ダヴィンチXiによるロボット支援手術(前立腺癌、腎癌)

平成28年10月 治療開始

ダヴィンチ は、アメリカのインチュイチブ社が開発した手術支援ロボットです。 基本的に腹腔鏡下に行う手術を支援します。 日本では、平成 24年 4月 前立腺癌に対する前立腺全摘出術が保険収載 され、平成 28年 4月に 腎癌に対する腎部分切除術が保険収載 されました。 特徴は、腹腔鏡下手術や開腹手術に比較して精度の高い手術が可能になります。 前立腺癌 では、 術後尿失禁の早期回復勃起神経温存手術成績の向上 が確認されています。 腎癌の腎部分切除術 では、 癌根治率、腎機能温存、合併症低下において通常の腹腔鏡手術に勝る ことが確認されています。 当院では、平成 28年 6月 4日に導入し、 10月から運用開始しました。 手術支援ロボット ダヴィンチXi による 前立腺癌の前立腺全摘出術と腎癌の腎部分切除術 は、12月までに合わせて25症例行い、順調に運用しています。

腹腔鏡手術

25年以上歴史ある 身体に負担が少ない( 低侵襲 )患者様にやさしい手術方法 です。トロッカーポートという煙突のような筒を 3 ~ 5本腹壁から挿入し、お腹に炭酸ガスを注入( 気腹 )してお腹の中を膨らました状態で、トロッカーポートから内視鏡と手術器具を挿入して行う手術です。 摘出すべき臓器は取り出せる最小の切開創 から体外に取り出します。 摘出する臓器のない手術や摘出すべき臓器が小さい手術では、さらに切開創が小さくてすみます。 また腹腔鏡手術が 他の手術に勝っているのは手術中出血が最も少ない点 です。 これは 気腹( お腹の中を炭酸ガスで膨らませて手術空間を作る )による気腹圧( 水銀柱圧で 10mm 前後 )をかけるため静脈からの出血が減少するから です。
現在は手術技術が進んだ結果、気腹による副作用( 皮下気腫・炭酸ガス塞栓 )などもほとんど発生しなくなり、循環動態への悪影響に関しても麻酔管理技術の向上によって安全に行えるようになりました。
当科では平成 20年 5月から、名古屋大学泌尿器科学教室の泌尿器腹腔鏡技術認定医である後藤百万教授、服部良平先生 ( 平成 24年 6月まで准教授、現在名古屋第1赤十字病院腎泌尿器科内視鏡外科部長 )、吉野能講師、松川宜久助教 にご指導いただき開始し、平成 24年 4月 部長成島医師が 泌尿器腹腔鏡技術認定医 を取得しました。 平成 23年からは 副腎腫瘍に対する腹腔鏡下副腎摘出術 を、平成 26年 12月から 膀胱癌に対する腹腔鏡下膀胱全摘出術 を、平成 27年 2月から 腎盂尿管移行部狭窄症に対する腹腔鏡下腎盂形成術 を開始しました。 平成 28年 12月までに 118症例 施行し全例術後経過良好です。
また 子宮筋腫や卵巣良性腫瘍の合併された骨盤臓器脱患者様 に対して、平成 24年 12月から 腹腔鏡下に子宮筋腫や卵巣腫瘍の摘出 と同時に 骨盤臓器脱をメッシュで吊り上げる腹腔鏡下仙骨腟固定術( LSC ) を開始しました。 平成 26年 4月からは保険適応 となり、子宮筋腫や卵巣良性腫瘍の合併しない骨盤臓器脱患者様 にも行えるようになりました。 平成 28年 12月までに386症例 施行しましたが 経過は極めて良好 で、現在 1ヶ月に 10 ~ 20件 行っています。

女性骨盤臓器脱手術=性器脱(子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・腟断端脱)

お産による骨盤内支持組織の裂傷や加齢などが主な原因で、腟口から子宮・膀胱・直腸などが脱出する女性特有の疾患です。 骨盤臓器脱 は英語では Pelvic Organ Prolapse と言い我々専門医の間では POP と呼ばれています。 外陰部違和感・下垂感や排尿困難・頻尿・尿失禁・便秘などの症状を伴うことが多く、入浴時や排便排尿時に外陰部にピンポン玉のようなはれもの ( 腫瘤 ) を触り気づかれることが多いようです。

【 正常な女性骨盤臓器位置 】
【 膀胱瘤の女性骨臓器位置 】
【 子宮脱の女性骨臓器位置 】
【 直腸瘤の女性骨臓器位置 】
【 腟断端脱の女性骨臓器位置 】
今世紀に入り従来の手術方法に比べ身体への負担が少ない(低侵襲)で再発率の低い メッシュ を使用する TVM( Tension-free vaginal mesh )手術 がフランスで開発され、平成17年 に日本に導入されました。 当科では 平成19年4月から平成28年12月31日まで 973例 施行し、良好な手術結果を得ています。 当科では 7日間の入院 で施行しています。 現在、LSC(腹腔鏡下仙骨腟固定術)が増加 したため、以前の月15~25件よりは減少しましたが 月に 10件 程度のペースで手術を行っています。
子宮筋腫や卵巣良性腫瘍の合併された骨盤臓器脱患者様 に対して、平成24年12月から 腹腔鏡下に子宮筋腫や卵巣腫瘍の摘出 と同時に 骨盤臓器脱をメッシュで吊り上げる 腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)を開始しました。 平成26年4月から保険適応 となったため、子宮筋腫や卵巣良性腫瘍 の合併のない骨盤臓器脱患者様にも広く行うことができるようになりました。 平成28年12月までに 386例 施行し、現在 月10~20件のペース で行っています。 経過は極めて良好で、再発率も極めて低率 です。 入院期間は 7日間 です。
【 TVMのメッシュ挿入位置 】

手術用の糸と同じ材質の身体になじみやすい素材のポロプロピレン糸を編んだメッシュを下の図のように、膀胱と前腟壁の間( 前壁メッシュ:A-TVM )と直腸と後腟壁の間( 後壁メッシュ:P-TVM )に腟壁を切開して埋め込む手術(経腟手術)です。膀胱瘤の場合は前壁メッシュだけ、直腸瘤の場合は後壁メッシュだけ埋め込みますが、子宮脱や腟断端脱の場合は前壁メッシュと後壁メッシュ両方を埋め込みます。比較的大きなメッシュを埋め込む手術でプロリフト型TVM手術といいます。それに対して比較的小さなメッシュを埋め込んで骨盤臓器脱を治す手術方法のエレベート型TVM手術を平成25年11月に導入し、H26年9月までに166例施行しました。エレベート型TVM手術は、子宮脱に対しても前壁メッシュだけで治療できるため手術時間が短縮しました。さらに、平成26年9月からは、エレベート型TVM手術に代わってアップホールド型TVM手術を導入しました。アップホールド型TVM手術は、エレベート型のTVM手術に比較してさらに短時間で行える身体に負担の少ない手術です。平成28年12月までに 222例 施行しましたが、プロリフト型TVM手術エレベート型TVM手術に比べて 術後疼痛が少なく合併症・再発率が少ない 素晴らしい手術です。
しかしながら、平成24年12月に開始した 腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC) が、アップホールド型TVM手術勝る成績 であることが判明したため、現在では 腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)が第一選択の手術 となりました。

プロリフト型TVMの前壁用メッシュ

プロリフト型A-TVMの手術模式図

プロリフト型TVMの後壁用メッシュ

プロリフト型P-TVMの手術模式図

エレベート型TVMのメッシュ

アップホールド型TVMのメッシュ

エレベート型TVM手術模式図

アップホールド型TVM手術模式図

女性骨盤臓器脱手術に対するTVM(メッシュ)手術
【 LSC手術 】


LSCメッシュ

LSC手術摸式図
全身麻酔下に腟壁の裏側にポリプロピレンメッシュのシートを挿入し、このシートに連続した幅 2.5cmのテープを仙骨前面に固定し下垂を矯正する 腹腔鏡下手術 です。 手術時間は約 2.5時間です。 経腟的メッシュ手術(TVM手術)に比較して術後の 臀部~大腿痛が無い こと 性生活に影響の少ない ことが特長で、TVM 手術が禁止されている 50歳未満の年齢の方にも行うことができます。 また、子宮筋腫や良性卵巣腫瘍の合併症に対しても同時に治療 が行えます。 通常子宮体部は摘出し、卵巣は 65歳以上になるとホルモン分泌機能が完全に停止するため、ご希望の方のみ 『卵巣がん発症予防目的』 で摘出します。 TVM に比べて手術時間は長いですが、出血量は TVM 手術より少なく、TVM 手術後の約 5%に見られた一過性の排尿困難の合併症もなく、再発率が現在 2.4% ( 333人中 8人が再発しましたが、再手術が必要ない程度です) と海外の再発率 4 ~ 10%の成績に比べ低く、術後成績の優れた手術です。 入院期間は TVM 手術と同じ 7日間 です。

LSC術中写真 (H28.8.15)

女性泌尿器科・ウロギネセンター
( ☆ 女性泌尿器科外来 )⇒(平成24年6月からウロギネセンターに名称変更し機能を移行しました)

女性特有の主に骨盤臓器脱と腹圧性尿失禁を対象とした女性専門外来です。
 平成20年 4月に開設し、泌尿器科部長 成島医師 が診療を行っていましたが、ウロギネセンター長 (泌尿器科部長兼任) 成島医師に、皮膚排泄認定 (WOC) 看護師、看護師、助産師、排尿機能検査士、事務が加わり、以前より強力できめ細かい医療サービスを提供できるようになりました。 また平成29年 1月からは、 女性泌尿器科 を標榜できるようになったため、 女性泌尿器科・ウロギネセンター となりました。 ウロギネセンター外来月2回 毎週金曜日13:30~15:30( 電話予約制 ) に診療しています。 当院 女性泌尿器科・ウロギネセンターのご案内(PDF)をご覧ください。 なお、診察・治療をお急ぎの患者様は、同じ診察・治療を泌尿器科外来(火)(木)にも行っておりますのでウロギネセンター または 泌尿器科外来 までお電話ください。

連絡先
052-551-6121(名鉄病院代表)平日8:30~17:00
(女性泌尿器科・ウロギネセンターまたは泌尿器科外来につないで下さい)

前立腺肥大症手術

前立腺肥大症は 50歳以降の男性に最も多い泌尿器科的疾患で、排尿困難や頻尿が特徴的症状で進行すると全く尿が出ない 尿閉腎不全 に発展することがあります。 中等症までは内服治療で症状を改善することができますが、重症になると手術治療が必要です。 現在の 手術治療のゴールドスタンダードは TUR-P経尿道的前立腺切除術 ) でお腹を切開することなく、尿道から内視鏡を挿入して比較的簡単に手術治療することができます。 当科では 平成11年~平成28年の18年間に1970症例、年間 100症例前後 の手術件数を行って良好な手術成績です。
内服治療に関しては、従来からある前立腺部尿道を広げて排尿を改善する α1拮抗薬 ( ユリーフ®、ハルナールD錠®、フリバス® ) に加え、前立腺肥大を縮小させる作用のある 5α還元酵素阻害薬の アボルブ®(デュタステリド) 、さらに平成26年 4月新発売の PDE阻害薬の ザルティア® の処方も可能となり、軽~中度の前立腺肥大症の患者様には朗報です。

尿路結石症治療(ESWL:体外衝撃波結石破砕術・内視鏡手術)

腰背部から下腹部に激しい痛みや血尿で発症する疾患で、泌尿器科全般の中で最も多い疾患です。 現在では体外から衝撃波を結石に当てることで結石を砂状に細かく砕く治療 ESWL:体外衝撃波結石破砕術 が主流です。 当科の結石破砕装置はフランスの エダップ社製( スパークギャップ方式 ) で、砕石力が非常に強力ですが痛みの少ない装置です。 平成23年 12月には、装置を最新の フランスエダップ社製ソノリス・アイシス に更新しました。 アイシスは、前装置のエダップ社製プラクティスに比べ、衝撃波発生装置の反響レンズの口径が大きくなり、焦点距離が 13cm から 17cm に延長しました。 このため治療中の疼痛が軽減され、体格の大きな患者様の骨盤内結石にも焦点が正確に合わせることが可能になりました。
当科では平成10年~平成28年の 19年間で 約 4501症例、年間 100~300件施行 しています。
ESWLでどうしても砕石できない硬い結石や、多数回のESWL治療が必要と予想される大きな硬い結石に対しては内視鏡による手術 TUL:経尿道的尿管砕石術 または PNL:経皮的腎砕石術 を行います。 平成 24年 4月に内視鏡下砕石装置として現在使用の 超音波砕石装置、リトクラスト、電気水圧衝撃波 に加え、 ホルミニウムヤグレーザー(LUMENIS) を新たに導入しました。 ホルミニウムヤグレーザー を使用することで、以前から行ってきた 硬性尿管鏡下の経尿道的結石砕石術(TUL) に加え 経尿道的軟性尿管鏡下結石砕石術( f‐TUL ) が可能になり、広範囲にわたる結石治療が可能となりました。 また、大きな硬い結石においては、 f‐TULESWL の組み合わせた治療で総治療期間が短縮しました。 導入以降~平成28年 12月までに ホルミニウムヤグレーザー(LUMENIS) を使用した 経尿道的軟性尿管鏡下結石砕石術( f‐TUL )を253症例 行い良好な成績です。

エダップ社製ソノリス・アイシス(スパークギャップ方式)結石破砕装置

エダップ社製ソノリス・アイシスの大口径衝撃波発生音響レンズ

ソノリス・アイシスによる結石治療風景


ホルミニウムヤグレーザー装置(LUMENIS)