朝日新聞の朝刊一面記事に衝撃的な記事が載っていました。「公園の土や砂 鉛で汚染」と題した記事で、「80年代中ごろまで自動車の排気ガスに含まれていた鉛化合物が、街のなかに点在する都市公園の土や砂場に降り積もり、現在でもその汚染が深刻な状態になっていることが、東京大学と国立環境研究所の研究で分かった。汚染度の高い公園で幼児が遊んだ場合、許容量に匹敵する量を体内に吸い込むおそれもある。交通量が多い都市部を中心とした全国調査や汚染度の高い表土や砂の取り換えなどが必要である」との内容でした。
また、1500年前のペルー人の骨の500倍の鉛が現代人に蓄積していたとする調査結果もあります。人間は便利な生活の代償として土や海、空気まで汚してきましたが、それが人間に戻ってきているサイクルになっているのです。
重金属汚染でよく知られたものは、工場から流出した水銀が魚に蓄積し、その魚を食べて発症した水俣病、工場からカドミウムが河川に流出して発症したイタイイタイ病、乳児のドライミルクに混入したヒ素によるヒ素ミルク中毒、狩猟に用いられる鉛散弾による水鳥などの汚染や環境汚染などが有名です。
和歌山で起きたヒ素入りカレー事件は記憶に新しいことでしょう。
厚生労働省からは、水銀の蓄積懸念から「妊婦は胎児への影響を考慮し、金目鯛などの摂取量を控えるように、マグロも同様に見直しの方向にある」と勧告が出されています。
これは食物連鎖の頂点にいる魚には重金属が蓄積されている可能性が高いことから、その摂取に対してその危険性の注意をしているものです。
江戸時代まではマグロといえばずけ、赤身のことでトロは捨てられていたそうです。その油っこさが嫌われていたようですが、肉食が西洋から入ってきてからの日本は味覚が変わったのでしょうか、現在の日本人のマグロ好きは有名です。
ほんの少し前は高級魚としてなかなか食べられなかったのが、現在は世界中からマグロをかき集め世界の約6割を日本が消費しているそうです。こうした汚染を考えるとたまに食べる高級魚でもいいような気がします。
また一部のイカなどの軟体動物やアワビやカニなどの甲殻類の内臓に高濃度のカドミウム蓄積が報告され、カドミウムはWHOによる発癌性報告もあることから問題となっています。喫煙ないし間接喫煙によるカドミウムの問題も指摘されています。日本人の食生活に密接な魚介類に蓄積したこうした有害重金属や汚染物質の摂取などが問題になっています。
先ほど述べた大気汚染、以前の鉛製狩猟用弾、塗料やガソリンに添加される鉛、などの鉛害も指摘されています。多量摂取で消化器障害や神経障害を起こすことがある鉛は、人の脳のIQにも深く関与するともいわれています。
保存されていた毛髪から多量の鉛が検出されたことから、ベートベンの難聴は当時甘さを出すために安価なワインに混入していた酢酸鉛が原因ではないかともいわれています。
また歯に詰めたアマルガム(水銀化合物)からの水銀の溶け出しや、口のなかに異なった金属が共存することによる金属の溶け出し、また安い金属が腐食する(サビる)ことによる金属の口の中への溶け出しなど、身の回りで起こる有害重金属汚染や金属アレルギーも問題となっています。
例え微量であっても長期間に渡って蓄積された重金属汚染は特段の症状もなく見過ごされがちですが、生活習慣病などとして発症することもあるといわれていますから、胎児や妊婦だけでなくすべての人の問題です。また不安定な重金属は酸化されやすいため、体内に蓄積されるとフリーラジカルの発生が増えて、老化を促進するといわれています。(フリーラジカルの詳細は別項を参照ください)
先進諸国の中でも日本は唯一の、肉より魚介類の摂取が多い国です。このことが世界一の長寿や健康寿命の長さの要因と考えられていますが、一方で近年の海洋汚染の影響で日本人の重金属汚染が進んでいる現状もあります。
しかし特に免役能力の保持に重要な蛋白質の摂取を考えると、畑の蛋白質を主としながらも、魚類の良質な蛋白質も必要です。世界的な狂牛病や鳥インフルエンザの発生による代用蛋白源として、また世界中で健康志向によるヘルシーフードとして魚の需要が増え、海洋資源の問題や輸入価格の上昇にみられるように魚への視線が熱くなっていることはご存知のことと思います。
また魚類は蛋白質だけでなくEPAやDHAなど必須脂肪酸の重要な摂取源でもありますから、魚類の摂取をやめることは得策ではありません。防衛策としてその産地を吟味し汚染度の少ない魚、特に一匹丸ごと食べられる小魚を選ぶことをお勧めします。