- 2015/9/9 05:00:33
「オーガニック映画祭 in 大阪」に参加してみた。そして会場の大阪府立農芸高校は希望の学校だった
「オーガニック映画祭 in 大阪」で有機農家を取材してまわった作品を上映していただけるとのことで、いそいそと会場に出向いてみたら映画祭の楽しさはもちろんのことですが、会場となった大阪府立農芸高等学校が将来に希望を感じさせるすばらしい取り組みをしていたのでご紹介いたします。
国際有機農業映画祭は、国内外の有機農業をはじめ環境問題やオーガニックに関する映画を広く紹介する映画祭です。2007年からはじまる、この国際有機農業映画祭を関西でも開催しようと2010年にはじまったのが国際有機農業映画祭in大阪。食・農・環境に関する国内外のドキュメンタリー映画を上映し、もっと食に関心をもってもらおうと会場では食品販売なども行っています。
2012年から名称を「オーガニック映画祭 in 大阪」に。「おいしい未来を育てよう」という呼びかけのもと開催されました。
共同開催として会場となったのは、大阪府堺市美原区にある大阪府立農芸高等学校です。1917年に創立され、来年100年を迎える高校で、ハイテク農芸科、資源動物科、食品加工科の3科があります。ハイテク農芸科では植物栽培について、資源動物科では畜産や動物飼育について、食品加工科では食品加工技術について、それぞれ専門的に学ぶ食の生産の総合教育機関というあたりからしてワクワクさせられます。
門には生徒が立って案内をしていました
会場にはざっと見る限り200人くらいの人が入っているようでした。開催5年を迎えて関心の高い人にはしっかり認知されているようです。オープニングにあたって主催の坂東武子さんからの挨拶が行われます。作品の上映交渉から会場設営や集客など映画祭を運営する大変さは計り知れませんが「ひとりでも多くの人に食に関心を持ってもらいたい」という熱意が挨拶から伝わります。
2015年の上映作品は、以下の通りでした。
10:00 パパ、遺伝子組み換えってなぁに?
2013年 / アメリカ / 85分 / 監督ジェレミー・セイファート
11:30 ミツバチからのメッセージ
2010年 / 日本 / 57分 / 構成・撮影・編集・岩崎充利
制作:ミツバチを救えDVD制作プロジェクト実行委員会
ミツバチの大量死はなぜ起こったのか? 害虫を駆除する目的で散布した農薬が、益虫も微生物も殺している。そんな中、野菜や果物は安全なのか? 空気や水は汚染されていないのか? 虫は死んでも人間は大丈夫といえるのか?ミツバチの大量死から様々な問題が見えてくる。
ランチタイムを挟んで会場となる大阪府立農芸高等学校の生徒によるプロジェクト発表がありました。これは農業、畜産、環境、生活などのテーマで1年かけて研究した成果のプレゼンテーションです。「農業高校生の甲子園大会」ともよばれる、農業クラブ全国大会に向けて準備の進めている3つのグループが発表しました。
14:20 大地の学校 <初公開>
2015年 /日本/ 60分/ 制作 志賀元清
有機農家の畑を訪ね、農業をすることになった背景や哲学、有機の技術を紹介。
なんだか、農業をはじめたくなる温かい作品。
15:25 春よこい ~熊と蜂蜜とアキオさん~
2015年/ 日本 / 71分 / 監督 安孫子亘
個人的に大変興味をもったのは「春よこい」でした。福島県会津金山町でマタギを生業(なりわい)として生きる猪俣さん暮らしをとらえたドキュメンタリー作品で、山の神を崇拝し、マタギ独自の文化、山の掟に従って狩りをするマタギの姿・精神が丁寧に描かれた作品です。ふだんなかなか触れることのないマタギの仕事も興味深いことはもとより、ひとつひとつのシーンが長めにあって、ゆっくりじっくりと大変美しい映像に浸りながら自然のことを考えさせられます。
さて、校舎に挟まれた広場では農産物や加工品など、さまざまなオーガニック関連商品が紹介されていました。あいにくの雨天でしたが、ランチタイムの後はごった返しの人気ぶりでした。
さてこのマルシェの中に「大阪府立農芸高校の生徒によるプロジェクト発表」と関連したブースがありました。その一つがかつて綿の大産地だった大阪の伝統品種「和泉木綿」を復活させようという取り組みです。
今となっては自給率0%となってしまった綿は、実は大阪が日本でも有数の産地だったことを知った生徒の皆さんが、当時の固定種「和泉木綿」の種を入手して高校の圃場で栽培します。
和泉木綿。弾けると中が綿になっている
栽培した木綿から種取りをして苗を育て、小学校や百貨店を通じて和泉木綿の苗を配布して知ってもらう活動を行う一方で、染色技術を学んだりと、どうやって和泉木綿を広げていけるかに取り組んでいます。こういう課題を先生から与えられるのではなく、生徒が自主的に見つけ出して学校の畑を使って実践的に方法を見つけ出し、小学校や百貨店に交渉してイベントを実現していくプロセスはとても高校生とは思えない実力です。
発表を聞きながら大変感動していたのですが、マルシェに出るとその和泉木綿を販売していました。
今年が2回目の収穫なのだそうです。プロジェクトは先輩から引き継ぐものもあれば、今回の和泉木綿は前任者もないので手探りで進めていったそうです。
和泉木綿で作ったリース。リースも農場内のぶどうの枝を巻いて松かさをあしらって作ったもののようです。
興味を持ってくれる後輩ででてくれるとプロジェクトを引き継ぎ、さらに研究が進むのだそうです。
素材づくりから取り組みたい服飾関連のみなさま。純国産・無農薬の和泉木綿で服づくりにご興味があればぜひ。手づくりリースは、リースキットも一緒に販売していました。
さらにもう一箇所。「ネリカ米(ねりかまい)」普及のプロジェクトです。ネリカ米とは英語:NERICA, New rice for Africaという意味で、アフリカの焼畑農業を改善するソリューションとしてアジア稲とアフリカ稲を掛け合わせて作った品種だそうです。
背丈も190cm近くまで大きくなるネリカ米。ブルキナファソは雨季を使って水耕栽培で育てられるのだそうです。しかしデカイ!
このネリカ米を研究している生徒さんはブルキナファソ友好協会を通じてネリカ米を購入し、高校の圃場で国産のミルキープリンセスとを、畑・田んぼ・陸稲とで栽培比較を行いながら、ネリカ米の特性を調べ、収穫できたお米の食味実験なども行うと同時に、種の配布などの広報活動を行っています。
「誰も知らないネリカ米を育ててみたいとプロジェクトを立ち上げたとき、なかなか理解してもえず苦労しました。いまはプロジェクトを引き継ぎたいという後輩も出てくれて高校卒業後も研究が進められそうです」とのこと。
それにしても大阪府立農芸高等学校の生徒の皆さんのこの行動力は脱帽ものです。
さてこの高校。敷地面積は約9万平方メートルあり、大阪府内の公立高校では一番広いそうです。中には農場、果樹園、花園、ハウス、牛舎、鶏舎、豚舎、加工場などがあり映画祭の合間に見学ツアーも行われていました。これはちょっと前日に参加させてもらいました。案内してくれたのはハイテク園芸科の生徒さんと先生です。
何せ広大な農地で、ぐるっと回るだけで1時間ほどかかりました。かいつまんで紹介していきますと、まず案内されたのは苗床のハウスです。
秋蒔きの冬作物がトレイでスタンバイしていました。
苗は決まった品目を学ぶのとあわせて、生徒が関心がある品種があれば種をまいて育てることができます。レタスの種のトレイにはロマネスコがあったり、地域の伝統品種があったりと種の名前を眺めるだけでワクワクしてきます。
意外だったのが下仁田ネギが植わっていることでした。勝手ながら青ネギ文化圏だとステレオタイプに考えていたのですが、かなりの畝でびっしりと下仁田ねぎが植わっていました。
「白くするために畝を高くしなくちゃならない」など栽培のポイントも生徒の皆さんはしっかり考えていました
果樹もいろいろ植わっていました。中には栽培方法を工学的に追い込んだぶどうもありました。
ぶどうを栄養成長させないように遮根栽培といって、根の張る範囲を制限し給水量も調整しているのだそうです。こちらも生徒のみなさんがプロジェクトを立ち上げて研究している中のひとつ。
この後さらに果樹園から造園圃場など見て回りましたが、どの圃場もすべて生徒たちがかなりの割合で自主的に管理して運営しているようでした。生徒のお一人が教えてくれたところによれば、先生は生徒の課題を受け止めて必要なアドバイスをあたえてくれる役割なのだそうです。
また校舎内ではふれあい動物園も開かれていました。
入り口では、この高校で飼育している動物たちの缶バッジを販売しています。ポニーにヤギにフェレット、モルモットにヒツジにデグーです。
中に入ってみると、小さなお子さんがモルモットに触れてみたり、フェレットを肩にのせてもらってみたりと楽しそうです。
動物の面倒を見るためには休みはありませんから、この学科の生徒さんは夏休みや冬休みも返上して交代で面倒を見ているのでしょうか。
まだまだ感動した大阪府立農芸高等学校の取り組みはあるのですが、まずはこの辺で。
今時の若者をやる気がないとか元気がないとか、いろいろ批判する記事を目にすることがありますが、どっこいこんなに希望にあふれた素敵な高校もありますね。食を総合的に学び、自主的に課題を考えてプロジェクトを立ち上げて取り組み、それを可能な限りで引き継いでいく。憧れすら感じるすばらしい教育の場だと思います。
こういう高校から調理師や栄養士の養成校に教育とともに生徒がリレーしていったら、これからの食にもっと希望が持てそうだと感じました。
さて話は戻って映画祭。午後の2本の上映も無事に盛大な拍手とともに終わり、その後に交流会が行われました。農業者の方や料理関係の皆さんなどと意見交換などをして盛り上がっていたらあっという間に閉会に。
映画祭の取り組みも、この会場ということも含め、東京で行われる映画祭とは違った、あたたかくも希望のもとに食と農を五感とともに考えさせられるすばらしい機会となりました。また来年が楽しみです。
オーガニック映画祭 in 大阪
大阪府立農芸高等学校