The Book

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

まず、2002年に乙一は「読むジャンプ」(集英社)に、第一稿である『ジョジョの奇妙な冒険 テュルプ博士の解剖学講義』の冒頭部分を発表する。しかし、加筆・改稿を繰り返すうちに内容が二転三転し当初の『テュルプ博士』とは大幅に内容が異なるものになっていく(このため「読むジャンプ」に掲載された荒木飛呂彦の挿絵は本作では使用されず、新たに描き起こされることとなった)。

乙一が満足できる作品を作り上げるために何度も何度も書き直した結果、破棄した原稿用紙は2000枚以上、5年の歳月を要し本作は完成した。その間、乙一はサボらない為に自ら集英社の編集部へと通勤し、原稿を書いていた。

2000年、舞台は日本国M県杜王町(もりおうちょう)。冬休みの終わる3日前。

ぶどうヶ丘学園高等部1年の広瀬康一と漫画家・岸辺露伴はコンビニの前で血まみれの猫と遭遇する。猫の飼い主を捜してたどり着いた先には家の中で車に轢かれた女性の奇妙な死体。

スタンド「ヘブンズ・ドアー」によって探り出した手がかりは「腕に赤い爪痕のある男子学生」。3ヶ月にわたる事件はこうして幕をあける。

そして、恋人の手によってビルとビルの隙間に突き落とされ、そこで生活することになった飛来明里。

不思議な革表紙の本を持つ蓮見琢馬と彼に惹かれる双葉千帆。

彼と彼女たちのストーリーは既に始まっていた。

原作からの登場人物

東方 仗助(ひがしかた じょうすけ)
スタンド名:クレイジー・ダイヤモンド
ぶどうヶ丘高校1年の生徒。不良であるが、同じ不良の億泰とは違い普通の成績を取っている。学校中が知る有名人で、彫りの深い顔立ちで女子に人気がある。幼い頃の自分を救ってくれた少年を真似て軍艦のようなリーゼントヘアにしている。殺人犯について調査中に母が攻撃された事により琢馬と図書館にて交戦する。途中過去に自分を救った少年の話を琢馬によって検索され動揺を狙われるも吹っ切り、スタンド「The Book」の能力により重傷を負わされながらも琢馬を撃破する。
広瀬 康一(ひろせ こういち)
スタンド名:エコーズ ACT1~3
仗助の同級生。今作においても狂言回しとして登場。冬休みになってからゲームや漫画にどっぷりハマっており、オタク的な趣味を持つ友達も登場した。露伴とともに織笠花恵の死体を発見し、「腕に赤い爪痕のある男子学生」を探すことになる。スタンドを用いての戦闘は一度も無いが、最後は去って行く千帆にエコーズによる言葉を伝えた。
虹村 億泰(にじむら おくやす)
スタンド名:ザ・ハンド
仗助の同級生で不良。仗助とよくつるんでいる。期末試験の結果は学校がはじまって以来の歴史的不毛の大地だったらしく、進級が危ぶまれている。殺人犯を追ってついに琢馬の元へと辿り着き、図書館にて交戦する。スタンド戦に不慣れな琢馬に対して経験や本能を活かした戦いで重傷を負わせる事に成功するも、琢馬の作戦に嵌ってしまいインフルエンザに罹り敗北した。だが戦いの中で見つけた能力への対処法を体を張って仗助に伝え、勝利に貢献する事となる。
岸辺 露伴(きしべ ろはん)
スタンド名:ヘブンズ・ドアー
杜王町に住む人気漫画家。康一とともに織笠花恵の死体を発見する。ヘブンズドアーによって織笠花恵の殺害方法と敵スタンドの能力を暴いた。物語の冒頭、連載中の漫画「ピンクダークの少年」の第三部が終了したが次から第四部が始まるらしい。本人の弁によると「第九部までストーリーはできあがっている」とのこと。なお、本編では一人称が「僕」だが、この作品では「わたし」になっている。
山岸 由花子(やまぎし ゆかこ)
スタンド名:ラブ・デラックス
康一を異常に愛する容姿端麗な女子高生。双葉千帆とは家が近所で小学校時代のクラスメイト。期末試験が始まると恒例のテスト勉強を行い、康一を無事進級に導いた。
トニオ・トラサルディー
スタンド名:パール・ジャム
杜王町でイタリア料理店「トラサルディー」を営むイタリア人。この店の料理を食べると病気が治るらしいと評判になっている。その料理で琢馬の風邪や千帆の肩こりを癒した。
東方 朋子(ひがしかた ともこ)
仗助の母で職業は教師。大学生のときに仗助を生んだため子持ちとは思えないほど若い。誤って敵の攻撃を受けてしまい重傷を負う。
【彼】
1987年の冬、大雪の日に仗助を助けた不良の少年。仗助は彼に憧れて同じ髪型をしているが、その正体はいまだ謎に包まれている。
康一はタイムスリップした仗助本人だったのではないかと考察しているが、憶測の域を出ない。

小説版オリジナルの登場人物

蓮見 琢馬(はすみ たくま)
ぶどうヶ丘高校の2年生、17歳。身寄りが無くかつては施設で暮らしていた。あらゆることを見聞きしたそのままに記憶する、常人離れした記憶力を持っているが、それは裏返せば「どんな些細なことでも忘れることができない」というものであり、それゆえの様々な苦悩を抱えている。後述の大神 照彦と飛来 明里の息子であり、母の明里が照彦に虐げられた末死亡した事を知り、父への復讐を誓う。その後、自身のスタンドで織笠花恵を殺害し、双葉千帆を通じて照彦とも接触するが、織笠花恵の一件から仗助達に追われる身となる。スタンド戦の経験の差から億泰に圧倒され満身創痍の状態にまで追い詰められるものの、自身のスタンドの特性を活かした奇襲で億泰を倒す。仗助との戦闘では至近距離からのスピード勝負を繰り広げるが、覚悟を決めた仗助の前に敗れ去った。その際に図書館の屋根から落ちそうになり、助けようとした仗助の意に反し、死を望み自ら落ちていった。
The Book(ザ・ブック)
琢馬の記憶を文章に変換して記録する本型のスタンド。その記述を他人(スタンド使いかどうかは問わない)に見せることで、相手にもその記憶を擬似的に体験させることができる。その効果は自身にも適用されるため、危険なページは「禁止区域」として普段は目に触れないようにしている。射程距離は30メートル程で、ページを破いて見せても効果は発揮される。ただし2m(本体からではなくスタンドから)の距離まで近づかなければ効果は現れず、視界が悪い、または盲目であったりして記述が読めない者に対しては効果が無い。古い記憶ほどページをめくる必要があるため攻撃が遅れるという欠点も持つ。なお、作中の挿絵には本を擬人化したような人型のスタンドとしても描かれている。
双葉 千帆(ふたば ちほ)
ぶどうヶ丘高校に通う小説家志望の女子高生。過去に不良から助けてもらったことから、蓮見琢馬に好意を寄せている。実は琢馬の腹違いの妹で、物語の終盤でその事実を知る。琢馬と照彦の死後、杜王町から遠くに暮らす母に引き取られる。その身には琢馬との子供を宿していた。
双葉 照彦(ふたば てるひこ)
双葉千帆の父で子煩悩。職業は一級建築士。かつては大神 照彦(おおがみ てるひこ)と名乗り、欠陥住宅を売って荒稼ぎしていた。飛来明里とヨーロッパ旅行にいった際に骨董屋に入った時にそこに偶然あった石の「矢」で怪我をし、スタンド能力を身に付ける。本人にその自覚は無かったが、20年前に起こったある「幸運」をきっかけに、自身の能力を認識するようになる。その後復讐に現れた琢馬にも使用しようとしていたようだが、ぶどうヶ丘高校の卒業式の前日、娘の千帆に包丁で刺殺される。
メモリー・オブ・ジェット(黒い琥珀の記憶)
照彦が「矢」によって身に付けたスタンド。自身の指定した領域に誰も侵入させなくする能力であり、これにより無意識の内に飛来明里をビルの隙間に隔離し続けていた。なお作中では照彦、スタンド共に挿絵が存在しないため、外見は不明である。
飛来 明里(ひらい あかり)
大神照彦に好意を寄せる女性。しかし彼の秘密を知ってしまったことで殺されかけ、ビルの隙間に突き落とされる。しかし、生存していた事と、大神が欠陥住宅の売買で稼いだ金を隠していた事から、そのままそこに幽閉され、金の有りかを教えれば逃がすが、助けを呼べば両親を殺すと脅迫されていた。大神との子供(後の蓮見琢馬)を孕んでおり、幽閉開始から数ヵ月後にビルの隙間で出産する。子供は大神に助けられたものの、本人は金の有りかを教えても助けられる事は無く、衰弱死した。
織笠 花恵(おりかさ はなえ)
20年前、大神照彦と関係を持っていた女性。自宅であたかも車に轢かれたような状態で死亡しているのを露伴と康一に発見される。
トリニータ
織笠花恵の飼い猫。この猫が血まみれの状態で露伴と康一に発見された事から物語は幕を開ける。
なきむしぼうや
琢馬と同じ施設で暮らしていた少年。夜泣きの癖があるために周囲からイジメられていたが、琢馬に夜毎童話を聞かせてもらうことで泣かないようになった。現在は九州の親戚の家で暮らしている。
茨の館(杜王町立図書館)
杜王町にある図書館で、北海道札幌市の赤れんが庁舎に似た三階建ての古い洋館。外壁に茨が隙間なく絡まった外観から、俗に「茨の館」と呼ばれている。場所は駅前商店街をぬけた先。本好きの千帆や琢馬がよく訪れる。
広大な敷地をもち、庭には池や噴水、奇妙な形のモニュメントなどがある。内装も古い洋風であり、玄関ロビーは吹き抜けで螺旋階段がある。古代遺跡のような重厚な内装の一階は文学のコーナーと閲覧スペース、二階には理工学や哲学などの本があり、屋根裏部屋のような造りの三階には高価な希少本や骨董品などが保管されている。
うめき声をあげる「奇妙な本」(正体は本にされた宮本輝之助)があるとの噂が立っているが、真相を確かめようとした千帆は結局見つけられなかった。
鉄塔
杜王町北西部にある取り残された送電鉄塔。そこで自給自足の生活を送る「鉄塔男」(鋼田一豊大)が町民の噂話になっている。
児童養護施設
杜王町北西部、二ッ杜トンネルをぬけた先にある児童養護施設。幼少の琢馬が過ごした場所である。
ビルの隙間
住宅販売会社のビルと雑居ビルの間にある狭い空間。一方は密集した排水管やエアコンの室外機、もう一方は駅前の銀行ビルの背面が重なって、脱出不可能となった陸の孤島。
飛来明里はここに落とされ、閉じ込められてしまった。
廃屋
杜王町東部の田園地帯にある小さな廃屋。かつての再開発計画から外れた地区であるため、この周辺は昔ながらの田舎の風景のままである。琢馬が時折訪れる場所。
5年前まではここに娘を亡くした老夫婦(琢馬の祖父母にあたる)が住んでいたが他界、琢馬と直接会うことはなかった。
黒い玉の首飾り
大神照彦がヨーロッパの骨董屋で購入した黒い琥珀(ジェット)の首飾りで、飛来明里に贈ったもの。
後にビルの隙間を訪れた琢馬が回収し、千帆に贈っている。彼女はこれを肌身離さず身につけるようになった。
ポストカード
草原と二頭の黒い馬が頭を寄せ合っている写真が印刷されたポストカード。ビルの隙間の偶然飛んできたところを明里が見つけ、彼女の心を癒した。
後にビルの隙間を訪れた琢馬が回収し、自宅の壁に飾っている。

作中で登場した実在の書籍及び著者