なぜ「鉄分」はきちんと摂るべきなの?
■優先的に胎児へ送られるから
鉄は、赤ちゃんの成長に欠かせない栄養素で、優先的に胎児に送られてしまいます。そのため、妊娠中のお母さんたちが鉄不足から貧血になってしまうケースが少なくありません。日ごろから過不足のない量の鉄を摂取しておかないと、妊娠中に大変辛い症状が出ることになります。
■妊娠中の貧血「妊娠貧血」は、ほとんど鉄分不足!
妊娠中の貧血は「妊婦貧血」と呼ばれますが、その原因のほとんどが鉄分不足だと言われています。もともと貧血は女性に多く見られる症状ですが、これは女性に月経があるためで、充分に鉄を摂取しているつもりでも不足になりやすいからです。このように、女性は体内の鉄の貯蓄量が不足しがちといえますので、妊娠を機に貧血症状が出てきたり、悪化しやすいといえます。
■鉄分が不足するとどうなるの?
体のだるさ、食欲不振、疲労感、めまい、頭痛、息切れといった様々な症状が出ます。しかし、さらに大きな問題として、赤ちゃんへの悪影響が心配されています。妊娠中の貧血は「早産」ほか、生まれる時の体重が2,500グラム以下という「低出生体重」のリスクを高めると言われています。
妊婦に欠かせない鉄分とは?
妊娠期間中の母子にとって、鉄分が極めて重要なミネラルであることがお分かりいただけたかと思います。では鉄分の1日に必要な摂取量や、摂りすぎの弊害についてチェックしましょう。
■鉄分の働き
鉄は、体に取り入れられた酸素を全身に運搬する上で不可欠なミネラルです。赤血球の大部分はヘモグロビンと水ですが、「ヘモグロビン」とは、鉄を含んだ赤い色素(ヘム)とタンパク質(グロビン)を意味します。つまり、血が赤い理由を一言で言えば「鉄が含まれているから」ということになります。
ヘモグロビンは肺の酸素と結びつくことで、酸素が全身に届きます。したがって鉄分が不足することで、酸欠状態になってしまいます。また鉄分が不足すると、疲れやすくなってしまいます。これこそが「貧血」なのです。つまり鉄は、貧血の予防・改善のために働いてくれます。妊婦はもちろん、月経中の方や貧血でお悩みの方はしっかりと鉄を摂取すべきです。また何らかのスポーツしていた人も、鉄不足にはご注意ください。
■1日に推奨される摂取量
貧血を予防するために欠かせないミネラルが鉄です。月経のある時期は1日に10.5ミリグラム、月経のない時期も1日に6〜6.5ミリグラムの摂取が必要になります。
なお、妊娠中ごろから出産間際までは、さらに1日15ミリグラム多く摂取する必要があります。妊娠中は、お母さんが摂取した鉄が赤ちゃんへ優先的に運ばれるため、鉄不足になりやすいのです。そのため、妊娠中に貧血を経験する女性は多く「妊婦貧血」とも呼ばれています。妊婦貧血を避けるためにも、十分な量の鉄を摂取することが大切です。
■鉄分の摂りすぎによる影響
鉄は取りすぎよりも、むしろ不足を心配される栄養素です。もともと鉄の吸収率は低いし、普通の食事で必要以上に貯蔵・吸収されることは、ほとんどないでしょう。しかし現在では、サプリメントや薬の形で大量に摂取する可能性もあるため、さまざまな悪影響が起きるケースもあります。
悪影響の1つ目としては、内臓に負担がかかる可能性があります。肝臓に障害が与えられたり、胃腸に負担がかかることで便秘や嘔吐につながります。特に、長期間にわたる鉄分の過剰摂取は、肝臓がんや肝硬変などといった重大な疾患につながる危険性が指摘されています。この他、不整脈や心臓への負担・障害につながるリスクもあるのです。
悪影響の2つ目としては、亜鉛の吸収が阻害されてしまう可能性があることです。妊娠中の女性は、亜鉛不足によって胎児の発育不良が生じる可能性があります。なお、サプリメントの取りすぎなどに注意していても、遺伝的に鉄が蓄積されやすい方も存在します。何か心配な点がある方は、かかりつけのお医者さんなどに相談してみると良いでしょう。
鉄分の多い食べ物は?
鉄は一部の肉・魚介類、野菜、豆類などに豊富です。各食品100グラムあたりに含まれる鉄の量から、鉄を多く含む食べ物を確認していきましょう。
■ 肉・魚介
【肉類】
・スモークレバー(豚) 19.8mg
・肝臓(生、豚)13mg
・肝臓(生、鶏) 9mg
・レバーペースト(豚) 7.7mg
・第三胃(生、牛) 6.8mg
・ビーフジャーキー(節) 6.4mg
・イナゴの佃煮 4.7mg
・コンビーフ缶詰 3.5mg
【魚介類】
・あゆ(内臓焼き、天然) 63.2mg
・塩辛アワビ 33.9mg
・ヤツメウナギ(干し) 31.6mg
・あさり水煮缶 29.7mg
・あさり味付け缶 27.8mg
・あさり佃煮 18.8mg
■野菜
・干しわらび(乾燥) 11mg
・菊のり 11mg
・ずいき(乾燥) 9mg
・干しぜんまい(わかめ) 7.7mg
・生パセリ(葉) 7.5mg
・乾燥唐辛子 6.8mg
・よもぎの葉(生) 4.3mg
・切り干し大根(乾燥) 3.1mg
・かんぴょう(乾燥) 2.9mg
・ザーサイ 2.9mg
・小松菜 2.8mg
・ひじき(乾燥)1.3mg
■豆類
・大豆(胚芽) 11.7mg
・つるあずき(乾燥) 11.4mg
・レンズ豆(乾燥) 9mg
・インゲン豆(乾燥) 6mg
・おから(乾燥) 4.9mg
・がんもどき 3.6mg
・油揚げ(焼き) 3.4mg
・糸引き納豆 3.3mg
・枝豆(ゆで) 2.5mg
■吸収率が違う!「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」
鉄には2つの種類があります。1つは「ヘム鉄」で、動物性食品の一部に多く含まれる鉄分。2つ目は「非ヘム鉄」で、こちらは植物性食品に多く含まれる鉄分です。
この2つが大きく違う点は「体内での吸収率」です。「ヘム鉄」の吸収率は20%前後であり、一方「非ヘム鉄」は5%程度の吸収率しかありません。したがって、妊婦さんは鉄を多く含む肉や魚介を食べるようにすると良いでしょう。ただし、女性の場合は妊娠のタイミングで、非ヘム鉄の吸収率が増加しますので、やはり肉や魚(ヘム鉄)だけでなく、野菜(非ヘム鉄)もバランスよく食べましょう。
鉄分の多い食材を使ったおすすめレシピは?
■小松菜と油揚げの煮びたし
小松菜4株程度に対して、油揚げ2〜3枚を用意します。
小さじ1杯程度ずつの酒・醤油・和風だし、それに100cc程度の水を鍋に入れ、油揚げを入れて沸騰させます。次に油揚げを出してから小松菜を入れ、5分前後煮ます。最後に油揚げと小松菜をあえて完成です。油揚げと小松菜、いずれも鉄分が豊富な食材です。
■ レバニラ炒め
レバー200gに対して、ニラ1束程度を用意します。レバーは湯洗いして臭みを取り、食べやすいようにカットしておきましょう。次に、胡椒と塩でレバーに下味をつけます。
最後にレバーとニラを炒めます。お好みでにんじんや玉ねぎもやしなど好きな野菜を加えてください。なお、タレについては、オイスターソースを中心に、砂糖・醤油・鶏がらスープ(中華スープ)のもと・ショウガなどで味を整えます。ただし妊娠中の高血圧を防ぐために、出来る限り薄味を心がけましょう。
レバーには吸収率の良いヘム鉄が豊富です。妊娠期間中の鉄分を補う事はもちろん、元気をつけるにももってこいのメニューと言えるでしょう。
鉄分を摂るときの注意点
■タンニンを含む飲み物に注意
ワイン、コーヒー、紅茶、緑茶などの飲み物は鉄分の吸収を妨げる恐れがあります。これらの飲み物の共通点は「タンニンを含む」という点です。タンニンは、体の中で鉄と結びついてしまうため、吸収されづらい状態となります。
さらに、コーヒー、紅茶、緑茶に含まれるカフェインもまた鉄の吸収を妨げると言われています。特にコーヒーや一部の栄養ドリンクに含まれるカフェインの大量摂取により流産、低出生体重児などの原因となる可能性があるとされていますので、コーヒーやカフェインを含む飲み物の飲みすぎには注意が必要です。
■無理に食事だけで摂ろうとしない
鉄を豊富に含む食材は数多くありますが、好みによっては食べられないケースもあるでしょう。同時に、つわりや体調不良で食事そのものがあまり食べられない時もあるかと思いますので、妊娠中は鉄のサプリメントを用意しておくと便利です。
食事がしっかり食べられている方はサプリメントは特に必須ではありませんが、貧血症状がある場合は担当医に相談しましょう。また妊娠中は貧血の検査も何回か採血で確認するため、実際に貧血があった際には担当医の判断で鉄分の処方が出る場合があります。その際には鉄分の過剰になってしまわないように、サプリメントを服用しているならその旨を伝えましょう。
まとめ
鉄は、体中に酸素を運搬する役割を持つ、極めて重要なミネラルです。妊娠中は、新しい命を育てるためにさらに多くの鉄分が必要になりますので、不足しがちになりやすいです。
立ちくらみや頭痛など「貧血の症状」が出るのは、血中をはじめ、体内に貯蓄されていた鉄も全て使い果たした状態かもしれません。特に妊娠中は赤ちゃんへの影響が心配ですから、貧血症状が出ないように毎日きちんと鉄を摂取しておくべきです。また採血で貧血の指標となるヘモグロビン値が正常であるのに関わらず、立ちくらみや頭痛、その他の症状がある場合に貧血ではない疾患が隠れている可能性もあるので、担当医に相談するようにしましょう。