ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 昔々あるところに、浦島ザプ太郎という、それはそれはどうしようもないクズ男がいました。 彼の職業は一応国税調査では猟師と申請してありましたが、村の女達の所を渡り歩いてはその日を暮らしている、いわゆるヒモでした。 ある日のこと、彼はその日までいた家から追い出されました。ザプ太郎は着物を着る暇もなく、とりあえずその辺にあった腰みのだけを付けて、ひとまず海に行きました。 「あー、潮臭ぇ」 ザプ太郎が頭と股間をわしわし掻きながら砂浜を歩いていると、やがて、子どもが魚類をいじめている光景に出会いました。 「おいてめ、何してんだ」 「何って! 見りゃわかんでしょ!!」 「そうですよ遠慮してくださいよこのKY!!」 突如揃ってキレた子どもと魚類をよくよく見てみると、くせ毛の子どもは同じ村にいる、レオという少年でした。レオは半裸で息を乱していて、その下にいる魚類は頬を赤らめながらも足を子どもの腰に巻き付けていました。 「あー、いっちょ前にお楽しみ中でしたか陰毛大明神」 ザップはしゃがみこんで、子どもと魚類の尻をぱんぱんと適当に叩いて拝みました。 「うわっ! 最低だなあんた!! つーか、こいつ、ザプ太郎だ!!」 「ええ! 竜宮城にまでどうしようもないクズ男として知られるあのザプ太郎ですか!?」 子どもは魚類を背に両手を広げてかばう姿勢を見せました。 「下がってツェッドさん! 性病がうつるかもしれません!!」 「おい! てめ失礼なこと抜かしてんじゃねぇ! おれぁ陰性だ!!」 一気に砂浜の空気が険悪になりました。 しかしその時、ツェッドと呼ばれた魚類がレオのかろうじて引っかかっている着物をつんつんと後から引っ張りました。その姿はまるで「ねーねー、友達? 紹介してよぉ」と言ってくる彼女のようでもありましたが、実はツェッドは攻めです。 「レオ君、こんな人は放っておいて、海の底にある僕の家に行きませんか」 「でもツェッドさん! このゾウリムシ野郎、あなたのもちもちしっとりうるおいプリンなマーベラスヒップを、汚い手であんな無造作に!!」 「あの……僕の家……竜宮城で、その、早く……つ、続きを……」 恥じらいの滲むその声に、レオはただでさえ実験に失敗した博士の髪型を、ぼんっとさらに爆発させました。 やがて顔を真っ赤にしたまま、無言でツェッドの腕を少々強引に引っ張って海にざぶざぶと入って行きます。男らしいの一言に尽きますが、レオは受けです。 「っておい! ちょっと待てよ!! なんだよ竜宮城ってよ!!」 「うっせー!! 来んな!! 色情狂!! 村の女の人だけじゃ飽き足らず、汚れの無い真珠の涙みたいなツェッドさんにも色目を使いやがって!!」 「使ってねーよんな干物野郎に!」 「干物だぁ!? ツェッドさんの微熱に潤んだ瞳を見てもんなことが言えるたぁ、あんた頭の悪さが目にも回ったのか!」 ぎゃあぎゃあ言い合いながらも、ツェッドとレオはどんどん海に入って行きます。やがて、小柄なレオは立ち泳ぎが必要なまでの深さになりました。 「斗流血法 シナトベ応用! 逆さ泡鉢・空!!」 ツェッドが不思議な術を用いると、レオの顔の周りには見る見る内に空気の層が作られ、なんと海の中でも息ができるようになりました。 「うわすごい! すごいですツェッドさん!」 「ふふ、こっちですよレオ君」 元々水の中で呼吸のできるツェッドはレオの手を引きながら海の中を優雅に泳ぎました。 さて、1人まだ海の中に潜っていないザプ太郎は考えました。 竜宮城、とはまた物凄い金の匂いのする名前です。 ザプ太郎はすでに村の女はあらかた食いつくしており、カモになるような人物と言えば趣味じゃないので手出ししていなかった、村一番の筋肉美女、村長のクラウスだけです。クラウスは独身で富豪とはいえ、あの色々お固いガチムキを口説くのは気乗りしません。 それともいっそ心機一転、竜宮城でお宝か女を漁るか。 ザプ太郎は即決しました。 彼は迷わず海に潜り、一応海辺の生まれ育ちなので、達者な泳ぎでぐんぐんツェッドとレオに追いつくと、手足を全て使い、レオの背中にしがみ付きました。ついでに顔を無理やりレオの空気玉の中にすぽんと入れ込みます。 「ぎゃああああ!! 生温かい息が!! 顔にかかる!! 気持ち悪い!!」 「レオ君!! ちょっとあなた、何やってるんですか!!」 「こいつ連れてくくらいなら、俺も連れてけよ!! ケチケチしてんじゃねーぞ、助けてやっただろ」 「1寸1尺も助けられた覚え無いんですけど!?」 ツェッドはどこからか槍を出し、散々ザプ太郎を細切れにしようとしましたが、ザプ太郎もヒモの意地を見せ、レオから離れません。さすがに敵がレオにくっついた状態ではどうにもしようがなく、ツェッドはがっくりと肩を落としました。 「分かりましたよ……。あなたも連れて行きますから、レオ君から離れてください。病気がうつったら困ります」 「だから陰性だっつってんだろ!! 上手いこと言って俺が離れた途端にどうこうしようってんだな? 残念だな、城に着くまで絶っっっっっっ対に離れねーからな!!」 ザプ太郎はより一層しっかりとレオに巻きつきました。 「あああああ、背中に何か、腰みのにまぎれた生温かくてアレなソレが当たってるぅぅぅぅ」 「俺の自慢の竿だ。やったな陰毛チビ。男でこれを触ったのは……あー、多分、3人目くらいだ」 「ううううううううううリアルな数字が何か嫌だぁぁぁぁぁ」 「僕の力が足りないばっかりに……すみませんレオ君。こうなったら一刻でも早く、城に行って消毒ましょう。あの……ぼ、僕の部屋でその、お風呂に……」 「えっ……。一緒に……?」 「ダメ、ですか……?」 「も、もう! ……ばか」 「いーいーかーらー、とっとこ泳げこのホモ魚!!!!」 ザプ太郎に甘い空気(水の中でしたが、確かに2人の周りには点描やら花が散っていました)を吹っ飛ばされたツェレオは、はにかみながらも手を繋ぎ、物凄いスピードで猛然と海の中を進みました。 やがて海の底の底に辿りついた頃、巨大な城が大きな空気の泡に包まれて、姿を現しました。 「レオ君、あれが竜宮城です」 「わぁすげー! ハリウッド映画に出てくる、所々に中華テイストの入ったなんちゃってジャパニーズキャッスルみたいっすね!!」 「うおおおお! 金かかってそーじゃん!!」 空気の層を抜けると、そこは地上と同じように地面を歩けるようになりました。 しかも多少重力が軽いようで、なんだか軽く蹴っただけでも、ふわふわと体が浮く、不思議な所でした。 レオ(とザプ太郎)の空気玉もパチンと弾け、レオは軽い重力を利用して、とっととザプ太郎をぶん投げました。 「あー! 背中にクズ男がいない解放感!!」 「へーへー。こっちももうお前らには用はねぇよ。さっさと童貞同士、ゴムの付け方で苦しめ。悩め。そして禿げろ」 しかし互いしか見えない恋人達には、今やザプ太郎の卑猥な言葉は届かないようでした。 レオはツェッドをお姫様抱っこをすると、どこかの星の戦闘民族のように、ギューン!!とツェッドの部屋に一直線にすっ飛んで行きました。 「けっ!」 ちょっとだけ寂しかったザプ太郎は悪態をつきながら正門へと進みました。そこに女がいれば、甘いマスクと自慢の竿を使って中にしけこむのは簡単です。 「ちわー」 正門は巨大過ぎてザプ太郎には開けられなかったので、その横の守衛室のような所をザプ太郎はコンコンとノックしました。 「ああ? 誰だ?」 ぞんざいな声がして扉についている小窓が開くと、そこにはいかにも仕事で5徹目と言った疲れた顔の男が出ました。 「なんだ君は」 こめかみから頬にかけて物騒な傷のある男は、イライラを隠そうともせずにザプ太郎を睨みました。 「あの~、えー、俺……」 女ではなく男、しかも終電に乗ってそうなくたびれたおっさんが現れたことで目算の外れたザプ太郎は、とっさに戦法を変えることにしました。様々な修羅場を口先だけでかいくぐってきたザプ太郎は、0.07秒の間に話を思いつきました。 「大変なんすよ! あ、俺、この上の浜辺に住むザ……ザ太郎っすけど、あの、お宅の城に、ホ……葛餅みたいに綺麗な肌をしたお魚ちゃん、いませんか!?」 「ああ、ツェッドのことかい?」 「そう! たぶんそいつです!!そいつがですね、俺の見ている前で、浜辺で……陰毛大明神に浚われちまったんですよぉ!!」 「何!? なんだそのネーミングセンスに下劣感が溢れている変態は!?」 男はすぐに扉を開き、ザプ太郎を招き入れました。 「お前、ザ太郎とか言ったな。詳しい話を聞かせてくれないか」 「はい! えーとですね」 「ああ、ここじゃない。竜宮城の長である、乙姫様の前でだ。高貴な方だから、くれぐれも粗相の無いようにしろよ」 「おっしゃー!!」 ザプ太郎が渾身のガッツポーズを見せると、男は振り返って怪訝な顔をしました。すぐに探るような目でザプ太郎をじろじろと眺めます。 「なんだ。何がそんなに嬉しいんだ?」 「あーと、だって、そのツェッドっての、大事な仲間なんですよね? だからちゃんと偉い人に話したかったんす」 「ふぅん……まぁいい。僕はスティーブン・A・スターフェイズ。ここの警備隊長だ」 「うっす」 スティーブンと名乗った男はするすると音もなく玉砂利の上を進みました。裾の長い着物を着た上から鎧を付けているその姿は、いかにも軍人らしく、ビシッと規則正しいものでした。 比べてザプ太郎は未だに腰みの一丁です。しかしスティーブンに文句を言われないところを見ると、この服装で乙姫様とやらに会ってもいいようでした。 「開門!!」 いくつかの門や扉をスティーブンの声で開けながら進むことしばし。やがていかにも玉座の間、というような立派な広間に出ました。 正面には長い階段があり、その階段の頂上には、幾枚もの薄絹に遮られた玉座がありました。周りの壁には、見上げるほど大きい珊瑚や椅子になるほど大きい真珠貝で彩られていました。もちろん、ただただ金目当てのザプ太郎はそれらに釘付けです。 しかし突然、スティーブンに頭を鷲掴みにされ、力づくで床にひれ伏すことになりました。 「おい、ちょっと」 「乙姫様! こちらの男が、ツェッドのことでご報告があるとのことです」 「聞きましょう」 玲瓏な女性の声が聞こえ、ザプ太郎が好色な目をそちらに向けると、玉座の側に眼帯をつけた、すらりとした女性が控えていました。 「ちぃ、年増か……」 ボソリと呟いたザプ太郎の言葉にその女性は即座に反応し、着物の長い袖の中から火縄銃を取り出し、それをザプ太郎の顔のすぐ側に打ち込みました。 「あーん? 何て言ったのかしら、そのニンゲンのガキはぁ~?」 「いやK・K、彼は何も言ってないよ、なぁ?」 冷や汗をかいたスティーブンが助け舟を出してくれ、ザプ太郎は猛然と首を立てに振りました。 「いや、すんません! 奇跡レベルの美女だったもんだから! ついうっかり喜びの悲鳴を上げちまいました! いや、こんな美女を拝んだの初めてっす!!」 「あら? そう? もー、そうならちゃんと言ってくれればいいのに~!」 K・Kと呼ばれた女性は顔に手を当て、まんざらでもないようでした。 「以後、女官長の年齢には触れるな、いいな」 そよ風よりも小さい声でスティーブンは囁き、ザプ太郎も小さく頷きます。この女性には逆らってはいけない、ザプ太郎の本能もそう訴えていました。 「じゃあ、改めて。乙姫様へのご報告を」 K・Kに促され、ザプ太郎は口を開きました。 「俺、この上の浜辺に住んでるザ太郎って言います。今日、浜辺に行ったら、怪我をしたえー、ツェッド、ですか? そいつを見つけて、あー、手当をしてたんすよ。そしたら、山の向こうから恐ろしい陰毛大明神が襲いかかって来て……」 「何? そのネーミング。その名前にするってことはよっぽどの馬鹿ね」 「はぁ。えーと、そいつ、すごいんす。頭も腕も髭もこう、縮れた毛がもっしゃもしゃで。もうなんか、陰毛のかたまり的な。そいつがツェッドを抱きかかえて浚っちまいました。海に、どぼーんと! 俺も慌てて後を追って……」 「ん? お前、その間息はどうしてたんだ?」 「え!? あー、舐めないでくださいよ! 俺ぁ漁師ですよ! 素潜りくらい、何て事ないすよ!!」 「ここまで素潜りできるなんて、あんたどんだけレジェンド級の猟師なのよ」 「ともかくですねぇ! 俺ぁ、ツェッドってやつに何かあったらと思って、必死で追いかけて!! その内にこの城に来たんす! 陰毛大明神はえー、城の向こうに行っちまいましたけど。俺も息が限界だったし、多分あいつはここの住人だろうと踏んで、報告に来たまでで……」 「城の向こう側って言うと……まさか、虚の中心?」 「とすると、陰毛大明神というのは、まさか[[rb:13人の長老 > エルダーズサーティーン]](の1人なのか?」 「あのー、それで、謝礼の話なんすが……」 三人がそれぞれに話し出すと、リン!と鈴の音が響きました。玉座の中から聞えたその音で、K・Kはすぐに跪き、玉座に近寄ります。 ザプ太郎達には何も聞えませんでしたが、彼女は乙姫の意向を聞きとったのでしょう。すっと立ち上がり、スティーブンとザプ太郎に乙姫の言葉を告げました。 「はるばるこの深海の底にまで、仲間の安否を知らせてくれて礼を言う。今日のところはこの城で休み、明日また、ここへ参るように」 「はっ!」 スティ-ブンは頭を下げ、ザプ太郎にも強制し、そのまま玉座の間から下がりました。 「まぁ、そう言うことだ。ご苦労だったな。今案内させるから、今日はここで休んで行け」 「う、はい、あざっす」 うっひょうやったぁをどうにか飲み込み、ザプ太郎は柱のひとつにだらしなく寄りかかりました。 ここまで潜入できれば、お宝を失敬したり、お金を持ってそうな女性を漁ったりと、それはもう好き勝手にできます。 「チェイン!」 スティーブンが呼ぶと、どこからかK・Kと似たような着物を着た美しい女性が現れました。 「はい」 「このザ太郎を桜貝の間に案内してや「嫌です」 チェインと呼ばれた女性は食い気味に返事をしました。 「えーと、あの、チェイン? チェインさん?」 「そのザ太郎とかいうこ汚い猿野郎のこと、生理的に受け付けません。この距離がギリです。私も女官の端くれです。乙姫様の客人を血祭りにあげたくはありません。だからお断りします。では」 チェインは裳裾をひらめかせ、長い回廊のどこかに消えました。 「…………こっちだ」 「…………うす」 スティーブンの案内でザプ太郎は城の中を進みます。美しい物や、見たこともない物が城の中に溢れています。まさに絵にも描けない美しさです。まるで旅館の亀に連れられて海底温泉に来たみたいです。意味が分からないお若いお嬢さん方や、関東ローカルネタが分からない方はスルーしてください。 「いや、それにしてもまさかあのツェッドがそうやすやすとつかまるなんてな」 スティーブンは何事か考えながら歩いています。ザプ太郎は慌てて言いました。 「なんか怪我してましたから。誰かに襲われたんすよ、ありゃ」 「そこからしておかしいんだよ。あいつはかなり強いからな。その上、陸でも普通に行動できるし……。やはり、最近様子がおかしかったことと関係あるのだろうか」 「様子って?」 「ああ」 スティーブンは数ある扉の中から、1枚を開き、そこにザプ太郎を招き入れました。 先ほど桜貝の間、と言っていた通りに、どこもかしこも、淡い桜色の巨大な貝殻に覆われている、ザプ太郎には不釣り合いな美しい部屋でした。 「ここ数日、やつはおかしかったんだ。ぼーっとしたり、警護の勤務時間に遅れたり、警護中にそわそわしたり」 「んだよ金目の物ねーじゃん……」 「そこである日聞きだしたんだが、どうやらやつは陸の上の人間に恋してしまったらしい。嵐の日、見回り中に海に落ちた人間を偶然助けたとかなんとか、聞き出せたのはそれくらいだった」 「お、これ真珠? やり。固ぇな、うらぁ!! よっし剥がれた!」 「あの真面目なツェッドが、よりによって人間を愛するなど信じられないんだがな。それに例え会いに行っても、その人間からも速効で惚れられてその場で鼻息荒く押し倒されて、即浜辺でにゃんにゃかにゃん、なんてことはK・Kが俺とデートに行く以上に有り得ないことだし……。あーと、悪い、どこまで話したかな」 「え? あー、えーと、いい話っすねぇ。感動しました!」 「そうかい? でもK・Kはもうご主人もお子さんもいるからなぁ」 よほど仲間のことが心配なのか、スティーブンは噛みあわない会話もスルーし、やがて仕事に戻っていきました。 部屋に1人残ったザプ太郎は、さっそく部屋の外に出ます。こんなチンケな客室より、宝物庫や、女官たちの部屋を見つけに行くためでした。 警戒しましたが、廊下には通って来た時と同じように、誰もいません。 静まり返った廊下をヒモの勘に頼って進んでいくと、やがて廊下の内装が徐々に豪華になっていきました。流石は5歳からヒモとして生きて来たザプ太郎です。その嗅覚を最大限に利用して、辿りついた奥の扉には、こう書いてありました。 【乙姫様御寝所】 「マジか……来た来た来たぁっ!!」 股間の竿を煌めかせながら、ザプ太郎はそのままの勢いで扉に突進しました。 扉を静かに開け、中に入ると、すでに乙姫は寝ているのか、部屋の灯りは落ちていました。 中央にある寝台は、玉座と同じように幾枚もの薄絹がかかっています。ザプ太郎は慎重にその薄絹をめくって、徐々に中に入ります。 「姫君? おいでですか?」 イケメンボイスを出しながら、最後の薄絹をめくった時、ザプ太郎は壁に叩きつけられました。 「おげぇ!?」 「L7*5;あsfmぅあs#$%)2j……」 およそ人の声には聞こえない摩擦音が聞こえ、ザプ太郎は痛みにつぶった目を開くと、そこにはボロ布を纏った人? のような物体が浮かんでいました。 「ちょ、あんた、な」 「(&fg@あfくぁp>kwf8!!」 その人? は何やら早口でまくしたてます。どうやらその人? は怒っているようでした。 「いや、何言ってんのか分かんねーし。ちょ、おい、乙姫はどこだよ、ボロ雑巾」 「Bg6&$ja^@o:(,/P!!」 獣の頭蓋骨で見えない頭をグワッと近づけ、やたらギラギラと光る目で睨まれました。もうザプ太郎には何が何やら分かりません。 「オーケイ、分かった。俺が悪かったって。大物狙うのやめて、他のチャンネーに行くから、とりあえずどいてくれよ。な? あ? 俺の言ってること分かるか? ハウスだハウス」 「shrくぃう=*}あr!!!!」 その人? は妙に伸びる赤い腕? のようなものでザプ太郎を掴むとそのまま床に叩きつけて気絶させました。意識のないザプ太郎をしばらく無言で眺めると、そのまま引きずって、寝台の中に放り投げました。 朝になりました。 ここは海の底ですから小鳥のさえずりは聞えませんが、聞えてもおかしくはないほど爽やかな朝でした。 「う――ん、チンコ痛ぇ……」 股間をもぞもぞと手で探りながらザプ太郎が起きると、そこは桜貝が綺麗に散りばめられた美しい部屋でした。 「あれ」 ボリボリと尻を掻きながら起き上ったザプ太郎は、記憶が混乱していました。昨日、ここで寝た記憶がないのです。 しかしザプ太郎はあまり深くは考えませんでした。とりあえず窓辺に行って、股間を朝日に晒します。おそらく日課なのでしょう。 「お、起きてたか」 すぐにスティーブンが入ってきました。彼は朝食と着替えを持ってきてくれました。多分、また女官に断られたのでしょう。 「いや、参ったよ。実は昨日あれから、色々あったんだ。あ、お前が報告したツェッドの件でな」 「うえ!?」 嘘がバレタかと思いましたが、スティーブンの様子を見るに、どうもそうではないようです。 何やらスティーブンはご機嫌でした。昨日の疲労感はどこへやら、鼻歌でも歌いそうな様子でザプ太郎に朝食の盆を渡します。 「夜中に、ツェッドが乙姫様の所に人間を連れてやって来てな。自分はこの人と陸で生きて行くと、駆け落ち宣言をしたんだ。あ、その人間というのがお前の言った通りのもじゃもじゃでな。まぁもじゃもじゃって言っても髪の毛だけなんだが。まぁ、浚ったと言うか、ツェッドが連れ込んだというかしけこんだというか」 「あー! あー、じゃあ、すんません、俺の見間違いでしたかね!?」 「ま、そういうことなんだろうね」 ザプ太郎はそっと額の汗をぬぐいました。 どうせあのホモカップルのことです。恋愛に夢中でザプ太郎のあれこれを話すのを忘れていたのでしょう。 「で、だな。問題はツェッドが次代の乙姫だということなんだが……」 「え!?」 「なんだ、知らなかったのか?」 「いやだって……。あんたも警備隊の一員とか何とか、言ってませんでしたっけ?」 「ああ、今はな。修行の意味も含めてそこに所属している。だがあいつは乙姫様の実子なんだ。その世継ぎが陸で人間と暮らすときたもんだから……」 「へー。大変っすねぇ」 「まぁな。でも乙姫様は快諾されたんだ」 「へえ?」 「なんでも昨夜、活きのいい若い男を捕まえたらしい。このままその男と、新しい子どもを作るからツェッドは好きにしたらいいとの仰せだった」 「大変っすね色々と」 「ははは、何をさっきから他人事のように鼻ほじりながら言ってるんだ。これから大変なのはお前だろう」 「え? ん?」 「活きのいい若い男はお前のことだよ。ザ太郎。いや、浦島ザプ太郎」 「………………へ?」 「昨日、乙姫様のご寝所に忍び込んだらしいな。そんな情熱的なことをされたら、いかにお歳のあの方でも、落とされないわけないじゃないか。いやぁ、さすがに深海まで名の知れたヒモだな。城内に入れて正解だった」 「えーと、あの、その……?」 「ははは、僕らがお前の嘘にだまされたと本気で思ってたのか? 乙姫様が新しい伴侶が欲しいと仰られてから、色々大変でな。特に男は貞操の危機だった。俺も含めて城内の男という男は部屋にとじこもって警備もままならない所だったんだ。そこへのこのこお前が来てくれて助かったよ。ガチで。マジサンクス」 スティーブンはザプ太郎を、まるで陰毛大明神であるかのように拍手を打って拝みました。 「いやあのえええええええ!?」 「というわけで、ツェッドはもうすでにレオと浜辺の村に行ったからな。お前は乙姫様と子作り、頑張ってくれ。あ、乙姫様は入歯になってからお言葉が不明瞭でな。通訳が必要ならK・Kに頼むように。じゃ、俺はツェッド達の様子を見がてら、村長に挨拶に行ってくるから」 「待って!! 待ってくださいスターフェイズさん!! あの爺? いや婆? の相手するくらいなら、俺村長のヒモになるぅぅぅぅ!!!!」 「いやお前もう昨日、相手してるんだよ。気絶してたから覚えてないようだが。ちなみにさっき食べさせたのは精がつく物ばかりだからなー。がんばれよー」 「いやぁぁぁぁぁぁ!!」 ザプ太郎の悲鳴は海の波をほんの少し乱れさせましたが、それだけでした。 その後、クズヒモだったザプ太郎のいなくなった浜辺の村には平和と秩序、そして確固たる貞操観念が生まれました。 レオが海から連れ帰った恋人は、その謙虚な姿勢が受け入れられ、すぐに村に馴染みました。今では2人で円筒のいけすのある回転寿司屋を営んでいます。 村長に同胞のことを頼むと挨拶に来たスティーブンは、何があったのか、結局竜宮城へ帰ることなく、村長に婿入りをしました。 そして1年後、ザプ太郎と乙姫の間に玉のような豪運の赤ちゃんが生まれたと、ツェッドとスティーブンは使いの者から聞いたそうです。 「嫌だ……もう俺嫌だ……アンジェリカたん……」 「そこの永年発情猿、乙姫様がお呼びよ」 「Pjd38&%$&A:dkfhua>!」 「うっせぇ! おむつくらいてめぇで変えやがれ!! あのガキに近寄ると偶然迷い込んだ人喰い鮫に襲われたり、突然崩落した城の下敷きになんだよ!! 俺もうやだ!! 帰らせて! 土産物のひとつでも持たせて里帰りさせて!!」 「あんたそれ、死亡フラグだからもうそれ以上言わない方がいいわよ」 めでたしめでたし