床ずれ(褥瘡)

執筆者: Daniela Kroshinsky, MD, MPH, Associate Professor of Dermatology;Director of Inpatient Dermatology and Director of Pediatric Dermatology, Massachusetts General Hospital;Massachusetts General Hospital for Children ; Lauren Strazzula, MD, Dermatology Associate, Massachusetts General Hospital

床ずれは褥瘡(じょくそう)、褥瘡性潰瘍、圧迫潰瘍とも呼ばれ、圧迫により皮膚に血液が十分流れなくなり、その部分が損傷を受けた状態のことをいいます。

  • びらんは圧迫により生じることが多いのですが、特に骨のある部分の上の皮膚が引っぱられたりこすれることでも生じます。

  • 診断は通常は診察に基づいて行います。

  • 治療は、患部を清潔にして圧迫を取り除き、特殊なドレッシング材をあてることで行いますが、手術をする場合もあります。

床ずれは年齢に関係なく、寝たきりの人や車いすが手放せない人、自分では体の向きや位置を変えられない人ならだれにでもできます。この病気は高齢者に比較的多くみられます。骨が突き出ていて皮膚への圧迫が集中しやすい部分、たとえば腰、お尻、かかと、足首、ひじなどは床ずれができやすい場所です。また、ベッド、車いす、ギプス、添え木などの硬い物体から皮膚に圧迫が加わる部位にも生じます。床ずれができると病院や介護施設で過ごす期間が長引き、治療費が増えます。床ずれは、治療をしなかったり、原因となっている病気のために治癒が妨げられている場合には生命に関わることがあります。

床ずれがよくできる部位

原因

床ずれの原因には以下のものがあります。

  • 圧迫

  • 牽引

  • 摩擦

  • 湿気

  • 栄養不良

皮膚に対する圧迫、特に骨の上の皮膚に圧迫が生じると皮膚への血流が低下したり、止まってしまいます。血流が1~2時間以上止まってしまうと、皮膚は最も外側の層(表皮)から死んでいきます。死んだ皮膚組織は崩れ、傷口が開いたびらん(潰瘍)が生じます。大半の人は、眠っている間でも無意識に自分の体の向きを常に変えているので、床ずれができることはありません。しかし、正常な動作ができなくなって、床ずれができやすくなる場合もあります。具体的には、麻痺状態にある人、昏睡状態にある人、非常に衰弱している人、鎮静状態にある人、拘束状態にある人などです。麻痺や昏睡状態にある人は、動くことができず、また正常ならば体を動かしたり、だれかに動かしてもらうよう頼む必要を感じる信号である痛みを感じないので、床ずれができるリスクがとりわけ高くなります。

牽引(ひっぱり)でも、皮膚の血流が減少します。寝具の場合が多いのですが、なにか狭い部分に押し込められたり、ひっついて皮膚が引っぱられると牽引力が生じます。皮膚が引き延ばされると、圧迫と大変似た作用が生じます。

同様に、摩擦も床ずれの原因や悪化要因です。皮膚がたびたびこすれると、表層がすり減ります。ベッドの上でたびたび引きずられると皮膚のこすれが生じます。

湿気も皮膚のこすれを増やし、長期間にわたり湿気にさらされている場合は、皮膚の外側の保護層が弱くなったり、損傷します。たとえば皮膚に汗、尿、便が長期間付着しているようなケースがあります。

栄養不良も床ずれができるリスクが高まり、またできた場合も治りが遅くなります。栄養不良だと、皮膚や骨への圧迫を和らげたり、血管がつぶれないようにクッションとして働く脂肪の保護層が少なくなります。また食事にタンパク質、ビタミンC、亜鉛が不足している場合は、皮膚の修復機能が損なわれます。

知っていますか?

  • 栄養状態が良くないと床ずれができるリスクが高くなり、またできた場合も治りが遅くなります。

  • 自分で動けない人の場合、体位を少なくとも1~2時間に1回変えることが床ずれの予防に役立ちます。

症状

床ずれは、ほとんどの場合いくらかの痛みとかゆみを伴います。しかし、感覚が鈍くなっている人では、床ずれがひどくなっても痛みを感じない場合があります。

床ずれは、損傷の重度に応じて4段階に分類されます。

  • ステージI:赤くなり、炎症が生じる

  • ステージII:皮膚の浅い部分が失われ、表皮剥離、水疱またはその両方が生じる

  • ステージIII:皮膚の全層が失われ、脂肪層まで達する

  • ステージIV:皮膚の全層が失われ、下にある筋肉、腱、骨が露出する

床ずれは必ずしも軽度の段階から重度の段階へと進んでいくわけではありません。徴候に初めて気づいたときにすでに後期の床ずれとなっているケースもあります。

床ずれに感染が生じると、不快な臭いが生じることがあります。びらんの内部や周囲に膿がみえることもあります。感染症が周囲の皮膚に広がる(蜂巣炎が生じる)と、床ずれ周囲の部位が赤くなったり、熱を帯びたり、痛みが悪化します。感染症にかかると浅い床ずれでも治りが遅くなり、床ずれが深い場合は命にかかわることもあります。感染症が骨まで達することもあり(骨髄炎)、そうなると抗生物質による治療を何週間も行わなければならなくなります。最も重いケースでは、感染が血流にまで広がり(敗血症)、発熱と激しい悪寒が生じます。

診断

通常は診察を行うことで床ずれは診断できます。多くの場合医師か看護師は床ずれの大きさと深さを測り、その段階を判断し、治療計画を決めます。

損傷が重度の場合は、感染症がびらんから骨まで広がっている(骨髄炎と呼ばれる病気)かどうかを調べるために、放射線核種による骨スキャン検査やガドリニウム増強MRI(磁気共鳴画像)検査を行うこともあります。骨髄炎を診断するために、骨の小さなサンプルを採取し(生検)、細菌が増えるかどうかを調べることもあります(培養検査)。

予防

床ずれでは予防策を取ることが何よりも重要です。看護師や看護助手、家族などのケアにあたる立場の人が細心の注意を払うことで、ほとんどの床ずれは防ぐことができます。寝たきりの人や車いす生活の人の場合、皮膚を毎日ていねいに調べることで、皮膚の赤みや変色を早い段階で見つけることができます。圧迫されている部位の皮膚がそのような状態になっていたら、体の位置や向きを変え、変色した皮膚の部分が正常な色に戻るまでは圧迫されない姿勢にしておく必要があります。

皮膚の血流を保つためには姿勢を変える必要があるため、必要以上の安静状態は避けるべきですし、体を動かすことが勧められます。自分で体を動かすことができない場合は、ベッドに寝ている場合は2時間ごと、椅子に座っている場合は1時間ごと、できればもっと頻繁に体の姿勢を変える必要があります。皮膚が湿っていると床ずれができるリスクが高まるので、常に清潔で乾いた状態を保つようにします。皮膚が乾いていれば寝具や布にくっつきにくいので、こすれや引っぱりが生じにくくなります。寝たきりの人については、シーツを頻繁に交換し、清潔で乾いた状態に保つ必要があります。殿部や鼠径部(そけいぶ)など、皮膚同士が互いに押し合う部位に固まらないボディパウダーを塗れば、その部位の皮膚を乾燥した状態に保つことができます。

かかとやひじのように骨ばった部分は、くさび型の発泡フォームやかかとのプロテクターなどの柔らかい素材で保護します。ドーナッツ状の器具や羊の皮は、圧迫やこすれをある部位から別の部位に移動させるだけなので使わないようにします。車いす生活の人や寝たきりの人のために、圧迫を軽減できる特別仕様のベッド、マットレス、座布団、クッションを利用することもできます。このような製品は圧迫が生じにくく、さらなる緩和が得られます。どのようなマットレスやクッションが最も適しているかは、医師や看護師からアドバイスが得られます。ただし、これらの製品を使っても圧迫を完全になくせるわけではなく、患者の体位を頻繁に変えないですむわけではないことを認識しておきましょう。

治療

床ずれの治療は、予防よりもはるかに困難です。治療の主要な目標は、びらんにかかる圧迫を和らげ、傷口を清潔に保って感染症を防ぎ、十分な栄養を与えることです。床ずれの治りを早め、新たな床ずれができるのを防ぐためには、栄養状態を良好に保つことが大切です。バランスの取れた高タンパクの食事と、ビタミン、ミネラルの含有量の高いサプリメントが勧められます。ビタミンCや亜鉛のサプリメントも床ずれの治癒を早めるのに役立ちます。電気刺激、加熱療法、マッサージ療法、高圧酸素療法の有効性は証明されていません。

最早期の段階では、圧迫されなくなれば通常は床ずれは自然に治ります。皮膚に破れがみられる場合は、医師や看護師はドレッシング材を使う際にその部位と状態を診察します。透明なフィルムドレッシング材は、初期段階の床ずれを保護し、治りを早めるのに有効です。酸素と水分を含んだハイドロコロイドパッチは、皮膚を保護して適度にうるおった状態に保つことで、深い床ずれにも適切な状態が得られます。もっと深くまで皮膚が侵されていたり、体液のにじむ量が多かったり、感染症にかかっている場合は、別のタイプのドレッシング材を用います。

感染していたり体液がにじみ出ている床ずれの場合、生理食塩水で洗い流してガーゼでそっとたたくことが有効です。メスや化学溶液を使って、死んだ皮膚の組織を取り除くこともあります(デブリドマン)。死んだ組織は痛みを感じないため、その組織を取り除く場合は通常痛みはありません。近くに健康な組織があるので若干の痛みが感じられることもあります。隠れている破片を残らず取り除くために、医療従事者が滅菌した洗浄液で、びらん、特に深い裂け目の部分を洗い流す(洗浄する)こともあります。

病院や介護施設では空気を循環させるベッド(エアーベッド)が使われることもあります。このような特殊なベッドは、体にかかる圧迫を減らしたり、移動させるのに役立ちます。

深い床ずれは治療が困難です。ときには皮膚弁や筋肉弁が必要になることもあります。これは、健康で血流が十分ある厚い組織を外科的に移動させて損傷の生じた部位を覆う方法です。しかし、この手術はうまくいくとは限らず、特に栄養状態が悪い高齢者の場合は成功させるのが難しくなります。床ずれの深い部分に感染症が起きたときは、多くの場合抗生物質を投与します。床ずれの下の骨にまで感染が及んだ場合(骨髄炎- 骨髄炎を参照)は特に治療が難しく、血流に感染症が広がるおそれがあります。こうなると、抗生物質による治療を何週間も続けることが必要です。