血管外科
平成27年度日本外科学会総会において「優秀賞」受賞。
当院血管外科における代表的な対象疾患
✓ 閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)
下肢への動脈が狭くなったり詰まったりすると歩行時にふくらはぎやふとももが痛みます。ひどくなると安静にしていても足や下肢全体が痛みます。さらにひどくなると足先やかかとに潰瘍や壊疽を生じ、やがて下肢の広範囲が壊疽に陥ることさえあります。
当院では、超音波検査・血管造影検査・薬治療・カテーテル治療(風船・ステント治療)・手術治療まで一連の流れを当科で実施しています。特に、カテーテル治療を積極的に取り入れて、通常の手術を最小限にするような手術(ハイブリッド治療)を行っています。体力のない高齢者に対しても負担を少なくするような工夫です。
写真:カテーテル治療(腸骨動脈)の例(患者さんのご好意で掲載) ✓ 下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)
- 下肢静脈瘤の症状
何年間かの経過を経て次第に「むくみ、だるさ」「夕方になると足が重い」「立っているとだんだん痛くなる」「足がつりやすい」といった症状がはじまり、長時間の立ち仕事がつらくなります。
かゆみ(湿疹)、黒ずみ(色素沈着) が生じると、最終的には、
潰瘍や出血が生じることもあります。
(患者さんのご好意で掲載) 皮膚症状(カユミや湿疹、潰瘍、出血)を生じていれば治療をお勧めしています。重い、だるい、つりやすいなど、ご本人にしか分からない症状の場合はご本人の希望を尊重します。
- 下肢静脈瘤(伏在静脈瘤)の原因
伏在静脈と深部静脈の合流部にある逆流防止弁が体質的に故障しやすい方は、妊娠や立ち仕事などをきっかけとして血液が逆流しはじめます。 伏在静脈に血液が充満するとだんだん静脈が引き伸ばされて目立つようになります。
目立ち方は静脈の深さにもよりますので、「目立つほど重症」とは言い切れません。 - 下肢静脈瘤(伏在静脈瘤)の治療
張り裂けるような痛みや、足のひどいだるさを何年も我慢し続けている方もいらっしゃいますが、残念ながら「がまん」や「気合」では治りません。
保険適応の下肢静脈瘤(伏在静脈瘤)治療は、主に3つあります。
硬化療法:
注射薬で静脈瘤の中の血液を固めてしまう方法です。
メリット:
外来で治療できる。傷跡が小さい。
デメリット:
シミ(色素沈着)が残ることがある。血栓が流れて心臓や肺に
合併症を起こすリスクがある。再発が多い。
選択的抜去手術:
逆流を生じている静脈の付け根(逆流の原因)を正確に
遮断しつつ、伏在静脈を部分的に引き抜いて再発を未然に
防ぐ方法です。
メリット:
再発しにくい。
デメリット:
1~4cmほどの傷跡が最低2か所残る。
下半身麻酔を用いる場合は最低一泊の入院が必要。
レーザー治療、高周波(ラジオ波)治療:
血管に細い管を挿入して血管を焼いてしまう方法です。
メリット:
傷跡が小さい。
デメリット:
血管が上手く焼けなければ不成功・再発となる。
痛みやシミ(色素沈着)が長期間残ることがある。
逆流している静脈の根元が残る。 - 当院 血管外科の方針:
その1・・・当院では「レーザー治療」は実施しておりません。
「レーザー治療」や「高周波治療」は血管に熱傷(やけど)をおこして血管としての機能を失わせるものです。これらの方法は、深部の静脈の損傷や血栓症、あるいは大切な神経の熱傷を生じうるため、静脈瘤の根本(原因となっている根源)には手出しをしないように義務づけられています。ということは、「レーザー治療」や「高周波治療」を正確に行えば、手術の終わった時点で既に逆流の根元が残っているわけです。将来、追加手術が必要にならないか議論の余地があります。また、その追加手術は難儀なものであることが予想されます。従って当院では「レーザー治療」「高周波治療」を実施しておりません。「レーザー治療」や
「高周波治療」では静脈瘤の根元
(原因となっている根源)は
焼かずに残すことになっています。
当院では、「レーザー治療」や「高周波治療」の工学技術のみならず手術理論が完成されるまでは、「選択的抜去手術」を実施していくつもりです。選択的抜去手術は、長い間世界中で改善が加えられてきた実績から、安全性と効果が確立されている最もスタンダードな手術です。決して時代遅れな方法ではありません。さらに当院独自の工夫・進化を加えることにより、他院にて手術後の再発ケースも多く引き受けることができております。(当院での手術ケースの2割近くが他院手術後の再発ケースです。) - 当院 血管外科の方針:
その2・・・手術後は最低一泊入院していただきます。
「日帰り」を強調する施設がありますが、安全のためには手術当日は病院に入院をする方が良いと考えます(大部屋で十分です。医師や看護師がそばにいることが重要なのです。) (当院では9割近くの方が手術翌日に無理なく退院しますが、退院を強制することはありません。)
当院血管外科で選択的抜去手術を行った際の標準的な経過
術中・術後に問題がなければ、手術翌日午後に退院は可能です。手術後3日目からシャワー浴が可能。初回シャワー浴後に一度外来を受診していただきます。手術後7日目にも外来受診していただきます。それまで入院を継続なさる方もいらっしゃいます。大きな問題がなければ2~3ヶ月後に再診していただき終了です。
✓鬱滞性潰瘍(うったいせいかいよう)
下肢の動脈・静脈・リンパ管疾患のために生じる難治性創傷は軟膏処置だけでは治りません。治療に手間と時間がかかります。原因となっている血管疾患の治療と共に陰圧閉鎖療法などをあわせて当科で完結できるよう尽力しております。
✓深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)
超音波検査・採血検査・造影CT検査等を利用して素早い診断を行い、血栓溶解療法・血栓除去・フィルター挿入等の適応を検討します。
✓その他
下肢の冷え・痛みやむくみの鑑別診断(血管性のものかどうかの判断)
透析用人工血管シャントの植え込み(透析医の依頼で実施)
その他永久カテーテル留置などの血管関連処置(他科医師の依頼で実施) 難治性褥瘡(「重症なとこずれ」)に対する集学的治療 ※
一般外科的処置(創処置、気管切開、リンパ節切除など)は必要に応じて実施※難治性褥瘡について
骨が露出し壊死組織を伴うような大きく難治性な褥創は、感染に伴う体力低下や、血液・蛋白が失われることによる衰弱の原因となります。 地域医療への貢献の一環として、治療・処置に難渋する難治性褥瘡(「重症なとこずれ」)に対する入院治療も引き受けています。これには下肢難治性創傷治療のノウハウを生かして良い結果を得ています。(入院の必要性については診察のうえ判断いたします。)
対象となるのは、- 自宅や施設において長期間にわたって処置してきたが改善せず、本人が著しい苦痛を訴えている、あるいは処置が難しくて困っている場合。
- 褥瘡からの出血や浸出液のために全身の体力が奪われて衰弱の原因になっていたり、重篤な感染症(敗血症)の原因になっているなど、命にかかわる場合。
- 積極的な全身管理と、手術をも含む高度な局所治療を希望しない場合は対象外です。
なお、治療については、以下のような集学的治療を実施しています。- 栄養管理(褥瘡が仙骨・坐骨部など便で汚染される部位にあるならば中心静脈栄養を実施します)
- 合併症治療(循環器疾患、呼吸器疾患、尿路疾患、糖尿病など)
- 局所治療(壊死組織切除、軟膏処置、陰圧閉鎖療法など)
陰圧閉鎖療法については、日本でいち早く実施しはじめ処置回数は延べ5000回を超えています。 - 必要に応じて褥瘡周囲組織への血行再建(腸骨動脈などへのカテーテル治療)
- 褥瘡への皮膚移植(筋皮弁形成手術)
手術後も傷が安定するまでは適切な栄養管理、合併症治療、局所治療を継続することになります。加納岩病院血管外科開設以降~平成28年12月までの主要な治療件数
- 血管内治療 249件
- 観血的動脈関連手術 132件
- 下肢静脈瘤に対する手術(硬化療法を含まずに)275件
- 陰圧閉鎖療法:105件
- 褥瘡への皮膚移植(筋皮弁形成術):51件
- 上記以外の血管関連処置や一般外科的処置は適宜実施
一般的な入院期間(目安)
- 下肢血管に対するカテーテル治療(風船・ステント治療):3~5日
- 下肢血管に対するバイパス手術:8~15日
- 下肢静脈瘤に対する抜去術:2~3日
- 仙骨部重度褥瘡:8週間前後
- 大転子部重度褥瘡:6週間前後
当科診療内容(動脈疾患、静脈疾患、創傷治療)に関係する業績
(加納岩総合病院 血管外科開設以降)
✓ 論文
- 直腸癌手術後の腹部大動脈-両側大腿動脈間バイパス術
【中山光由 ほか 山梨医学 2007;35:130-4】
- 高度虚血肢を有する高齢寝たきり患者に対して顆粒球コロニー刺激因子を使用し、下肢血管造影所見の改善を認めた一例
【 中山光由 ほか 山梨医学 2007;35:139-43】
- 下肢静脈瘤手術後早期回復への試み
【中山光由 ほか 山梨医学 2007;35:144-5】
- Angiogenesis achieved by G-CSF in combination with
bypass surgery
【 Nakayama M et al. Circulation Journal. 2008;72:1385-7 】
- 浅大腿動脈完全閉塞病変に対するハイブリッド手術
【 中山光由 ほか 山梨医学 2008;36:52-5】
- 褥そう治療から下肢うっ滞性潰瘍、虚血性潰瘍治療まで
― 陰圧吸引療法の利用
【中山光由 ほか 山梨医学 2009;37:104-7】
- Applying negative pressure therapy to deep pressure ulcers covered by soft necrotic tissue
【 Nakayama M. International Wound Journal. 2010;7:160-6 】
- 重症虚血肢に対する血行再建と仙骨部褥瘡に対する筋皮弁形成術を同時期に行った典型例
【中山光由 ほか 山梨医学 2010;38:55-8】
- Variations of negative pressure wound therapy
【Nakayama M. J Surg Tech CR 2011;3:12 】
- 大伏在静脈と皮下膜組織の位置関係 -低濃度大量浸潤局所麻酔時に注意すべき知識として
【 中山光由 ほか 山梨医学 2011;39:80-3. 】 - A thrombosed graft left in the fremoral area which led to an embolism
【Nakayama M. Gazetta Medica Italiana 2012;171:829-31. 】 - 上肢からアプローチする血管内治療を併用した下肢ハイブリッド血行再建術
【中山光由 ほか 山梨医学 2012;40:28-31. 】 - Proximal open endarterectomy combined with simultaneous distal endovascular therapy for chronic full-length occlusion of the superficial femoral artery in the elderly patients
【Nakayama M. Asian Journal of Surgery 2013; 36: 104-110 】 - Short saphenous varicose vein associated with incompetent gastrocnemius vein
【Nakayama M. J Vasc Med Surg 2013; 1: e107】 - 小伏在静脈瘤手術後の遺残静脈瘤に関する検討
【中山光由 山梨医学 2013;41:157-9.】 - The incidence,clinical importance and management of incompetent gastrocnemius vein. 【Nakayama M Ann Vasc Dis 2016;9:35-41】
✓ 学会口演(地方会口演や講演会は省略。)
- 血管造影室で行う一期的ハイブリッド手術 第109回日本外科学会総会
【中山光由ほか 2009年4月 (福岡)】 - 腓腹静脈弁機能不全に関する検討 第115回 日本外科学会総会※
【中山光由 2015年4月(名古屋)】
※第115回 日本外科学会総会において優秀賞受賞
担当医師 医師名 経歴・所属学会・資格等 中山 光由
(医長)千葉大学卒(平成5年)
医学博士
循環器学会認定循環器専門医
外科学会認定外科専門医
脈管学会認定脈管専門医
胸部外科学会認定医
血管内焼灼術実施医
血管外科学会認定血管内治療医
BLSプロバイダー(救急蘇生処置)
ACLSプロバイダー(心肺脳救急蘇生治療)
ACLS-EPプロバイダー(心肺脳専門的救急蘇生治療)
JPTECプロバイダー(外傷患者病院到着前救急処置)
JATECプロバイダー(外傷患者病院到着後救急治療)お知らせ
現在、全身麻酔を要する手術は受け入れを制限させていただいております。
災害時派遣医師(DMATドクター)のため災害時に休診となる場合があります。 (予約患者も含めて代診はありません。)病院にお問い合わせください。- 下肢静脈瘤の症状