猫の毛の構造
猫は食事を通して摂取したタンパク質の大部分を、毛の成長に回します。以下では猫の毛の成長や生え変わり、及び毛の周辺にある組織の微細構造(びさいこうぞう)について説明します。
毛の根元の「毛包」
毛の生える根元の部分を毛包(もうほう)と呼びますが、猫の毛包は人間のそれとは微妙に違います。人間の毛包からは一本の太い毛が生えているだけですが、猫の毛包からは主毛(しゅもう, 上毛ともいう)と呼ばれるやや太目の毛と、それを取り囲むように配置している副毛(ふくもう, いわゆる下毛のことで、さらに柔毛と剛毛に分かれる)が生えます。主毛に関しては、最大で6本も生えるといいますので、被毛の密度は人間と比べるとかなり濃くなります。 猫は体重1kg当たり人間のおよそ5倍のタンパク質を必要としますが、その大部分は豊富な被毛の新陳代謝にまわされます。これは体毛が主として「ケラチン」と呼ばれるタンパク質によって構成されているからです。
「毛包」の根元部分
毛包の根元には皮脂腺(ひしせん)と呼ばれる皮脂を分泌する器官があります。しかし、「猫っ毛(ねこっけ=猫の毛のように柔らかく、ねやすい頭髪)」という言葉があるくらい上毛も下毛も柔らかく、皮脂腺から分泌された脂分が十分にいきわたらないため、猫の毛はあまり水をはじきません。ちょっと濡れただけでも熱心に体をぶるぶる震わせて脱水しようとするのはこのためです。 また、各毛包には立毛筋(りつもうきん)と呼ばれる小さな筋肉が付着しています。敵を威嚇するときなどにこの筋肉を収縮させ、主毛を立てることで自分の体を実際よりも大きく見せることが出来ます。また寒いときは毛を逆立てることで体毛の間に空気の層を作り、体温が外気中に逃げ出さないようにして寒さをしのぎます。 ノルウェジャンフォレストキャットやメインクーンなど、寒い場所で暮らしてきた猫は、副毛の一種である柔毛(じゅうもう)が良く発達しています。これは柔毛には優れた断熱効果があるためです。一方、シャムなど暑い場所で暮らしてきた猫は、逆に柔毛がありません。これは体温を効率的に外界に逃がすよう、保温効果の高い柔毛が、長い歴史の中で抜け落ちてしまったためです。
毛の抜け変わる「換毛期」
一般的に、猫の換毛期(かんもうき=毛の生え変わる時期)は3月と11月に始まります。寒さの落ち着く3月頃と寒さが厳しくなる11頃に、体毛を一旦抜け落とし、新しい体毛をまとうためです。この時期はとりわけ抜け毛が多くなり、体をなでただけでも毛がごそっと抜け落ちることがあります。
猫の体毛の成長周期は、およそ60~90日の成長期と、40~60日の中間・休止期に分けられますが、成長期には毛根(毛を成長させる部分)から徐々に新しい毛が伸び、しまいには古い毛を上に押しのけて毛穴から顔を出します。これが「抜け毛」と呼ばれる現象です。猫の毛は異なった成長段階にあるたくさんの毛で覆われていますので、一気に全ての体毛が抜け落ちてツルッパゲになることはありません。
通常猫は自分の舌を使って毛づくろいしますが、換毛期においては毛づくろいの際に飲み込んでしまう毛の量が増えますので、飼い主としては注意が必要です。換毛期にはとりわけ入念にブラッシングして、毛球症(もうきゅうしょう, 猫が飲み込んだ毛をうまく吐き出したり排便することが出来ず、腸内に詰まってしまうこと)にかかって手術するはめにならないようしっかりケアしてあげましょう。
猫の体毛の成長周期は、およそ60~90日の成長期と、40~60日の中間・休止期に分けられますが、成長期には毛根(毛を成長させる部分)から徐々に新しい毛が伸び、しまいには古い毛を上に押しのけて毛穴から顔を出します。これが「抜け毛」と呼ばれる現象です。猫の毛は異なった成長段階にあるたくさんの毛で覆われていますので、一気に全ての体毛が抜け落ちてツルッパゲになることはありません。
猫の毛の成長サイクル
また、体毛の成長周期に大きな影響を及ぼすのは「日照時間」です。日光を浴びている時間が長くなると、激しい毛の生え代わりである換毛期を迎えますが、完全室内飼いで人工的な家の明かりを長く浴びていると、換毛期のメリハリがなくなり、中には一年中抜け毛を起こす猫もいます。通常猫は自分の舌を使って毛づくろいしますが、換毛期においては毛づくろいの際に飲み込んでしまう毛の量が増えますので、飼い主としては注意が必要です。換毛期にはとりわけ入念にブラッシングして、毛球症(もうきゅうしょう, 猫が飲み込んだ毛をうまく吐き出したり排便することが出来ず、腸内に詰まってしまうこと)にかかって手術するはめにならないようしっかりケアしてあげましょう。
猫の毛の生える方向
猫の毛は生える方向がある程度決まっています。猫をなでたりブラッシングしたりする際に役に立つので、猫の毛の方向を写真で示します。
猫の毛の生える方向
ちなみに右の写真は、猫の毛が生える方向を示したもの・・・ではなく、実は毛虫の一種です。毛並みも美しく、しっぽまで付いてまるで小さなペルシャ猫に見えることから「猫ちゃん毛虫」(Puss Caterpillar)と呼ばれています。しかしその可愛い外見とは裏腹に、毛の中に猛毒を含んだとげをたくさん隠し持っているため要注意です。誤って刺されてしまった場合、毒がすぐに炎症反応を引き起こし、局所的な腫れや痛みを引き起こします。さらにひどい場合は、吐き気、頭痛、胃腸障害、発赤、水ぶくれ、胸の痛み、感覚の麻痺、呼吸困難といった全身症状にまで発展することもあります。日本国内で見かけることはないでしょうか、アメリカやメキシコ近辺を旅行する際は、「猫ちゃんみたいで可愛い!」といって飛びつき、毛並みに沿ってナデナデしない方がよいでしょう。猫の毛の色
猫のひげ
猫のマズル(口吻部)からは左右に長くひげが伸びていますね。このひげには、私たち人間には想像も付かないような特殊な機能と役割があるみたいです。
猫のひげの位置と名称
犬や猫のひげは別名触毛(しょくもう, vibrissa)とも呼ばれていますが、この名称の「触覚を有する毛」から来ています。猫のひげの位置と名称を下に載せましたのでご参照下さい。
猫のひげの位置と名称
- 上毛(じょうもう)目の上/約6本
- 上唇毛(じょうしんもう)口の上/約16本
- 口角毛(こうかくもう)口の端/1~2本(写真では不鮮明)
- 頭下毛(とうかもう)あごの下/短毛が数本(写真では不鮮明)
- 頬骨毛(きょうこつもう)ほほぼねの上/1~2本
猫のひげの役割
猫のひげは通常の体毛よりも2倍太く、また通常の3倍も深く体内に埋め込まれており、そのひげの根元には感覚受容器(外界の変化を感知するセンサー)が豊富に存在しています。その感度は、人間の毛幅のわずか1/2000程度の動きを検知できるほどです。特にひげの根元にある環状洞(かんじょうどう)と呼ばれる部分は血液で満たされており、ひげの振動を増幅して近くに分布している知覚神経へと信号を伝える働きを持ちます。俗に、猫が顔を洗うと雨が降ると言われている理由は、低気圧の接近でひげに付着した水分を拭き取ろうとしてるからだと言われていますが、科学的に証明されたわけではありません。 猫にとってひげ(触毛)は非常に重要らしく、ひげが汚れるので深い器を嫌う猫や、ひげを抜かれたことで生きる気力をなくして軽い「うつ」状態になる猫もいるとか。猫は食事の後、しきりにひげをお手入れしている姿を見かけることもありますが、これはひげについた汚れをとって感覚を鋭敏(えいびん)にしている、とも言われています。また、子宮の中にいる子猫は、他の体毛よりもまず「ひげ」を生やすことを優先します。生まれたての子猫は目も見えないし耳も聞こえませんが、ひげの感覚さえあれば、自分の周囲にあるものがある程度感知できるという訳です。
ちなみに若い猫ほどひげが長く、老猫ほど短くなります。また、抜け替わりは半年に一度程度です。前足の肘部分にもひげらしきものがありますが、役割ははっきりしていません。
猫が後生大事(ごしょうだいじ)にしているのひげの役割を以下にまとめます。
ちなみに若い猫ほどひげが長く、老猫ほど短くなります。また、抜け替わりは半年に一度程度です。前足の肘部分にもひげらしきものがありますが、役割ははっきりしていません。
猫が後生大事(ごしょうだいじ)にしているのひげの役割を以下にまとめます。
猫のひげの役割いろいろ
- 空気の流れを読み、獲物の匂いを察知する
- 目の上の「上毛(じょうもう)」に何かが当たると反射的に目を閉じる
- 細かいゴミを吸着し、目に入るのを防ぐ
- 獲物に触れ、生死を振動で判断する
- 障害物を感知し、通れるかどうかを判断する
- 気分を表す
猫のひげと気分・感情
猫のひげの役割の1つに「気分を表す」というものがありますが、一般的な通説をまとめると次のようになります。しかしひげと気分の相関関係には例外が多く、教科書どおりの答えが通用しないこともありますので、これは参考程度にとらえて下さい。なお、食事のときはひげが汚れないように後方にひきつけることだけは確かなようです。
猫のひげと気分の相関関係
- ひげが前方に倒れる興奮・緊張・興味
- ひげが下に垂れるリラックス・体調不良
- ひげが10時10分の方向にピンと上がる上機嫌
- ひげを後方に引きつける食事中
猫のまつ毛
猫のまつ毛は、眼球の周囲から1mmほど離れたところに生えています。人間やラクダのように前方に向かってピンと伸びているわけではないので、「猫はまつ毛を持たない」という一般的な風説も、あながち間違いとは言い切れません。
さてこのまつ毛ですが、2015年に発表された最新の研究により「目の中に入るゴミを減らすと同時に、目から蒸発する水分量を減らす」という役割を持っていることが明らかになりました(→出典)。実験を行ったのは、アトランタにあるジョージア工科大学の研究チーム。お皿に入れた水とプラスチックの模造まつ毛で擬似的に眼球を再現し、まつ毛の長さによって眼球表面のゴミや水分量がどのように変化するかを観察しました。その結果、まつ毛の長さが目の横幅の3分の1である時、最もゴミが入りにくく、また水分の蒸発量も少なかったといいます。さらにこの「1/3ルール」は、まつ毛のある22種の哺乳動物の全てにおいて当てはまったとも。 仮にこの理論が正しいとすると、「前方に突き出したまつ毛を持たない猫の眼球からは、さぞかしたくさんの水分が蒸発しているのだろう」ということになります。また同時に、眼球が乾くことで発生するドライアイの発症率も高くなっているはずです。ところが、犬においては非常にありふれた疾患であるドライアイも、どういうわけか猫においては極めて稀とされています。顔の中における眼球の露出率が犬よりも大きく、なおかつ涙の分泌量が犬よりもやや少ないにもかかわらずです(→出典)。
謎に満ちたこの現象ですが、猫の日常を観察していると何となく答えが見えてきます。猫は一日の内の約12~14時間を睡眠に費やしており、しかも「30分起きて80分寝る」という、かなり変則的な取り方をしています。この事実から考えると、猫がドライアイになりにくい理由は、目が乾く前に眠りに落ちてしまうからという非常に単純なことなのかもしれません。砂漠出身の猫にとっての睡眠は、エネルギーを温存すると同時に、狩りをするときに重要な眼球を乾燥から守るという役割も持っているのでしょう。
さてこのまつ毛ですが、2015年に発表された最新の研究により「目の中に入るゴミを減らすと同時に、目から蒸発する水分量を減らす」という役割を持っていることが明らかになりました(→出典)。実験を行ったのは、アトランタにあるジョージア工科大学の研究チーム。お皿に入れた水とプラスチックの模造まつ毛で擬似的に眼球を再現し、まつ毛の長さによって眼球表面のゴミや水分量がどのように変化するかを観察しました。その結果、まつ毛の長さが目の横幅の3分の1である時、最もゴミが入りにくく、また水分の蒸発量も少なかったといいます。さらにこの「1/3ルール」は、まつ毛のある22種の哺乳動物の全てにおいて当てはまったとも。 仮にこの理論が正しいとすると、「前方に突き出したまつ毛を持たない猫の眼球からは、さぞかしたくさんの水分が蒸発しているのだろう」ということになります。また同時に、眼球が乾くことで発生するドライアイの発症率も高くなっているはずです。ところが、犬においては非常にありふれた疾患であるドライアイも、どういうわけか猫においては極めて稀とされています。顔の中における眼球の露出率が犬よりも大きく、なおかつ涙の分泌量が犬よりもやや少ないにもかかわらずです(→出典)。
謎に満ちたこの現象ですが、猫の日常を観察していると何となく答えが見えてきます。猫は一日の内の約12~14時間を睡眠に費やしており、しかも「30分起きて80分寝る」という、かなり変則的な取り方をしています。この事実から考えると、猫がドライアイになりにくい理由は、目が乾く前に眠りに落ちてしまうからという非常に単純なことなのかもしれません。砂漠出身の猫にとっての睡眠は、エネルギーを温存すると同時に、狩りをするときに重要な眼球を乾燥から守るという役割も持っているのでしょう。