ヒアルロン酸Na(ヒアルロン酸ナトリウム)の成分効果と毒性を解説
ニワトリのトサカから得られる動物由来のものと乳酸菌などの微生物を用いる発酵法により得られるものがあり、わずかに特異なにおいのある白色~淡黄色の粉末です。
ヒアルロン酸Naは、分子量が5万~230万とかなり大きく(∗1)、分子の中に非常に多量の水分を含むことができ、その性質から強力な保湿成分としての応用が盛んになり、保湿成分の代表成分のひとつとして有名になりました。
∗1 一般的なヒアルロン酸Naの分子量は5万~150万ほどで分子量が大きいほどとろみがあります。分子量が大きければ大きいと粘度(とろみやベタつき)は上がりますが、保湿力は上がらないので注意してください。
生体内では、関節、硝子体、皮膚、脳など生体内マトリックスに広く見られますが、皮膚の中では主に真皮に多く存在します(以下の図を参照)。
真皮の肌色の四角い部分…一番面積が大きいのがヒアルロン酸でそれをコラーゲンが支えており、さらにコラーゲンが崩れないようにコラーゲンの交差箇所をしばっているゴム状結束成分がエラスチンです。
もともとヒアルロン酸は鶏のトサカから抽出するものしかなくとても高額だったのですが、1985年に資生堂が微生物を用いる発酵法で得られるバイオタイプを開発してから、化粧品業界に急速に広がったという背景があります。
ヒアルロン酸Naは生体高分子なので安全性が高く、保水力があることから現在では医療品や食品にも広がっています。
医療分野では、美容注射として人工皮膚、癒着防止剤や目薬などに使用されており、食品分野では、健康食品やサプリメントに配合されています。
化粧品で使用する場合は、肌によくなじみ、しっとり感や保水力で重宝されているのですが、ヒアルロン酸Naだけをつけてもそれほどの保水力は発揮せず、塗布しても20分~40分でほとんどの水分は蒸発するため、高い保湿力を長時間維持するにはグリセリンやほかの保湿剤を併用する必要があります。
分子量が大きすぎて肌へ浸透しないため、肌の内側の水分を増やしたり保持するタイプではなく、肌の外側に保護膜をつくって空気中や化粧品の水分を含んで、それを角質層に与える役割なので、肌のヒアルロン酸を直接補うこともありません。
また、保水目的ではなく、感触改良剤として配合する場合もあります。
国立健康・栄養研究所の安全性・有効性情報によると、皮膚に対する保湿効果は、
- 乾燥肌あるいは肌荒れに悩んでいる42名 (平均43.3歳、試験群20名) に、微生物発酵により製造したヒアルロン酸 (平均分子量30万) を120 mg/日、6週間摂取させたところ、摂取終了2週間後でのみ皮膚水分量の増加が認められたが、摂取中の皮膚水分量や、皮膚弾力性、皮膚のシワおよびキメの画像解析などに影響は認められなかった(文献3:2009)。
- 乾燥肌傾向の成人女性38名 (試験群13名、平均37.6歳) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、ヒアルロン酸50 mg/日を8週間摂取させたところ、角層水分量および医師による皮膚の乾燥所見に影響は認められなかった(文献4:2008)。
- 健常成人女性61名 (平均43.41歳) を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、分子量30万 (20名、平均43.9歳) または80万 (19名、平均43.68±1.23歳) のヒアルロン酸120 mg/日を6週間摂取させたところ、試験終了2週間後でのみ、分子量30万のヒアルロン酸摂取群で皮膚の水分量の増加と自己評価の改善が認められたが、皮膚粘弾性には影響が認められなかった(文献5:2015)。
皮膚の水分量に関しては、影響がない場合と摂取終了2週間後でのみ水分量の増加が認められた場合があるというデータが掲載されています(∗1)。
∗1 化粧品で一般的に使用される微生物による発酵法でのヒアルロン酸の結果のみを掲載しています。
ヒアルロン酸Naの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について
ヒアルロン酸Naは、皮膚や関節など生体内にも多量に存在しており、その安全性の高さから医療や食品にも応用されている実績もあり、毒性や刺激性はなく、アレルギー(皮膚感作性)の報告もないため、安全性の高い成分であると考えられますが分子量によっては使用を控える必要があります。
ヒアルロン酸Naを使用すると一部の方に皮膚刺激やアトピー性皮膚炎が悪化したという報告がありますが、これは実際はヒアルロン酸Naではなく加水分解ヒアルロン酸Na(低分子ヒアルロン酸)だったという可能性があります。
詳しくは加水分解ヒアルロン酸(低分子ヒアルロン酸)の解説を読んでほしいのですが、ヒアルロン酸Naは分子量が100万以上だと抗炎症作用がありますが、分子量100万以下だと逆に炎症促進作用(∗1)や悪化作用があるという文献があり、加水分解ヒアルロン酸は分子量100万以下の可能性が極めて高いので敏感肌やアトピー性皮膚炎の方の使用はおすすめしません(文献1:2008,文献2:2006)。
∗1 サイトカインの産生を促進します。
また、ヒアルロン酸Naでも化粧品によっては分子量100万以下のこともありうるので、ヒアルロン酸Naの場合はメーカーに分子量を確かめてから使用することをおすすめします。
参考までに化粧品毒性判定事典によると、ヒアルロン酸Naは毒性なし(∗1)となっており、毒性に関しては心配する必要はありません。
∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。
ヒアルロン酸Naとセットで使用される成分と効果
- ・発酵法ヒアルロン酸1%原料として、以下の成分表示順で使用されます。
- 水、ヒアルロン酸Na、フェノキシエタノール
- ・ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液として、以下の成分表示順で使用されます。
- [化粧品表示] ヒアルロン酸Na、メチルパラベン、水
- [医薬部外品表示] ヒアルロン酸ナトリウム(2)、パラオキシ安息香酸メチル、精製水
- ・ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液として、以下の成分表示順で使用されます。
- [化粧品表示] ヒアルロン酸Na、フェノキシエタノール、水
- [医薬部外品表示] ヒアルロン酸ナトリウム(2)、フェノキシエタノール、精製水
- ・バイオヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液として、以下の成分表示順で使用されます。
- 水、ヒアルロン酸Na、フェノキシエタノール、メチルパラベン
- ・溶剤を使わずに精製したヒアルロン酸水溶液として、以下の成分表示順で使用されます。ヒアルロニダーゼ分解耐性を有し、持続的な保水効果が期待できる。
- ヒアルロン酸Na、水
- ・無水ミクロ球体のヒアルロン酸として、以下の成分表示順で使用されます。即時にシワを改善。
- ヒアルロン酸Na、パルミチン酸エチルヘキシル、ジメチルシリル化シリカ、BG、カプリリルグリコール、フェノキシエタノール、ヘキシレングリコール
- ・センサー機能を持つマイクロカプセルが、機能性成分を肌トラブルの現場で放出するというアクティブデリバリーシステム(ADS)にて、抗老化作用のある低分子ポリフェノールの機能を最大限発揮する製剤として、以下の成分表示順で使用されます。
- 水、BG、システイン/オリゴメリックプロアントシアニジン、PVP、ヒドロキシエチルセルロース、フェノキシエタノール、アルギン酸Na、キトサン、セテアリルグルコシド、ポリ-γ-グルタミン酸Na、ヒアルロン酸Na
- ・皮脂調整分子グルコン酸亜鉛を0.2%内包し、脂質層によってコーティングされたコラーゲンとヒアルロン酸ナトリウムのマイクロスフィアとして、以下の成分表示順で使用されます。スフィア構成物質としてアテロコラーゲン、ヒアルロン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムを使用しています。
- 水、BG、キサンタンガム、ステアリン酸Na、アテロコラーゲン、グルコン酸亜鉛、ヒアルロン酸Na、塩化Na、フェノキシエタノール
- ・無水ヒアルロン酸ミクロスフィアとして、以下の成分表示順で使用されます。深いシワを改善。ロング・ラスティング保湿。
- パルミチン酸エチルヘキシル、ジメチルシリル化シリカ、BG、ペンチレングリコール、ヒアルロン酸Na
- ・セレブロシド・スクワラン・ヒアルロン酸粉末をリポソーム化・ナノ化した化粧品原料として、以下の成分表示順で使用されます。ナノ化&リポソーム化により皮膚への浸透性・親和性が高まり、有効成分の効果がより高く発揮されます。
- グリセリン、セレブロシド、スクワラン、ペンチレングリコール、ヒアルロン酸Na
- ・高い吸水性で知られるヒアルロン酸とコンニャクグルコマンナンを成分とするスフィアとして、以下の成分表示順で使用されます。表皮上層で膨潤することにより、シワをふっくら滑らかに目立たなくします。
- パルミチン酸エチルヘキシル、トリヒドロキシステアリン、ヒアルロン酸Na、グルコマンナン
- ・皮膚専用に開発したビタミンC誘導体として、以下の成分表示順で使用されます。アスコルビン酸とヒアルロン酸をエステル結合で安定化し、化粧品処方においても優れた安定性を示します。コラーゲン生合成促進効果と線維芽細胞増殖効果、免疫機能正常化、抗酸化作用、美白効果。
- BG、水、フェノキシエタノール、ヒアルロン酸Na、ヒアルロン酸アスコルビルプロピル
- ・加水分解シルクで酸化亜鉛を被覆し、水に分散した溶液として、以下の成分表示順で使用されます。電荷を利用し、毛髪表面に接着しリフトアップを抑制し、なめらかな触感を与え、毛髪に対して退色防止効果(耐光性・耐洗性)が得られます。
- 水、加水分解シルク、酸化亜鉛、白金、炭酸水素Na、ヒアルロン酸Na、フェノキシエタノール
- ・マリンコラーゲン、ヒアルロン酸、BGをプラチナと共にナノコロイド化した保湿剤として、以下の成分表示順で使用されます。貴金属コロイドが相性の悪いとされているタンパク質に対しても安定性が優れていることから、プラチナコロイドとマリンコラーゲンの相容化が可能になり、独特な触感の保湿効果を発揮します。
- 水、白金、BG、加水分解コラーゲン、ヒアルロン酸Na、炭酸水素Na、セルロースガム、フェノキシエタノール
- ・プラチナとヒアルロン酸のプレミックスとして、以下の成分表示順で使用されます。過酸化水素消去、カラー剤の染色性向上、毛髪改善など皮膚だけでなく毛髪への機能性も高い。
- 水、白金、セルロースガム、フェノキシエタノール、ヒアルロン酸Na、塩化Na
- ・プラチナコロイドをコラーゲンで保護した原料として、以下の成分表示順で使用されます。プラチナコロイドが周辺のコラーゲンのキャリアーとなり浸透性を高めます。スキンケアの分野では抗酸化、角質水分量増加、経表皮水分損失抑制。ヘアケアの分野ではダメージ補修、ダメージ補修(キューティクル)。
- 水、白金、BG、加水分解コラーゲン、ヒアルロン酸Na、炭酸水素Na
基本的な配合量の多い成分表示順は上記の通りですが、1%以下の成分は順不同に表示されるので、製品によっては表示順が異なっている場合があります。
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ヒアルロン酸Naはベース成分、保湿成分にカテゴライズされています。
それぞれの成分一覧は以下からお読みください。
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文献一覧:
- 食品機能性の科学(2008):753
- Hyaluronan fragments: An information-rich system(2006). European Journal of Cell Biology,Volume85,Issue8:699-715
- 新薬と臨牀(2009),58(8):1467-1481
- Aesthetic Dermatology(2008),18(2):91-9
- Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition(2015),56(1):66-73