢者へのスキンケアの必要性がわかる
- 洗浄方法がわかる
- 保湿・保護の方法がわかる
- スキンケアに必要な用品の選択ができる
濱部恵里子
(独立行政法人国立病院機構神奈川病院 副看護師長,皮膚・排泄ケア認定看護師)
はじめに
高齢者の皮膚は加齢に伴う影響として皮膚の菲薄化,弾力性の低下,ドライスキンといった状態から皮膚障害や損傷のリスクが高くなります。これらを予防していくためには,脆弱な皮膚を理解し,低下した生理機能を補うスキンケアが必要となります。
本コラムでは高齢者の日常生活におけるスキンケアの実際について解説します。
〈目次〉
高齢者のスキンケアの必要性
スキンケアとは皮膚の機能を良好に維持する,あるいは向上させるために行うケアの総称です。
スキンケアの要素には①洗浄・清潔,②保湿,③保護(図1)があります。
洗浄するだけ,保湿をするだけでは,皮膚の機能を良好に維持するのは難しくなります。スキンケアは,洗浄,保湿,保護の過程をそれぞれ適切に行うことが重要です。
さらに高齢者の皮膚は,皮脂の分泌低下や水分保持機能の低下からドライスキン(図2)となりやすく,さらには角質バリア機能の低下(図3)により外部から細菌や真菌,アレルゲンといった有害物質などの刺激を受けやすくなるといった特徴もあります。これらは湿疹,かゆみといった症状を起こしやすく,それに伴い掻傷などの二次的な損傷のリスクも高くなります。
また加齢による皮膚の菲薄化や弾力性の低下(図2)といった変化により,軽微な外力でも損傷しやすくなります。
そのため角質バリア機能を維持し,皮膚の耐久性を保持するスキンケアが必要です。
高齢者に対する洗浄・清潔の方法
入浴時の洗浄方法
スキンケアの1つ目として必要なことは,まず皮膚を清潔に保つことです。
身体から出る汚れの原因となるものは,皮脂・汗・古くなった角質です。これらがほこりと混じり合い垢となります。身体から出る汚れには,①脂質汚れ(皮脂に由来),②タンパク汚れ(鱗屑などに由来),③水溶性の汚れ(汗,不感蒸泄,尿など)があります。
皮膚の汚れを落とすためには入浴やシャワー浴で,石けんなどの洗浄剤を使用し,洗い流すことが一般的です。
しかし高齢者の皮膚では,汚れとともに皮脂膜まで取り除いてしまいがちです。もともと皮脂の分泌は低下した状態であるため,さらなるバリア機能の低下を招き,悪循環となってしまいます。
そのため皮脂を落としすぎない洗浄をしなければなりません。それには過度な洗浄を避けることと,洗浄剤の選択が必要です。また損傷しやすい皮膚は,摩擦などの機械的な刺激を避けるため,十分な泡で愛護的に洗うことが推奨されています。
入浴時の留意点(表1)
入浴は毎日でもかまいませんが,1日1回とし,何度も石けんを用いた洗浄は行わないようにします。
石けんは刺激の低い弱酸性の洗浄剤や“マイルド”や“しっとり”といったタイプのものを選択します。
毎日入浴しない人は,腋窩,頚部,陰部,足,耳介周囲など,発汗・汚染の多い部分などを選択的に洗浄するように勧めましょう。
頭皮は,皮脂の分泌障害などにより皮脂や汚れもたまりがちになるので,入浴時には洗浄するようにします。ただし,1日1回に留めましょう。2回以上のシャンプーは皮脂の取りすぎとなり,かゆみの原因にもなります。
また洗浄剤の大量使用は,すすぎ残りなどから接触皮膚炎などの原因となるので注意し,しっかり洗い流すようにします。
洗い方ですが,身体は機械的な刺激を避けるため,ナイロンタオルでのゴシゴシ洗いはせずに,十分な泡を作って手で洗うようにします。頭皮も同様に,泡立ててから洗うようにします。
爪は,伸びていると皮膚を損傷させてしまうので,短めに保ち,やすりでなめらかにしておきます。
熱い湯温はドライスキンを助長させるため,シャワーも湯船もお湯の温度は38〜40℃程度とします。なるべく硫黄成分の入らない保湿効果のある入浴剤を使用することもドライスキンの予防になります。かゆみの強い場合は身体が温まるとさらにかゆみが増強されるので,湯船につかるのではなく,シャワー程度に切り替えることも効果があります。
泡の利点
泡で洗うことの利点(表2)としては,細かい汚れまで吸着しながら泡が洗浄成分を効率よく広げムラなく働きかけることや,泡がクッションとなり手と皮膚との摩擦による刺激を和らげ,皮脂膜の取りすぎを防ぎ,角質層を守ることができることが挙げられます。
また,すすぎがはやいといった利点があります。泡洗浄は,肌に負担をかけず皮膚の生理機能を維持しながら行える,優秀な洗浄方法です(図4)。
皮膚にサインペンで印をつけ,そこに泡をのせて軽くなじませる。そのあと微温湯で流した。泡が吸着し汚れを包み込むので,擦らなくてものせるだけである程度汚れを落とすことができる
洗浄剤の選択
私たちヒトの皮膚表面には皮脂膜があり,弱酸性に維持されています。これは外部からの異物の侵入や細菌・真菌の増殖を防ぐとともに,水分の蒸散を防ぎ,バリア機能を果たしています。一方で,石けんの主成分は強アルカリ性(図5)です。
そのため洗浄力が強い反面,とくに角質バリア機能の低下した高齢者の皮膚にとっては化学的刺激が強く,また細胞間脂質を溶出させるため,ドライスキンの原因ともなります。そのため日常で使用する洗浄剤の選択には弱酸性の石けんが望ましいといえます(図6)。最近ではさまざまな種類の洗浄剤(表3)がありますが,皮膚の状態,汚れの程度,清潔方法に合わせた選択が必要です。
高齢者の保湿と保護
高齢者の皮膚と保湿の関係
皮膚表面にある角質層は70%以上を水分が占め,身体を乾燥から防いでいます。角質の水分保持には角質細胞間脂質(セラミド),天然保湿因子(NMF),皮脂膜などが関与しています。高齢者の皮膚では加齢に伴い皮脂の分泌量が低下するため,角質表面の皮脂膜形成機能や角質細胞間脂質のセラミド形成機能も同時に低下します。そのため,常に乾燥した状態に傾いていることになります。したがって,不足しがちな角質層の保湿物質を補う必要があります。
保湿因子の働き
角質細胞間脂質
細胞膜における皮脂の1つで,角質細胞の隙間を埋め,水分の蒸散を防ぐ働きがあります。一般にセラミドともいわれます。
天然保湿因子
角質細胞内に存在し,水分を吸収・保持するため,潤いのある皮膚を保つ働きをします。主な成分は,アミノ酸,乳酸,尿素,ミネラルなどです。
皮脂
脂肪酸などを含み,皮脂腺から分泌され,皮膚への親和性に優れています。
皮膚の常在菌によって分解されることで脂肪酸を生じ,皮膚表面で弱酸性となり,バリア機能を果たしています。
保湿の方法
保湿は入浴後,皮膚がやや湿った状態で塗るのが効果的(15分以内)です。入浴後は皮膚がある程度浸軟状態にあり,保湿成分を含んだローションが浸透しやすくなります。また,軟膏やクリームは油膜で皮膚を覆うので,保護する効果が高くなります。
保湿剤の塗り方(表4)としては,
①入浴後など清潔にした手に保湿剤をとり,そのまま塗り広げるのではなく何か所かに少しずつ点在させます。
②それから手のひら全体でやさしく広げて,できるだけ広範囲にのばして塗ります。
③このとき,できるだけ皮溝(図7)に沿って塗りましょう。
④皮膚がややしっとりする程度に量を調整します(図8)。
皮膚を弱酸性石けんで洗浄後,乳剤性の保湿剤を塗布。少しテカリがある程度に保湿する
保湿の種類
保湿剤は,油性軟膏,乳剤性軟膏,水溶性軟膏の基剤と,ワセリン,スクワラン(オイル),グリセリン,尿素,セラミド,ヘパリン類似物質といった保湿成分などの配合剤の組み合わせにより作られています。
油性軟膏(基剤)
油性軟膏の特徴としては,ワセリンベースに代表されるもので皮表に油膜をつくり,皮膚に含まれている水分が蒸散しないようにすることで,角質水分量を維持する役割を果たします。そのため,保湿にはやや時間がかかります。また,べたつくといった感触があるため,夏の高温多湿の時期には不快感を生じさせることもあります。しかし,痂皮の軟化や保護には優れるといった利点があります。
乳剤性軟膏(基剤)
乳剤性軟膏は,界面活性剤により水と油の両者を乳化したものです。水で洗い流せ,べたつかず,皮膚への浸透性も高いため,使用しやすい特徴があります。
水溶性軟膏(基剤)
水溶性軟膏はポリエチレングリコールを基剤とし,油のような外観・性状をもっています。高い吸湿性を有し,水分を含むと柔らかくなるので,水で簡単に洗い落とせます。
保湿成分(配合剤)
保湿成分(配合剤)の特徴を表5に示します。
さまざまな種類がありますが,特徴を理解し無刺激性で使用しやすいもの,継続して使用できるものを選択することが望ましいといえます。
皮膚の保護
清潔,保湿を行い,角質バリア機能を維持することでも皮膚を保護することにはなりますが,皮膚障害をもたらす物理的・化学的要因から遮断することも保護になります。
皮膚に影響を与える刺激には,紫外線,機械的刺激,排泄物の接触による化学的刺激などが挙げられますが,主に日常生活において必要となるのは紫外線対策です。
紫外線はシミやしわを作る他,皮膚癌の発症も促すことから,日常的に防いでいくことが必要です。日中の外出には帽子や日傘の使用や,または皮膚が露出している部分にはサンプロテクト剤の使用を勧めましょう。
おわりに
高齢者にとって,皮膚障害や損傷のリスクを考えると,日常のスキンケアは不可欠であるといえます。
しかし老化に伴う身体機能の低下や生活習慣などから,スキンケアを日常的に行うことが難しい場合もあります。最近ではスキンケア用品が多種多様にあります。それらの特徴や使い方を知り,スキンケアが無理なく継続できるように個々の活動状況や生活スタイルに合わせた選択を提供することも重要であると考えます。
[文献]
- (1)松原康美(編著):〔ナーシング・プロフェッション・シリーズ〕スキントラブルの予防とケア−ハイリスクケースへのアプローチ−.医歯薬出版,pp5-6,2008.
- (2)岡本充子・西山みどり(編著):高齢者看護すぐに実践トータルナビ−成人看護とはここがちがう! おさえておきたい身体機能の変化と慢性疾患−.メディカ出版,pp36-38,2013.
- (3)田中秀子(監修):すぐに活かせる! 最新 創傷ケア用品の上手な選び方・使い方(第2版).日本看護協会出版会,pp101-113,2010.
- (4)内藤亜由美・安部正敏(編):スキントラブルケア パーフェクトガイド−病態・予防・対応がすべてわかる!−.学研,pp10-12,2013.
[Profile]
濱部恵里子(はまべ えりこ)
独立行政法人国立病院機構神奈川病院 副看護師長,皮膚・排泄ケア認定看護師
2006年 独立行政法人国立病院機構神奈川病院 入職。2010年 皮膚・排泄ケア認定看護師資格 取得。
*略歴は掲載時のものです。
本記事は株式会社医学出版の提供により掲載しています。/著作権所有 (C) 2014 医学出版
[出典]WOC Nursing2015年1月号
P.37~「高齢者の日常のスキンケア-石けん,シャンプー,風呂など-」