これまでに開催したセミナーのレポートです。

セミナータイトル在宅における最新の褥瘡対応とスキンケア
分類医療行為・知識
開催日2014年10月16日
エリア/主催中国/二チイ学館 広島支店
会場二チイ学館 中国営業部 会議室
講師国家公務員 共済組合連合会 広島記念病院
森本 純子 氏(皮膚・排泄ケア認定看護師)
概要在宅介護の現場で「スキンケア」は、全てのお客様に対して必要となる重要なケアです。今回は広島記念病院の皮膚・排泄ケア認定看護師である森本先生を講師に迎え、最新の褥瘡対応とスキンケアについて講義していただきました。

在宅における最新の褥瘡対応とスキンケア

▲講義の様子

【プログラム】
Ⅰ.講義①
Ⅱ.保湿剤・ドレッシング材の紹介
Ⅲ.講義②

【参加者】
広島支店所属の看護スタッフ・介護スタッフ:41名
外部参加者(看護師):10名 (看護師以外):2名

【開催レポート】
■講義内容
Ⅰ.講義①
1.皮膚の解剖生理
<皮膚の構造と機能>
・人体最大の臓器(面積:1.6m2 重量:体重の16%)
・「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層からなる
・生命維持に必要不可欠な以下の機能をもつ
「水分喪失や透過を防ぐ」「体温調節」「微生物や物理化学的な刺激から守る」「感覚器としての役割」

<表皮の構造と機能>
・厚さ 約0.2mm
・細胞の95%は「表皮ケラチノサイト(表皮角化細胞)」
・「表皮ケラチノサイト」は表皮の最下層で分裂し成熟するに伴い、上方の層に移行していく
・基底細胞が分裂し、娘細胞が生まれて表皮表面で脱落するまでの時間を「ターンオーバー時間」という(ターンオーバー時間の日数:約28日)
・保湿機能(保護膜をつくり、皮膚のバリア機能をつかさどる)
・免疫機能(免疫臓器としての働き、ランゲルハンス細胞による免疫作用がある)

<真皮の構造と機能>
・厚さ 表皮の約15~40倍
・「乳頭層」「乳頭下層」「網状層」の3層からなる
・真皮の多くは線維芽細胞で構成される
・真皮は表皮の下部に存在し、境は基底膜で隔てられている
・基底膜は完治する浅い欠損と、瘢痕を残す深い欠損の境目がある

<皮下組織>
・真皮の下方にある層で、真皮と筋膜との間に挟まれた部位
・脂肪細胞からなり、物理的外力に対するクッションの役目や体温喪失の遮断、熱産生といった保温機能にも重要な役割を果たす

<付属器官>
・「毛包」「脂腺(皮脂を分泌し角質層の保湿に関与)」「汗腺(皮膚湿潤に関与)」等がある

2.創傷治癒と創傷管理
創傷とは?・・外傷・褥瘡・手術創等(どんな創も治癒過程は同じ)
<よくみる創傷の種類>
「切創」:鋭利な刃物によってつくられる創縁平滑な開放性創傷(手術創等)
「挫創」:鈍的外力により皮下組織まで達する開放性創傷(転倒して硬いものにぶつかった時にできる傷等)
「裂創」:伸展、牽引力が皮膚の張力を上回った時につくられる開放性創傷(裂肛等)
「擦過創」:比較的鋭利な外力が皮膚と接線方向に働く時につくられる開放性創傷(転倒して膝をすりむいた状態等)
「褥瘡」:体の一定部位に圧力(応力)とズレの力がかかった場合に生じる開放性創傷

創傷を見つけたら・・?「どのような創傷か」「どのような状態であるか」理解することが大切
<創の深さの分類>
Ⅰ度:表皮内の深さの創、創底にも基底細胞があるためm速やかに上皮化される
Ⅱ度:真皮に至る創、浅い場合と深い場合に分かれる
(浅層):毛根が残る真皮半ばまでの深さの創、創辺縁の基底細胞と創底の毛根部の基底細胞の細胞分裂により早く上皮化する
(深層):毛根部を含まない真皮深くまでの創、上皮化は創辺縁の基底細胞が創部内へ移動し起こる
Ⅲ度:皮下組織に達する創、脂肪細胞が露出、知覚が消失
Ⅳ度:皮下組織を越えて筋肉、骨に達する創

<再生治癒と瘢痕治癒>
「再生治癒」:Ⅱ度浅層までの浅い創では創傷前と同状態に回復し、瘢痕・傷跡は残らない
「瘢痕治癒」:Ⅱ度深層より深い層では、まず創内に肉芽が形成され、次いで創辺縁からの基底細胞による上皮化が加わり治癒する、毛根など付属器は再生されず、肉芽形成による瘢痕・傷跡が残る

<創傷の治癒過程>
血管反応期(止血)→炎症期(殺菌・壊死組織の除去)→細胞増殖期(肉芽形成・上皮化)→成熟期(瘢痕組織の強化)
※創の治癒過程がどの段階であるのかを判断することが重要

<治癒過程からみた管理方法の基本>
炎症期
・前期:感染対策(①開放②洗浄③殺菌剤の期間限定使用)
・後期:壊死組織の除去(①外科的切除②自己融解③酵素製剤)
増殖期
・湿潤環境(創部を密閉し、閉鎖性に保つ)

<治癒過程からみた創傷管理の注意点>
・炎症期を早く完了させる(炎症期が終わらないと増殖期が始まらない)
・感染と汚染を区別する(発赤・腫脹・熱感・悪臭を伴う膿等、感染徴候の有無の観察)
・壊死組織が残存していないか注意する(肉芽を盛り上げるより壊死組織を取り除く治療が優先)
・炎症期と増殖期の境界を見極める(増殖期になったら湿潤環境をつくる処置に切り替える)
・肉芽の色は良好か(良性肉芽の色は瑞々しい赤色)
・上皮化は良好か(創辺縁に白く銀色の新生上皮が観察されると、肉芽組織が縮まり創縁が収縮、肉芽も白っぽくなる、圧迫やズレなどの損傷に注意)

3.褥瘡
<褥瘡とは>
日本褥瘡学会の定義
身体に加わった外力は骨と皮膚表層間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる
この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる

<褥瘡の主な発生要因>
・外力→応力(外力が物体にかかる時に起こる内部に生じる力:圧縮・引っ張り・剪断)
・組織耐久性の低下
→外的要因・・皮膚の湿潤、摩擦・ずれ
→内的要因・・低栄養、加齢による皮膚変化、全身の機能低下、血圧低下

<褥瘡好発部位>
仰臥位:後頭部・肩甲骨部・肘頭部・仙骨部・踵骨部
側臥位:耳介部・肩峰突起部・腸骨部・大転子部・膝関節顆部・踵骨部(外顆部・内顆部)
座位:背部・肩甲骨部・尾骨・坐骨結節部
セミファーラー位:後頭部・背部・肩甲骨部・尾骨・坐骨結節部・踵骨部

<ベッド操作時の褥瘡予防対応>
・ベッド操作後は必ず褥瘡好発部位をマットレスから離し、残留ずれ力を排除(圧抜き)する
・ベッドの頭側挙上時・・ベッドの下肢を上げてから上半身を上げる、臀部と膝関節をベッドのリクライニングポイントに合わせる
・頭側挙上から仰臥位に戻す時・・上半身を下げてから下肢を下げる

<褥瘡を発生させないケア>
・観察 ・発生要因除去 ・体圧分散マットレスの使用 ・適切なポジショニング
・ずれの排除 ・適切なスキンケア ・良好な栄養状態

褥瘡を発見したら・・・悪化させずに早期治療
・発生原因を解明し、その原因を取り除くケアが重要
・行っているケアの見直し
・治療

Ⅱ.ドレッシング材・保湿剤の紹介

▲ドレッシング材と保湿剤サンプル

いろいろなドレッシング材や保湿剤等を
展示していただきました。

Ⅲ.講義②
1.スキンケア
・皮膚のバリア機能:水分保持・病原体の侵入阻止・紫外線からの防御
・バリア機能の破綻→ドライスキン、浸軟(尿・便失禁)、創傷(褥瘡)、真菌感染 等
・愛護的な皮膚の洗浄とは:十分に泡立てた厚みのある泡で洗浄する、㏗の違いによる洗浄剤の特徴を知って使用する

<㏗の違いによる洗浄剤の特徴>
・皮膚表面は弱酸性→皮膚のダメージを最小限にする弱酸性の洗浄剤が推奨される
・汚れ落ち効果はアルカリ性洗浄剤の方が高い→ケースバイケースで洗浄剤を選択

<創傷(褥瘡)の洗浄の目的>
・創部、創周囲の汚染除去
・感染予防
・治癒促進(微温湯も治癒を促進する)

<創傷(褥瘡)の洗浄の方法>
①創内・創周囲の皮膚の汚れを微温湯(約38℃)で流す
②洗浄剤をしっかり泡立て、手のひらでなでるように泡で汚れを包み込む
③創周囲・創内を微温湯でしっかり洗い流す

<皮膚の保護>
・ドライスキンの予防→保湿剤の使用、洗浄剤の選択
・浸軟の予防→尿便の付着回避のため撥水効果のあるスキンケア用品の使用、通気性・吸収量を考慮したおむつの選択
・真菌感染が疑われる場合→主治医へ報告・治療・浸軟への対応・洗浄剤の選択
・便失禁による皮膚障害の場合→治療・洗浄(洗浄剤使用は1日1回程度にとどめる)・おむつの選択
・胃瘻による皮膚障害の場合→毎日の観察と洗浄・同一部位の圧迫予防・漏れのある場合は撥水効果のあるスキンケア用品や被膜剤の使用・びらんや潰瘍には皮膚保護剤や軟膏等の使用

2.ドレッシング材
<ドレッシング材とは>
・褥瘡予防・管理ガイドラインでは
「従来の滅菌ガーゼは除き、創における湿潤環境形成を目的とした近代的な創傷被覆材を指す」
・種類により保険適用が異なる

<ドレッシング材の種類>
・創を閉鎖し湿潤環境を形成するもの:半透過性ドレッシング材、ハイドロコロイドドレッシング材
・乾燥した創を湿潤させるもの:ハイドロジェルドレッシング材
・過剰な滲出液を吸収し保持して湿潤させるもの:アルギン酸塩ドレッシング材、ポリウレタンフォームドレッシング材、ハイドロファイバードレッシング材、ハイドロポリマードレッシング材

<ドレッシング材の使用>
使用前
・創部の観察
・創のできた原因究明と原因の除去
・洗浄剤で創部洗浄後、ドレッシング材を使用する
使用時
・ガーゼや被覆材を厚くあてると創部に圧迫が加わるため、できるだけ薄くする
・滲出液が多い場合→被覆材の選択や吸収性の高いガーゼを使用、交換間隔を増やす
・軟膏やアルギン酸塩ドレッシング材:浸軟を避けるため創面サイズの範囲に使用
・ハイドロコロイド、ポリウレタンフォーム、ハイドロファイバー:創縁より2~3cm外側まで覆えるサイズを選択
交換間隔
・被覆材の創周囲から滲出液が漏れる前に交換
・被覆材がよれたり、はがれかけていたら交換
・感染の危険のある場合は、毎日交換し創状態の観察を行うことが望ましい

まとめ
◎創傷・褥瘡の状態や原因を理解してケアする
◎創傷や褥瘡に対して適切なドレッシング材を適切な方法で使用する
◎皮膚のバリア機能を回復させるスキンケアをする

【開催を終えて】
社内外より多くの参加者があり、会場がいっぱいになりました。参加者から講師に質問も多数あがり、内容の充実したセミナーとなりました。
参加者からは「セミナーに来られなかった看護師にも伝達したい」「実際にドレッシング材や保湿剤に触れることができ、とてもいい研修だった」「スキンケアについて困った時に相談できるネットワークができてよかった」等の声が聞かれました。
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