ウェブブラウザのJavaScript(ジャバスクリプト)の設定が無効になっています。Javascriptが無効になっていると、サイト内の一部機能がご利用いただけません。 君という概念を愛している2016年12月17日 17:06氷鷹北斗誕生日おめでとう!!!という小説の腐バージョンです。千秋目線でスバ北♀、翠千♀、まおりつ♀、まこいず♀が存在しています。これもみんなで誕生日をお祝いする話です。騒がしいですがサラリと流してください。前作『綺麗な花には刺がある』と同系列で、序盤ちょっと話題に触れています。12月1日木曜日、天気晴れ。ファミレスの窓から見える景色は、夜闇とイルミネーション、そして信号機の明かりがやけに目につく。「氷鷹の誕生日会?」「そう。守沢もさぁ、今年散々ホッケ~に世話になったよねぇ……?」外の色と同じ真っ黒な髪を指に巻き付けながら、朔間は私にそう問いかけた。朔間が注いできた真っ赤なトマトジュースを見つめながら、確かになぁ、と思い返す。バスケ部の夏合宿では、氷鷹と朔間にマネージャーの仕事を手伝って貰い、今ではたまに3人で出かけたりするほど、仲も良い。けれど、彼女の誕生日は確か12月17日。12月17日は土曜日で、普通、彼氏のいる女の子なら彼氏と過ごしたい、と思うものではないだろうか。「でも、氷鷹には明星がいるだろう。どちらかの家にお泊まりでもするんじゃないか?」「それは大丈夫。だってもう明星に言っちゃったし。」「何を?」「だから、ホッケ~の誕生日はバスケ部と私たちでお祝いしようって明星に言ったの。そしたらお泊まりは17日の夜だし、16日の夜ならいいよって言ってた。」なんという行動力だ。そんなに積極的なら、是非ともその行動力を衣更の前でも披露してあげてほしい。ともあれ、明星も17日にお泊まりとはやることやってるんだなぁ、と思ってしまう。私も氷鷹も朔間も、あまりディープな話題にはお互い触れないが、お互いのアレコレに全く興味がないという訳ではない。むしろ、聞いて参考にしてみたいと思うこともあるくらいだ。「まぁ、それで早速なんだけど。」朔間はそう言った後、カバンからスマホを取り出して、操作し始める。一体何が始まるのかと首を傾げていると、朔間は無言で私の目の前にスマホの画面を差し出した。「12月15日の放課後は校門前に集合だから。遅刻したら私が血を吸うよ?」唇に付いた赤いトマトジュースをぺろりと舐め取り、朔間は楽しげに笑う。生憎、私も流血沙汰はごめんだ。分かった、と素直に頷いた私はきっと悪くない。高峯との放課後デートが丸つぶれになってしまったが、あの合宿ではお前も大層氷鷹には世話になったからな?そうと決まれば、やる気が出てきた。氷鷹の誕生日まで、あと16日。こうして私と朔間のサプライズ計画は幕を開けた。[chapter:君という概念を愛している]「さぁて、紹介します。料理講師のセッちゃんです。」「何なの?くまくんの方が料理上手いし、ふざけてるでしょ。はい、死刑。」「こうして朔間凛月はソファーに横たわって死にました。ぐえぇっ、セッちゃん、ぐるじい……。」「ちょっと、ソファーに寝ないでくれる?ここ、誰の家だと思ってんのぉ?そもそも誰が頼んできたんだっけぇ?」これは漫才か何かだろうか。ソファーに寝そべる朔間の襟首をグイグイと引っ張りながら、瀬名は大きなため息をつく。緩く波打つ銀髪の1部をカチューシャのように編み込み、その先端を黒いリボンで留めた瀬名は家の中でもまさに理想の女の子だった。白いニットに黒のスキニーパンツ、そして灰色のエプロン。ただそれだけしか着ていないのに、瀬名はまるで雑誌の中から抜け出してきたモデルのように格好よく決まっている。「ところで何で瀬名がいるんだ?」「そこからぁ?」あまり自分と比較したくないので、思ったことを口にすると、瀬名は呆れたように首を傾げた。「あぁ、セッちゃんは私が呼んだの~。バスケ部だけで祝ったらトリスタの連中でお祝い出来ないなぁって明星が言うから、最終的にゆうくんも呼ぼうかって話になってねぇ。ゆうくんが来たら当然セッちゃんも来るでしょ?彼女だしさぁ。」「当たり前でしょぉ?あのカップルだらけの場所にゆうくんだけ行かせるなんてこと出来ないし。」そりゃあそうなるな。でも、ちょっと待ってほしい。朔間、お前は明星と仲がいいな?私の2年分くらい明星と会話しているんじゃないか?別に明星は私の彼氏でもないし、弟でもないが、1年のころから可愛がっていた分少し寂しい。成長したんだな、と思えばいいのだろうが、実際は子どもが親離れするような気持ちになっているから救えない。「というわけで、セッちゃんと私と守沢の3人でケーキを作りまぁす。とは言っても、ケーキの生地は私が担当するから、セッちゃんは生クリーム担当で、守沢は果物切る担当ねぇ?よし、やろう。」そう言ってソファーから、がばっと起き上がった朔間は、さっきまでの態度が嘘のようにキッチンに入ってテキパキと動き始める。瀬名はそんな朔間の様子を見ると、呆れたように、でもどこか嬉しそうに笑って私の方を向いた。「ごめん守沢。あいつが勝手に決めたんでしょ?今日のことも、明日のことも。」「いや、まぁ、そう言われればそうだが、私も氷鷹には世話になったし、祝い事は好きだぞ!」「そお?…あいつね、嬉しいんだよ。くまくんって一回留年してるでしょ?気にしてないみたいな態度ばっかり取ってるし、実際そこまでは気にしてないんだろうけど、衣更と大神がいなかったら、くまくん本当に女友達がいなくてさ。」一つ年上で、おまけに強豪ユニットのKnights。周りからは距離を取られてるっぽくってさ。だから氷鷹が普通に話しかけてくれて嬉しかったんだって。隣のクラスに行って体操服を貸して貰ったりとか、そういう普通のことがしたかったってずっと言ってた。だから、くまくんの我儘に付き合ってやってよ。なんだ、そうだったのか。だから、あの面倒臭がりの朔間が明星と打ち合わせまでして、氷鷹の誕生日を祝いたがったんだ。「ちょっと、セッちゃん?守沢?早くキッチンに来て準備してよ。」「はいはい、分かってるってば。行くよ守沢。」さっきのことは秘密にしてよねぇ?瀬名にポンと肩を叩かれて、頷くと瀬名は満足したような顔をしてキッチンに向かう。私もその後に続いてキッチンに向かうと、せっせと生地を作る朔間の姿があって思わず小さく笑ってしまった。「…?なに?守沢あんまり見ないでよ。私を見つめていいのは、ま~くんだけなんだから。」「でたよ、くまくんの『ま~くん』が。ま~くんに甘えてばかりで愛想つかされても知らないからねぇ?」「うるさいなぁ、セッちゃんは。私のことはいいから生クリームかき混ぜてなよ。第一ま~くんはそんな安い男じゃありません。」さぁ、どうだか、と言った瀬名はふと私の方を見ると、あんたもだよ守沢、と言って生クリームをカシャカシャとかき混ぜる。「あの後輩、今はあんたにベタ惚れしてるけど、顔だけはいいんだから、あんまり野放しにしないようにしなよぉ?」「?それはどういう意味だ?」「それはねぇ…守沢。たくさんエッチしないと他の女の子に取られても知らないよってことだよ。ねぇ、セッちゃん?」「そうそ……って違うっつ~の!」お前は黙ってろ!と泡立て棒を持った手で、瀬名が朔間の頭を小突くと朔間の頬にクリ~ムが付いて、ちょっと~?と朔間が瀬名の腕をつかむ。それに驚いた瀬名の手から、朔間は泡立て棒を奪うと瀬名の頬に思いっきり棒を押し当てた。当然、瀬名の頬には生クリームがつく。「ちょっと、付いたじゃん!何してんのあんたバカなの!?こらっ、やめろって!」「セッちゃんが先に付けたんじゃん!おのれ~成敗してくれるわ!がお~!」「意味わからないっつ~の!ちょっと、守沢!こいつ止めて!」仕方ないなぁ、止めてやろう。と、朔間を見ると、朔間はニヤニヤと笑っている。見るからに悪代官のような悪巧みをしている顔だ。「守沢、ちょっとこっちおいでよ……悪いようにはしないからさぁ……なんで遠のくの……凛月のこと嫌いなの……?」「うっ、あ、やめろ!囁くな……っ!」「守沢、近づいたらジ・エンドだからねぇ?そのままいなよ……って言ってるそばから……っ!こいつの顔をよく見てみなよぉ。」「悪魔のような顔をしているな?」「は?ま~くんが可愛いって言ってる顔にいちゃもんつけないでよ。私ま~くんクラスタの同担拒否過激派だよ?舐めてんの?」「別に舐めては…っぎゃあ!瀬名!ちょっと助けてくれ!朔間降りろ!」し~らない。って、酷いぞ瀬名!後ずさった際に躓いて尻餅をついた私に馬乗りになった朔間は、生クリームを私につけて楽しそうに鼻歌を歌っている。まぁ、…今日くらいはいいか。そんなふうに騒がしい状況を何度も繰り返しながら、何とか出来上がったケーキは3人で飾り付けをして冷蔵庫に押し込んだ。朔間の飾り付けのせいで、多少グロテスクになったがそれはまぁ、ご愛嬌だろう。「じゃあ次は飾り付けだな!」「そうだねぇ。セッちゃん、100均で買ってきた画用紙と折り紙は?」「ここにあるよ。それで、2人とも私にお礼の言葉はぁ?」「瀬名、誕生日会に家を使わせてくれてありがとう!今度ポテトを奢ってやるな☆」「はぁ?あんなカロリーの高いもの食べるわけないでしょぉ?いらない。却下。」「セッちゃん家を提供してくれて、ありがと。今度、私の血をあげるね。」「はぁ?いや、まじでいらない。あんた達本当に感謝する気ある?」ど~ど~、と瀬名を宥める朔間の頭に、瀬名の軽い拳が飛んだのは、さておき本当に瀬名には感謝している。俺の家も朔間の家も都合がつかなくて、困っていたときに瀬名が両親を説得して家を空けてくれた。ゆるキャラが大好きな高峯と、絵が上手い蓮巳にお願いして、描いてもらったイラストの色塗りやら、デザイン画を元に3人で画用紙を切ったり、色紙を貼ったりしていく。ついでに懐かしいペーパーを使った花を作ってみたりもした。そして、全てが出来終わったのは深夜3時半。「よし!飾り終わったぞ!って、あれ、朔間は?」「くまくんなら、ほらあそこ。」ふわぁと、欠伸しながら瀬名が指差したのは、さっきまで作業していたソファーの上。守沢ももう遅いから、泊まっていきなよ、と言った瀬名はキッチンで2人分のコーヒーを注ぐと、朔間の寝ているソファーに腰をかけた。「守沢もこっち来て、飲んでからお風呂入ればぁ?…はぁ、久しぶりに夜更かしなんてした。本当いつぶりだろうねぇ……。」あんたのせいなのにさ、と言って朔間の頬を指で撫でる瀬名の顔は優しい。私は瀬名の隣に座るとコーヒーを片手に、小さく微笑んだ。「明日は成功すればいいな!」「ばかだねぇ、成功するに決まってるでしょ。くまくんがこんなに頑張ったんだから。氷鷹、泣いちゃうかも。」瀬名の言葉は少し大袈裟だと思われてしまうかもしれないが、私には少しも大袈裟じゃないように感じられた。むしろ、氷鷹がこの準備の話を聞いたら一緒に準備をしたかったと言うかもしれない。「おやすみ、くまくん。」瀬名が朔間の頭を撫でて、朔間は嬉しそうに笑った。[newpage]12月17日土曜日、天気晴れ。午後4時31分。マフラーに顔をうずめて寒そうに手を擦りながら、明星と一緒に校門を出てきた彼女を勢いよく抱きしめる。むっ、今日は私がじゃないぞ。氷鷹を抱きしめた犯人は朔間だ。「っ!?朔間!?いきなり出てきたらびっくりするだろう?どうしたんだ?」「いいからホッケ~は目をつぶってよ。お願い。」「目?…まぁ、それは構わない…がっ!?おい、朔間!?」「大丈夫、悪いようにはしないから。明星よろしくねぇ?」「はいは~い!じゃあホッケ~、ゆっくり歩こうね~☆」「ちょっと待ってくれ、明星!おいこら…!」氷鷹の目に布を巻いて、念のためにマフラーを更にぐるぐるに巻く。一見やばいビジュアルだが、夢ノ咲付近は人が少ないから大丈夫だろう。氷鷹は学校でも多方面から慕われていて、明星が重そうな紙袋を両腕に下げて歩いている。多分たくさんの人からのプレゼントだろうな。朔間はそれを見て、先を越されちゃったかぁ、と少し寂しそうに笑った。「なぁに言ってんの。最初が取られたんなら、最後を取ればいいでしょぉ?一番最後に盛大に祝って最初の思い出なんて霞んじゃうくらいの思い出にすればいい。」ポン、と瀬名が朔間の背中を叩いて、私は朔間の腕をつかむ。そうだぞ、朔間。まだまだ誕生日はこれからじゃないか。「行くぞ!朔間!瀬名!急いで準備しないと間に合わない!」「私はバイクでゆうくんとオードブル取ってくるから。衣更と高峯は今頃、重い飲料を買いに走ってると思うし、あんた達も急ぎな。早く、くまくんダッシュ!」「…頑張るのって私のキャラじゃないんだけどなぁ。…守沢、セッちゃん、ありがと。」瀬名と分かれて、朔間と急いで瀬名の家に向かう。瀬名に貸してもらった鍵で中に入らせてもらうと、私はケーキを取り出し、急いでテーブルのセッティングを始めた。私がテーブルをセッティングする間、朔間はせっせと簡単な料理を作る。オードブルを頼んだのは頼んだのだが、なんせ人が多い上に、男子もいるためそれだけでは足りないだろうという話になったのだ。「朔間、こっちは終わったぞ!」「明星達は今どこら辺にいるって言って?」「まだ歩道橋を渡ったとこだと言っているが」「それなら良かった。鍋の準備しようかと思ってたんだよねぇ…♪守沢、こっち来て手伝って。」「あぁ、分かった!」朔間と並んで鍋の具材を切っているとインターホンがなって、慌てて玄関へと向かう。そこには鼻を真っ赤にした衣更と高峯、その後ろには瀬名とゆうくんもいて、全員が中に入った瞬間、はぁ~と息を吐いていた。「寒かったな~。飲み物は重たいし、ぬいぐるみはでかいし死ぬかと思った。」「周りに凄い目で見られてましたもんね…。ぬいぐるみは可愛いけど、寒すぎて鬱になりそうだったし…守沢先輩。」「うおっ、高峯!包丁を持ってるときに引っ付いてきたら危ないぞ!?」高峯が床に座り込んで、私をぎゅっと抱き寄せる。腹の辺りに高峯の頭があって、格好的にも結構恥ずかしいのだが、瀬名達を見ると比較的にマシに思えてくるからここにいる連中は頭がおかしい。「ゆうくん、ちょっと待って、無理だってばぁ!今、バイク運転して汗かいてるから、抱きしめないでよぉ…。」「寒かったから、ちょっとだけ…。それに泉さんいい匂いするよ?汗かいてるなんて嘘じゃ…。」「ちょっと、嗅がないで!ゆうくんのバカっ、おい、衣更!知らん顔してないで、ゆうくんを引き剥がしてよぉ!」「…俺ちょっと凛月の様子見てこよ~っと。」キッチンに向かう衣更に持っていた包丁を託して、高峯の頬に手を当てる。本当に冷たくて、鼻だけが赤い。まるで、トナカイみたいだな、と呟くと、うるさいッスよ、と拗ねられた。「でも抱き心地良かっただろう?あのぬいぐるみ。」「そうッスけど、あれ氷鷹先輩にやるやつですし。ベタベタ俺が触りまくるわけにはいかないでしょ。…先輩達、頑張ったんですね。」「……ん?」飾り付け。そう言われて、キッチンにいる朔間のことを思い出した。鍋は大丈夫だろうか。やっとゆうくんから解放された瀬名と2人でキッチンを見に行くと、キッチンでは朔間が具材を鍋に放りこんでいて、衣更はその様子を愛おしそうに見つめていた。どうやら、邪魔者は私たちの方だったようだ。-----ピンポン、とインターホンが鳴ってドアを開けると、明星がいて、その隣には目隠しされた氷鷹がいた。困惑する氷鷹の靴を明星が脱がせて、リビングまで連れてくる。氷鷹がリビングに入ると、私たちはクラッカーを片手に無言で合図を出し合う。明星が氷鷹の目隠しを取った瞬間、クラッカーの中身が弾けた。「誕生日おめでと。ホッケ~。」朔間が氷鷹に勢いよく抱きついて、氷鷹はそのまま尻餅をつく。そして朔間の背中を擦りながら、頬を赤く染めた氷鷹は穏やかな笑顔で笑って見せた。どうやら成功したようだ。「朔間、みんな本当にありがとう。凄く嬉しい。目隠しされたのはびっくりしたが、なるほどな。誕生日を祝ってくれるなんて思って無かったから、上手く言葉に出来ないが、幸せだ。」ホッケ~、とホッケ~の名前を呼んだ朔間の声は震えていて、氷鷹は目を伏せる。きっと、2人とも泣いているのだろう。瀬名はそんな2人を見るみんなに、じゃあ、ご飯食べよっかぁ、と声を掛けて準備を促す。ありがとう、ありがとう、と言い合う2人に私と瀬名は顔を見合わせて困ったように笑った。「ほらぁ、そこの2人も準備しなよ。主役と主催者は隣同士にしてあげるからさぁ。ほら、くまくん立って。」「セッぢゃん…。分かったから、鼻水だけ拭かせてよ…。」「はぁ!?ちょっと、くまくん汚っ!ほら、ティッシュ!」瀬名が朔間の腕を引っ張って引きずるようにテーブルへと向かう中、氷鷹は目元を手で拭いながらふらふらと立ち上がる。途中よろけて、慌てて支えてやると、ありがとうございますと微笑まれた。「嬉しかったか?」「それはもちろん。でも何より、朔間が私を凄く好いてくれていたことが嬉しいです。これは朔間が計画したことですよね?」「なんでそう思うんだ?」「全てが朔間らしいからです。面倒臭がりですが、朔間はやるときはやる子ですから。」じゃあ、私も朔間のところに言ってきますね。そう言って、朔間のところに歩いていった氷鷹を見て、思わず笑みがこぼれた。なんだ、2人ともとっくにお互いを友達だと思っていたんじゃないか。「やられたねぇ、守沢。ま、あんたにはあんたで羽風って友達がいるからいいじゃん。」「瀬名も友達だぞ!」「はいはい、仕方ないからそういうことにしておいてあげる。」瀬名も本当に素直じゃないな。耳を赤くしているからバレバレなのに。きっと指摘したら怒るだろうから言わないでおこう。先に席に行ってるから、と言った瀬名の後ろを追うようにして私も席についた。-----「ホッケ~誕生日おめでとう!さて、ケーキオープン~☆って、うえ!?」先にオードブルと鍋をみんなで食べて、いよいよケーキを食べようと蓋を開けると、グロテスクな例のやつが出てきた。味は多分美味しいはずだが、如何せん見た目がグロい。「凛月……おまえ、」「嫌だなぁ、セッちゃんと守沢も一緒に盛り付けしたんだよ?ただちょっと私の個性が強かっただけ~♪毒キノコとホムンクルス入り生クリームケーキ。」美味しいから食べてみてよ、という朔間に、瀬名が切り分けたケーキを全員で一斉に食べる。みんな食べる前は微妙な顔をしていたが、いざ食べてみると、美味しい!とケーキを絶賛した。普段はあまり美味しいと言わない瀬名も珍しく、やっぱり、くまくんのケーキって美味しいよねぇ……と悔しそうにいう。「明星。ほら、口を開けろ。」「え?…あ~…んぐっ!?」「お前はこういうのが好きだからな。美味しいか?チョコプレー…。」ト、と言い掛けた氷鷹に明星が顔を近づけたところで、朔間が明星の口を手で抑えていた。それは一瞬のことで、衣更も遊木も明星に憐れんだ目を向けている。高峯だけは私に差しだされたフォークからケーキを食べるのに夢中だったが。「……ちょっと~?」「ふぁふ、眠い……ケーキ食べたら眠くなって来ちゃったなぁ。ま~くん膝貸して?」「ちょっと、寝ないでよ!?せっかくホッケ~にもチョコあげようとしたのに飲みこんじゃったじゃん!!」「はぁ?し~らない。ま~くんの膝がダメならホッケ~に貸してもらおうかな~。」「もっとダメ!ホッケ~は俺のなんだから!」朔間と明星が氷鷹を挟んで、きゃんきゃんと口喧嘩をし始めると、衣更は呆れた顔をし、ゆうくんは、あちゃ~と額を抑える。瀬名は耳を抑えると、うるさいからいい加減にしろ、と2人に言ったが、2人とも聞く耳を持ちやしない。「あ、そうだ。氷鷹先輩。」そんな中、ケーキを食べていた高峯が、ふと何かを思い出して席を立つ。すると、衣更も高峯に続いて立ち上がって、氷鷹の目の前にでかい荷物を差し出した。「氷鷹先輩、誕生日おめでとうございます。これ、プレゼントです。」「正確には俺と高峯とスバルと真からな。」「でかいな……、これ開けてもいいか?」「もちろん!」氷鷹が席を立ち上がってプレゼントと向かい合うと、包装紙を綺麗に外していく。中から出てきたのは右手がオレンジ、左手が青、右足が赤、左足が緑の大きなテディベアだった。「トリスタのイメージカラーから取ったから、カラフルになっちゃったけど、お腹と顔は白いし可愛い…と思うよ!女の子の好みが分からなくてごめんね。」「いや、私は普通に嬉しいぞ、遊木。本当にありがとう。」氷鷹が笑って礼をいうと、4人は照れくさそうに笑って、良かったと口々にいう。そうなると、次は必然的に私達の番が回ってくる。朔間と瀬名と顔を見合わせると、席を立って、紙袋を3人で抱えた。「私たちからはこれだ!」「くまくんが気合い入れて選んでたから、使ってあげてよねぇ?」「セッちゃん、一言多いよ。」本当のことだろう?守沢、あんたもちょっと黙ってくれない?と朔間に言われて、俺と瀬名は顔を見合わせて笑う。氷鷹は紙袋を手に取ると、そっとテープを剥がして中身を覗いた。「…朔間、これ。」「ホッケ~がほしいって言ってたから、やっぱりこれが一番喜ぶかなって思ったんだけど、イメージと違った?」「そんなことない。むしろ、私で着こなせるか心配なくらいだ。」明星と誕生日に会うから、いつも以上に可愛い服を着たい。そんな氷鷹に朔間は白のダッフルコートと淡い水色のワンピースを送っていた。何を貰ったの?と聞いてくる明星に、秘密だ、と意地悪く笑った氷鷹は紙袋をそっと足元に置く。そして、ケーキを全て食べ終わる頃にはチラチラと雪が降り始めていた。「あれ?くまくん達は?」「朔間と衣更はヒーターの前で寝ていて、ゆうくんと高峯はお菓子を買いにコンビニに行ったぞ。」「明星と氷鷹は?」「それが、ベランダにいてな。」瀬名が食器を片付けて部屋に戻ってくると、不思議そうに首をかしげて辺りを見回す。明星と氷鷹が外だと伝えた瞬間、瀬名がベランダに行こうとして慌ててそれを止めた。「ちょっと、何?」「いいから、黙ってしゃがんでくれ。」「……はぁ?」いいから、ともう一度言うと、瀬名は渋々しゃがむ。カーテン越しだから、向こうにこっちは見えていない。ただ、耳をすませば、明星と氷鷹の声は聞こえてきた。「明星、朔間から計画を聞いていたんだろう?なんで教えてくれなかったんだ。」「教えたらサプライズにならないじゃん。それに朔間先輩の妹、一生懸命だったんだよ?俺、思わず嬉しくなっちゃった。ホッケ~と仲良くなってくれて、大切にしてくれて、ありがとうって、言えなかったけど。」「…そうか、私も嬉しかった。朔間と友達になれてよかったと思ったし、あいつは私と同じくらいお前のことも認めてくれている。本当に私は幸せ者だな。」ホッケ~、と掠れた声で明星が氷鷹を呼んで、無音になる。きっとさっきは出来なかったキスでもしているのだろう。ただいま~!と元気よく帰ってきたゆうくんと高峯に、俺と瀬名は、おかえり、と微笑んだ。もうすぐクリスマス。私と瀬名はこれが夢ノ咲で過ごす最後のクリスマスになる。それでも、クリスマスは誕生日と同じで毎年毎年やってきて、来年もこうして過ごしたいと思わせてくれる。そして、きっと、来年も私たちはこうして過ごしたいと願うのだろう。「守沢先輩、」来年もまた氷鷹先輩の誕生日をみんなで祝いましょうね。そんな高峯の言葉に、当たり前だ!と返したのは私だけじゃなく、瀬名もだった。瀬名に聞かれているとは思っていなかったのか、高峯はびっくりしていたが、瀬名が約束を破ったりしないことを私は知っている。だから、来年もこうして私たちは過ごすのだろう。Happy Birthday、氷鷹北斗。私たちはお前の誕生日だけを祝っているわけじゃなかったみたいだ。みんなでこうして集まれたことも、どうか祝わせてくれ。「…くまくん達、ヒーターに近すぎない?」「衣更くんあっつ!!燃えちゃうよ~、起きて!!」こうして会うきっかけをくれた主催者は夢の中にさようなら。俺と高峯は、朔間と衣更を起こす2人を見て苦笑すると、2人に加勢した。End